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俺の知ってる『テトリス』と違う、『ぷよぷよ』の全消しってこんなに簡単にできるの? 一流プレイヤーのテクニックと思考を『ぷよぷよテトリス』プロゲーマーに聞く

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 2020年12月10日、セガより『ぷよぷよ™テトリス®2』が発売された。ゲームファンなら知らない人はいないであろう、2大落ちものパズルゲームがミックスされたタイトルだ。

 『ぷよぷよ™』『テトリス®』、両タイトルのプレイが行えるだけではなく、片方は『ぷよぷよ』を操作し、もう片方は『テトリス』を操作して対戦できるのも特徴となっている。

俺の知ってる『テトリス』と違う、『ぷよぷよ』の全消しってこんなに簡単にできるの? 一流プレイヤーのテクニックと思考を『ぷよぷよテトリス』プロゲーマーに聞く_001

 オンライン対戦にも対応しているほか、それぞれのゲームのルールを細かく設定可能。第1作は数々のゲーム大会で使用されてきた実績も持っており、それぞれのタイトルのプロプレイヤーや上級者にも愛用される定番タイトルとなっている。

 そんな『ぷよぷよ』、『テトリス』の大会で活躍するプロ選手は、常人離れした腕前を持つプレイヤーばかり。そのテクニックを目の当たりにしたときには、「本当に自分と同じゲームをプレイしているのか?」と、思わず笑ってしまうほどだ。

 一流のプレイヤーは、対戦中にいったいどんな思考をしているのか? そして、ふだんどんな練習を行っているのか?  本記事では、『ぷよぷよ』のプロゲーマー、くまちょむ選手あめみやたいよう選手へインタビューを敢行。

 テクニックや対戦時の思考、相手との駆け引きなどについて話をうかがっているので、プレイしたことのない方の参考となれば幸いだ。また、『ぷよぷよ』、『テトリス』のテクニック用語集も掲載するので、合わせて役立ててほしい。

聞き手・文/豊田恵吾


プロフィール

くまちょむ(写真左)
ファイズマンクリエイティブ所属。JeSU公認『ぷよぷよ』プロプレイヤー。数多くの大会で活躍する。ニックネームは“レジェンド”、“カリスマ”。『ぷよぷよSUN』において、歴史上だれも達成したことがなかった前人未到の20連鎖を成功させた経歴を持つ。
Twitterアカウント:@kumachom

あめみや たいよう(写真右)
ファイズマンクリエイティブ所属。JeSU公認『ぷよぷよ』プロプレイヤー。『テトリス』のプレイヤーとしての経歴は若いが、2015年と2016年に開催された“Red Bull 5G”のパズル部門の優勝の立役者となり、一気に表舞台に名乗りを上げた。ニックネームは“神”。
Twitterアカウント:@inazuma0217tai1

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『ぷよぷよ』は対応力、『テトリス』はスピードが重要

──今回、『ぷよぷよ』と『テトリス』のテクニックに特化してインタビューを行わせていただきます。くまちょむ選手には『ぷよぷよ』、あめみや選手には『テトリス』のことを質問させていただきますのでよろしくお願いいたします。

 まず、そもそもおふたりが『ぷよぷよ』と『テトリス』を始めようと思われたきっかけから教えてください

くまちょむ選手(以下、くまちょむ):
 小学校高学年くらいのときに、家族で行ったボーリング場のゲームコーナーに『ぷよぷよ』が置いてあって、そこでプレイしたのが出会いでした。その光景が楽しそうだったのかもしれませんが、それを見ていた父親が『ぷよぷよ』のソフトを買ってきてくれたんです。そこから家で遊び始めて、次第にハマっていった感じですね。

あめみやたいよう選手(以下、あめみや):
 『テトリス』をプレイしたのは『ぷよぷよテトリス』が発売されてからでした。ゲームショップに行ったときに、「このゲームおもしろそうだな」と思って買ったのがきっかけでした。

──それは意外でした。あめみや選手が『テトリス』を始めたのは、最近のことなんですね。

あめみや:
 もともとゲームの腕前には自信があったので、このゲームもやり込んでみようと。

──短期間でプロ選手になられているのを聞くと、「自分もできるかも」と勇気づけられます(笑)。くまちょむ選手は『ぷよぷよ』のコミュニティーの中では古参のプレイヤーに属すると思いますが、昔といまでは、『ぷよぷよ』のテクニックなどに変化を感じますか?

くまちょむ:
 『ぷよぷよ』の場合は、初代『ぷよぷよ』から『ぷよぷよ通』のころに、“階段積み”という基本となるテクニックが確立されました。いまも階段積みをやっている人はいますが、いまはそこからさらに進化した“GTR”というテクニックが非常に流行っています。

──GTR、聞いたことがあります! 略称なんですよね?

くまちょむ:
 「岐阜田中連鎖」の略ですね。考案者の方がつけられたものです。

──GTRとは、具体的にどういったテクニックなのでしょうか。

くまちょむ:
 『ぷよぷよ』は連鎖の折り返し地点を隙間なく無駄なくシンプルに積むことが勝敗に直結するのですが、それが行えるのがGTRという積み方になっています。狭いフィールドの中をうまく上に伸ばしていくことで大連鎖に積み上げていく「折り返し」という基本的なテクニックを磨く入門の技術としても最適で、プレイヤーのみんなに受け入れられている積み方です。

▲くまちょむ選手によるGTRプレイ。

──『ぷよぷよ』は歴史のあるタイトルですが、テクニックやプレイヤー自体の腕前は、昔と比べて上がっているのでしょうか。

くまちょむ:
 上がっているのは感じますね。『ぷよぷよ』の対戦が流行り始めた1990年代だと、積みの折り返しやふた桁連鎖ができれば上級者だったと思います。ですが、いまはもうそれができてもようやく中級者というくらい、プレイヤー全体のレベルが高くなってきています。

──だいぶ進化しているのですね。『ぷよぷよ』で上級者になるためには、プラスしてどういったテクニックが必要になりますか。

くまちょむ:
 大連鎖用のぷよを積み上げながらも、相手の小さい連鎖の攻撃を返せるように、こちらも小さい連鎖用のぷよを積んでいく技術が重要になります。対戦ではおじゃまぷよが降ってくるので、大連鎖の積み込みをジャマされることが多いんですね。

 どんなパターンのおじゃまぷよがきても、うまく対処して積み込みを続けていく対応力が重要となります。まずは中連鎖を組む練習をして、余裕ができてきたら副砲も意識するようにすると、かなり上達すると思います。

▲取材後に編集部が全消しをお願いしたところ、くまちょむ選手は5分ほどで全消しに成功。撮影中、コントローラーが外れてしまい、画面にメッセージが出てしまっているのはご容赦いただきたい。

──そこまでできて初めて上級者を名乗れると。一方、『テトリス』の場合、どういった要素が腕前を計る指針になるのでしょうか。

あめみや:
 『テトリス』はスピードが大切なゲームなので、まずはある程度のスピードでテトリミノを積んでいけることが最低限の条件となります。そのうえで、Tスピンのテクニックの精度をどれだけ上げられるか、置きミスをしたときに素早くリカバリーをできるかが、プレイヤーの腕前を図る指針になると思います。

 また、間髪入れずに連続的にテトリミノを消していくという“REN”というテクニックがあるんですけど、相手がミスしたときは見逃さず、このRENでリカバリーされる前に倒し切るのが重要な戦術です。自分の画面の操作をしながらも、相手の画面を見ることも、かなり大切ですね。

▲あめみや選手のプレイの模様。スピードが俺の知ってる『テトリス』と違う!

──『ぷよぷよ』も『テトリス』も相手の画面を見ながら、対応する必要があるわけですね。初心者がテクニックを学ぶのに最適な方法はありますか?

あめみや:
 いまはインターネット上に解説や動画など、たくさん見本がありますから、それらをひと通り体験してみて、あとで自分に合うテクニックを取捨選択していくのがいいと思います。基礎的な力を養っておけば、何かで壁にぶち当たったときに自分自身の力で乗り越えやすくなるんじゃないかなと。

──『テトリス』はシンプルなゲーム性だからこそ、うまい人とそうでない人の差がハッキリと現れるのだと思いますが、どういった技術によってこの差が生まれると考えていますか?

あめみや:
 『テトリス』だと、“Tスピン”というテクニックがあって、それを実現する練度がいちばん差の出る部分だと思います。Tスピンを決めるために、どれだけ素早くテトリミノが設置できるか。

▲こともなげにTスピンを実践するあめみや選手。「え? そこに入るの?」という場所にテトリミノが収まっていく。

 一見ミスしているように見えるけど、それは狙ったTスピンの布石だったりすることもあります。あと、『ぷよぷよテトリス2』だとネクストが5つ先まで見えるんですけど、これを見ているかいないかも、実力に差がでる部分だと思います。

──あめみや選手は、ネクストを5つ先まで見ているのでしょうか?

あめみや: 
 見ています。

──それだけで勝てる気がしません(笑)。

あめみや:
 僕も最初からぜんぶ見えていたわけではないので安心してください(笑)。おそらく、はじめはひとつしか見られないと思いますが、慣れてくると自然とふたつ3つと見られるようになると思います。先が見えていると組みかたのバリエーションが増えていくんですね。あとは、“回転入れ”ができるようになることも重要です。

──回転入れテクニックのオススメ習得方法はありますか。

あめみや:
 右回転と左回転で入る形が違うのですが、これは暗記するしかありません。難しい回転をしないと入らない場所もあるので、暗記したうえで実際に操作して慣れるしかないかなと。

──テクニックを磨くには練習あるのみだと思いますが、どんな練習が効果的でしょうか。

あめみや:
 操作のスピードを磨くなら、40ライン(『テトリス』で40ライン分を消すタイムを競うモード。『ぷよぷよテトリス2』にも収録)をくり返しプレイするのがオススメですね。やればやるほどタイムが短くなり、その分実力になっていきます。整地の腕を磨くにはウルトラ(3分の制限時間以内に消したライン数を競うモード。『ぷよぷよテトリス2』にも収録)をプレイするのがいいと思います。

──練習のプレイを動画で録画し、あとで見直したりするものなのでしょうか?

あめみや:
 録画はしていないですね。整地の方法や回転入れで入る、入らないといった情報は、ノートに書いて覚えました。ノートに書いたら、そのとおりに組めるように練習します。あと、『テトリス』ってけっこう置きミスが発生するゲームなんです。ひとり用のモードであえてミスをして、そのリカバリー方法を考えるという練習もオススメですね。

──ノートに書くというお話ですが、研究をする際には、メモやとることが多いのでしょうか。

くまちょむ:
 僕はプレイを録画して動画を見返し、気になるポイントが出てきたらそれをシミュレーターに打ち込み、もっといい置き方がないかを探す、という方法で研究をしています。新しい置き方を見つけたら、付箋に図面、日付、コメントを書いて覚えていますね。

──本当に研究ですね。付箋はどれくらいの分量があるのでしょうか。

くまちょむ:
 いまは3000枚くらい。半分は捨てているから、トータルで5000~6000枚くらいは書いたと思います。

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くまちょむ選手の付箋メモ。

──3000はすごい数ですね。

あめみや:
 僕はいまはメモは取らず、その場その場でどんどん頭にインプットするようにしています。

くまちょむ:
 自分は物覚えが悪いほうなので、視界に入りやすいところに付箋を貼って、起きたときと寝るときに見るようにして、頭に刷り込むようにしています。

──その修練があってこそ、いまの実力があるんですね。

くまちょむ:
 一時期は壁に付箋を貼りつけまくっていた時期もあったのですが、見栄えが悪いのと、その光景で精神を病みそうだったのですぐに止めました(笑)。

──(笑)。ふだんの練習はどれくらいされているのでしょうか。

くまちょむ:
 やるときは1日4~5時間くらい。研究時間も含めて練習しますが、やらないときは1日やらない日もあります。ひとつ注目しているポイントがあったとして、それをひたすら研究していると、どんどん視野が狭くなってしまうんです。練習しない日を設けないと視野が狭い状態が続いてしまうので、プレイしない日をあえて必ず作るようにしています

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あめみや:
 自分は配信でプレイすることが多いのですが、それ以外ではあまりやってはいないですね。それを考えると、1日平均3時間くらいでしょうか。継続は大事なので、逆に自分は毎日プレイするようにしています。

──なるほど。それぞれ練習のスタンスが違うのが興味深いです。『ぷよぷよ』はおじゃまぷよのやり取りがある分、臨機応変の対応が求められるのだと思いますが、対戦中はどういった思考でプレイしているのでしょうか。

くまちょむ:
 目に見えている部分と、まだ見えていない部分、それぞれを考えながらプレイしています。

──「まだ見えていない部分」というのは?

くまちょむ:
 雰囲気というか予測というか。相手は人間なので、何回か対戦しているプレイヤーの場合、「相手にはこういうクセがあるから、そろそろこうしてくるだろう」という予測を立てることが多いです。人読みみたいなことをして、作戦を立てることもありますね。

──『ぷよぷよ』をぜんぜん知らない人からすると、そもそも駆け引きが存在するゲームなのかどうかもわからないと思うのですが、格闘技や体を使って対戦するスポーツとまったく同じなんですね。

くまちょむ:
 逆に、初めて対戦するプレイヤーが相手だと、意外と戦いづらかったりします。ちょっとヘンな積みかたをしているから注意すべきだなと考えても、じつは操作ミスでリカバリーをしていただけだったりとか。自分に有利な展開になったとしても、予想が外れると動揺して何がベストな作戦なのかがわからなくなったりすることもあって。

──相手の作戦や動きに合わせて立ち回ることが重要なんですね。

くまちょむ:
 相手の動向をずっとうかがってしまうと、相手のペースに巻き込まれることにもなりかねません。よくも悪くもあるので、そこの見極めも大切だと考えています。

▲くまちょむ選手とあめみや選手に特別に対戦をしていただきました。その模様がこちら。

ネクストに表示されるテトリミノは形ではなく色で判断

──駆け引きが重要だということがよくわかりました。あめみや選手のプレイは、スピーディーでテンポよく操作している印象がありました。操作のノリというかテンポみたいなものは重要視されているのでしょうか。

あめみや:
 リズムはそれほど気にしてはいないのですが、配信でプレイしているときは視聴者の方が楽しめるようなプレイを心掛けています。それが、テンポのよさに影響しているのではないでしょうか。ただ、自分のリズムやペースをつかむというのは、悪いことではないと思います。

──リズムのよさが勝ちにつながることも?

あめみや:
 直結はしないと思いますが、テンポがつかめると置きミスをしづらくなる気はしています。

──対戦中は画面のどのあたりを見ているのでしょうか。

あめみや:
 『テトリス』では、自分の画面の中央を見つつ、ネクストは色で判断しています。

──色とは?

あめみや:
 テトリミノは形ごとに色が決まっていますよね。つぎに何かくるかを確認する際、視点を動かして見る時間を短縮するため、ネクストのテトリミノは形ではなくて色で判断するようにしています。

──まさかネクストを色で判断しているとは……。

あめみや:
 ネクストと同じように、対戦相手の画面も見ている暇はないのですが、人間ってミスをしたときってけっこう操作が止まるものなんです。相手の画面が動いていないのを感じたら、「あ、ミスしたのかな」と思って少し目を動かすことはあります。

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くまちょむ:
 たしかに、『ぷよぷよ』もそうですね。相手の画面を直視はしていないんですけど、「なんかゆっくりぷよを落としてるな」って思うときは、だいたい置きミスをしているときですね。

──上級者の対戦は、それだけ高度な駆け引きをしていたんですね。おふたりは、どのようなシチュエーションで、「腕前が上がったな」と感じるものなのでしょうか。

くまちょむ:
 研究を重ねて新しいぷよの置きかたを編み出し、それが実戦で通用したときが達成感や腕前の上達を感じる瞬間ですね。対戦相手に勝ったというのは、いまはもうなんとも思っていないです。

あめみや:
 自分もまったく同じですね。もちろん勝敗も重要ですが、実力の向上を感じ取れたときに、達成感を感じます。

▲くまちょむ選手とあめみや選手による対戦動画その2。

──勝敗結果ではなく、自身の腕前が上達したことに達成感を感じるんですね。

くまちょむ:
 変な勝ちかたをしたときに、「こんな展開でも勝てるのか」と思ってしまうと、まともに練習しなくなったりとか、大技を狙いにいっちゃったりとか、自分を見失うことが往々にしてあります。だから勝敗よりも内容を重視したほうが実力の向上につながると思います。

──それだけストイックだからこそ、プロとして活躍できるわけですね。おふたりは『ぷよぷよ』、『テトリス』の違いをどのように捉えていらっしゃいますか?

あめみや:
 細かい駆け引きについては『ぷよぷよ』のほうが比重が大きいと思います。『テトリス』は置きミスをしないことが何より大切なので、自分の画面に集中してミスなく操作するように心掛けたほうが勝率は上がると思います。ミスをした瞬間に負けが確定することもかなり多いので。

くまちょむ:
 『ぷよぷよ』では、相手の攻撃に対して相殺するべきなのか、あえておじゃまぷよを受けるべきなのかという判断が、非常に大事なんですね。人間ってどうしても、やられたらやり返したくなると思うんですよ。それを我慢してあえて受けて、受けたあとにカウンターをしたほうがいいというシチュエーションもあります。胆力が問われるところですね。

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あめみや:
 あと、『テトリス』ならではの要素としては、中空けRENがDT REN(DT=Tスピンダブル→Tスピントリプル)に強く、DT RENが端空けRENに強く、端空けRENが中空けRENに強いという相性があります。作戦に相性があるというのは、『ぷよぷよ』にはない駆け引きなんじゃないでしょうか。

──それは画面を見れば判断できるものなのでしょうか。

あめみや:
 いずれも特徴的な積みかたなので、画面を見ればすぐにわかると思いますよ。

──相性が悪い積みかたを選んでしまった場合は、途中から作戦を変えることは可能ですか?

あめみや:
 途中から変えることもできなくはないですが、変えているとロスになるので、基本は最初に選んだ積みかたのまま進めたほうがいいですね。

くまちょむ:
 『ぷよぷよ』だと、途中で作戦を変える展開になることはあります。序盤で同時消しを組んでくるプレイヤーと戦う場合、自分は中連鎖と小連鎖を分けて組んでいくというのがセオリーではあるんですけど、相手が大きい同時消しをした場合、中連鎖だと相殺するのに攻撃力が足りないことが多いんです。だから、露骨に同時消しを狙ってくるプレイヤーに対しては、小さい連鎖を捨てて大きな連鎖のみにシフトすることはあります。

▲くまちょむ選手とあめみや選手による対戦動画その3。

──対戦相手によって作戦を変えることも重要なんですね。答えにくい質問かもしれませんが、苦手な対戦相手はどういったタイプでしょうか。

くまちょむ:
 ちゃんとコミュニケーションが取れる相手は、対戦していて楽しいです。こういった対戦ゲームでは少なからずある部分だと思います。理論的な戦略を持っているプレイヤーには自分と同じ雰囲気を感じることも多くて、勝っても負けても納得感が生まれるというか、楽しいというか。全員が全員ではないのですが、その逆のタイプの人が相手はちょっと苦手ですね。

あめみや:
 自分は速攻を仕掛けてくる相手ですね。『テトリス』は短期戦になりやすいことと、さっき話した積み方の相性があるので、最初から作戦を決めて速攻してくるプレイヤーを相手にすると展開が荒れることが多く……。あまり相手にしたくないですね。

くまちょむ:
 そうは言いつつも、苦手意識を持っちゃうと相手の思うつぼなので、基本的には相手を気にしないようにしています。

あめみや:
 たしかに、気にしないことはけっこう重要ですね。

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──では最後に、『ぷよぷよテトリス2』からプレイを初める、将来おふたりのライバルになるかもしれないプレイヤーへアドバイスをお願いします。

あめみや:
 いまはインターネットで上達するための情報がたくさんあります。どれも習得して損はないものばかりですし基礎は非常に大事なので、まずはひとつずつ覚えていっていただければと。

くまちょむ:
 自分で考えてそれを伸ばしていく力は重要ですが、ゲームでもその力を培っていくことができると思っています。それはほかのシーンでも役立つ力だと思うので、「考えて伸ばす」ということを意識してプレイしてみてください。(了)


 落ちものパズルゲームはシンプルだからこそ、腕前の差は生まれやすい。プロゲーマーがどのような思考でプレイしているのか。今回のインタビューではその一端をお伝えできたのではないかと思う。

 くまちょむ選手とあめみや選手の話を聞いている最中、「まるで将棋棋士のようだ」と感じたのだが、それは過去のテクニックや定石を研究し続け、決して現状に満足せず、つねに進化を目指す姿勢が見えたからにほかならない。

 「勝敗よりも内容が納得できたかどうかが実力の向上につながる」というふたりの共通項。プロである以上、勝敗はすべからず重要なものだが、そうではなく求道者のように自身の腕前を伸ばし続けていくことがプロゲーマーに求められる矜恃なのだろう。

覚えておきたい『テトリス』用語集

テトリミノ:画面上部から落ちてくる、7つの形状からなるブロックのこと。ミノと略する場合もある。

ネクスト:つぎに落ちてくるテトリミノのことを呼ぶ。『ぷよぷよテトリス』シリーズでは、5つ先のテトリミノまで表示される。

シングル:1ライン分のテトリミノを消すこと。

ダブル:2ライン分のテトリミノを消すこと。

トリプル:3ライン分のテトリミノを消すこと。

テトリス:4ライン分のテトリミノを消すこと。

回転入れ:テトリミノの左右移動だけでは入れられない場所に、回転操作を利用して入れるテクニック。左回転と右回転によって入れられるパターンは異なる。

おじゃまブロック:対戦時にテトリミノを消すことで、相手陣地に送れる灰色のブロックのこと。下からせり上がるように出現し、1ラインにつき1マスだけ空きスペースが必ず存在する。

ハードドロップ:テトリミノを即座に最下段に落下させる操作。方向キーの上を入力することで行う。

ソフトドロップ:テトリミノを通常よりも早い速度で落下させる操作。方向キーの下を入れているあいだだけ、落下速度が早くなる。

Tスピン:Tテトリミノ(T字のテトリミノ)を用いて、テトリミノの形にすっぽり空いてしまっている所に回転ですべりこませてラインを消すこと。ラインの消しかたや消したライン数によって、Tスピンミニ、Tスピンシングル、Tスピンダブル、Tスピントリプルと判定が変化する。難度が高いが、消した段数以上のおじゃまブロックを相手陣地に送り込めるため、上級者どうしの対戦では必須のテクニック。Tスピンをしたがラインを消さなかった場合は、Tスピンゼロと呼ぶこともある。

BACK to BACK:テトリスやTスピンを連続して行うこと。

REN:連続でライン消去を行うこと。コンボと呼ぶこともある。

中空けREN:自陣の中央4マスを空けてテトリミノを積み上げるテクニック。積み上げた分だけRENを狙うことができ、相手のおじゃまブロックによってテトリミノが最上段まで積み上がっても、即座に負けにならないのが利点。

端空けREN:左右どちらか一方を空けてテトリミノを積み上げるRENのテクニック。テトリミノをひと塊にできるので、中空けRENよりもやりやすい。

DT REN:端空けの発展型。端空けのように左右どちらかを空けるように積み上げたうえで、TスピンダブルとTスピントリプルを狙えるようにテトリミノを配置する。TスピンからRENを続けられるため、攻撃力が高い。

覚えておきたい『ぷよぷよ』用語集

ぷよ:落ちてくるブロックのこと。同じ色のぷよを4つ以上縦か横に並べると消すことができる。

おじゃまぷよ:ぷよを消すことで相手のフィールドに送り込めるぷよ。おじゃまぷよは4つ並べても消えることはないが、隣接するぷよを消せば同時に消すことができる。

連鎖:1回の攻撃で連鎖的にぷよを消すテクニック。連鎖が続けば続くほど、相手に送り込めるおじゃまぷよの量が増える。

相殺:相手の攻撃に対してこちらも攻撃を行い、自陣におじゃまぷよが降ってくる前(予告おじゃまぷよが降る前)に消すシステムのこと。相手よりも自分の攻撃力が高ければ、相殺を行ったうえで相手陣地におじゃまぷよを送り込める。

階段積み:『ぷよぷよ』が誕生した初期に考案された基本的なぷよの積みかた。同じ色のぷよを縦に3段分積み(Aとする)、その隣にAとは異なる色のぷよを同じく3段分積む(Bとする)。Aと同じ色のぷよは、Bの4段目に積む。Bを消せばそのうえにある4段目のぷよが下に落下してAが消え、連鎖が成立する。見た目が階段状に見える積み方。

GTR:“岐阜田中連鎖”もしくは“グレート田中連鎖”の略称で、階段積みとは異なるぷよの積みかたをするテクニック。階段積みの場合は、連鎖を組んだ端の折り返し部分に「折り返し」を組むために隙が多くなるが、GTRの場合は隙間なく連鎖を組める利点がある。このGTRの発展系の組みかたも多数存在する。

カウンター:相手の攻撃によっておじゃまぷよが降ってきたあとに連鎖で攻撃すること。相手が連鎖を行っているあいだにもぷよを積み上げられるので、相手以上の連鎖が狙える。

同時消し:2色以上のぷよを1回で消すテクニック。連鎖よりも素早く攻撃できるのが利点。

全消し:ぷよをすべて消し、自陣のフィールド内にぷよがひとつもない状態にすること。作品によって異なるが、つぎにぷよを消したときに「全消しボーナス」により攻撃力がアップして相手におじゃまぷよを大量に送ることができる効果がポピュラー。

本線:自分が大連鎖を狙うために積み上げているぷよのこと。

副砲:本線とは別に、相手が送り込んでくるおじゃまぷよを相殺するためや、相手を牽制するために組んでおく小さい連鎖のこと。本線だけを組んでいると相手のおじゃまぷよによって連鎖を邪魔されてしまうので、副砲を用意しておくことも重要となる。

発火:連鎖をスタートさせる始点となるぷよを消すこと。まずは副砲を発火して、それによって相手に大連鎖の途中で本線の発火を急かすことも、重要なテクニック。

高速落下:方向キーの下を押しっぱなしにすることで、通常よりも早いスピードでぷよを落下させることができる。上級者は、ほぼ高速落下でしかぷよを操作しない。

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