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原作ではこれだけやってたんだから、これだけやらないとリメイクにはならない━『FFVIIリバース』野村哲也・北瀬佳範・浜口直樹に聞く「FFVIIらしさ」とは

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 『FINAL FANTASY VII REBIRTH』……それは「FFVIIを全三部作でリメイクする」という、あまりにも壮大な計画の二作目。正直、未だに「ほ、本当に2作目が出た!?」という驚きを半分くらい隠せずにいる。だけど、実際出るらしい。

 そして……なんと今回、『FFVIIリバース』へのインタビューを実施できることとなった。出演者はプロデューサーの北瀬佳範氏、ディレクターの浜口直樹氏、クリエイティブ・ディレクターの野村哲也氏のお三方。え、マジで? なんか豪華すぎない?? ノムテツさん???

 実はこのインタビューに合わせて最速プレイレポートも出ているのですが……最初にこのお誘いが来て「おお、FFVIIリバースいち早く遊べるんですか!」と喜んでいたら同じメールの中に「北瀬、浜口、野村へのインタビューも行います」と圧の強い文が書かれていた時の私の気持ちを理解してほしい。

 もう「このお三方だとインタビューの方がメインディッシュになっちゃうじゃないか!?」と。そして実際、メインディッシュになってしまいました。

 チ、チクショウ! 流石にどんなに頑張って書いてもこの3人の並びに勝てるワケないじゃないか!? そのくらい、面白いインタビューに仕上がりました。……とはいえプレイレポートとかなり繋がっている内容なので、レポートの方も良かったら読んでいただけると。この記事も2部作みたいな感じです。
 
 今作がリアルスケールのワールドマップを実現した理由から、リメイクで新たに物語を描く理由。改めてお三方にお聞きする、「FFVIIらしさ」。そして野村氏から語られる、FFVII当時の開発秘話(?)とは。

 まさか私もこのお三方に話を聞ける日が来るとは思ってなかったです。
 ぜひ、最後まで読んでください。

聞き手・文/ジスマロック
編集/実存


そもそも、なぜリメイクで新しい物語を描くのか?

──『FFVIIリバース』は、前作から3年ぶりの続編となりました。実際のところ、今作の開発はいつ頃からスタートされていたのでしょうか?

浜口直樹氏(以下、浜口氏):
 今作の開発自体は、前作『FFVIIリメイク』の開発が終わると同時に始まっていました。ですが、その時はまだユフィが登場するインターグレード版のコンテンツの開発も同時に進めていたんです。そこと並行しつつも、水面下では可能な限り『FFVIIリバース』の開発を進めていました。

 そのため、本格的に稼働し始めたのは『FFVIIリメイク』のリリースから1年後くらいだと思います。つまり、2021年の年末から年明けくらいから本格的に開発がスタートしましたね。

野村哲也氏(以下、野村氏):
 シナリオの制作等の準備段階は前作の開発終盤から併行して進めていました。その前のインターグレードに収録されているユフィの外伝インターミッションもほぼ地続きでした。なので個人的には1作終わって次、という感覚より、ずっと長いプロジェクトが続いている印象です。既に3作目のメインシナリオも完成していますし。

──そのくらいの時期から開発が進められていたのですね。
 お三方ともFFシリーズ自体には長く関わられていると思うのですが、「FFVIIリメイク」シリーズのような分作での制作は初めてだったのではないでしょうか。実際、「2作目のFFVIIリメイク」を作られてみて、いかがだったでしょうか?

北瀬佳範氏(以下、北瀬氏):
 実は、最初に『FFVIIリメイク』のプロジェクトを立ち上げた時から「1作目では収まりきらない」ということは見えていたんです。そしていろいろな検討を重ねていく中で、全体のボリュームから考えて「3部作」にするという結論に辿り着きました。

 そこから、「FFVIIを3部作にした時、ストーリーはどこで分割するのが適切か」ということを考え始めました。そして、やはり1作目は「ミッドガルからの脱出まで」がストーリーとしては最も収まりが良かったんです。さらに2作目は、「忘らるる都」までが描かれます。つまり、「ストーリーの区切りとして適切な場所」が3部作の区切りとなっています。

 この「3部作の構成」自体は、比較的初期……たしか1作目の制作前には決まっていたと思います。

野村氏:
 今作の本制作開始直前に「やはり2部作でどうか?」と北瀬に相談されて、早く完結に辿り着きたい思いもありますし、悩んでた時期もありました。ただ2部作に収めるには、どうしても切らないといけない箇所も出てしまうので、やはりフルボリュームの3部作で行こうという決断になりましたね。

──『FFVIIリバース』は「3部作の2作目」という立ち位置ではあると思うのですが、3部作の中において、なにか明確な役割や目的などがあったりするのでしょうか?

北瀬氏:
 映画の3部作でもよくあることだとは思うのですが、やはり「2作目」ではあるので、既に1作目で語られた世界観の基礎的な情報やキャラクターの説明を省くことができるんです。つまり、長い前置きをせずにストーリーを始めることで、「2作目」には急展開や意外な展開などを盛り込みやすくなっています。

 加えて、その先にはもちろん最後の「3作目」があります。
 だからこそ、2作目のエンディングでは何年後かの3作目に向けてお客さまのモチベーションや興味を維持できるようにする必要がありますよね。要は、「2作目の終わり」は2作目だけでもストーリーをある程度完結させつつも、3作目に大きな期待を寄せてもらえるような終わり方にさせなきゃいけないんです。

 そして、『FFVIIリバース』もそんな使命を持った作品です。そういう意味では、過去の3部作構成となっている映画と同じような形での「2作目の位置づけ」は意識しましたね。

『FFVIIリバース』野村哲也・北瀬佳範・浜口直樹に聞く「FFVIIらしさ」とは_001
YouTubeより

──そろそろ本題に入っていこうと思うのですが、今回試遊させていただいた過去のニブルヘイムのお話では、クラウドとセフィロスのやり取りが増えているような感覚がありました。ちょっと仲良くなっている(?)と言いますか……。やはりあれは意識して描かれた部分なのでしょうか?

浜口氏:
 そこは「やり取りが増えている」というより、「原作で表現できていなかった部分を描けるようになった」という面の方が大きいのではないかと思います。

 そもそも、あの時のクラウドは年齢的にも幼いですし、ある意味ザックスの影響もあるわけで……。要は、「人懐っこい性格のクラウド」になっているんです。だから、会話に関しても「クラウドのテンションに引っ張られて、ついついセフィロスも話してしまう」という表現になっています。

 つまり、『FFVIIリバース』で大きくアレンジを加えたというより、元々そういった雰囲気のシーンだったところを表現力の進化によって、より正確に描けるようになった面の方が大きいと思います。ボイス収録においても、あのシーンのクラウドは「少し幼く、ハキハキしているようなイメージ」で描いています。クラウド役の櫻井さんの演技も含めて、印象的ですよね(笑)。

野村氏:
 あの過去のニブルに関しては、プレイされた方に結構印象が強いようで、みなさん驚かれていました。表現力が上がったことで当時表現しきれなかった輪郭が明確になったし、現在とのギャップが大きく印象的にできたシーンだと思います。是非試遊でも注目していただきたいですね。

──どちらかというと「正確に描けるようになった」面の方が大きいのですね。
 ストーリーのお話についてもう少し詳しくお聞きしたいのですが、「FFVIIリメイク」シリーズでは、原作とは違う新たな展開や物語が描かれている場面があります。今作でもさらに新たな物語が描かれるとのことですが、そもそもなぜリメイクにあたって新たな展開や物語を描こうと思ったのでしょうか?

野村氏:
 まず、原作をプレイされた上でリメイクを遊ばれる方も一定数いるとは思いますし、今回のリメイクから新たにFFVIIを遊ばれる方もいますよね。そして、「そのどちらの方にも、等しく新たな謎や展開へのワクワク感を味わってもらいたい」というのがひとつの理由ですね。

 加えて、一度原作をプレイされた方が「あぁ、この展開は知ってる」という作業だけでゲームが終わってしまわないように……というのも理由のひとつです。ちなみに、シナリオ担当の野島さん的には「オリジナル以降、複数シリーズに渡って展開されてきたFFVIIのストーリーを一度しっかり整理したい」という狙いもあるようです。

──そういった狙いがあったのですか。ちなみに、事前に公開されたPVにはザックスのストーリーが描かれるような雰囲気があったと思うのですが……「ザックス編」のようなものはあるのでしょうか?

野村氏:
 いや……それはまだ言えないですね(笑)。

──ああっ、まだ言えない部分でしたか(笑)。

『FFVIIリバース』野村哲也・北瀬佳範・浜口直樹に聞く「FFVIIらしさ」とは_002

ワールドマップをリアルスケールで描こうと思った理由。「新しさ」と「懐かしさ」はどう両立する

──個人的な印象になってしまうのですが、「FFVIIリメイク」シリーズには、「新しさ」と「懐かしさ」の両軸があると感じています。たとえば今回の試遊の範囲内では、原作のアンダージュノンの空気感は残されつつも、ユフィが加入するまでの展開は大きく変わっていました。
 これらの「残すべき原作の良さ」と「リメイクする上での新しさ」がバッティングせずに両立されているのが面白い部分だと感じているのですが、実際に開発する上でこの2軸の両立は意識されているのでしょうか?

野村氏:
 そこに関しては、そもそもその2軸を意図した上で作り上げています。ちょうど先ほど話題に出たストーリーもそうですが、元々の企画の成り立ちの時点から「新しさと懐かしさを両立させたものにしたい」と考えていました。

 「ここは変えちゃいけない」と残した部分もありながら、「ここは新しくしよう」と変えていった部分もあります。当時FFVIIを作っていた自分たちと、浜口のようにリメイクから新たに参加したスタッフたちとで、お互いのバランスが取れてるんじゃないのかな、とは思いますけどね。

浜口氏:
 たしかに、スタッフの層によるバランスはあるかもしれないですね。私の指針としては「今回のリメイクにおいて、野村さんや野島さんの原作クリエイターが表現したいもの」は最大限遵守しています。それこそがある意味「原作準拠」でもありますよね。

 我々開発チームはその原作スタッフが表現したい要素を残しつつ、いかに今のエンタメに合わせたり、今のゲーム体験に合わせていけるか……という部分を意識してゲームに落とし込んでいきます。そして、要素自体は原作準拠でプレイヤーに懐かしさを感じさせつつ、ゲーム体験としては全く新しいものを届けられるようにしています。

 今回のリメイクはそんな「同じ要素ではあるけど、全然新しい!」という感覚をユーザーに届けられるように企画することを意識していましたね。前作だけでなく、『FFVIIリバース』もそんな感覚を届けられるようなタイトルになったとは感じています。

──やはり、そこはかなり意識された部分なんですね。ちなみに、今作においてユフィが仲間に加わるまでの展開が変わっている理由などはあったりするのでしょうか?

浜口氏:
 やはり今作は「ワールドマップで仲間と冒険しながら、キャラクター同士の絆や関係性を描きたい」という狙いがまずありました。それは我々も描きたい部分ですし、ユーザーの方も求めている部分ではありますよね。

 そのため、ユフィに関しても「どこにいるのか」すら不明なまま加入するよりかは、明確にストーリーのどこかに繋げてあげた方が、表現しやすいと考えました。そして、そのほうがプレイする側も安心できますよね(笑)。そのため、今回はもう「ユフィの加入」そのものをシナリオに組み込んだ形となります。

野村氏:
 原作では諸事情あって必須の仲間にはできていなかったのですが、このリメイクプロジェクトだから実現できたことです。そのおかげで、ユフィがいる前提で構成できたシーンもあったりするので、これもある意味本来の形とも言えますね。

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──次は、「ワールドマップ」に関してお聞きできればと思います。
 やはり、あれだけ広いワールドマップを『FFVIIリメイク』準拠のリアルスケールで描くのは、すごく大変だったのではないかと思います。今作のワールドマップを作るにあたって、なにか苦労した点などがあればお聞かせください。

浜口氏:
 やはり、「広さの定義」を決めるところが最初は大変でした。今回はジュノンの一部エリアをプレイしていただいたと思うのですが、実は今作はワールドマップ全体がシームレスになっているんです。設計上はものすごく広い空間のワールドマップがあって、そこにジュノンやグラスランドエリアを内包しているようなイメージですね。

 本来、FFVIIの世界を完全に描き切るのだとしたら、世界規模で巨大な大陸を描いてしまうのもひとつの手だとは思います。ですが、本当にリアルスケールで世界全体を作り始めたら当然開発が終わらなくなりますし、そこに対してゲーム的な要素を用意していくのも中々難しいです。

 つまり、「どのくらいの広さがあれば世界を巡っている楽しさを感じてもらいつつ、ゲームとしてもコンテンツを用意できるか」という「広さの定義」を決めるのが大変でしたね。ただ広いだけで、何も要素がなく移動しているだけのワールドマップでは、ゲームとしては何も面白くないですからね。その辺りの「しっかりとコンテンツを用意できる広さ」はだいぶ時間をかけて試行錯誤していきました。

──実際のワールドマップはリアルスケールで描かれていますが、選択肢としてはそもそも探索要素を失くしたり、ある程度デフォルメして描く方法もあったのではないかと思います。それでもワールドマップをリアルスケールで描くことにした理由やきっかけなどはあったのでしょうか?

浜口氏:
 そこはもう、リバースのプロジェクトを立ち上げた時から覚悟していた部分ではあります。やはり原作をプレイした方の中には、なんとなく脳内に「あのFFVIIを今の技術でリメイクしたら、きっとこうなるだろう」という、思い思いのベストFFVIIリメイクみたいなものがあると思うんですよ(笑)。

 そして原作のワールドマップは自由に移動できていましたし、もちろんリメイクでも「同じ体験ができるだろう」という期待を持たれているとは思います。そして仮にワールドマップがリアルスケールではなく、デフォルメされていたり自由に探索できないものだったとすると、「FFVIIのリメイク」としてお客さんが満足できるようなレベルの作品を届けられないだろう……と考えていました。

 だからこそ、今作は「ワールドマップはしっかり作る」という覚悟を持った上で挑みましたね。

──前作『FFVIIリメイク』はミッドガルの中でひとつの大きなストーリーを作るような形になっている一方、今作はワールドマップを筆頭に「自由な探索」の要素が多くなっている印象を受けました。個人的な感覚ではあるのですが、この「ストーリー体験を重視した1作目」「探索要素を重視した2作目」の対照的な関係は意識されたものなのでしょうか?

浜口氏:
 そこは意識した部分ですね。1作目から2作目を作るにあたって、全く同じフォーマットのゲーム体験を出してしまうと、ユーザーにとっては「3作目の着地ライン」もある程度見えてしまうとは思うんです。

 北瀬さんが先ほどお話されたように、1作目から2作目を遊んだ時に「ここからの3作目はどうなるんだろう」と期待を煽るくらいの大きなゲーム体験の変化が必要だとは考えていました。この「三部作ごとのゲーム体験の変化」こそリメイクプロジェクトの成功がかかっている部分ではあります。

 そして、今作はワールドマップを筆頭に「選択の自由」というキーワードをベースにゲームを作っていきました。ワールドマップなどの探索要素も充実していますが、当然「メインストーリーだけを進めたい」と考える方もいるとは思います。そこもある意味、「メインストーリーを進めるという選択」がプレイヤーの自由にできるようになっています。

 ストーリーに特化している前作の場合、プレイヤーが「今ストーリーを進めよう」という選択をするよりかは、必然的にストーリーが進んでいくような体験になっていました。今作はそこに対して「選択の自由」を持たせたイメージです。

 もちろんサイドコンテンツを延々とプレイするのもアリですし、適度なところで探索をやめてメインストーリーを進めるのもアリです。とにかくユーザーのプレイスタイルに合わせつつ、好きに選択する……そんな「今プレイするゲームを選んでもらう」という自由度に今作は特化しています。

 加えて、最近のゲームにおいて「選択の自由がある」ことはひとつのトレンドにもなっていますよね。そしてユーザーの方も、どちらかというと自由な体験を好まれる方が多いと思います。そのトレンドに合わせたスタイルでもありますね。

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YouTubeより

──今作には「連携アクション(アビリティ)」という新たなシステムが登場しています。このシステムはどんな狙いや意図があって作られたものなのでしょうか?

浜口氏:
 「連携アクション」と「連携アビリティ」はもう明確にバトルにおける位置付けが決まっています。そもそも、『FFVIIリメイク』のバトルシステムは「アクションとコマンドの融合」がコンセプトとなっています。

 そして、バトルの設計段階からそれぞれの要素が「この要素はコマンド要素」「この要素はアクション要素」といったように、明確に定義されています。

 つまり、連携アクションはその名の通り「アクション寄り」の要素となっています。だからこそ、特定のゲージを消費せずに自由に使うことができたり、空中コンボに繋がったりするアクションの要素に振っています。

 逆に、連携アビリティは比較的「コマンド寄り」要素です。パーティーメンバーのATBを消費していけば撃てるようになり、一定サイクルで高火力かつ気持ちのいい必殺技を見ることができます。つまり、時間と効率を考えた上で、「どのくらい連携アビリティを狙えるか」という部分が重要になってきます。

 これらの「アクション寄りの要素」「コマンド寄りの要素」が、連携アクション(アビリティ)の立ち位置となっていますね。

『FFVIIリバース』野村哲也・北瀬佳範・浜口直樹に聞く「FFVIIらしさ」とは_005

お三方に聞く「FFVIIらしさ」。現代で「全部入り」のRPGをやる覚悟

──少し踏み込んだ質問になってしまうのですが、FFVIIには「FFVII独自の空気」があると感じています。たとえば、思ったよりも仲間同士の仲がよかったり、いろいろなところにミニゲームが散りばめられていたり。
 そして、原作にあったあの空気感がリメイクでも再現されています。これは一朝一夕に作り出せる空気感ではないと思うのですが、実際開発チームの中で「FFVIIらしさとはこうだ」「FFVIIの空気感はこう」といったように明確に言語化されていたりするのでしょうか?

浜口氏:
 まず第一に、ユーザーがFFの世界で疑似体験をするときに、ストーリーなどを含めて「映画的なドラマティックな体験をしてもらう」ことがあるとは思うのですが……そこに限らないのが「FFVIIらしさ」かもしれないですね。

 たとえば、「ミニゲームやサブコンテンツなどの要素がふんだんに用意されつつも、そのどれを遊ぶかは自由に選択できる」という点は、明確に原作からあった空気感だと思います。壮大なメインストーリーもありながら、ワールドマップを探索して……とにかく充実したゲーム体験を味わうことができます。

 何度か話題に出ていますが、やはり今作はワールドマップ以外にもたくさんのサブコンテンツが用意されています。その「メインストーリー以外の要素」として没入できる余白を作ることで原作の雰囲気を味わってもらうのが『FFVIIリバース』の狙いのひとつではありますね。

北瀬氏:
 明確な「FFVIIらしさ」を表現するのは難しいのですが……やはりFFVIIは「おもちゃ箱のようにいろいろなギミックがごちゃっと入っている」ことが楽しいタイトルですよね。

 そしてFFシリーズ自体、ファミコン時代から初代プレイステーションに至るまで結構好き勝手にごちゃごちゃいろいろな要素を入れることができていたのですが、ハードのスペックが上がり表現のリアリティが増してくると、昔のようにおもちゃ箱的なアイデアは入れづらくなってきます。

 しかし、今回のリメイクは昔のギミックのテイストをある程度活かしつつも、最新のハードでリアルな世界を描いています。ここの「リアリティー」と「おもちゃ箱」が今の世代でも両立できているからこそ、原作の「FFVIIらしさ」が残っているのではないでしょうか。

 やはりリメイクにおいてリアルさ「だけ」に特化してしまうと、昔のおふざけ的なネタはどんどん捨てていってしまう傾向があると言いますか……(笑)。
 そこを今回のリメイクでは上手く現代的に吸い上げながらも、ひとつの作品としてまとめ上げています。その辺りの「FFVIIのごちゃごちゃした楽しさ」を残していることこそが、原作のテイストを表現できている理由だと思います。

野村氏:
 「何でも入ってるのがFFだ」と坂口(博信)さんが言っていたことが、自分には未だに指針となっています。

 「FFVII」原作を作った時にも、「FFVII」とは?という考え方ではなく、「FF」とは?という作り方をしましたし、当時の作り方としては、FFはスタッフ一同のアイデアを広く取り入れる、というスタンスでした。なので極力、「こうしたい」というスタッフからの提案は受け入れるというスタンスで自分も取り組んでいます。

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YouTubeより

──実際、FFVIIというタイトルはシリーズの中でも、特に「特別感」のようなものがある作品だと思います。そのFFVIIが持つ「特別感」を今回のリメイクにおいて、どんな風に捉えているのでしょうか?

北瀬氏:
 FFVIIに「特別感」的なものが最初からあったわけではないのですが、各作品が独立しているFFシリーズの中で、「正当な続編」が初めて描かれたものはFFVIIの『アドベントチルドレン』だったと思います。そういう意味で、初めて「原作からさらにキャラクターを深堀りし始めた」のがFFVIIでもあります。

 そこから増えていった関連作品の多さなども含めた部分が、「特別感」に繋がっているのかもしれませんね。

野村氏:
 自分はこれまで多くのFFシリーズに関わってきたんですが、おそらく一番深く関わったタイトルがFFVIIだと思います。そして自分でもちょっと忘れていたんですが……先日当時のFFVIIの開発資料が出てきて、シナリオを作る前のキャラクターの相関図なども全て自分が手書きで書いていたことがわかりました。

 だから、「FFVIIはストーリーを作る前の段階から自分が設定をいっぱい作っていたんだな」ということが最近わかりまして……というか、思い出しまして(笑)。

一同:
 (笑)。

野村氏:
 おそらく、ここまで自分がガッツリ関わった「FF」はFFVIIが一番だと思います。そして、今回リメイクするにあたっても、「自分がやらないとな」という思いはありました。

 さっきの「FFVIIらしさ」みたいなところに関わってくるかもしれないんですが、どんどんハードが進化してゲーム制作自体にも時間がかかるようになっていく中、どうしても「なんでも入っているのがFFだ」というのが僕の感覚になっていきました。

 ですが、ゲーム制作も徐々に取捨選択をしていく時代になってきました。今までだと全部が入っていたところを、どこかピンポイントで特化していく形になってきている中、今回のリメイクはある意味昔ながらの「全部入りでやるんだ」という姿勢で作っています。それができたのは、やはり「FFVII」というベースがあってこそだと思うんですね。

 要は、「原作ではこれだけやってたんだから、これだけやらないとリメイクにはならないでしょ」ということです。「原作はこれだけやっていた」というベースがあったからこそ、これほどの規模でリメイクできたのだと思います。

 この「全部入り」をやるのは本当に無茶なことではあるんですけど、その無茶をやるには分作にするしかなくて。ただ、分作にしたからこそ、FFVIIの「なんでも入っている」ところを作り出せたのは大きいと思っています。

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──最後にお聞きしたいのですが……個人的にレッドXlllが普通にチョコボに乗っていたのが衝撃的でした。あれは開発チームの間でもいろいろな議論があったりしたのでしょうか?

浜口氏:
 まず、やはり我々開発チームの間でも「レッドXlllをどうやってチョコボに乗せよう」という議題が出たんです(笑)。「普通に乗せる?」「誰かの後ろに乗せる?」といったさまざまなアイデアが出る中で、最終的には野村さんに判断を仰ぎました。

 そうしたら、野村さんの方からも「普通に乗せていいよ」と言われて……(笑)。

 それをベースに開発側もどんどん「ロープを持って乗っている」といった方向に振っていきました。最終的にちょっと面白い感じに仕上がっていますよね。

野村氏:
 まぁ、絵面的にそっちの方が面白いかなと……(笑)。
 ただ、実際に乗ってる絵を見せられた時に「本当に乗せるんだ」とは思いました。初見のインパクトは凄かったので(笑)。

一同:
 (笑)。

野村氏:
 けど、こういう感じが「FFVII」なんだとは思います。あんまり気張っていない感じというか、ちゃんとスタッフたちが遊び心を持ってやってるところがいいんじゃないかなと。

北瀬氏:
 レッドXlllはチョコボ以外にも「あ、こうなるんだ」というネタがいくつかあったりするので、結構楽しめると思います(笑)。

──本編のレッドXlllの活躍を楽しみにさせていただきます(笑)。
 本日はありがとうございました!

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 まさかのレッドXlllオチ。

 実は私……FFのナンバリングタイトルを一通りプレイしているんです。いや、それ自体はどうでもいいのですが、実はその最初にプレイしたのが前作『FFVIIリメイク』と、原作の『FFVII』でした。ある意味、初めてのFFが『FFVIIリメイク』だったということです。

 そして初めてプレイした時、私は真っ先に「なんだか、遊んだことのないタイプのゲームだ」と感じました。キャラのノリもなんだか独特。ストーリーもシリアスなようでいて、どこかはっちゃけている。ものすごく大作なようでいて、肩の力を抜いているような雰囲気がある。

 一言で言えば、「掴みどころのない」ゲームだと思いました。

 が、それが逆に火を付けた。
 こんな不思議なゲーム、初めてだったから。

 そこから時間が過ぎて、改めてお三方から「FFVIIとは?」ということを聞けたのは……なんかもう光栄とかそんなレベルじゃないですね。あの時感じた「不思議な面白さ」が、改めて言語化されたような感覚がありました。「あ、やっぱFFVIIってそういうノリだよね!?」と。

 もう、その「ごちゃごちゃしたおもちゃ箱みたいな楽しさ」こそ、私がFFVIIで一番好きなところなのです。遊んでいて、「なんだこれは?」が尽きない。それは探求心と、冒険心と、好奇心と。

 そしてその楽しさは、『FFVIIリバース』にもしっかり受け継がれている! 「前作よりミニゲームが増えてる」にテンション上がりまくってるのは私だけじゃない……よね? 超楽しみです。

 『FINAL FANTASY VII REBIRTH』は2024年2月29日に、PS5で発売予定! これは……「再誕」の第2章。交差する運命の果てを、見届けよう!!

ライター
転生したらスポンジだった件
Twitter:@yomooog

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