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『SPY×FAMILY』『怪獣8号』などとコラボした集英社ゲームズ第1弾タイトルは、京都で暮らすスイス人クリエイターのパーソナルな想いが詰まったインディーゲームだった

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『ジャンプ+』編集部が全面協力して、一緒にモノを作るという姿勢でやっている

──『ジャンプ+』とのコラボレーションについて伺いたいのですが。リナルドさんは今回のゲーム制作を始める前から、『ジャンプ+』のコミックをご存知だったのですか? それともコラボが決まってから、各作品を読まれたのですか?

リナルド氏:
 えーと、ぜんぜん知らなくて、全部勉強しました。

林氏:
 もともとは、リナルドさんたちの作られた『ペルセポネ』というゲームが、「Google Play Indie Games Festival 2019」で「集英社 少年ジャンプ+賞」を受賞したんです。

 そこで『ジャンプ+』編集長の細野(修平)氏が、「一緒にゲームを作ってみませんか」とリナルドさんに声をかけて。リナルドさんとしては、資料として『ジャンプ+』のいろんなマンガを読みながら、ストーリーを考えていった感じですね。

『ジャンプ+』編集長がスイス人クリエイターに声をかけて始まった『キャプテン・ベルベット・メテオ』は異例のインディーゲームだった!_020

リナルド氏:
 『ジャンプ+』はたくさん作品があって全部の作品を読むことはできないから、「これはどうですか」と教えてもらったり、自分たちでも少し調べて「これも面白そう」といった感じで作品のセレクションが始まりました。

──『ジャンプ+』とのコラボが決まってから、『キャプテン・ベルベット・メテオ』というゲームの構想が生まれたのですか? それとも、もともと『キャプテン・ベルベット・メテオ』の構想があったのでしょうか?

リナルド氏:
 じつは『キャプテン・ベルベット・メテオ』のキャラクターはずっと以前からあって、スイスで短編アニメを作ったこともあるんです。だからコミックスも作りたかったし、ビデオゲームも作ろうかなと思っていました。当時は「いつか構想をまとめてみよう」みたいな感じでしたけど。

 それで、『ジャンプ+』編集部さんとゲームのアイデアを打ち合わせた時に、3つぐらいのアイデアを考えていったんですが、その中で『キャプテン・ベルベット・メテオ』を提案した。「スーパーヒーローだし、『ジャンプ+』的にも良いよね」って思っていたので。その案を見た細野さんが「これは面白い」と言ってもらって。そこからスタートした形ですね。

──完成したゲームでは、『ジャンプ+』の人気作のキャラクターがただ単に登場するだけではなくて、各作品のストーリー、バックボーンが練り込まれていますよね。集英社ゲームズさんから聞いたところによると、各作品の先生方への確認も含めて、すごく密にやり取りをして作り上げていったと。なかなかそこまでやることはないと思うんです。

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リナルド氏:
 自分たちは日本語でストーリーを書けないので英語で書いて、マンガ家さんに読んでもらうまでにはいろいろな進め方があって。最初はダメだったのでもう一回最初から……みたいな感じだったんです。マンガ家さんからアドバイスが来て、また英語で作り直して、というプロセスでした。大変だったけど、すごく面白かったですね。

林氏:
 通常のマンガ作品とのコラボって、ライセンスをお借りする形のビジネスで行っていることが多いんですけれども、今回は『ジャンプ+』編集部とリナルドさんのコラボという形なので、編集部が全面協力しているんです。だから絵の監修にしろストーリーの監修にしろ、ビジネス的なお付き合いというよりは、リナルドさんと一緒になってモノを作る、ということを編集部が一緒にやっているんですよ。

──それは口で言うのは簡単ですが、実現するには相当の労力がかかりますよね。作家先生に作業をお願いする必要もあるわけですし、編集部の方も通常の業務とは別に対応を行う必要があるわけですから。 

林氏:
 そういう意味ではキャラクターライセンス協力というより、リナルドさんと編集部が二人三脚でこのゲーム作品を作った感じですね。僕も長いことゲーム業界にいますけど、こういうやり方をしているケースは、他にあまり見たことがないですね。

──しかも同時に8作品とコラボしていると。

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リナルド氏:
 最初はいろんなアイデアが出た中で「ひとつの作品に絞ったほうがいいんじゃないか」という話もあったんです。でもそれだったら、いつもの集英社のライセンスゲームになっちゃう。ひとつの作品だけのほうが進める簡単だけど、ユニークなゲームを作るんだったら、ちょっと新しい考え方でいかないとダメかな、っていうのもあって。

──具体的には、どういった形でストーリー作りを進めていったのでしょうか?

林氏:
 シナリオの起点はもちろん、リナルドさんやMomo-piのメンバーが中心になって作っていきました。編集の担当が常に窓口として立ってくれていたので、いろんな先生にシナリオの状態を確認してもらったり、途中で日本語に翻訳したものを作家さんに読んでいただいたり。

 それはシナリオだけじゃなくて、ビジュアルの部分に関してもそうです。じつはゲームの中では、リナルドさん自身やMomo-piチームが描いた絵もけっこう使われているんです。そうしたイラストも各作家方にちゃんと見ていただいています。そういったことを細かくやれたのは、やっぱり編集部とMomo-Piやリナルドさんが、近い距離で仕事をしていたというのが大きな理由だったと思いますね。

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──そうしたやり取りを繰り返してゲームが形になっていくまでには、どれぐらいかかったのでしょうか?

林氏:
 プロジェクト自体の期間は、だいたい2年ぐらいですかね。その中でシナリオと絵の部分は作家方に確認が必要ですし、作家さんたちのところに行く前にまず編集部がチェックしているので、リナルドさんが時間をかけて調整をしていった感じですね。

──相当数のボールの打ち返しがあったんですね、2年ものプロジェクトだと。

林氏:
 そうですね。先ほどリナルドさんも言われたように、マンガ家の先生に届ける前に、編集の担当が英語で書かれたストーリーを日本語に翻訳したりといったこともしてくれて。そんなふうに編集部の人が一緒になって、丁寧に作業を進めてくれたというのも大きかったですね。

タクティカルアクションゲームだけど、手触りの気持ち良さを大事に作っている

──ここでリナルドさん自身の口から改めて、『キャプテン・ベルベット・メテオ』のここに注目してほしい、というところを語っていただければと思います。

リナルド氏:
 タクティカルアクションだから、『ファイアーエムブレム』『ファイナルファンタジータクティクス』のようなゲームだと思っている人が多いんじゃないかな。もちろん戦略も考えないとダメなんだけど、なんて言えばいいのかな、良いゲーム体験、遊んだ時の気持ち良さがメインのゲームなので、あまり考え過ぎないで遊んでほしいですね。

 あと、私はゲームの中のシークレット要素が好きなんです。『キャプテン・ベルベット・メテオ』にも、そんなにたくさんじゃないけどシークレットが入っています。100パーセント遊び尽くしたいという人は、長く遊べると思います。

林氏:
 『キャプテン・ベルベット・メテオ』は丁寧に作られているので、手触り感がすごくいいんですよ。たとえば敵を踏み潰した時の、ちょっとした振動の入る感じとかがとても丁寧に作られています。ストーリーやキャラクターを抜きにしても、敵を倒していくのが気持ちいいんですよね。もちろん世界観とかストーリーもこだわって作っているんですけど、じつは触ってみた時の気持ち良さが、ものすごく強いゲームなのかなと思っています。

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 リナルドさんはとにかく、常に直していくタイプなので。気がつくと細かいところが変わっていたりしたのですが(笑)。

──締め切りがないとずっといじり続けちゃうタイプですね(笑)。

リナルド氏:
 それが怖い。キリがない。いつかは止めないと、最後にはゲーム作りが嫌いになっちゃうから(笑)。

 ゲームのふたつ目のポイントとしてはもちろん、『ジャンプ+』のいろんなマンガの新しいストーリーがあること。自分の好きなキャラクターの新しい活躍を見られるのは楽しいですよね。

 あとは世界観的に……誰もがみんな昔は子どもでしたよね、大人として生まれてはこないから。だから子どもの時の気持ちを思い出して、「自分もこれが怖かった」とか「自分もこんな感じだった」とか、自身とリンクする話を見つけてほしいです。

林氏:
 『ジャンプ+』の人気キャラクターが多数登場しますけど、ゲームの主軸というのはあくまで主人公のダミアン少年であり、キャプテン・ベルベット・メテオなんです。そこがブレなかったっていうのが、やっぱりいちばん大きいかなと思っていて。

 設定としては、ダミアン少年の空想の中にいろんなヒーローたちがやってくるっていう形になっていて、柱がすごくしっかりとできたと思います。そのおかげで、なんていうんですかね、『ジャンプ+』の作品を借りてきたゲームという感じじゃなくて、ダミアンのお話っていうのがキチンと描けたんじゃないかなとは思います。

──ゲームをプレイして思ったのが、『ジャンプ+』に『キャプテン・ベルベット・メテオ』がマンガ化されて連載が始まるのかな、と(笑)。

リナルド氏:
 そうなったら最高です(笑)。

林氏:
 僕はリナルドさんのことを、生粋のクリエーターだなと思っているんですね。モノを作ることを常に考えているし、作っているものを改善して前に進めようっていうパワーがすごく強い。

 ゲームを作り終わった今も、『キャプテン・ベルベット・メテオ』というお話をどんどん前に進めていきたいし、もっといろんなことに広げていきたいっていう意欲を持っています。それをただ想像するだけじゃなくて、何か形にしようと思って発言したり行動したり、すごく前向きな意志の強い方だなって思うんです。

音楽など自分の好きなパートに100パーセントの力を注げるのが、小規模開発の良いところ

──実際にゲームを遊んでみて思ったんですけど……これで価格が2500円って、安いですよね?

林氏:
 (笑)。いや僕もね、もうちょっと高くてもいいんじゃないかなって、思っていたんですよ。でもリナルドさんが「そんなに高くしないで」と言ったので(笑)。

リナルド氏:
 安すぎるとクオリティが低いと思われるけど、でも高すぎるとあまり買ってもらえないから(笑)。何も知らない人たちでも買いたいと思える値段にしてもらったんです。もちろん、『キャプテン・ベルベット・メテオ』と『ジャンプ+』のマンガのことを知っている人たちだったら、もっと高くても買ってくれると思うんですけど、まったく知らない人たちにも手に取ってほしいので。特に海外の人たちにね。

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──なるほど、リナルドさんの希望だったんですね。

林氏:
 発売前の6月に、コナミさん主催のIndie Games Connectというイベントに出展しまして、「このゲームはどのくらいの価格だと思いますか?」とアンケートを採ったんです。そうしたら「3000円から4000円」と答えていただいた方がけっこういらっしゃって。それを見て「安くしすぎたかな…」と思ったんですけども(笑)。

リナルド氏:
 でもいちばん多かったのは「2000〜3000円」だったから、今の値段で正しい気がします。

林氏:
 ユーザーフレンドリーな金額にはできたかなと思っています。普通に考えると、8作品のライセンスをお借りする時点で、たぶんこの金額にはならないと思うんですよ。もうその時点で、『ジャンプ+』編集部からの“プレゼント”が少し入っているような気がするので(笑)。まぁ集英社ゲームズとしても、そこは努力させてもらったかなって感じですかね。

──集英社ゲームズのパブリッシングタイトル第1弾なので、「最初だからユーザーさんにプレゼントします」ということですね(笑)。

リナルド氏:
 最初だからどうぞ、って(笑)。そうですね、ぜひ楽しんでください。

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──ところで、「集英社ゲームクリエイターズCAMP」のリナルドさんのページには、ディレクターのスキルチャートが載っていました。世界観設定やアートディレクションとともに、サウンドディレクションにも特に秀でていらっしゃると書かれていますよね。『キャプテン・ベルベット・メテオ』でも、音に対するこだわりがあるのでしょうか……?

リナルド氏:
 めちゃくちゃありますね。私は5歳の頃からチェロをやっていたので、オーケストラの演奏を聴いても「ここのバイオリンはちょっと……」みたいに、すごく気になるんです。

 アニメーターとしても、自分の頭の中で音を鳴らして、そのリズムでアニメーションを作っています。たとえば攻撃だったら、「シュッ、ブブン」と「シュッ、ブンブン」だったらぜんぜん違う気持ちになっちゃう。それを頭の中で聴きながら、モーションを修正したりするんです。

──なるほど。それは特別な才能だと思います。

リナルド氏:
 ゲーム的には、音とゲームデザインがすごくつながっていて、音がほぼメインというくらい、重視しています。

 『キャプテン・ベルベット・メテオ』は、トマ・オルソンっていう京都に住んでいる人が音楽を担当しているんですけど、彼も家族が音楽をやっている人だし、しかも彼自身もゲームデザイナーだから、どんな感じの音楽が必要なのかを全部伝えて、一緒に考えて制作を進めました。

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林氏:
 トマ・オルソンさんは、『Olija』(オリア)っていうインディーゲームを作っているクリエイターで、今回は音楽担当として参加してくれました。

リナルド氏:
 『Olija』はピクセルアートだけなのに、すごくリアルを感じるんです。音がすごくリアルだから、ピクセルアートでもすぐ伝わる。それぐらい音は大事なのに、いろんな人がゲームを作る際に、音のことを忘れちゃうのは残念だけど。

 映画だったら音楽を変えるだけで、同じシーンでも「えっ?」という感じになっちゃう。それぐらい音楽が、自分のエモーションをコントロールしているんじゃないかって。だからゲームも、プレイヤーの気持ちをメインにしたら、音楽は絶対に大事な要素なんです。

──今はインディーゲームが当たり前のように受け入れられる時代になっていますが、とくに音楽は心に残る曲が多いですよね。

リナルド氏:
 それはやっぱり、自由さですよね。お金があまりない中で、ひとつのゲームを5年間ぐらいずっと作り続けているとか、逆に小さいプロジェクトを2日間でやるとかだったら、自分のできるポイントに力を注ぐことになりますよね。ビジュアルやゲーム部分の制作に時間がかかっていたとしても、ひとりで作れる音楽は日々手を加えることができますし。

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 さきほど話した『Olija』だと、アートは3Dのリアルなものはできないけど、ピクセルアートならできるからという発想でした。でも音楽をとにかく大事にして、自分ができるポイントを100パーセントにして作業を行っていったんですね。

 AAAのゲームの場合はもうちょっとアベレージが高いっていうか、みんなが好きになりそうな音楽を作らないとダメだったりしますよね。もちろん『ファイナルファンタジー』とかのビッグタイトルだったら、エピックな音楽ですごく感動したりするんだけど、でもたぶんインディーズのような楽曲のほうが、印象に残りやすい。

 たとえば100人で作るんじゃなくて3人で作るんだったら、ひとりがゲームデザイナー、ひとりがアート、ひとりが音楽みたいに分かれて、そのひとりが100パーセントを出すから、パーソナリティ的にも「この人がこれを作った」という感じになりますから。

林氏:
 小規模開発のすごく魅力的なところでもありますよね。

集英社ゲームズが立ち上がるのに合わせて、ゲーム自体もレベルアップしていった

──今まさに、小規模開発ゲームの良さみたいなお話がありましたが、リナルドさんは過去のインタビューで、「インディーゲームだとプロモーションが大変だった」とおっしゃられていましたよね。今回、リナルドさんが集英社ゲームズさんのバックアップを受けたことで、プロモーションその他で良かったことはありますか?

リナルド氏:
 今回、自分たちはちょっとレベルアップした気がするんです。最初はジャンプ+賞をもらって、そこからプロジェクトが始まって。しかもそのあいだにクリエイターズCAMPが始まって、集英社ゲームズができて……と、急に何か大きなことが始まったわけじゃなくて、本当にレベルアップしていった感じがありました。そういう形で自分が行きたかった世界だとか、自分が行きたいレベルに到達できたのが、すごく嬉しくて。

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 自分の気持ちとしては、これからも集英社ゲームズともっと一緒に働きたいです。すごくやりやすいし、コミュニケーションもダイレクトにできるし、サポートを感じるので。もちろん安心感もあるし、集英社の名前は世界的にすごく強いですから。きっとそんなに遠い未来じゃないうちに、任天堂、スクウェア・エニックス、集英社ゲームズ、みたいな感じになると思います。

 だから自分たちのゲームが、集英社ゲームズの最初の作品として出るのはすごく嬉しいですね……と話していたら急にプレッシャーを感じ始めました(笑)。

──(笑)。そう言えるというのは、作ることに専念できるバックアップを、最大限に得られたということですよね?

リナルド氏:
 そう。たださっき言ったように、本当にレベルアップしたんです。ゲームの構想自体はそこまで変わっていないんだけど、最初はモバイル向けに作る予定だったんですよ。きっかけがモバイルの賞だったから。

 でも林さんが来た時に「Nintendo Switchにしたほうがいい」って言ってくれて。そんなふうに最初は小さかった川の流れが、自然にどんどん大きくなっていったんです。自分としては集英社ゲームズが立ち上がるあいだに、一緒に進化していった気がします。

林氏:
 集英社ゲームズもそうですし、「集英社ゲームクリエイターズCAMP」もそうですけど、才能のあるチームを発掘して、それを日本から世界へ、っていうのが僕らの今のテーマになっています。そういう意味ではジャンプ+賞から始まって、2021年にはクリエイターズCAMPの支援を受けて、BitSummitなんかでお披露目をさせてもらったりしながら、最終的には集英社ゲームズでパブリッシングをさせていただくってところまで、本当に小さな川からだんだん大きな川へと、緩やかに変化してきたところはあるかなと思います。

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 でも一方ではリナルドさんがですね、前に進む姿勢がものすごく強い。それと歩みを共にしようと思うと、僕らも川を大きくしていく必要性を自然と感じたんですよ。なので、もしリナルドさんがどこかで立ち止まっていたら、僕らも小さなコンテンツとして、モバイルゲームでちょっと出た、っていうぐらいになったかもしれません。けれどもリナルドさんと集英社の『ジャンプ+』編集部、そして集英社ゲームズの3者でここまでやってこられたことで、任天堂さんのダイレクトでも紹介していただけるようなところまで辿り着けたのかなと思います。

 僕らとしては、このリナルドさんの才能を日本から世界に出していくってことに関しては、まだまだ歩みを止めるわけにはいかなくて。これからも川をさらに広げていくっていうことをして、世界でヒットするっていうところまで一緒にやっていきたいと思っています。

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──林さんが非常に良い感じでまとめてくださいましたが、リナルドさんは何か言い足りないこととか、ありませんか?

林氏:
 「買ってください!」って言っといたほうがいいんじゃないですか?(笑)

リナルド氏:
 もちろん買ってください(笑)。あと自分が知りたいのは、ゲームをクリアしてクレジットシーンまで到達した人たちの気持ちですね。最後までクリアした瞬間に、コントローラーを握っていた手を「ハァー…」って下ろした時の、その気持ちが知りたいんです。

林氏:
 ですので、遊んだ方はぜひクリアした後の感想をブログに書くなり、Twitterに書くなりしてもらえればと思います。

リナルド氏:
 YouTubeのコメントでもどこでもいいので、ぜひ教えてください。自分も探しに行きますので。

──みなさんの反応が楽しみですね。本日はどうもありがとうございました。(了)


 インタビュー中でも語られているように、『キャプテン・ベルベット・メテオ』がインディーゲームの開発規模であっても、人気コミック8作品ものコラボを実現できたのは、『少年ジャンプ+』編集部の全面協力が得られた点が大きい。このような形でゲーム制作が行われた例は、これまでにあまり多くはないだろう。

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 だが、新たな才能を発掘し、その才能を広く世の中に売り出すために全力を注ぐというのは、マンガ編集部をはじめとする出版の現場で、日常的に行われていることでもある。インディーゲームの制作支援という方針を採っている集英社ゲームズは、そうしたマンガ業界における「編集者の仕事」を、ゲーム業界で実現しようとしているのではないだろうか。その意味で今回の『キャプテン・ベルベット・メテオ』は、まさに第1弾タイトルにふさわしいモデルケースだと言えるだろう。

 今回取材したリナルド・ビルツ氏をはじめとして、集英社ゲームズからどんな新しい才能が世に出てくるのか、これからも引き続き注目していきたい。

©Momo-Pi Game Studio /SHUEISHA published by SHUEISHA GAMES


 

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ライター
過去には『電撃王』『電撃姫』『電撃オンライン』などで、クリエイターインタビューや業界分析記事を担当。また、アニメに関する著作も。現在は電ファミニコゲーマーで企画記事を執筆中。
Twitter:@ito_seinosuke
副編集長
電ファミニコゲーマー副編集長。

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