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なぜ『逆転裁判』には新しい主人公が必要だったのか? 新主人公「オドロキ君」誕生の理由を『逆転裁判456 王泥喜セレクション』のプロデューサーに聞いてみた

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20年以上の長きにわたって続く人気シリーズ『逆転裁判』
 
弁護士となって、有罪確定であろうと思われる証拠が揃っている被告人を弁護しながら事件の真相に迫るというゲームコンセプト、その真実の究明が法廷で行われるという面白さ、事件の構図が逆転し、真犯人を告発する爽快感。様々な要素が絡み合う本作は、推理ゲームというジャンルにおいては異例ともいえる人気を誇り、ゲームに留まらず、アニメ化、漫画化、実写映画化……と、多岐にわたる展開を見せ、ファンの注目を集めた。

そんなシリーズが産声を上げた機種は、ゲームボーイアドバンス。そこから携帯機種の進化とともに、Nintendo DS、Nintendo3DSと、シリーズナンバリングタイトルが発売され続けており、『逆転検事』『大逆転裁判』といったスピンオフ作品も好評を博している。

『逆転裁判』新主人公はなぜ必要だったのか。『逆転裁判456 王泥喜セレクション』のプロデューサーに聞いてみた
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『逆転裁判123 成歩堂セレクション』

更に、近年になって『逆転裁判』『逆転裁判2』『逆転裁判3』の3タイトルを1つにまとめた移植作『逆転裁判123 成歩堂セレクション』が発売。
これまでにシリーズに触れたことのないプレイヤーも、最新機種で気軽に名作たちを楽しむことができるようになった。

『逆転裁判』新主人公はなぜ必要だったのか。『逆転裁判456 王泥喜セレクション』のプロデューサーに聞いてみた
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そして、来る 2024年1月25日には、『逆転裁判4』以降のナンバリングタイトル3作を収めた『逆転裁判456 王泥喜セレクション』の発売が予定されている。

本作のサブタイトルにも “王泥喜セレクション” とあるように、『逆転裁判4』では、初代『逆転裁判』から『逆転裁判3』まで主人公であった成歩堂龍一に代わり、王泥喜法介が主人公として新たに登場し、シリーズファンに大きな衝撃を与え、この作品が正に『逆転裁判』というゲームシリーズの1つの大きな転換点となっていると言える。

そこで今回は、発売日の迫る『逆転裁判456』の各タイトルの魅力や移植ならではの新要素、開発作業における苦労などについて、プロデューサーである橋本賢一氏に、メールインタビューを行った。本稿ではその様子をお届けしていこう。

文/DuckHead


新たな主人公オドロキ君と、新たな魅力を纏ったナルホド君

『逆転裁判』新主人公はなぜ必要だったのか。『逆転裁判456 王泥喜セレクション』のプロデューサーに聞いてみた
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王泥喜法介(『逆転裁判4』)
『逆転裁判』新主人公はなぜ必要だったのか。『逆転裁判456 王泥喜セレクション』のプロデューサーに聞いてみた
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希月心音(『逆転裁判5』)

──今回のコレクションのサブタイトルにも「王泥喜セレクション」とありますように、『逆転裁判4』からは成歩堂龍一に代わる新主人公として王泥喜法介が登場しました。また、『逆転裁判5』以降には新たな主要キャラクターとして希月心音も新たに登場しています。彼らの登場の狙いはどういったところにあったのでしょうか?

橋本氏
初代から『逆転裁判3』までの3作で成歩堂の物語は一旦完結していたこと、その時点で成歩堂がある意味で成長しきっていたことから、彼のその先を描くことは難しいと判断し、王泥喜法介が新たな主人公として誕生しました。

そして、『逆転裁判5』では、主要キャラの1人として女性を入れようという話が出てきまして、「守って欲しい」と言う女性キャラよりも、戦える女性キャラの方がいいのではないかと、女性弁護士であるココネが誕生しました。

『逆転裁判』新主人公はなぜ必要だったのか。『逆転裁判456 王泥喜セレクション』のプロデューサーに聞いてみた
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──『逆転裁判123』の主人公であるナルホド君は、『逆転裁判4』で大きな転機を迎え、以降の作品ではその役割に変化が見られました。彼のキャラクターとしての魅力はどのようなところにあると思われますか?

橋本氏
成歩堂は、今回のコレクションに収録されているタイトルにおいて若手弁護士の師匠となるスーパー弁護士として登場し、新たな強敵に挑んで勝利します。そういったところが、彼の新たな魅力になっているのではないかと思います。

『逆転裁判』新主人公はなぜ必要だったのか。『逆転裁判456 王泥喜セレクション』のプロデューサーに聞いてみた
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──『逆転裁判6』は、霊媒で判決が決まるクライン王国という舞台設定のインパクトが強く感じられました。霊媒そのものは初代『逆転裁判』からストーリーに組み込まれている要素ですが、どのような経緯でこの設定が生まれたのでしょうか?

橋本氏
「師匠ポジションのキャラを殺そう!」「でも一回殺しちゃったら、もう二度とストーリーに出せない!どうしよう!」といった問題点を解決するために、「よし、霊媒して降霊で登場させよう!」「じゃあ、師匠の妹は霊媒師だ!」という発想になりました。

といっても実際はこんなに簡単に決まってはいませんが(笑)。亡くなったチヒロさんを登場させるための手段として、霊媒がゲームに登場しています。

『逆転裁判』新主人公はなぜ必要だったのか。『逆転裁判456 王泥喜セレクション』のプロデューサーに聞いてみた
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──『逆転裁判』シリーズは、ストーリーの評価が高い作品かと思います。『逆転裁判456』の中で、特に思い入れのあるシナリオなどはありますか?

橋本氏
『逆転裁判5』の4話と5話ですね。心音の過去や、その結末も含めて印象深いエピソードです。未プレイの方はぜひプレイしてみてください。

プレイ済みのシリーズファンにも楽しめる新要素を

『逆転裁判』新主人公はなぜ必要だったのか。『逆転裁判456 王泥喜セレクション』のプロデューサーに聞いてみた
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──今回のコレクションでは、『逆転裁判5』と『逆転裁判6』のダウンロードコンテンツである特別編が収録されています。どういった内容のストーリーなのでしょうか?是非、見どころをお聞かせください。

橋本氏
「逆転の帰還」は、『逆転裁判4』で弁護士資格を失った成歩堂龍一が弁護士に復帰するお話です。その被告は、なんと水族館のシャチ(笑)。懐かしの綾里春美も登場するので、楽しく華やかなお話になっています。

「時を越える逆転」、タイムマシンで時を戻したという被告人が登場します。こちらでは懐かしの矢張、真宵、御剣が登場して、まるで同窓会のような法廷となるのが見所です。

『逆転裁判』新主人公はなぜ必要だったのか。『逆転裁判456 王泥喜セレクション』のプロデューサーに聞いてみた
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──リメイク版ならではの要素として発表された、「文字送り」にくわえて選択肢の決定も自動で行う「ストーリーモード」に衝撃を受けました。あえて謎解きを省くという、推理ゲームとしてはかなり冒険的なモードに感じられますが、どういった意図で導入されたのでしょうか?

橋本氏
ストーリーモードは、「プレイヤーが正解がわからずにゲーム進行に詰まった時の手助けになれば」という考えから導入しました。また、過去にクリアしたことのあるプレイヤーさんには、映画やアニメのように逆転裁判のストーリーを鑑賞して楽しむことができるという考えもあります。

『逆転裁判』新主人公はなぜ必要だったのか。『逆転裁判456 王泥喜セレクション』のプロデューサーに聞いてみた
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アクションスタジオ

──設定画集などが見られる「アートギャラリー」に、シリーズ作品のBGMを聴ける「オーケストラホール」と、本作はスペシャルコンテンツが充実しています。中でも、キャラクターのアクションやボイスを自由にカスタマイズして好みのシチュエーションを作り出せる「アクションスタジオ」が他の移植作品ではあまり見られないような要素だと感じました。これらのスペシャルコンテンツは、どういった経緯で実装が決まったのでしょうか?

橋本氏
『逆転裁判』シリーズの昔からのファンはもちろん、新しくプレイするユーザーにも喜ばれる追加要素として従来のコレクション作品の追加要素よりも更に面白いものを追及しました。
アクションスタジオに関しては、「好きなキャラクターのアクションをずっと愛でられるモードがあったら嬉しい」という部分から発想して作りました。

最新機種への移植における苦労

『逆転裁判』新主人公はなぜ必要だったのか。『逆転裁判456 王泥喜セレクション』のプロデューサーに聞いてみた
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──『逆転裁判456』は、『逆転裁判123』に続く移植作品となりました。最新機種へ移植するにあたって苦労された点はどのようなところなのでしょうか?

橋本氏
苦労したのは、2画面からフルHD1画面へのアップスケール対応に伴う、ゲームパッドでのプレイが快適になるようにする調整や、見えてなかったところが見えるようになってしまったのでグラフィックを新たに書き足すことになったところでしょうか。

また、RE ENGINE(カプコンが独自開発した、次世代のゲームエンジン)を用いた初の『逆転裁判』作品でしたので、そういった意味でもなかなか苦労がありました。

『逆転裁判』新主人公はなぜ必要だったのか。『逆転裁判456 王泥喜セレクション』のプロデューサーに聞いてみた
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──グラフィックのパワーアップ以外に変更された点などがありましたら、教えてください。

橋本氏
発売する全てのハードのコントローラーで遊べることはもとより、Nintendo Switch版ではタッチのみ、Steam版ではマウスのみでも全シナリオを遊べるようにするため、UIとプログラムをすべて刷新しています

『逆転裁判』新主人公はなぜ必要だったのか。『逆転裁判456 王泥喜セレクション』のプロデューサーに聞いてみた
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成歩堂みぬき(『逆転裁判4』)
『逆転裁判』新主人公はなぜ必要だったのか。『逆転裁判456 王泥喜セレクション』のプロデューサーに聞いてみた
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成歩堂みぬき(『逆転裁判5』)

──今回移植された3タイトルですが、『逆転裁判4』と『逆転裁判5』『逆転裁判6』では、グラフィック面に大きな違いが見られます。開発作業における違いはあるのでしょうか?

橋本氏
各タイトルで開発作業に違いはあります。オリジナルの良さを残すため、それぞれの原作から違和感が出ないよう注意して作業を進めました。

『逆転裁判』新主人公はなぜ必要だったのか。『逆転裁判456 王泥喜セレクション』のプロデューサーに聞いてみた
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──現在、『逆転裁判』シリーズのリマスターが進んでいますが、ファンの間では、御剣検事を主役とするスピンオフ『逆転検事』も非常に人気の高いタイトルです。これまでの作品のように、最新機種へと移植する予定はあるのでしょうか?
また、ゲームに留まらず、アニメ、漫画、実写化など様々な展開を見せる『逆転裁判』シリーズですが、今後の展望についてはどのようにお考えでしょうか?

橋本氏
残念ながら現状としてシリーズ作品について決まっていることはないため、何もお伝えすることができないのですが、グッズ展開やイベントを含めシリーズ展開は続いていきますので、続報を楽しみにお待ちいただければと思います。(了)


さて、今回は、『逆転裁判456 王泥喜セレクション』のプロデューサーである橋本氏にインタビューを行った。

本コレクションに収録されている、『逆転裁判4』『逆転裁判5』『逆転裁判6』という、王泥喜三部作と称すべきタイトルたちは、新主人公の登場、法の暗黒時代、霊媒が絶対正義の弁護士不在の裁判と、それぞれが独自の特色を持ち魅力を放っている。

また、本作にはシリーズ未プレイの人が楽しめるのはもちろんのこと、「オーケストラホール」「アクションスタジオ」といった、シリーズファンのテンションが高まる要素が大いに詰め込まれており、こちらも目が離せない。

成歩堂三部作が完結し、王泥喜三部作も完結した今、シリーズがこの先どのように展開されていくのか。その具体的な内容は不透明であるとのことだが、シリーズは今後も長く続いていくと思われる。『逆転裁判456 王泥喜セレクション』は、その試金石となるのではないだろうか。これからの『逆転裁判』シリーズにも期待しよう。

『逆転裁判456 王泥喜セレクション』はXbox One、Nintendo Switch、PC、PlayStation4向けに2024年1月25日に発売を予定している。

ライター
レトロゲームから最新ゲームまで、面白そうだと感じた家庭用ゲームを後先考えず手当たり次第に買い漁る男。500を越えてから、積み上げたゲームを数えるのは止めました。 ディズニーアニメ・お笑い・音楽・漫画などにも広く浅く手を伸ばし、動画投稿者としても蠢いています。
Twitter:@DuckheadW

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