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カプコンから社員を10人も引き連れて独立した男が、なぜ『ロックマン ゼロ』の開発を任されたのか? 焼き鳥トークで入社したカプコン時代、塩ゆでパスタで生き抜いた極貧時代、そして『ロックマン』シリーズ開発までの道のりを聞いてみた

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パスタ塩茹で生活を経て、元カプコンスタッフが『ロックマン ゼロ』開発に至るまでの道のり

(画像は『ロックマンゼロ&ゼクスダブルヒーローコレクション』より)

このパートから視聴する場合はこちらから!

喜多山氏:
そこから『ロックマン』の開発というか、私もインティさんという会社を意識し始めたのって、やっぱり『ロックマン』のイメージなんですよね。

會津氏:
はい。

喜多山氏:
『ロックマン』の開発に至った経緯を聞かせてください。

會津氏:
……そこからが、話が長いんですよ……。

喜多山氏:
(笑)長いですか。

會津氏:
まぁ、一作目に『可変走攻ガンバイク』っていうのを作りました。
それで、あんまり売れませんでした。そして、二作目も作りましょうという話になるときに、ちょうどソニー・ミュージックさんとソニー・コンピュータさんの株式の持っている割合が逆転するんですね。

ようするに、ソニー・コンピュータさんがソニー・ミュージックさんの株を持つという構図になりました。ソニー・コンピュータさんのほうが立場が上になったわけです。

そのあとソニー・コンピュータさんがアーク・エンタテインメントなどのサテライトカンパニー(セカンドパーティ)を新しく3社立てられて、そこに開発を集約してスタジオ製にしてやりましょう。というような形になっていって。

焼き鳥の話でカプコンに入るも3年で独立、『ロックマン ゼロ』『ガンヴォルト』開発のインティ・クリエイツ社長に奇妙な話が多すぎる_030

會津氏:
でもそうなると、「ソニー・ミュージックからもうソフト出さなくてもいいんじゃね?」と社内理論にやっぱりなってきますよね。

弊社が付き合っていたのはソニー・ミュージックさんなので、すると次のタイトルは出せなくなるわけですよ。まぁ、あんまり売れなかったのもあってですね。
あれ、4ヵ月か5ヵ月くらいですかね……全く仕事がなくて、実入りがない中でみんな自分の貯金を切り崩してなんとか10人、11人かな。暮らしてたんですよ。

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『LOVE&DESTROY』(画像はAmazon商品ページより)

會津氏:
そんな中で、ちょうどソニーコンピュータさんのサテライトのひとつのアーク・エンタテインメントさんで「次の作品を作りませんか」という話をいただいて作ったのが『LOVE&DESTROY』というタイトルです。桂正和さん(ジャンプ漫画家)に絵を描いてもらって、プロダクション I.Gさんにアニメを作ってもらいました。

喜多山氏:
豪華ですね。

會津氏:
豪華だったんですよ!でも、なかなか売れなかったんですね(笑)
でもアークさんに仕事をいただいて『LOVE&DESTROY』作ったあとも、めちゃめちゃ売れたわけではなかったですし、サテライトカンパニーのカンパニー制も久夛良木(くたらぎ)さんが社長になって、「ソフトの方を重視するよりハードの方を重視しましょう」となっていった流れの中だったので、なかなか次の仕事ももらえず……。

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會津氏:
そこでも8ヶ月くらい、給料が出せないタイミングがありました。私なんかは、あれですね。パスタ700グラムくらいのやつを買ってきて、それを100グラムずつ毎日塩で茹でて食べるみたいな生活を3か月くらい続けてて(笑)

ちょうど年末なんかだと、「みんな、白菜買ってきたぞ!」「鶏肉買ってきたぞ!」と言って、みんなで鍋で白菜と鶏肉を煮て食べたりして年末を過ごしたりしていました。そういう、結構苦しい時期を過ごしたんですよ。

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會津氏:
それで、そういった状況だと、やはり会社を合議制でやっていくっていう形では、次の動きを決めるのもなかなか難しかったんです。

たとえば我々は当時は3Dでゲームを作っていて、その当時だと『プレイステーション2』が出たばかりだったんですが、「最新技術のプレイステーション2で新しいゲームを作りたい」という派と、我々の技術で作りやすい、たとえば「2Dドットのアクションゲームを作った方がいいんじゃないか」と言う派で、社内で大きく二つに分かれたんです。

でもそこで皆の意見を採ろうとすると、結局どちらにも決まらないんですよね。で、この「全員取締役で、全員合議制でやるのは限界があるぞ」という話になってくるんですよ。

喜多山氏:
そうですよね。

會津氏:
なので、一部の人間が決めて、他の人間はそれに従うっていう形にしないとダメだ。という話になり、「新入社員も採って、我々以外の社員を作って普通の会社にしよう」という決断を最終的に多数決で決めることになるんですよ。

もちろん、その時に「いやそれは反対する」、「そういう会社を作りたかったわけじゃない」という人間は、そこから数年のうちに皆どんどん辞めて行っちゃうんです。
11人で会社を作って、今は6人しか残っていないです。

ともかく「普通の会社にしましょう」という話になった時に、会社の中で最先端3DのPS2ソフトを開発する方針を希望する人たちと、今ゲームボーイアドバンスが来てるから、ゲームボーイ アドバンスなりでちゃんとした2D横スクロール・ドットアクションを作ろうよ。といった流れがふたつ出来たんですね。

會津氏:
その時にちょうど、バンダイさんの中のバンプレソフト(現B.B.スタジオ)さんの方から『クレヨンしんちゃん』をゲームにしないかという話も来ていた時期ではありましたが、それはまだ後の話で……まず、その前に津田が「ドットで作るなら『ロックマン』が作りたい」と言いだしました。

「いや、お前カプコンなんで辞めたん?」ってみんなに突っ込まれたんですけど(笑)

喜多山氏とTAITAI:
(笑)

會津氏:
『ロックマン』作りたいんだったら、カプコン辞めなきゃよかったんじゃねえの?みたいな話はあったんですけど、まあ、津田はそういう風に言ってました。

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會津氏:
それで、E3ゲームショウでしたかね。98年だったかのE3で、ちょうど『鬼武者』の出展か何かでアメリカに来ていた稲船さん(※)にお会いしました。

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(画像は電ファミの過去インタビューより)

※稲船 敬二 氏
大阪出身のゲームクリエイター。カプコンでは初代『ロックマン』にデザイナーとして参加し、その後『ロックマン』シリーズのディレクションや『鬼武者』等の多くのタイトルをプロデュースした。現在は独立し、株式会社comceptの代表取締役として活動中。独立後の代表作は横スクロールアクションゲームの『Mighty No. 9(マイティ ナンバーナイン)』、『ReCore』など。

會津氏:
日本のゲームショウとかだと、ガードが固いんですよ。要するにそういう大きな会社のトップって普通は近づけないじゃないですか。アポイントメントを取らないと。でも、アメリカのゲームショウだと普通にポツンっているんですよ(笑)

喜多山氏:
(笑)

會津氏:
しかも、英語が達者じゃない限り大体は誰とも話してない。なのでポツンといらっしゃる稲船さんを捕まえて、「津田が『ロックマン』を作りたいって言ってるんですけど」と話しかけたら、「ええよ、企画持ってきな!」と言われました。

その時は(ああ、稲船さんは社交辞令が上手いな~)と思って、「ありがとうございます、じゃあいずれ持ってきます」と言って、「よかった、稲船さんに持って来いって言われたわ~」と、まあ、社交辞令でも嬉しいよね。といった感じで日本に帰ったんです。

ところがその後、次の東京ゲームショウの時に、偶然、稲船さんに会場で遭って、すれ違った時に稲船さんが「會津!お前、ロックマンの企画書持ってくるって言ったのに持ってきてへんやんけ!」って言われてしまって……「え!本気だったんすか!?」って(笑)

一同:
(笑)

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會津氏:
「お前、嘘やったんかい!」って言われたんで、「あ、じゃあ持ってきます!」って言ってそこから作った企画書を冬頃にカプコンさんに持っていき、稲船さんに見てもらいました。「ほなこれ作ろか」という話になったのが、『ロックマン ゼロ』というタイトルだったんですよ。

喜多山氏とTAITAI:
へぇ~。

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(画像はROCKMAN UNITY「ロックマン ゼロシリーズ」デザイナー中山徹さんスペシャルインタビューより)

會津氏:
「キャラクターデザインとかどうします?」と言ったら、「お前、中山おるやろ。お前のところに。中山に描かせればいいやん」と言われたので、「あ、じゃあ中山さんに描いてもらいます」と言って、社内で一緒にカプコンを辞めてきた中山さんに絵描いてもらいました。

それと『ロックマン』を作るんだったら人手が足りないということで、カプコンを辞めたあとでに入った会社を退職しようって思ってた人たちにもちょっと声をかけたりしました。そうしたら「行く行く」という話になったので、もともと『魔界村』『ブレス オブ ファイア』など、カプコン時代にドットを打ってたクリエイターの人たちに声をかけて合流してもらいました。

そうして、『ロックマン ゼロ』っていうのを作るに至ったという感じですね。

喜多山氏:
そういう流れなんですね。

會津氏:
ええ、で当時の経営がむちゃむちゃしんどかったんで、稲船さんに「持ってこいや!」って言われたときに「あ……もしかしたら救われるかもしれない」と思ってがむしゃらに作って持っていった記憶はありますよね。

それで、「通してやるから、これ作れ」と言われた時に、「ああ……ようやくご飯が食べられる……」と思いました。

喜多山氏:
そうなんですね。じゃあ、恩人ですね。

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(画像は『Mighty No.9』のSteamストアより)

會津氏:
そうです。むちゃくちゃ恩人ですよ!
稲船さんに頼まれたら何も断れないです。後の話になるんですけど、『Mighty No. 9』というタイトルで「キックスターターやるよ、一緒にやらへんか?」って言われたときも二つ返事で「やります!」と即答しました。稲船さんに言われたら「イエス」か「ノー」じゃなくて、「イエス」か「はい」でしか答えない。

一同:
(笑)

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會津氏:
「ノー」言うたらあかんねん。「イエス」か「はい」で答えるようにしてます(笑)

喜多山氏:
へえぇ、そうなんですね。今もお付き合いはあるんですか?

會津氏:
そうですね『ガンヴォルト』の監修をしていただいているので。

喜多山氏:
そうなんですね。

會津氏:
はい。それで持っていて『ロックマン ゼロ 1』『2』『3』『4』と作らせていただいて、
その後、『ロックマン ゼクス』、『ロックマン ゼクス アドベント』、『ロックマン ゼロ コレクション』、さらには『ロックマン9』、『ロックマン10』までカプコンさんの下請けでやらせてもらいました。

その時に稲船さんから、「會津、お前プロデューサーやれ」とも言われて、「え?え?カプコンのプロデューサーいるじゃないですか?」と言ったら「一緒にやれ」と言われ、プレスリリースの監修をしたり、自分で作ったりもしました。

あとは広告代理店との会議に出させてもらったりとか、そういったものも全部カプコンさんと一緒にさせてもらって、学ばせてもらいました。

喜多山氏:
カプコンを辞めてからの方が、勉強させてもらってる感じですか?(笑)

會津氏:
マジですよ。本当に(笑)
稲船さんに足を向けて寝れないです。
稲船さんに全部、教えてもらった感じですね。

TAITAI:
稲船さんが、「プロデューサーをやれ」と言った、その心は何だったんですか?

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會津氏:
……分かんないですね!(笑)

一同:
(笑)

會津氏:
多分、「自分らでちゃんとゲームを作って食っていけるようにしたりたい」って稲船さんが思っていたんじゃないかな、と思うんですよね。

うちにいた、一緒にカプコンを辞めて「Club DEP」で賞獲った人間とか、あと津田とか、稲船さんがすごく気に入ってたんですよ。ふたりとも『ロックマン』を作ってましたし。

彼らをちゃんと食べられるようにしてあげたい。そのためには會津が頑張らなあかんから、會津のスキルを上げなあかん。ぐらいの感覚はあったのかもしれないです。すごく、面倒見よくしてもらいました。

喜多山氏:
愛情を感じますね。

會津氏:
ええもう、すごく助かりました。
それで、途中からさっき触れた『クレヨンしんちゃん』も作りましょうという話になり、『ロックマン ゼロ』のシステムができたぐらいに、「こういうシステム上でこういうアクションゲーム動いてる」っていう話もした上で、じゃあそれに『クレヨンしんちゃん』載せたらいいんじゃないの?みたいな話もあって。

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會津氏:
そうして『クレヨンしんちゃん』の仕事も貰って『ロックマン』と『クレヨンしんちゃん』の二大タイトルみたいな感じで社内で動くようになってから経営が安定して、そこからは社員も採り始めて役員も絞り込んで、ちゃんとトップダウンで動く会社の形にしようって話になっていきました。

だから、実質会社を2回潰してるんですよね(苦笑)SMEさんの仕事が終わったあと、SCEさんの仕事が終わったあと。それぞれに潰れるぐらいの打撃があって、これはこのままじゃイカンよということで方針転換をしてやっているので。

インティ・クリエイツっていう会社の体では28年間ぐらいやってますけど、最初の4、5年で2回潰れるほどの経験をしていますから、言ってみれば3回目ぐらいの会社の感じですよ。今の会社が生き残っているこの形っていうのは、私が経営する3番目の会社の体ですよね。1番目と2番目が失敗していますので。

喜多山氏:
まぁでも、結果的には潰れなかったわけですし……。

會津氏:
潰れなかったのは、みんなが……あの……ねぇ。
みんなが給料ないのに、がんばったから(笑)給料なくて、よく皆生きてたなと思うんですけど、まあ皆若かったので、なんとかなりましたね。20代だったので。

喜多山氏:
でもまあ、改善されて今の形に至るというところですね。

會津氏:
そうですね。

喜多山氏:
でも、確かにその2タイトルで御社のブランドイメージも完全に確立されましたよね。

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會津氏:
そうですね。そういう形でもう、私は恩は一生忘れない。ハハ…(笑)

喜多山氏:
ご縁ですよね。いいご縁で成り立っているんだろうな、と思います。

會津氏:
そうです、そうです。ありがたい限りです。
この2タイトルのおかげで、なんとか軌道に乗って、そこから黒字が続くようになりましたので……。

喜多山氏:
なるほど、素晴らしいですね。

後編へ続く


インティ・クリエイツの新作ネコアクションゲーム『九魂の久遠』(5月30日発売予定)紹介映像はこちら!

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『九魂の久遠』メインビジュアル(公式サイトはこちら)

「ゲーム人生酒場」シリーズ紹介

▼第1回・前編

▼第1回・後編

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喜多山浪漫氏の小説作品『エトランジュオーヴァーロード』はこちら(小説家になろう)
喜多山浪漫氏の小説作品『魔法捜査官』はこちら(小説家になろう)

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ライター
MOTHER2でひらがなを覚えてゲームと共に育つ。 国内外問わず、キャラメイクしたりシナリオが分岐するTRPGのようなゲームが好き。 Divinity: Original Sin 2の有志翻訳に参加。 ゴーストオブツシマの舞台となった対馬のガイドもしている。 Xアカウント(旧Twitter)@Tsushimahiro23

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