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人の業と闇から、“魔王”を救ったのはゲームだった──。声優・青木志貴が考える、「ゲーム」と「人生」、そして「生き方」とは。

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 その“魔王”は、声優、俳優、ゲーム配信者、YouTuber、コスプレイヤー、ファッションデザイナー、ブランドプロデューサー……と、いくつもの顔を持つ。“魔王”の他にも、“eerie”(イーリィ)、“ヨハン”と、その呼び名も多く持っている。かの“魔王”に魅せられた者は彼をこう呼ぶだろう──“しきくん”と。

 まるで黙示録の予言者のような言い回しをしてしまったが、ここまででも、忠実な魔王軍配下の読者であれば、首を縦に振って、大いにご納得いただけるかと思う。本記事はタイトルにもある通り、声優・青木志貴氏へのインタビュー記事だ。

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 先に触れたとおり、声優として活動する中で、様々な新しい事柄へ挑戦している姿はファンならおなじみであると思うし、そこまで知らなくても、ゲームやアニメといった界隈に身を置いていれば、「『アイドルマスター シンデレラガールズ』二宮飛鳥役の声優さん」や「なんか異彩を放っている声優さん」という認識を持っている方も多いと思う。

 だが、そんな青木氏のイメージは掴めないという方も同時に多いのではないだろうか。「性自認を男性と公表している」、「ファンから“くん”づけで呼ばれている」、「何を食べて生きているのか分からない」など、そうしたイメージが先行しているのも事実である。

 だが、インタビューを終えた今、結論から述べるとすれば、青木氏はストイックな役者であり、この上なく1人の人間であり、リアリストであり、そして、エグいほどのゲーマーだった。そんな“魔王”の口から語られた、ゲームへの思いと願いを、改めて、ここに記そう。

文・取材/夏上シキ
編集・取材/実存
撮影/佐々木秀二

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“魔王”青木志貴とは何者なのか?

──本日はよろしくお願いいたします。

青木志貴さん(以下、青木さん):
 よろしくお願いします!

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──すでに青木さんのファンの方はもちろん、知らない方にもこの記事を楽しんでいただきたいので、まずは自己紹介をお願いしてもよろしいでしょうか。

青木さん:
 HELLO WORLD. 青木志貴です。
 そうですね……。今、メインは声優として活動しているんですけども、それ以外にも、元々ゲームが大好きだったので、ゲーム配信であったりとか、YouTubeだったり、アパレルプロデュースだったり、とにかくいろいろやっています。自分に興味のあることは何でも、という感じですね。

──多方面での活躍を日頃から拝見しておりますが、その原点となったキッカケはありますか。

青木さん:
 僕が小さい時から、とにかくゲームがずっと好きだったことがきっかけになるかもしれません。
 もちろん声優になりたいという夢もあったんですけど、当時……20歳前後の頃だと思うんですが、養成所に通って、オーディションを受けて……というのが声優事務所に入る“普通”のルートだったんですよ。

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 でも自分は養成所に通っていなかったし、そういう人間がいきなりオーディションを受けても「まぁ受からないだろう」と思ったのもあって、「どうすれば受かるだろう」「ファンを増やせるだろう」「少しでも夢に近づけるだろう」と考えた時に、やってみたのがゲーム実況でした。
 当時流行っていた『ニコニコ動画』で、ゲーム実況はとくに人気があって。「自分もゲームが好きだし、こういうところでファンを少しでも獲得できれば、声優としてのキャリアにも少し希望が見出せるんじゃないかな」と思って、“魔王”の名前でゲーム実況を始めたのが、今の活動の原点になっていると思います。

──それ以前は、どのような活動をされていたんですか?

青木さん:
 読者モデルのような仕事をやっていたりしました。ただ、その辺りは完全にアルバイトという感覚ですね。それだけで食べていけるわけではなかったので。

──アミューズメントカジノのディーラーもされていたとお聞きしているのですが。

青木さん:
 初めて長く続けられたアルバイトがディーラーだったんです(笑)。元からゲームが大好きというのもあって、「ゲーム的な要素が入っているアルバイトだったら続くんじゃないかな」と思ったんですよね。

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 当時は髪色が派手だったり、ピアスもゴリゴリに開けていたりで、日雇いのバイトしか出来なくて……。それこそ、一日中ずっと携帯電話を箱に詰める作業とか、そういう仕事ばかりだったんですが、「単純作業を繰り返すのは向いてないな……」と切に感じたんですよ(笑)。
 自分の楽しめる要素というか、ゲームっぽい要素がないと、恐らく自分は仕事が続かないな……!と思い、カジノディーラーを選びました。

──この記事で初めて青木さんを知る方、もしくはあまり知らない方に向けて、改めて、ご自身の性自認について、お聞かせいただけますでしょうか。

青木さん:
 性自認は男性で、パンセクシャル【※】です。小さい頃から男の子が遊んでいるようなものが好きだったりとか、男友達が単純に多かったりというのもあって……。小学生くらいまでって、あまりそういう意識がないじゃないですか。ただ、中学生からは、社会的にも、心情的にも明確に分かれますよね。制服もそうですが、同じ部活動でも性別で分かれたり。そういう性別的な部分で分類がハッキリするようになった頃から、自分の性別に違和感を感じるようになって。

 当時は性同一性障害といったものに関する知識もまったくなくて、今ほど、LGBTQ【※】がメジャーな時期でもなかったので……。「自分ってなんだろう。よく分からないな」という感じで過ごしつつも、高校進学前くらいには「自分の性自認って男なんだな」とはっきり理解しました。なのでそこから先、「どうやったら自分は生きやすく生きていけるんだろう」と考え始めましたね。

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 今も性自認という部分では変わっていないんですけど、こういうお芝居をさせていただける仕事に就いたので、役の中で、男になったり、女になったり、人間じゃない生物になったり(笑)、そういうこともあって、今となっては学生の頃ほど、男とか女にこだわりはなくなっていますね。

※「パンセクシャル」
日本語では全性愛としても表記される。恋愛対象に性別を含まない。簡潔に表すなら「相手の性別に関わらず、自分が好きになった人が好き」という考え方。

※「LGBTQ」
Lesbian(女性同性愛者)、Gay(男性同性愛者)、Bisexual(両性愛者)、Transgender(出生時に割り当てられた性別とは性自認が異なる人)、Questioning、またはQueer(自身のセクシュアリティが分からない、決められない、決めない人)などの、性的マイノリティの頭文字を繋げた言葉。

──今ではユニセックスデザインのアパレルブランド『Green Eyed Monster』をプロデュースされていますが、幼少期の頃からファッションに対しても興味があられたとか。

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『Green Eyed Monster』

青木さん:
 そうですね……。当時は好きだったというよりか、「人と被りたくない」という理由の方が大きかったかも(笑)。ワガママというかアマノジャクというか、そういう性格がすごく強かったので、同じような格好をしたくないという意識が強かったんですよ。 被るのもイヤだし、なんなら当時は真似されるのもイヤだったし、なるべく他の人が着ていないような服を着たかった。目立ちたいわけじゃなくて、自分が他人と被らないように生きていきたくて。昔はそういう意識が強かったですね。

──著書にも書かれていましたが、革パン事件【※】はまさにそんな中で起きたと。

青木さん:
 小学校に革パン履いていってめっちゃ怒られたやつですよね(笑)。今の「好き」という感情とは違いますが、ファッションに対しての興味、関心は、そういう意味では昔からありましたね。

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※「革パン事件」
青木さんが小学校低学年の頃、母親に買ってもらった革パンを履いて小学校に登校し、一悶着あったこと。詳細は著書の「わがままに生きろ。」(KADOKAWA)に記されている。

──著書の中にも「なぜかオタクはファッションに頓着しない人が多いと思われている。その風潮がもったいないなと思う」と書かれていたのですが……。

青木さん:
 「お金を掛けよう」って思う部分が他にないし、そう思えるファッションもないのかな。でも逆に、僕もオタクなので分かることなんですが、オタクって自分の好きなものに対する「お金の掛け方」が尋常じゃないし、半端じゃないですよね。

──分かります。とんでもない金額を一瞬で注ぎ込みますよね。

青木さん:
 何かがきっかけでファッションに興味を抱くことがあれば、ファッション好きを通り越して、ファッションガチ勢になる人って多いと思うんですよ。ファッションが趣味の1つって素敵だと思いません?

──いいですね。アニメもマンガもゲームも好きで、ファッションも好き。

青木さん:
 あとは単純に、僕もオタクなので「オタクはファッションがダサい」って言われるのがちょっと腹立つんですよね(笑)。「オタクにもオシャレな人はいるんだぞ!」っていうのがあって。
 それと同時に、ビジネスチャンスでもあると思うんです。このマーケットって、まだ開拓されてないんです。今は何にでも入門編みたいなものがあるのに、「ファッションに興味を持ったオタクの方が入りやすいお店」とかってないじゃないですか。

──確かに。「オタクが入りやすいファッションブランド」って……ない。ないですね。表参道に「オタクでも入れるファッションブランド」の店舗があってもいいと。

青木さん:
 そうですね。現状だと、そもそもの取っ掛かりすらないけれど、オタクの僕が着てる服だったら興味を持ってくれるかもしれないし、入口になったらいいなとも思っています。ファッションって平等だと思うので。

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『Green Eyed Monster』

 ──今でもファンからの愛称になっている、“魔王”のハンドルネームで始められたゲーム配信で人気を博し、『週刊ファミ通』のゲーマーズエンジェルのオーディションに応募、合格されて、2013年2月に芸名を“蒼崎らむ”から、現在の“青木志貴”名義に改名されたと思うのですが、どのような理由で現在のお名前にされたのでしょう。

青木さん:
 どちらも名字に“青”が入っているのは、単純に僕の本名が「青木」だからというのがあるんですけど、“蒼崎らむ”名義の“らむ”はコスプレ界隈とかで使っていたことがあった名前で、そのまま行こうかなと思っていたんですよ。なんですけど、その名前を周辺の人とか身内に見せたら「ちょっとアダルティックじゃない?」って言われて(笑)。

 自分自身でも「あー……確かに……なぁ」みたいになって、その時『週刊ファミ通』の良くしてくださってた方と相談したら「本名っぽい名前でいいんじゃない?」とまとまったんです。
 “青木”は本名そのままで、“志貴”は僕の大好きな『空の境界』【※】という作品の主人公が“両儀式”っていう名前なんですけど、そこから漢字を変えて取っちゃいました。なるべく中性的な名前がいいなと思ったので。

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※「空の境界 the Garden of sinners」(からのきょうかい)
奈須きのこ【※】による日本の長編小説。モノの死を見ることができる能力「直死の魔眼」を持つ主人公“両儀式”(りょうぎ しき)の活躍を描く人気作品で、後にドラマCD化、劇場アニメ化、漫画化が行われている。
(画像は劇場版 空の境界より)

※「奈須きのこ」
日本のシナリオライター、小説家。後に『ノーツ』として法人化される同人サークル『TYPE-MOON』共同創設者の一人であり、2000年に発表された同人ビジュアルノベルゲーム『月姫』で人気を博す。その他の代表作に『空の境界』(原作)、『Fate/stay night』(シナリオ)、『Fate/Grand Order』(シナリオ、シナリオ監修、監督)がある。

──勝手な思い込みかも知れないんですが、色としての“青”がお好きなのかなと思っていました。

青木さん:
 そこまで“青”が好きってわけじゃないんですけど……なんでですかね。名前とか、声を担当させていただいたキャラクターとか、そういうところから寒色系のイメージを持たれることが多いんですかね……?(笑)。

──なるほど(笑)。キャラクターというと、青木さんの声優としてのキャリアは『神様と運命覚醒のクロステーゼ』十六夜フェレス役がスタートだったと思うのですが、思い返してのエピソードなどはありますか。

青木さん:
 当時「こういうお仕事ができるかもしれません」とお話をいただいた時に、まさかコンシューマーのゲームに出演できるとは思っていなくて。モバイルゲームのオーディションなどはいくつか受けていたんですが、大きな会社がドーンと出すコンシューマーゲームのオーディションを受けさせていただくのは初めてだったんです。

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 「本当に役が取れるのか」というドキドキもありましたし、「どの役で受かるんだろう」「自分はこの役がやりたいな」というのもあったので、とにかくドキドキしていましたね。

──その後、代表作でもあられる『アイドルマスター シンデレラガールズ』の二宮飛鳥役のオーディションを受けて、合格されたと伺っています。著書の中でも「飛鳥さんと僕は同一の存在ではない」と仰られていたんですが、ライブ(THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS 10th ANNIVERSARY M@GICAL WONDERLAND!!!)を終えられた今、改めて、どういった思いを役とキャラクターに抱かれているのかをお聞きしたいです。

青木さん:
 オーディションをいただいた時、とにかく第一印象で「性格とか容姿とか、僕の好みだな」って思うキャラクターだったんですけど、彼女の一人称が“僕”であったり、ちょっと中性的な部分とかで「似ている部分があるのかな」と思って収録に望みました。

 ただ、やっぱり何回も収録を重ねて彼女と向き合っていく中で、全然違うというか、なんなら真逆の存在なんだなと認識するようになりましたね。彼女はアイドルとして活動しているので、僕にそういう面はまったくないんですが、彼女には女の子らしい一面があったり、性格的にも凄く真面目だったりする。自分はもう全然真面目じゃなくて、その時のノリとかテンションで生きたいように生きているタイプの人間なので(笑)。

 ファンの方からは「似てる」って仰っていただくことも多いんですが、自分からすると「似てるだなんておこがましい」と感じちゃいますね(笑)。僕が彼女の後をずっと追いかけて、なるべく彼女の足を引っ張らないようにとか、ずっと僕の先を歩き続けている……そんな存在です。

──私も普段は一ファンとしての目線で見ているので、「外見が似てる」とか「性格が似てる」のような声は日頃から目にしていますね。

青木さん:
 「似てる」と仰っていただけること自体は非常にありがたいし、光栄だなと思います。ですが、親しい声優さんからは「全然違うじゃん」って言われますし、「やっぱそうだよねー」みたいな(笑)。
 それでも、見たり聞いたりしてくださっている方から「似てるな〜」って思っていただけるのは、声を担当させていただいている身として、本当に嬉しく思っています。

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──ありがとうございます。ここからは青木さんご自身についてお伺いできればと。学生時代のいじめであったり、性自認への苦悩、拒食など、直面してきた困難の数々を打ち明けることは大きな決断であったと思うのですが、そこにはどのような思いがあったのでしょうか。

青木さん:
 「自分のことを知ってほしい」というよりかは、昔から「嘘をついている」みたいな感じで生きていくのが嫌だったんです。
 事務所に入った時も、当時、僕を担当してくれていた方々に「性自認を公表したいです」と言ったこともあったんですが、業界的にも、なかなか公にされる方はいないじゃないですか。当時のご時世的にも、プラスになる面が見えないというのもあって、「公表は控えてほしいな」と。ただ、隠しているという状況の中で、僕を女性として見て「綺麗」とか「かわいい」とか言ってくださるファンの方が増えていく。罪悪感……じゃないんですけど、申し訳ないなと。

 そうした状況への申し訳なさがどんどん大きくなっていって、30歳を迎えた節目というのもありましたし、世間も大きく変化したので、「今なら公表してもいいんじゃないかな」と事務所に相談したら、担当のマネージャーさんも変わっていたので「まぁ、いっかな~」って感じで(笑)。
 その際も、文章とかではなくて、なるべく自分の口から伝える方が分かってもらいやすいかなって考えて、YouTubeでカミングアウトすることに至りました。

──そのマネージャーさんが……著書の中にも書かれていたKさんですね(笑)。青木さんに二宮飛鳥役のオーディションの話を持ってきていただいたという。

青木さん:
 そうです(笑)。Kさん……Kさんですね(笑)。

 

──先にも触れましたが、非常に意欲的で、とにかくオープンに活動されている印象があります。このようなスタイルとなったのは何が影響しているのでしょうか。

青木さん:
 最初はどちらかというと隠す方だったんですよ。プライベートから何から、全部隠しているタイプだったんですけど、隠してやっていると自分の意図しない誤解を招くことが多くて……。

 それこそ、ゲーム配信を始めた頃かな。僕はずっと格ゲーに苦手意識があったんですが、チャレンジしてみようと。それで格ゲーを始めてみたら、一気に視聴者の方が増えたんですけど、同時に「格ゲーを売名行為に使うな」との声が届くようになったんです。
 僕の中では全然そういうつもりはなくて、単純に格ゲーにチャレンジしたい!と思ったことがキッカケだったんですけど、元々格ゲーが好きな方や、熱意をもって取り組まれていた方からすると「そういう風に見えちゃうのかな」と感じるところもあった。

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 自分の意図していない誤解を招いてしまうのは嫌じゃないですか。なので、できるだけ自分の思いはストレートに、オープンにして誤解のないように伝えていったほうが良いのかなと思って、今のスタイルに至っています。

──ご自身の中で、かなりその出来事が大きかったと。

青木さん:
 そうですね……。当時、やっぱりショックが凄く大きくて。自分のメンタルは割と強い方だなと思っていたんですけど、「アイツは自分を売るためだけにゲームを使ってる」って言われた時は本当に辛かったです。
 自分のゲームが好きな気持ちには自信があったので、それだけに悔しくて。顔出しもしていたんですが、初めて配信上で泣いちゃったくらいにはショックでした。その経験は大きいですね。

──ありがとうございます。話が変わりますが、青木さんといえばファッションであったり、素敵なメイクの印象が強いのですが、これらはご自身でやられているのでしょうか。

青木さん:
 メイクさんがいらっしゃらない場合はすべて自分でやるんですが、メイクさんがおられる場合でも、基本的にはメイクはすべて自分でやって、ヘアセットだけお任せすることが多いですね。

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 芸名を変えた時に近い話になるんですが、事務所に入って宣材写真を撮ろうとなった時に、すべてをメイクさんにお任せして撮った写真がめっちゃ不評だったんですよ。こう……ケバいじゃないんですけど、夜の香りがする感じに完成してしまい……(笑)。

──それは……(笑)。

青木さん:
 周囲からも不評の嵐で、自分でも「これ……自分の顔じゃないな」と思うところがあったので、それ以降、自分でメイクをするようになりました。

 良くも悪くも「自分の顔の良いところ、悪いところ」って、自分自身が一番よく分かってるじゃないですか。「もう自分でメイクするのが一番いいんだな」って、ライブなどの大きい仕事でも、ヘアセットだけお任せして、基本的にすべて自分でやっています。

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確立された「青木志貴」

──こうして確立され、今も進化を続けられている青木さんと、“青木志貴”というブランドですが、今までで一区切りのような時期や瞬間を感じたことは……。

青木さん:
 一区切り……。一区切りか。ない……かもしれないですね。その度に自分がやりたいことをやってきているんですけど、僕はやりたいことをやったあと、もう次のやりたいことが出てきちゃうタイプで。
 たとえば「声優になってお仕事をもらう」とか「アニメのレギュラーを取る」とか、1個の目標を達成したとしても、すぐ新しい目標ができていることが多いので、一区切りとか、落ち着いた瞬間というのを感じたことはないですね。

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──「目標を達成したとしても、新たな目標がすぐにできる」。なんとも羨ましい話なのですが、これから挑戦していきたいことや、これからもやり続けていきたいことはありますか。

青木さん:
 もちろん声優という職業は、お仕事をいただける限り続けていきたいと思っています。ただ、どっちかというと「自分は表に立つのが性格的に向いていない人間なんだろうな」と感じている部分もあるので、スタッフさん側のお仕事にも興味がありますね。

 本にも書いたんですが、芸能事務所関係だったり、日本でも徐々に認知が進んできているeスポーツチームのオーナーや、保護猫の活動、Mixバーなど、いろいろとやりたいと思っています。

──とても猫がお好きだとお伺いしています。

青木さん:
 そうなんです。もう老後でもいいので(笑)、そうした活動は行いたいですし、今後の目標ですね。舞台関係もやりたいです。演出、脚本、そういったものにも興味がありますし、ゲームのシナリオもやりたい。とにかくやりたいことはたくさんあります。

──少し意地の悪い質問になってしまうんですが、「ストリーマーの事務所」ではなく「eスポーツチーム」を現実にセレクトする理由はなんでしょうか。正直、今の日本のシーンとしては「eスポーツ」ではなく、「ストリーマー」の方が大きいとも思うのですが。

青木さん:
 どうしても日本ってeスポーツ後進国というか、実績はともかくとして「強くない」と言われている部分があるじゃないですか。僕も実際に大会とかを見ていると、世界との見えない壁を感じることも多くあります。

 そういう部分で日本全体が強くなっていってほしいという、一ゲーマー、一ファンとしての自身の願望もありますね。たとえオーナーという形じゃなくても、スポンサー的な形で出資とか、そういう風になればいい。なるべく、日本のプロゲームシーンの発展に貢献したいと考えています。

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インタビュー後に行われた、タクティカルFPS『VALORANT』の国際大会「VCT Masters Reykjavík 2022」では、日本代表チーム『ZETA DIVISION』が、大会ベスト3、そしてアジア1位の快挙を挙げた。日本のeスポーツ史に新たな歴史が刻まれた瞬間だ。
(画像はValorant_LowerFinals_2022_170 | REYKJAVIK, ICELAND – APRIL 2… | Flickrより)

ゲーマー「青木志貴」

──多彩な活動をされている中で、TwitchやYouTubeなどで「等身大のゲーマー」として活動されているのを拝見しています。ゲームという存在は、今のご自身にとってどのような存在ですか。

青木さん:
 自分の人生の中で……柱とは言わないんですけど、道しるべ的な存在かな。小さい時から「ゲームが人とのコミュニケーション手段」だったので。
 良くも悪くも小学生くらいまで、男も女も関係なく「ウチで集まってゲームしようぜ」みたいなのが日常で、性別が関係なかったからこそ、性自認がそこまで気になることもなかったんですけど、中学に入って同じ感覚だと浮いちゃったんです。

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 当時、僕は女子テニス部に入っていたんですが、部のメンバーと「ちょっとウチでゲームしようよ」って10人くらいで遊ぶと、ノリが今までと全然違うし、なんならゲームに興味ない子ばっかり。「ゲームかぁ。ならいいや」みたいな感じで帰っていく子とかもいた。「自分は他の子とちょっと違うかもしれない」って、最初にはっきり気づかせてくれたのもゲームですし、やっぱり道しるべかな……。

──常に共にある存在というか。

青木さん:
 そうですね……。「何か自分の人生でやりたいことを見つけよう、打開しよう」って思った時に始めたのもゲーム実況でしたからね。

──現在、プレイ中のタイトルを教えてください。

青木さん:
 最近は『League of Legends』ばっかりやってて。その前は『Apex Legends』とかもやっていたんですけど、基本的にオンライン上で対戦するゲームが多いです。それ以外だと『ファイナルファンタジーXIV』とか。これもオンラインゲームだ……。そうですね、オンラインゲームが好きです。

──完全にオンラインゲーム愛好家じゃないですか(笑)。

青木さん:
 中学生の頃にオンラインゲームに出会ってから、ひたすらオンラインゲームですね(笑)。

──伺っている話によると、お兄様もかなりのゲーマーだとか。

青木さん:
 そうですね。ゲームも「お兄ちゃんがやってたから一緒にやる」みたいな感じで初めて触れたので、小さい頃は2人でよくプレイしていましたね。

──今までプレイされたタイトルの中で、「とくにこれはやり込んだ!」というタイトルはありますか。

青木さん:
 『ファイナルファンタジーXIV』もメチャクチャやりましたし、後は『モンスターハンター フロンティア オンライン』ですね。Xbox 360版が出た時、友達と「やろうぜ」って話になって始めたんですけど、もうちょっとありえないくらい時間を溶かして……(笑)。

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──相当プレイされたと(笑)。

青木さん:
 メチャクチャやってました(笑)。あと、オンラインゲームにハマるキッカケだったのが『テイルズウィーバー』という韓国のオンラインゲームだったんです。中学2年の頃だったと思うんですけど。

 当時、親の部屋にしかパソコンがなくて、深夜の3時とか4時くらいまでずっと遊んでました。所謂「クリックゲー」だったので、マウスのクリック音が延々と部屋に鳴り響くっていう(笑)。

──怒られませんでしたか?(笑)。

青木さん:
 メチャクチャ怒られました(笑)。「ちょっと!うるさいんだけど!」って怒られながらも、構わず夜なべしてプレイするくらいハマっていたので、記憶に残っていますね。
 今はプレイはしてないんですが、たまにログインだけしてキャラクターをチェックしたり。「こんな装備持ってたな~」とか、思い出に浸っています。ここで出会ったり、仲良くなった友達も多いので、思い入れも深いです。

──「ゲームをプレイしていてよかった!」と思えるシーンはありましたか。お話をお聞きする限り、こういうシーンは多そうだなとは思うのですが。

青木さん:
 やっぱりいろいろあるんですが、一番は「オンラインゲームで生涯の友達ができたこと」ですね。オンラインゲームで知り合った人とは今でも仲良くしてる人が多いですし、大人になっても、一緒に遊べる友達が見つかったっていうのは「ゲームしていてよかった~」と思うところですね。
 あと、こうして結果的にですけど、仕事にもなっている。そういう意味でも「ゲームをプレイしていてよかった、好きでよかった」と思える部分のひとつですね。

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──先ほどのお話と少し被る部分があるのですが、逆に辛い経験をしたシーンはありますか。

青木さん:
 やっぱり「売名目的でゲームをやってる」とか、そういう風に言われるのは不本意でした。本当にゲームが好きなので。売名目的だったら、そんな寝ないで何十時間もプレイしないと思うんですよ。常軌を逸してるじゃないですか(笑)。

 あとは、かなり昔なんですが、プレイに自信があったゲームがあって。顔も声も名前も出さずに、ガチでやった縛りプレイ動画を上げていたんですが、「これは大したことない」とか「本当にやってない」、「チートを使ってる」って言われたのはムッと来ましたね(笑)。

──人気者の宿命というか、人が集まると一定数出てくる層というか……。

青木さん:
 当時、僕も性自認を公表していなかったので、傍から見れば「男みたいな女」だったと思うし、実際に体験したことでもあるんですが、「女性っていうだけで、正当に評価されない」というのもあると思います。「女だからちやほやされてる」とか「その程度なのに女だから人気があるんだ」みたいな。

 ゲーム業界への女性の進出も進んでいますが、今はまだ変化の途中じゃないですか。ネット文化的なものも残っていますし、女性のプロゲーマーの方だったり、ストリーマーをされている方は、今でも大変なんじゃないかなと思ったりはしますね。

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──ありがとうございます。総じて、青木さんご自身的には、ゲームによってどのような変化が加わったとお考えでしょうか。

青木さん:
 やっぱり「ゲームによって自分の夢が叶っている、やりたいことができている」という場面が非常に多いので、ゲームに支えられているというか、助けられているという気持ちが本当に強いです。そういう意味でも、道しるべのような存在ですね。

「青木志貴」から「読者」へ

──ゲームをプレイする理由としては「娯楽」が大きな要素となっていると思うのですが、それだけではない「ゲームをプレイする意義」について、考えをお聞かせください。

青木さん:
 最近はストリーマー界隈が非常に盛り上がってきていますが、それこそ、僕が10代にゲーム実況やっていた頃って、ゲーム実況自体がグレーゾーンだったし、場合によっては怒られるくらいのライン。今では、逆にメーカーさんがOKを出していたりとか、メーカーさんから案件として、お仕事として成立する場合もあるじゃないですか。

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 ゲームという文化が、より多くの仕事として成り立つ時代になっているのは「すごくいいな」って感じています。「自分が若い頃にも、こういう感じになってればよかったなー」とか、めちゃくちゃ思いますね。

──先ほど、「オンラインでできた交友関係が続いている」とお聞きしましたが、リアルに居場所がなかったり、活動的になれないという方でも、オンラインゲームの中では友人ができたり、アクティブになれる。人生の限られた時間をより楽しめる……。こうした面って絶対にあると思うのですが、青木さんはご自身で、そのような体験をされたことはありますか。

青木さん:
 ありますね。リアルで話しても「ゲーム好き」同士ならめちゃくちゃ喋れるんですけど、ゲームをしない同世代の女性とタイマンさせられると、マジで会話ができないんですよ(笑)。「何を喋ればいいんだろう」みたいな。
 お見合いさせられてる気分になるんですが、ゲームの中だと人が変わったように喋ります。なんなんですかね、オンラインゲームって……。

──居場所があるというか。

青木さん:
 オンラインは人を変えてくれるのかな。でも、オンライン上の友達とオフ会とかやったりする時は普通に喋れるんですよ。

──そのノリが、そのままリアルに来る感じがありますよね(笑)。

青木さん:
 そうなんです(笑)。

──“魔王”流のゲームの楽しみ方を教えていただけないでしょうか。

青木さん:
 昔は「縛りプレイ」だったりとか、総じて「やり込み勢」みたいなところがあったんですが、最近は「息抜き」的な存在です。自分が疲れたり、しんどいことがあっても、ゲームをプレイしている時間さえあれば忘れられる。心が休まる瞬間に変わってきていますね。ゲームに対する考え方とか、接し方が変化したなと感じています。

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 ゲーム配信も仕事のひとつとしてやっているんですが、仕事じゃないというか。「自分が単純に楽しめる時間に、仕事が付随してきている」感じなので、ありがたいですね。

──同じゲームタイトルをずっとプレイしていると飽きてきたりとか、飽きてはいないけど、ダレてくる……みたいな瞬間ってありますよね。そのような時ってどうされていますか。

青木さん:
 僕は『League of Legends』がそうなんですけど……『ファイナルファンタジーXIV』もかな。ずっと続けてはいるんですが、定期的にゲームから離れる期間があるんですよ。半年だったり、1年だったり。そうやってたまに離れることがあるんですけど、それでもそのうち帰ってきちゃうんですよね。「なんか分からないけど、帰ってくる場所がここ」的な感じなんですが(笑)、それくらいのラフな付き合い方でいいのかなと。

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 格ゲーにハマった時は、1日中もう何時間も狂ったようにコンボ練習をしていたんですが、あれはあれで楽しいんですけど、自分に謎のプレッシャーをすごい勢いで与え続けているんですよね。「これくらい上手くならないと」みたいな。
 「楽しいけど辛い」部分も多かったので、「やらなきゃ!」っていうよりかは、「気が向いた時にやる」くらいでいいと考えています。

──ローテーションのような。

青木さん:
 そうですね。しかも、いま流行っているゲームってオンラインゲームが多いじゃないですか。いつ戻っても人口はそれなりにいるし、一定期間やっていなかったからといって、凄く不利になるかといえば、意外とそうでもない。「いつ戻っても楽しめる」というのが、サービスが続いているオンラインゲームの魅力だと思うので。

──ゲームだけでなく、さまざまな困難を乗り越えられた経験から、いま悩んでいたり、苦しんでいる人へのアドバイスをお願いできませんか。

青木さん:
 僕の本を読んでくださった方から、「救われました」とか「自分もこういう風に考えていいんだと思いました」って感想をいただくことが多いんですけど、僕からすると「皆さんへの応援のメッセージ」を送るだなんておこがましいというか……。

 僕なんかの考え方を、目標じゃないけど、道しるべにはしないでほしいなと。性自認の考えも本当に多種多様だし、僕とまったく同じようなケースって人はなかなかいないと思うので、それぞれの方にあった、自分だけの生きやすい生き方を見つけるのが、大事なのかなと思ってます。

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 「〇〇がこうやっていたから、自分もこうしよう」じゃなくて、「〇〇はこういう考え方をしていたけど、自分の場合はどうなんだろう」とか、自分に置き換えて考える力、プラスに捉えていける力をつけていくのが大事なのかな。
 特に若くて悩んでいる方、「どうしたらいいのか分からない」って方が多いんですけど、マイナスに考えすぎないで、やりたいことを見つけていってから、「そのためにはどうすればいいんだろう」って考える力を養っていくのが、一番いいのかなと思ったりもしますね。

──いまおっしゃられたように、特に若い方で「自分のやりたいことが見つからない」という方が多いじゃないですか。青木さんの場合、それが「大好きなゲーム」だったと思うのですが、「自分がやりたいこと」を見つけるヒントのようなものってありますか。

青木さん:
 若い方はもちろん、大人になっても「夢が見つからないです」とか「やりたいことがないです」って方はいらっしゃいますよね。でも、「なかったらなかったで、今はそれでいい」と思うんです。

 夢とか目標がないにしても、生きていく中で絶対に「楽しいな」とか「面白いな」、「癒されるな」って思える場面があるじゃないですか。それは「ごはん」であったり、「睡眠」であったり、「ペット」であったり……何でもいいと思うんですけど、そういうところから、自分が何かしらの興味を持てる部分を見つけたり、探したり、明確にするのが重要だと思います。
 何もないまま、ただただ進んでしまったら悲しいけれど、だからこそ「楽しい」を増やしてあげる。

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──ありがとうございます。ここまでお話いただいたこと以外で、読者に伝えたいことなどはありますか。

青木さん:
 そうですね……。伝えたいこと、伝えたいことか……。偉そうになっちゃうし、僕が皆さんに言えるようなことは、ないっちゃないんですけど(笑)。

──では……更に質問をさせていただいてもいいですか?(笑)。

青木さん:
 はい!(笑)。

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「青木志貴」的、オーバータイム

──オンラインゲームで、どのように友達を作りましたか?

青木さん:
 本当に僕、リアルだと周囲から引かれるくらい声を掛けれないんですよ(笑)。なのに、オンラインゲーム上だと人格が変わったかのように絡みに行っちゃうんです。

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 それこそ『ファイナルファンタジーXIV』だと、街の中の、人がたむろしてる場所とかで、ちょっと変な服を着てる人を発見すると、同じ格好をして隣りに座ってみたりとか。「どうせ中身なんて誰も分からないだろ!どうにでもなれ!」って感じで、好き放題やってます(笑)。

──『ファイナルファンタジーXIV』はさまざまなコミュニケーションが密に取れるのも魅力ですよね。

青木さん:
 高難易度コンテンツとかも行くんですが、やってる時もガンガン自分から指摘したりしますね。何なら「この人怖い」って思われてるんじゃないかなって思うくらい(笑)。
 逆にPvPのゲームだと速攻ミュートにしちゃうんですけどね(笑)。

──使い分けをしっかりとされている(笑)。オンラインゲームがお好きだと、先ほどお伺いしましたが、とくに好きなジャンルはありますか。

青木さん:
 オンラインで人と遊べるゲームであれば何でもって感じですが、パズルゲームが苦手というか、あんまりやってこなくて。ゲームやってるのに頭を使うじゃないですか。もうそれがムリで(笑)。

 「なんで僕は頭を使っているんだ???」ってなっちゃうんで、頭を使うゲームはやらないですね。テンションとフィールで遊べるゲームをずっとやってます。

──とはいえ、『League of Legends』はまさに「頭を使うゲーム」の代表格では……?

青木さん:
 たしかに知識はめっちゃいるんですけど、それをすっ飛ばして「何とかなるやろ!」ってテンションでずっとやってます(笑)。

 友達にも「上手くなりたいならもっと勉強しないと」って言われるんですけど、「もうそこまでの熱意ないわ」みたいな(笑)。でも、遊んではキレるんですよ(笑)。

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──「熱意ないわ」と言う割にキレる……よく分かります(笑)。でも、いいスタンスですよね。上手く付き合えているというか。

青木さん:
 それくらいが今の自分にはちょうどいいのかなと思ってます(笑)。

──最近の新作ゲームでプレイされたタイトルとかってありますか。

青木さん:
 『Pokémon LEGENDS アルセウス』はやりましたね。『ELDEN RING』もやりたかったんですが、ライブなどが重なってしまって。「どのくらいでクリアできる?」って友達に聞いたら「50時間とか100時間くらい」って言われたので「今じゃないな」と(笑)。

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(画像はPokémon LEGENDS アルセウス ダウンロード版 | My Nintendo Store(マイニンテンドーストア)より)

──ゲーマー特有の「時間を確保できないから先送りにする」やつですね(笑)。

青木さん:
 まさにそれです(笑)。『Bloodborne』が大好きだったので、プレイしたいとは思っています。

──『Pokémon LEGENDS アルセウス』はどうでしたか?

青木さん:
 配信中にエンドクレジットを見るところまで一気に進めたんですけど、友達に「そこから先が大変だよ、やめておいた方がいいんちゃう?」って言われて、まだ、そこまではやれてないです(笑)。
 僕はヒスイゾロアが大好きで、友達がずっと「色違いオヤブンゾロアを捕まえてあげるよ」って頑張ってくれていたんですが、40時間続けた挙句に挫けてました。「色違いは出るけどオヤブンはムリだわ」って(笑)。

──夢が果たされることを祈ります(笑)。今までプレイされたタイトルの中で、オンラインゲームではないタイトルで思い出に残っているものはありますか?

青木さん:
 『メタルギアソリッド』シリーズが大好きなんです。無印(メタルギアソリッド)をプレイした時に、序盤のヘリのシーンでコントローラーが震えるんですけど、そこで謎に感動しちゃったんですよ(笑)。
 それがきっかけで作品に興味を持ったんです。実際にプレイするとストーリーと役者さんのお芝居が凄く良くて。声優に憧れたのも『メタルギアソリッド』からだったので。

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──青木さんの恩人でもあられる大塚明夫さんが、スネークの声を担当されていますよね。ナンバリングタイトルの中では、どの作品がお好きですか?

青木さん:
 ナンバリングタイトルの中だと『メタルギアソリッド3 スネークイーター』が一番好きで、一番泣きましたね。いちばんやりこんだのは『メタルギアソリッド2 サンズ・オブ・リバティ』なんですが、何周しても泣きまくりますし、やっぱり『メタルギアソリッド3 スネークイーター』が好きです。

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(画像はMETAL GEAR SOLID 3 SNAKE EATER PlayStation 2 the Best | ソフトウェアカタログ | プレイステーション® オフィシャルサイトより)

──青木さんのファンからだと、「いつもクール」「情緒がないように見える」みたいに思われていることも多いと思うのですが(笑)。

青木さん:
 めっちゃ涙もろいです(笑)。『ポケモン』でも泣いちゃうので、「いや、泣くところあった!?」みたいな。本当にすぐ泣きます。

──話は戻りますが、『メタルギアソリッド3 スネークイーター』は泣きますよね。

青木さん:
 そうなんですよ~。いやーもう、あれから僕、大塚さんだけじゃなくて、井上喜久子さんの大ファンにもなって。「いつか、ご縁があったら共演させていただきたいな」「アフレコブースでお二方にお会いしたいな」という夢があったんです。

 しかも、じつは最近その夢が叶って、喜久子さんと同じレギュラーで番組に出演させていただいているんです。今はコロナ禍ということもあって、一緒のアフレコブースではないんですが……。でもこうしてゲームから始まった夢がまたひとつ叶って、本当に嬉しいです。

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──めっちゃいい話じゃないですか……。

青木さん:
 本当は『メタルギア』のナンバリングが続いていって、「モブA」とか「カエル兵士」で出たいなと心に秘めていたんですよ。残念ながら、その夢は叶いそうにもないんですが(笑)。

──確かに残念です。「カエル兵士」(CV:青木志貴)は自分も見たかったなぁ……(笑)。
 本日は長時間のインタビュー、そして素晴らしいお話をありがとうございました。最後に一言、いただけますでしょうか。

青木さん:
 今回こうやってインタビューしていただいて、僕のことを知らなかったりとか、「名前は知ってるけど、どういう人か分からない」という方にも、「なんでこの人は“魔王”って呼ばれているんだろう」とか「ゲーム配信をやってるけど、ゲームに対してどのような思いがあるのか」とか少しでも知っていただいて、興味を持っていただけたらと思います。
 僕を見てゲームを始めてくださった方も凄く多いんですが、これに限らず、このインタビューが、何かの「基」であったり、きっかけになれたら嬉しいです!

──“魔王”のお話が聞けて嬉しかったです!
 さらなるご活躍を期待しています。本日はありがとうございました(了)。


 ここまでお読みいただいた方であれば、ベールに包まれているかのような印象を抱かれることが多い、青木氏のゲームへの向き合い方や、夢や目標を実現し続ける弛まぬ努力を、少しでもご理解いただけたと思う。その内には、彼方を冷静に見つめるリアリストがいた。ひたすら夢や理想を掲げるのではなく、そのためには何が必要なのか、どのようなルートを辿るのかと、ひたすらコンスタントに追い求める姿は正直、想像がつかないものだった。

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 そして、青木氏は根っからのゲーマーで、どこまでもオタクだった。本文内では「青木志貴的、オーバータイム」と記したが、「ゲーマー同士なら話せるんです」と述べられた通り、声のトーンも、音量も、ペースも急上昇し、一番の盛り上がりだったと記しておく。その模様を文章でしかお伝えできないのが残念だが、少しでも感じ取っていただければと思う。そして“魔王”流のゲームの楽しみ方を“偵察”したいのであれば、不定期ではあるが、Twitchで配信される同氏のチャンネルをぜひ覗いてみてほしい。

 本人の口からも語っていただいたが、願わくば、この記事がすでに夢や目標へ向かっている方だけでなく、悩んでいたり、迷ったりしている方の目に留まり、休息地となり、新たな何かに繋がるきっかけとなることを祈りつつ、筆をおくとしよう。

ライター
『アマガミ』に脳を破壊された結果、フリーランスライターに。FPSやTPSをメインに遊ぶトリガーハッピーだが、ノベルゲーやレトロゲーも好む雑食ゲーマー。美味しいご飯とお酒もゲームと同じくらい好き。
Twitter:@Shiki_Natsugami
デスク
電ファミニコゲーマーのデスク。主に企画記事を担当。 ローグライクやシミュレーションなど中毒性のあるゲーム、世界観の濃いゲームが好き。特に『風来のシレン2』と『Civlization IV』には1000時間超を費やしました。最も影響を受けたゲームは『夜明けの口笛吹き』。
Twitter:@ex1stent1a

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