街づくりゲームはとにかく忙しい。建築、金策、物資調達、人間関係の構築などに気を配りつつ、時間の概念に沿って日々のタスクや依頼されるクエストを分刻みでこなしていく必要がある。
もちろんそれが街づくりゲームの醍醐味であり、街が自分好みに発展していく過程は喜びもひとしお。
そういった「発展」の要素は大前提として取り入れながらも、「生存」に焦点をあてた作品が『サバイビング・ジ・アフターマス-滅亡惑星-』だ。
人類が滅亡し、文明さえも失った荒れ地で建築するのは「コロニー」。
本作は、文明から発展させていくというかなりストイックなサバイバルシュミレーションゲームとなっている。
酸性雨、隕石雨、パンデミック、熱波、冬嵐、フォールアウトなど大災害のリスクだけでなく、外敵、野獣、汚染などさまざまな脅威がコロニーを襲うという。
そんな『サバイビング・ジ・アフターマス-滅亡惑星-』が日本語にローカライズされ、7月28日にセガからNintendo Switch、PS4版にて発売となった。
文明が崩壊したあとの世界「ポストアポカリプス」を舞台にした理由はどのような背景があったのか、シリーズ前作『サバイビング・マーズ』との違いはどのように捉えているのか、発展に欠かせない「スペシャリスト」はどのような役割を果たすのか。
そのような疑問点を開発者のラッセ・リシュダール氏にメールインタビューをぶつけてみた(編集部注:メールインタビューはゲーム発売前に実施)。
文/柳本マリエ
都市開発ゲームに取り入れたいと思いついた「新しい要素」
──ラッセさんはこれまでさまざまなジャンルのゲームを手がけていますが、今回『サバイビング・ジ・アフターマス』を手がけようと思った経緯や決め手についてお聞かせください。現在のゲーム市場において、本作はどのような独自性を持っているのでしょうか?
ラッセ氏:
私自身が90年代初頭から都市建設ゲームで遊んでいたため、開発に関わりたいと常に思っていました。
氷上釣りシミュレーター『Ice Lakes』のあとに新しいプロジェクトを開始したとき、当時は「ポストアポカリプス」(世界の終末)に都市を建設するようなゲームはまだないと思っていました。だからといって、単なる都市建設ゲームの開発をするだけではなく、このジャンルに新しい要素を取り入れたいと考えたんです。
そこで、当時このジャンルのゲームにはなかった、コロニーを建設できる要素を取り入れようと思いつきました。そこで重要なことは、荒れ地で発展させるためにプレイヤーが危険に身をさらし、周りの世界を探索すること。コミュニティとして生き残るためにはただ一日一日を過ごしているだけでは足りません。
──「ポストアポカリプス」という題材を採用した理由はどのような背景があるのでしょうか?
ラッセ氏:
私たちの世代は、「ポストアポカリプス」を舞台にした作品を見たり読んだりして育ってきました。今度は自らの手で作ることでこの素晴らしい文化の流れを紡ぐ一員になれたことを嬉しく思います。
荒れ果てた土地でたったひとり、生き延びるか、死ぬか
──『サバイビング・ジ・アフターマス』とシリーズ前作『サバイビング・マーズ』についてお聞きします。本作は、荒涼とした大地で生き残るために奮闘する内容です。しかし、インフラ整備や資源管理など、共通のゲーム要素もあります。両者で最も異なるゲームプレイ体験はどのように捉えていますか?
ラッセ氏:
ゲームのテーマ自体が、両者で異なっています。『サバイビング・マーズ』では、プレイヤーは地球からの支援を常に期待できますし、要求もできます。
しかしながら『サバイビング・ジ・アフターマス』では、プレイヤーをサポートするセーフティーネットはありません。荒れ果てた土地でたったひとり、生き延びるか、死ぬかです。
もうひとつの大きな違いとして、ワールドマップがあります。本作ではコロニーの外に出て、自分の周りの世界を探索する必要があります。そうしなければコロニーを発展させることは行き詰まってしまい、生存自体も不可能になるからです。
──「生存」に焦点をあてた『サバイビング・ジ・アフターマス』ですが、文明を復興し、かつての滅亡の真実にも近づいていく中で物語の明確な終着点となるものはあるのでしょうか。
ラッセ氏:
はい、プレイヤーがゲームの中で到達できるエンディングは存在します。ゲームをプレイしていくうちに、何が起きて大災害を引き起こしたのか、そしてその大災害後の没落の中で現代文明がどうなったのかを知ることができます。
しかしエンディングは未来のコロニーの安全を保証する大きな計画につながります。
それは人々にとって素晴らしい偉業であり、達成することがこのゲームの究極のゴールです。そのゴールに至る道筋も同様に重要で、エンディングを迎えるには複数の方法があります。
──コロニーの外のコミュニティや無法者といった外的要因との関係性、あるいはテックツリーの伸ばし方といったプレイヤーの遊び方・選択が分岐につながるなど、ストーリーに影響をおよぼすことはありますか?
ラッセ氏:
もちろんです。このゲームはサンドボックスゲームで、プレイヤーはゲームをどのように、どのようなペースで進めていくかを自分で決めることができます。最終的なゴールとそこに至るまでのストーリーは変わりませんが、ゴールにたどり着くための方法はプレイヤーの数だけあります。
また、プレイヤーの行動によって、さまざまなイベントが発生する仕組みもあります。それらのイベントはその後の展開に影響を与えます。
たとえば、無法者がコロニーのゲート前にやってきて、命の安全と引き換えに資源を要求してくることがあります。しかし、再び要求してくるか、すぐに襲ってくるか、いつまでもとどまるかは、その状況下でのプレイヤーの選択によって変わります。このような小さなイベントが何百も繰り広げられ、ゲーム中のほかのシステムと連動しています。
4つの職業に分かれるスペシャリストが探索を手助け
──ゲーム中で発生する「クエスト」に対応したり、前哨基地を築いたりと重要な役割を果たすスペシャリストについては80人以上(Steamストアページ情報)が登場することが予告されていますが、彼らとプレイヤーのコミュニティはどのように出会っていくのでしょうか。
ラッセ氏:
じつはプレイヤーは、コロニーを設立したグループを率いていたスペシャリストの数人と一緒にスタートします。ほかのスペシャリストたちは、ゲームの後半で出会うことになります。
スペシャリストはスーパーヒーローではありませんが、コロニーに住む人たちよりも熟練した生存者です。並外れた能力を持つ普通の人々とも言えます。彼らは単独で、あるいは小さな生存者グループを率いて荒れ地を歩き回ります。
ゲーム序盤でプレイヤーはゲートを建設します。これによりプレイヤーが小さなコロニーを機能させ、入植者の最も基本的な欲求を満たすことができます。
また、この時点で、荒れ地のほかの人々がこの新しいコミュニティの存在に気付き始めます。新しいスペシャリストも生存者グループの一員として、あるいは単独で到着するようになります。このとき、プレイヤーは彼らを仲間に加えるか、あるいはその申し出を断るかの選択を迫られます。
──彼らひとりひとりの職業や能力についてもう少し詳しくお聞きしたいです。彼らはどのような個性を持っているのでしょうか。
ラッセ氏:
職業や能力は、その人の背景を反映したものです。戦闘に長けた者は、通常、特別な能力を持つような背景を持っています。合計で4つの職業があり、その能力はゲーム内で互いに助け合っています。
また、特定の職業だけに集中することも可能です。たとえば、科学者だけだと研究ははかどりますが、戦闘で敵を倒すのは難しくなります。また、ワールドマップを探索するとさまざまなクエストに遭遇します。なかには特定の職業でないと選択できないクエストもあり、クエストの選択肢もスペシャリストの経歴がものをいう部分です。
私が好きなのは、まったく違うルートから進むことができるクエストです。戦士のスペシャリストであれば暴力で解決するという選択肢もありますが、科学者や偵察者を使っていれば外交で解決するという選択肢もありますし、もともとプレイヤーの脅威として登場したものをあえて助けるという選択肢もあります。
また、ワールドマップやそこにいる人々も、よく見ると白黒がはっきりしないこともあり、よりリアルに感じられるようになっています。
柔軟に変更できる難易度は前半と後半で個別に調整することも可能
──ゲーム開始時に環境や資源、運命など複数の項目にわたって条件を設定していくシステムが目を引きました。サバイバル要素に焦点をあてた作品である以上、人員をふくむリソース管理や災害への対処などがゲームの軸となると認識していますが、難易度変更によってどの程度の影響が現れるのでしょうか。
ラッセ氏:
ゲーム開始前の設定により、プレイヤーは自分の好みに合わせて難易度をカスタマイズすることができます。
最も簡単な設定では、コロニーを建設し、世界を探索し、物語を進めることに集中できる非常にゆったりとしたゲームプレイになります。
最高難度では、将来の準備、入植者の要望の充足、大災害や敵対者からの攻撃で受けたダメージの回復が常に課題となり、非常に挑戦的なゲームプレイになります。
このように設定は柔軟に変更することができるため、各自の好みに合わせてゲームを調整することが可能です。また、各設定は個別に調整することもできます。
たとえば、豊富な資源と多くの入植者で早くゲームを始めたいけどゲーム後半は大災害を頻繁に起こしてもっと難易度を上げたい、というようなことも可能です。
──難易度設定の程度によってはストラテジージャンルに不慣れなプレイヤーであっても充分に本作を楽しむことができるようなバランスなのでしょうか。
ラッセ氏:
初めてプレイするときは、ゲーム開始前のメニューで簡単な難易度を選択することをおすすめします。そうすれば高い難易度のゲームに挑戦するのではなく、ゲームのシステムや仕組みに集中できます。また、チュートリアルをオンにしておくのも良い方法です。
──5月に公開された開発者メッセージにてメインクエストを追加したことが明らかにされていますが、こちらは名前の通りゲームプレイの中心となるものでしょうか。
ラッセ氏:
このゲームはサンドボックスゲームなので、コロニー建設や探索に集中したい人であれば、メインクエストをプレイする必要はありません。しかし、サンドボックスゲームであっても、誰もが追体験できるような中心的存在となるシステムを持っていてほしいと思います。
メインクエストはプレイヤーを導き、ゲームを進行させるものですが、先ほど申し上げたようにメインクエストにこだわらずにゲームをプレイすることも可能です。ただ、メインストーリーのほとんどはメインクエストに含まれているため、プレイすることでゲーム中のイベントやサイドクエストの内容に加え、なぜこのような世界情勢になっているのかを理解することができます。
──ゲーム開始時の設定に応じ、AIによってゲームプレイが変更されるなどリプレイ性を重視した作りがうかがえますが、メインクエストにも変化がおよぶのでしょうか。
ラッセ氏:
いいえ、メインクエストはそのままです。
──トレーラーを拝見したところ、トタン張りの建築やありあわせの素材をつぎはぎして作られたゲート、色味がバラバラのテントなど、ある素材を使って作られた施設の雰囲気がゲームのテイストを引き立てていると感じました。建物だけでなく服装や武器についても、全体を通して統一したコンセプトなどがあればお聞きしたいです。
ラッセ氏:
素材と建物の設計は、非常に質素な始まりからゲーム後半に行くにつれて繁栄する荒れ地におけるコミュニティの進歩と変遷を象徴しています。
初期には使えるものがほとんどなく、建物も防水シートや板など、簡単に手に入る資源で作られています。あまり耐久性はありませんが、その日その日を生き延びるのには役立ちます。
コロニーが成長し、最も基本的な要求が満たされると、洗練された材料を集め、より耐久性のあるものを建てる時間が増えます。ゲームが進むにつれ、ぼろぼろのテントは徐々に小屋に変わり、最終的には風雨や風化の試練に耐えられる非常に頑丈で完成度の高い家へと変化していきます。
最終的にプレイヤーは、良い住居、娯楽、医療、汚染のない環境、さらには電気や娯楽を備えた豊かなコミュニティを築き上げることになります。視覚的にも、ゲーム序盤とゲーム終盤で大きく異なって見えるでしょう。
──映像では地中から獣の手のようなものが生えており、クリーチャーのような存在も登場するようですので、クリーチャーデザインについてもお話できるポイントがありましたらお聞きかせください。
ラッセ氏:
世界がより脅威的で異なるものに感じられるようにしました。さまざまな化学物質や有害廃棄物が流出し、ほとんどの土地が汚染されてしまった中で人類の大半がいなくなり、動物たちがより自由に生きられるようになったとしたら、どのような進化が起こるのだろうかと考えました。
また、大災害からもたらされた未知の要素もあり、これらは人間にとって非常に危険なものです。ゲームは大災害から数十年後に始まるので、ほとんどの動物はまだ大災害が起こる前の状態に近いです。しかし、急速な進化を遂げ、奇妙なものに変異してしまった生物もいます。
──プレイヤーにどのように遊んでほしいと考えていらっしゃいますか?
ラッセ氏:
このゲームはいろいろな遊び方ができるように設計されているので、プレイヤーごとに違った感覚を味わうことができます。
生き残るためのさまざまな道具や手段があり、同じゴールを達成する方法でも、プレイヤーは想像力を働かせてさまざまな選択肢を取ることができます。プレイするたびに違う感覚を味わい、常に新しい発見があるゲームであってほしいと思います。
──日本初のコンテンツ・エンタメ(映画、ゲーム、マンガ、小説)でお気に入りの作品はありますか?
ラッセ氏:
たくさんありすぎて全部は紹介できませんが、お気に入りのものをいくつか紹介します。『新世紀エヴァンゲリオン』や『シドニアの騎士』などメカ系のコンテンツが好きで、『機動戦士ガンダム』はほぼ全部好きです。また、ジブリ映画も何度も繰り返し観ている名作です。
最近は『鋼の錬金術師』と『七つの大罪』を見ています。特に好きなのは『銀河鉄道999』という古い漫画やアニメのコンテンツです。
日本のゲームもたくさんプレイしているので、お気に入りをひとつ選ぶのは難しいです。ただ日本に行ったときにいつも楽しみにしているのは、大きなゲームセンターに行くことです。私が住んでいるフィンランドには同じようなゲームセンターがないので、いつもそこで時間を過ごしています。
過去に何度か日本を訪れたことがありますが、また日本に行きやすくなったら、可能な限り近いうちに行きたいと思っています。
──それでは最後に日本のプレイヤーへメッセージをお願いします。
ラッセ氏:
私たちのゲームをローカライズして日本の皆様にお届けできることを本当に嬉しく思っています。そして、奇妙かつ不思議な荒れ地でのサバイバル生活でお待ちしています。このゲームを楽しんでいただければ幸いです。応援を本当にありがとうございます!