いま読まれている記事

ここから、『FF14』の「第2の新生」が始まる。吉田直樹氏に聞く「黄金のレガシー」の新たな門出と、「10年後のFF14」とは

article-thumbnail-240110y

先日、『FF14』の新拡張パッケージ「黄金のレガシー」に関する新情報がたくさん発表されました。新ジョブの「ピクトマンサー」から、謎の舞台「ソリューション・ナイン」まで、気になる要素がもりだくさん!

そして、あの基調講演の舞台でもあった「ファイナルファンタジーXlV ファンフェスティバル 2024 in 東京」にて、プロデューサー兼ディレクターへの吉田直樹氏へのインタビューが行われました。

もうさっそくではありますが、「ピクトマンサーが登場した理由」から女性ロスガルの裏話まで……新発表されたコンテンツについて、かなりお聞きしました。

余談ではあるのですが、こちらのインタビューなんと「Day1の終了直後」に実施されており……たしか終わったのが22時とかでした。明らかに働きすぎな吉田さんを労う気持ちでも読んだいただけるといいかも(?)しれないです。吉田お疲れさまです……。ぜひ最後まで、ご覧ください。

吉田直樹氏に聞く「黄金のレガシー」の新たな門出と、「10年後のFF14」とは_001

聞き手・文/ジスマロック


「黄金のレガシー」の開発コンセプトは?

──ファンフェスDay1終了直後でお疲れのところ恐縮ですが、本日はよろしくお願いします。

吉田氏:
こちらこそ遅い時間にお集まりいただき、ありがとうございます。

日本のファンフェスティバルの1日目が無事に終わり、ホッとしております。それと同時に、今回の基調講演で発表させていただいた「3000万人」という累計プレイヤー数に関しても、「旧版から数えて13年、新生から10年でこんなところまで来られたのは光の戦士のみなさまのおかげです」とお伝えしたいです。

吉田直樹氏に聞く「黄金のレガシー」の新たな門出と、「10年後のFF14」とは_002

──単刀直入ではありますが、「黄金のレガシー」ではどういったコンセプトや、ユーザー体験を目標として開発を行っていたのでしょうか?

吉田氏:
今まさに開発している最中なので、「開発の振り返り」みたいなのは早いどころか開発チームにめっちゃ怒られそうなんですが……(笑)。

ただ、やはり「新たな挑戦、新たなFF14の側面」をできるだけ感じてもらいたいと考えています。僕、「新しいこと」が正義だとは思っていなくて。ゲームデザインってやっぱり「面白い」ことが先に来るべきで、そのあとに「新しさ」が来るもので……。「新しいから面白い」ではないと思うんですよね。

どんなゲームでも、「これは新しいシステムなんです」と出されても、「いや別につまんないよね」と言われたら価値がなくなるじゃないですか。だから抑えられるところは抑える、ユーザーにとって安心してこれまで通りのクオリティを感じられるベースラインをしっかり取った上で、その上に新しさを感じてもらいたい。

ストーリーの急展開だったり、ひとつひとつのコンテンツのクオリティの底上げだったりを今回の目標にしています。僕らとしては、ある意味「第2の新生」みたいな感覚で挑んでいるつもりです。

ただ、当時の「新生エオルゼア」と比べると、我々もはるかに経験を積ませていただいているので、3倍~4倍のゲーム体験をお届けできると思っています。

──ちょうど「ストーリー展開」の話題が出たのでお聞きしたいことが……「黄金のレガシー」のメインストーリーは二部構成のようになっているとのことですが、途中から全く違うストーリーが展開されていくのでしょうか?

吉田氏:
それは……なんて言ったらいいんでしょうね……。
なんとなく、プレイした後に「あー、二部構成!たしかに!」と思えるような気がしています。

「7.0は二部構成のようになっている」とは言ったものの、当然それを通して1本の物語になるように作っています。大きな山場が何度かやってくる中で、「ここが分岐点だったな?」と思えるような箇所が後々わかってきたりするんじゃないかなと。

ひとつの物語を進める中で様変わりしていく価値観やキャラの葛藤を描くと同時に、世界やその命運に対しての「急なハンドルの切り返し」みたいなことに今回はチャレンジしています。

あんまり言うとネタバレになっちゃうのでニュアンス的な表現で申し訳ないのですが、7.0は「新しいFF14の側面」もお見せできるんじゃないかと思っています。

正直、また「今までにやっていないこと」にチャレンジしてもいるので、不安がゼロなわけではありません。ただ、チーム内で上がってくるものを見ていると、今は不安よりも期待の方が高いです。次なる『FF14』の展開も楽しみにしていただければ。

吉田直樹氏に聞く「黄金のレガシー」の新たな門出と、「10年後のFF14」とは_003

なぜ、「ピクトマンサー」なのか

──今回、新たに「ピクトマンサー」というジョブが登場することが発表されました。なぜ、ピクトマンサーを選んだのでしょうか? やはり『FF6』のリルムとクルルを重ねた部分などがあったのでしょうか。

吉田氏:
いえ、ピクトマンサーとクルルに関しては、それぞれ別に考えていました。

もちろんストーリー上の都合でもあるのですが、クルル本人の心情を考えると「いつか光の戦士と肩を並べて、前線に出たい」という気持ちはすごくあったと思います。だから、いずれかのタイミングでクルルをジョブチェンジさせて前線に出してあげたいなと。ただ、「暁月のフィナーレ」ではヴェーネスとシンクロする役割もあったので、やるとしたら7.0かなと考えていました。

そして「ピクトマンサー」というジョブ単体についてですが、僕らはジョブから考えるのではなく、基本的に「ロールから先に」考えています。

これはやはりゲームデザイン的な側面が強く、多くのお客様にいろいろなジョブで遊んでもらうにあたり、「どういったロールを入れることによってゲーム全体が盛り上がり、よりマッチングが早くなり安定してFF14がプレイできるのか」をいつも考えています。

ただ、DPSはいずれにせよダントツで人気のロールなんですよね。
だから、拡張パッケージを出す時のふたつの新ジョブに関しても、片方は絶対にDPSを外せません。そしてタンクやヒーラーはここまでの拡張できっちり実装してきて、現在の数的にはちょうどいいバランスになっています。そのため、「黄金のレガシー」では新ジョブどちらもDPSで行こうと。

──ロールから逆算する側面が大きかったんですね。

吉田氏:
さらに今の『FF14』の現状に対する新たな面白さや絵的な魅力、世界中のファンのみなさんの期待値や予想なども鑑みつつ出した答えが、「ピクトマンサー」でした。もちろん最初からピクトマンサーに絞られていたわけではなく、有力な候補のひとつとして挙げられていた形です。

そこからストレートに「実際、“絵を描く”ことは攻撃に置き換えられるのか?」という検証を重ねつつアイデアを出し合い、新ジョブはピクトマンサーで行けそうだと決まった時に、ようやく「じゃあこのジョブはクルルなんじゃない?」ということが決まりました。

結果的にクルルとピクトマンサーがすごくシンクロしているトレーラーだけを見て「これは最初から計画されていたことなんじゃないか?」と思っていただけたのだとしたら、開発チームとしては上手くやれている証拠だと思います。

やはり『FF14』が新生してから10年間、小さい種やネタ、薄い導線をみんなで手繰り寄せたり繋いだりして、1本の太いロープにすることを繰り返してきました。この辺りの見せ方は、これまで培ってきたチーム力の賜物かなと。

吉田直樹氏に聞く「黄金のレガシー」の新たな門出と、「10年後のFF14」とは_004

吉田直樹氏に聞く「黄金のレガシー」の新たな門出と、「10年後のFF14」とは_005

──今後のカギを握るNPCとして「ウクラマト」が登場することも明かされました。彼女は新種族の女性ロスガルでもありますが、彼女の登場にはどういった意図があるのでしょうか。

吉田氏:
女性ロスガルとウクラマトに関しても、ちょうどお話ししたクルルとピクトマンサーに近いところがあります。まず『FF14』の新たな門出でもある「黄金のレガシー」では、今までにない拡張のスタイルを取りたい。さらに、『FF14』にはいろいろな側面があることをプレイヤーのみなさんにもお見せしたい。

そして今回のメインストーリーは、王位継承レースを描いているから主人公である光の戦士はあくまでオブザーバー的なポジションなんですよね。そんな時に、魅力的じゃないキャラクターが王位につくための手助けをするストーリーにしても、プレイヤー的には「こんなやつどうでもいいよ」と思ってしまうので。

だから、最初は種族などは一旦置いといて「ウクラマトというキャラクターをどう魅力的に描くか」を優先しながらストーリーの構成を始めていきました。そこである程度シーンが固まったタイミングと、ユーザーのみなさまの「ロスガルの女性も実装してほしい」という声が非常に多い中で、7.0でその約束をしっかり守れるかどうか……。

今回はグラフィックスアップデートもあったので、実際本当にできるのかどうかは結構難産だとは思ってたんですが、幸い開発チームが「やりますよ」と献身的に言ってくれたことも大きかったです。

そのふたつが上手くかみ合ったのであれば、最も注目度の高い「新種族」にウクラマトを充てて、彼女を通して女性ロスガルという種族の魅力や考え方を深く描けるだろうと。そういったところを繋ぎ合わせて作っていきました。

──上手くタイミングがかみ合った部分も大きいんですね。

吉田氏:
そして、ウクラマトはパッチ6.55のメインシナリオPart2からも活躍します。ちょっとこれまでにはないキャラクターに仕上がっています。特にウクラマトはあえて「最初から完璧なキャラクターじゃない」というキャラにしているので、「ウクラマトの成長」もひとつのキーワードになるかなと思っています。

そこを見ていただければ、きっと女性ロスガルという種族が、人格を伴った場合にどういった魅力があるのかを表現できていくのではないかなと。

吉田直樹氏に聞く「黄金のレガシー」の新たな門出と、「10年後のFF14」とは_006

──今回も「ピクトマンサー」や「女性ロスガル」といった多くの新要素が登場しましたが、実際のところ『FF14』の新コンテンツや新要素などを作る中で、アイデアが枯渇してしまうことはないのでしょうか?

吉田氏:
これほど巨大なゲームになってくると、「ゲームデザイン」という一言で全部を語るのは、ちょっと難しくて。まずゲーム全体の舵取りは僕がディレクターとしてやっていて、「次に挑む世界はこうだ」「そこで訴えかけるべきテーマはこれだ」といったプレイヤーのみなさんに与えたいフィーリングは当然僕から全体のデザインを行います。

ただ、その中にストーリーを作ったり、各コンテンツを配置していくような「コンテンツの中のゲームデザイン」に関しては、僕は結構各担当に裁量を大きく渡すタイプのディレクターです。当然、企画が上がってきた段階でブレストの確認をして、そこから「仕様になった段階で」「実機で仮実装された段階で」「バランス実装された段階で」といったように、かなり細かくチェックを行っています。

でも、それくらい細かくチェックをしていても、極論面白ければいいです。
『FF14』の開発チームは「最終的なバランスはみんなで取るから、とにかく面白いと思うものを作ろう」ということをずっとやってきました。そして、そこに対して新しいスタッフをできるだけ徴用していく……と、体よく言えばカッコいいんですけど、第三開発事業本部はちょっと「下剋上気質」でして。

なんなら、バイトから入っても3年経ったらサブリーダーをやっているスタッフもいるんです。別に年齢も関係ないし、「本当に面白いもの」をしっかりしたコスト感覚でいろいろな人に支えてもらいながら作れるのは、本当に得難い才能だと思っています。

そういう才能を持った人たちのアイデアやチャンスに、先輩たちのサポートをつけて形にしていくことをやってきたから、常にコンテンツやアイデアが新鮮なのはあるのかなと思っています。

──ちなみに「アイデアが枯渇しないために実践していること」などはあるのでしょうか。

吉田氏:
これは結構明確にあって、『FF14』を「MMORPG」だと思って作っていると、おそらく途中で枯渇しているんじゃないかと思います。

日本人の多く……特に僕ら開発陣の主力世代なんかはMMOからゲームを始めたわけじゃなくて、家庭用ゲーム機のオフラインのゲーム体験で育ってきてる人たちがまだまだ多いです。「それらの世代から出るアイデアをMMOにしようとした場合、どうなるか?」というチャレンジって、実は意外とMMO業界はやれていないんですよね。ここが結構『FF14』の強みだと思っていて。

「オンラインの」ではなく、「FFだったらどうするか」「新しいFFとしてこんなことをやったら面白いよね」と考えてから、「さて、これをMMOでどうやるんだっけ」と形にするような流れをやっているのが、アイデアが枯渇しない秘訣なのかなとは思いますね。

やはりここは『FF14』が「ファイナルファンタジー」というタイトルで幸いだったなと思っており、元がコンソールで育てられたゲームだからこそ、実現できている部分だと考えています。

要は、「スタッフのアイデアをひたすら引っ張り上げていく」と「コンソールの良さをもって世界に置き換えた場合の新鮮さ」をずっとやってきている感じです。なので、結果的に世界中でコンソールの素晴らしいゲームが出てくださると、我々もどんどんアイデアが枯渇しなくなるっていう……(笑)。

一同:
(笑)。

吉田氏:
あとはウチのスタッフはみんな本当にゲーマーなので、そこからもアイデアがどんどん出てきます。もちろんゲームだけじゃなくて、漫画やアニメも含めて多くのアイデアが出るのはいいところだと思います。

吉田直樹氏に聞く「黄金のレガシー」の新たな門出と、「10年後のFF14」とは_007
YouTubeより

──個人的ですが、「友好部族」の紹介画像でペルペル族の隣に登場しているアルパカが気になります。

吉田氏:
実は開発チーム内でも、アルパカ大人気でございまして(笑)。

なぜかというと、アルパカには今回ついに実装された「ファーシェーダー」……いわゆる「毛並みを表現するシェーダー」が思う存分使われているんです。だからもう、それだけ愛されているキャラクターです。そして生き物ですので、おそらく光の戦士を乗せて大地を駆けるでしょうし、なんだったら空も飛ぶんじゃないかなと。

「暁月」で崩したドミノを、また積み上げる

──「黄金のレガシー」に関する新発表について、吉田さんから見たファンの反応はいかがだったでしょうか?

吉田氏:
今回は僕自身……というかみなさんも感じていたかもしれないのですが、「暁月のフィナーレ」でハイデリン・ゾディアーク編というサーガが、まさかMMOのストーリーであそこまで完璧に完結するとは誰も考えてなかったと思うんですよね。

「え、マジで終わったんだけど?めっちゃスッキリしたし、これどうするんだろう?」ということは、光の戦士であればあるほど多分思ったんじゃないでしょうか。ただこれは、「終わらせる」からこそ得られるカタルシスで……新生から石を積み上げてきたからこそのクライマックスと、それを一気に倒すカタルシスだと思います。

開発内だとよく「ドミノ」にたとえるんですが、新生からひとつひとつみんなでドミノを並べてはきたけど、根本的にドミノって倒さないとカタルシスが得られない。そして「暁月」で1回目のドミノは全部倒したので、さぁまた2回目のドミノを並べていくぞというのが7.0の出発点になります。

でも、「暁月」であれだけのクライマックスを体感したからこそ、普通は「黄金のレガシー」でもさらなるクライマックスを求めるんですよ。だけど次々強敵と戦ってインフレをしていく昔のジャンプとか、果てがないじゃないですか。

だからここで一度インフレをリセットして、「戦うべきものは強さだけじゃない」という側面も出したいなと。それがあるからこそ、さらにこの先何年も物語を続けていけるようになると思います。

吉田直樹氏に聞く「黄金のレガシー」の新たな門出と、「10年後のFF14」とは_008

吉田氏:
やっぱり一歩目ではあるから、これまでプレイヤーのみなさんが感じていただいていた満足感と、次に対しての期待感と不安感も多分入り混じっていたはずです。でも、ファンフェスとしてはいきなり「今回のラスボスはコイツです!すごい話なんで期待してください!」とネタバレをするわけにはいかないじゃないですか(笑)。

一同:
(笑)。

吉田氏:
だからこそ、1回目と2回目のファンフェスでは「期待感を作ってもらえるような情報の出し方」に気をつけていました。「あぁ、今回は自然の中でのびのびとした冒険なんだな」みたいなイメージを以前のファンフェスで作ってきて、今回発表したソリューション・ナインなどで「うわなんだこれ!?思ってたのと全然違う!」と一気にイメージを覆すような演出はできたかなと思っています。

空き時間で確認した限り、そこに関してのユーザーさんの反応は良く、すごくポジティブにいろいろな要素を楽しみにしていただいていて、今は大満足しています。僕の不安もかなり消えました。

吉田直樹氏に聞く「黄金のレガシー」の新たな門出と、「10年後のFF14」とは_009

──世界中の光の戦士に向け、「黄金のレガシーの前にやっておいた方がいいこと」などがありましたら、お聞かせください。

吉田氏:
大丈夫です、特にないです。
これはもういつもコンセプトにしていて、「拡張が来るからこれをやっておかなきゃ、あれをやっておかなきゃ」は基本的にないようにしています。ゲームにのめり込んでいるうちはすごいアドレナリンが出てる状態なので、別にいいと思うんですよ。でも疲れた時、急に辛くなるんですよね。

「あれもやらなきゃいけないのか、これもやらなきゃいけないのか」と拡張に対してのモチベーションがなくなっちゃうと思うので、こちらは「別に何もご用意していただかなくて大丈夫です」という方針にしています。事前情報を別に追わなくても、完全新作RPGとして楽しんでいただけます。

今回は特にグラフィックスアップデートが入ってからのキャラメイクなどもあって、こだわりの要素もあったりすると思うので、何も考えずストレートに遊んでいただければと思います。……で、一応ここまでがディレクターとしての答えです。

もちろんプロデューサーとしては、いまアカウントを止めてる方には復帰してもらった方が嬉しいです。たとえばお友達との再会とか、今のシステムに慣れておくとか……「拡張のために復帰するぞ!」と思っている方は1ヶ月前と言わず、3ヶ月前からゆっくり身体を慣らしていただけると幸いです。

「FF14の10年後」って……どうなる?

──やはり「新生10周年を迎えた」ことが『FF14』にとっての大きな節目になったと思うのですが、今回のファンフェスティバルの盛り上がりなども含めて、「FF14をひとつの大きな文化」として成長させられたような感覚はありますでしょうか?

吉田氏:
僕の中に、「文化」という大それた感覚はあんまりなくて。僕らはあくまでゲームを作り続けていて、それが単純に世界中の人たちが集まって一緒に遊べる「公園」や「テーマパーク」を作っている感覚です。近所の人たちで集まって、いろいろな人に遊んでもらうための公園をひたすら作り続けているような。

たしかに世界中で遊んでいただくことによって、「FF14はメタバースの成功例に近くなっているよね」と言われたり、メタバース業界から公演の話が来たりもするのですが……やっぱりそういう感覚はないです。僕らはあくまで『FF14』をエンタメだと思っていますし、10年という節目もまだまだ通過点です。

……で、ちょっと話が逸れるんですが『FF14』は「こんなにたくさんのコンテンツは遊びきれないよ!」と言われたりします。ただ、この「遊びきれない」という感覚って、果てが見えているからまだ「遊びきれない」と思っているはずなんです。

たとえば、「宇宙の果て」なんかわからないから、もう普通に星の数なんて数えるのはやめるじゃないですか。でも、『FF14』はまだカウントできる数ではあるから、一応は果てが見えているんです。

もうこれが感覚的に諦めたくなる……もう「全部遊ぼう」とは思えないほどコンテンツの数を増やしていって、「いつ始めてもいいし、いつお休みしてもいいし、いつ帰ってきても変わらずワイワイ楽しめる世界」をこれからも作っていけたらなと。

だから、あまり綺麗だったり堅苦しい言葉は僕にもチームにも必要がないし、とにかく「面白い!」「楽しい!」「この世界いいね!」と言ってもらえるように頑張ります。

吉田直樹氏に聞く「黄金のレガシー」の新たな門出と、「10年後のFF14」とは_010

──最後の質問になりますが、「FF14の次の10周年に向けて、何を見据えているのか」をお聞かせいただければと思います。

吉田氏:
さきほどお話した通り、やはり「暁月」で1回目のドミノ倒しを壮絶に、かつ気持ちよく我々もやらせていただきました。そしてここから、次の10周年に向けてドミノをひとつずつ並べていき、しっかり積み上げていこうと思っています。

そして、一応僕の頭の中には「8.0以降の展開」を思いつきはしているので、9.0くらいまでは今のままでも枯渇はせずに行けるんじゃないかなと思っています。ただ、当然それはまだ自分の頭の中にしかなくて。あんまり先のことをスタッフに言っても、逆につらくなっちゃうところも出てきます。

だからこそ、今を全力で作った上で、僕のイメージしている「さらに先の展開」に向けて、舵取りを調整しながら進んでいるつもりです。そこは引き続き安心して、『FF14』という船に乗って、一緒に航海を楽しんでいただければなと思っています。

──すごく先の話ではあるのですが、20~30年後を見据えて開発チームの引継ぎなどについて考えられることはあるのでしょうか?

吉田氏:
とりあえず『FF14』は僕にとってのライフワークでもあるので、ゲーム業界から引退するまでは続けようかなと思っています。あぁ、でもスクエニをクビになったら関われない可能性がありますけど……(笑)。

とにかく、一応ゲームに関わっている限りはしっかり僕ができることは全部やりきっていこうかなと思っています。でも、よくよく考えてみると20年後、30年後に死んでる可能性がないわけでもないですね。僕は太く短く生きたい人間なので死んでる可能性も……いや、なんか病気とか抱えてるわけじゃないですよ!?

一同:
(笑)。

吉田氏:
あくまで「たとえばの話」ではあるのですが、僕が仮にこの後バタっと倒れてしまい、意識がなくなったとしても、『FF14』チームはもう大丈夫です。

たしかに、「じゃあ誰かが吉田の代わりに、東京ドームのステージでこれだけのお客様を前にして、拡張の話を2時間ひたすらプレゼンできる人材がいるんですか?」と聞かれると、それは無理だと思います。

ですが、いくつか形は変わると思いますが、同じような興奮や情報のお届けは今のチームなら間違いなくできます。ゲームディレクションに関しても、「今のFF14の方向性」はごく一部の人間には軽く話していますから、問題ないです。

そして僕が『FF14』と『FF16』の両方に参加したのも、もちろん人三倍働いている自負はありつつ、開発チーム内に「僕(吉田)の機能を持っていってくれる人たち」がいるからです。なので、今この瞬間僕が倒れたとしても、プロデュース部分はチームとして成り立つし、ゲームデザインやディレクションに関しても数人で全然やれると思います。

唯一変わるとしたら、僕が僕の個性で言うアホみたいなことを実現しようとする人がいなくなる可能性はあります。でも逆に、僕の存在が重しになってそれができない人もかなりいるはずだし、同時に新しいアイデアが出てくるチャンスでもあるのかなと。

吉田直樹氏に聞く「黄金のレガシー」の新たな門出と、「10年後のFF14」とは_011

吉田氏:
でも、それくらい開発チームは育っているんです。

僕がちょっとキャラ的に強烈なのもあって、みんな「嫌だよ、吉田さんと比較されるから前になんか出たくないよ」と言うのは当然だと思いますし、ゲーム開発がメインの仕事であって、前に出るのが仕事じゃないです。だから、そこに関しては「俺がやれる限りはやるから」と話しています。

『FF14』の開発チームはみなさんが思っている以上に強く、たくましく成長させていただいているので、当面は何があっても安泰だと思います。ぜひ、安心してプレイしてください。

もし仮に僕がゲーム業界を引退しても大丈夫です。いちプレイヤーとして開発チームに文句を言う役を僕が引き受けますので(笑)。そのくらい、これからも真摯にお客様と向きあって開発と運営を続けていこうと思いますので、どうぞこれからもよろしくお願いします。(了)


個人的に、「黄金のレガシー」に対しては、「これはどうなるんだ……?」という期待と不安が半々くらいの気持ちが強かったです。しかしそれが、今回のファンフェスで「ソリューション・ナイン」が明かされたことで、「おっ、結構面白そう!?」と印象がひっくり返ったかのような感覚がありました。

なにもかも吉田の掌の上だったってコトね。

これからも20~30年と続いていくエオルゼアの世界が、より楽しみになりました。
あと吉Pは長生きしてください。引退してもご意見番やってください。

もう、こちらから言えるのはひとつだけ!
2024年夏にリリースされる「黄金のレガシー」を……お楽しみに!!

© SQUARE ENIX

ライター
転生したらスポンジだった件
Twitter:@yomooog

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合がございます

新着記事

新着記事

ピックアップ

連載・特集一覧

カテゴリ

その他

若ゲのいたり

カテゴリーピックアップ