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なぜ、令和生まれのオンラインRPG『ブループロトコル』からは、昔ながらの「オンラインゲーム」の雰囲気を感じるのか? 「8時間かけてジュノに行く」「究極のエンドコンテンツはチャット」──根源にあったのは、開発陣が『FFXI』で体験した「人との交流」の楽しさだった

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ゲーム的に大きな意味のない機能も、居心地のよさに繋がっている

──「無駄なところ」というと、『ブルプロ』にはゲーム的には大きな意味はない機能が数多く実装されていますよね。

福﨑氏:
「これって結局なにに使うの?」と思われる、何気なく見えるものが、じつは開発メンバーの誰かのこだわりのもと入っている機能であることはけっこう多いんです。

代表的なものだと、「手つなぎ」のジェスチャーです。ゲーム的にはなんの意味もないのですが、そこからコミュニケーションが発生したり、スクリーンショットを撮るきっかけになったり、没入感が高まる要素になっています。

──ゲーム的に必然性がない機能を実装する際ってどのような判断基準があるんでしょう? 必要ではないからこそ難しいイメージがあります。

福﨑氏:
おっしゃる通り、ゲーム的に大きな意味を持たない部分って、作りきって実装するのにすごくパワーがいるんですよね。「なんのために作ってるの?」って言われたらぐうの音も出ないので、みんなで必然性を共有しにくいんです(笑)。

今回のアップデートだと「フチに座れるようになる」機能が追加されたんですが、これも僕が「こんな絵が見たいんだ」という気持ちで押し切ったところがあるので。

定期的に追加していくのは難しいんですが、今後もこういったこだわりの部分は追加していきたいと思っています。

──機能としては絶対に必要ではないけれど雰囲気が出る、という意味だと「フィールドでキャンプでたき火をつけて座るとHP回復が早くなる」仕様も近いものがあります。
HP回復の手段として必ずしも必要ではないんですが、たき火があることによって、ひと休みしようという気持ちがでてきます。

下岡氏:
HP回復だけなら、敵に見つかっていない状態であれば自動的に回復はしますからね。印象的なのが、たき火を複数人で囲んでいて、火が消えたら自然と誰かが立ち上がって火をつけてくれるんですよ。

鈴木氏:
じつは「火がついている時間をもっと長くしてほしい」という要望がけっこうな数きていまして(笑)。

下岡氏:
「もうHP全部回復したでしょ?」とも思うんですが、そういう機能的なことではなく、たき火を囲んでひと休みしている雰囲気を楽しんでいただけているのかなと。

『ブループロトコル』インタビュー:昔ながらの「オンラインゲーム」の雰囲気を感じるはなぜなのか_006

──そういった一見すると無駄に見える要素が、居心地の良さみたいなものに繋がっているんでしょうね。

下岡氏:
『ブルプロ』には街や風景のいたるところに、走っている足を止めて「これってなんだろう?」と感じるような気づきだったりがいろいろと散りばめられていて、結果として居心地が良いと思ってもらえているのは、「住んでる感」といった感覚に繋がっているんだと思います。

──こういった感覚が得られるゲームというのはとても貴重なんじゃないかと思います。他のオンラインゲームではなかなか味わえない感覚が『ブルプロ』には存在すると思うんです。

福﨑氏:
以前別のタイトルを担当していた時に思っていたことがあるのですが、「もう少しこうだったら良いのに」と言い合える環境ってすごく楽しいと思っていて。

もちろん変に狙って調整を削ったりってことはないんですけど、結局調整ってもぐら叩きに近くて基本的にはずっと終わらないものなので。それも含めてコミュニケーションの一要素としてゲームを楽しんでいるのかなと思うこともあります。

下岡氏:
僕なんかは「下岡」という名前のままプレイしているので、ゲーム内で直接要望をお伝えいただくこともあります。申し訳ないですが、ゲーム内でご意見やご要望をいただいても、正式な窓口へ誘導する形にはなるのですが。

そういう要望のなかには「もう少し先までプレイしてくれたらわかってもらえるかも」と思うこともありますし、逆に「その人の深さが自分にはまだわからない」ということもあります。

ただ、そういうところも含めて彼らが楽しんでくれている様子はすごくありがたいですし、僕と話しているような感じで、その人とほかの友だちが話してくれているとしたら、とても嬉しいことだなと思います。

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「向こう側にいる人」との交流や協力が意識せずともできるように

──古きよき「オンラインゲーム」に影響を受け、MMOらしいコミュニケーションや雰囲気が作られている『ブルプロ』ですが、そもそもこのゲームの企画が立ち上がった経緯とはどういったものだったのでしょうか。

下岡氏:
もともとバンダイナムコオンラインの社内で昔からオンラインRPGを作りたいという夢はあり、僕が入社した当時そうした機運が高まっている時期でした。

そんな「アニメの世界を旅できるRPGを作りたい」という発想と、今まで僕たちが経験してきたオンラインRPGの楽しさとかドラマといったものを後世に残していきたいという思いがあり、そこからスタートしていった、という形です。

ただ、一社で作りきるのは困難を極めることは明らかでした。そこで、バンダイナムコスタジオさんと一緒にという形をとって……というのが大元であります。

ただ、自分としては「オンラインで人が集まる」だけではなく、これまで誰も見たことのない体験を届けたい思いと、自分たちが楽しんできた『FFXI』でのような交流する楽しさ、協力する楽しさを味わっていただきたい。そう考えていました。

『ブループロトコル』インタビュー:昔ながらの「オンラインゲーム」の雰囲気を感じるはなぜなのか_008

──先ほど『FFXI』での原体験についてはお話いただきましたが、他に影響を受けたタイトルはあるのでしょうか。

下岡氏:
最初の企画書で「こういうゲームを目指したい」と書いてあったのは『FFXI』……あとは『風ノ旅ビト』に『Destiny』、『ワンダと巨像』もあげていました。とくに『風ノ旅ビト』は本当に驚かされたゲームのひとつです。

──『風ノ旅ビト』ですか。少し意外です。

下岡氏:
『風ノ旅ビト』では、ゲーム中に自分と同じ姿のキャラクターが登場して一緒に旅をするんです。

コミュニケーションをとるための手段は用意されていなくて、とくに説明もないから、最初はNPCかと思うんですが、妙に動きが人間っぽくて……。じつはそれがオンライン上のプレイヤーなんですよね。最後のスタッフロールに、一緒に遊んだ人のプレイステーションIDが出てきて驚愕しました。

鈴木氏:
「あれは人だったんだ」という衝撃ですよね。

下岡氏:
そうです。映画で例えると、『猿の惑星』のラストみたいな衝撃がありました。

──なるほど、ここでも「向こうに人がいる」というオンラインの要素が。

下岡氏:
「同じ目的を持っている人同士、言葉がなくても通じ合う瞬間があるんだ」と感じられた瞬間です。

その体験があって、『ブルプロ』でも「その場にいる人たちが意識しなくても協力できるようなプレイができるといいよね」という話をしていました。

──『ブルプロ』は、プレイヤー同士が絡みやすいというか、気軽に交流したがる雰囲気がありますよね。
最近のゲームはとくに「機能性」や「便利さ」に重きが置かれているものが多いように感じます。一方で「無駄」や「余白」のような感覚がコミュニケーションの場に与える影響も少なくないと思うのですが、そういった点に関してはどれくらい意識されているのでしょうか?

福﨑氏:
たとえば、既存のグループの中でコミュニティが強固に完結しすぎてしまっていて、野良の人が入りづらい状況はよくあると思います。

それよりは、適度なワイワイ感だとか、合間合間に行われるコミュニケーションのような感覚を大切にしたい、というのは意識していました。

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──MMOのマナーとして、周囲の不特定多数に発言が聞こえる「白チャット(周囲のプレイヤーに見える発言)」は控えましょう、みたいな雰囲気があったりもしますよね。

福﨑氏:
それで言うと、『ブルプロ』ではクローズドテストのときからプレイヤーさんが白チャットでたくさん喋ってくれていたんですよね。

それが一時的な風潮で終わってしまう可能性もあったので、文化として根付いていくのだろうか、というのは懸念していました。ただ、プレイヤーさんがワイワイ踊っている輪の中に僕たち運営メンバーも加わって一緒に話をして遊ぶなどしていくなかで、空気感が固まったというのはあるかもしれません。

下岡氏:
「こんな感じでやっていいんだな」という雰囲気はできていたかもしれませんね。

じつは若い世代のプレイヤーが多い『ブルプロ』

──ちなみに、『ブルプロ』のプレイヤーはどのくらいの年齢の方が多いのでしょうか。

鈴木氏:
アンケートなどの結果によると、ボリュームゾーンとしては25歳前後になっています。当初は、僕らと同じ世代の35歳から45歳くらいが多いと予想していたんですが、いざ蓋を開けてみると若い世代の方々に多く遊んでいただいています。

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──MMOとしては比較的若めなプレイヤー層ですよね。

下岡氏:
そうですね。『ブルプロ』が初めてのオンラインRPGというプレイヤーの方は多いです。

ありとあらゆる遊びがある今の時代において、「オンラインで多くの人と一緒に冒険するという体験に関しては『ブルプロ』が初めて」という声が多い点も、自分たちがチャレンジして良かった部分です。

福﨑氏:
ただ、やはりそのあたりの世代に合わせたチューンナップは必要だな、と考えることもありますね。ここまでお話した通り、僕らの世代にとってはノスタルジー的な楽しさを意識している部分は結構あります。

ただ、新規の若いプレイヤーさんがそれを感じることは当然ありませんから、もう少し「パッと見」で楽しめる部分を強化しないといけないね、という話はよくしています。

──すぐに楽しさを体験できないと、プレイヤーはすぐに離れてしまうと。

福﨑氏:
ええ。逆に、今の時代だからこそハマった要素もあります。スクショの遊びかたなんかは、SNS文化が発達する前だったとしたらここまで爆発的な流れにはなっていなかったでしょうしね。

下岡氏:
プレイヤーさんが自分で発信できるというのはとても大事な要素ですよね。

──ノスタルジーとおっしゃいましたが、一方で今日お聞きしてきた『ブルプロ』の良さって、より原始的な、誰にとっても楽しい部分もあると思います。
スクショの文化自体はすごく現代的ですが、撮影のために集まって役割分担をして……といった風景は、古きよきオンラインゲームにあった、人と遊ぶ楽しさに近いですよね。

福﨑氏:
スクショという形で出力されてはいるんですが、結局のところ、場所と時間を共有して人と遊ぶっていう事をしているんですよ。そういう意味ではすごくメタバース的だとも感じます。

下岡氏:
ただ一方で、『ブルプロ』はあくまでゲームなんです。美しい世界に居場所があって、人と遊ぶ楽しさがあるのはわかったけど、「ゲームとしての便利さやおもしろさは」についてはまだまだブラッシュアップする必要はあると思っています。

みんながみんなミッションに行きたいという訳でもないし、みんながみんな自由探索が好きという訳でもないですから。プレイヤーさんの中にもさまざまな好みがある以上、アンケートなどを参考にしつつ、できるだけバランスをとってやっていきたいと考えています。

福﨑氏:
スクショの話に繋がりますが、そもそものゲーム体験が充実していれば、その感情がシチュエーションに乗ってきて、それがさまざまなジェスチャーなどでバリエーション豊かに表現できるよね、という相乗効果を生み出すはずですから、そのあたりは両輪で整えていきたいですね。

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運営としても促しているスクショの楽しみかた

──『ブルプロ』では自撮りっぽいスクショを投稿している方をよく見かけますよね。こういうコミュニケーションの取りかたが自然になっているというのが、なかなか他のゲームではないんじゃないかと。

福﨑氏:
スクリーンショットの楽しみかたに関しては、運営として促しているところもあります。公式放送の『ブルプロ』通信で紹介したり、スクショコンテストを開催したりしているので、その中で「こういう遊びかたをしてもいいんだよ」というメッセージは伝わり続けているのかなと。

それがプレイヤーさんたちの間でも「だったらこういうこともできるじゃん」という盛り上がりに繋がっているんじゃないでしょうか。

もうひとつ理由があるとすれば、『ブルプロ』のキャラモデルって、寄っても破綻しないんですよ。だからアップの写真が撮りやすいんです。これは他のゲームにはなかなかない特徴だと思っています。

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──キャラモデルに関しては、なにか技術的に特別なものがあるのでしょうか?

福﨑氏:
影のつけかたやシェーディング、輪郭線などには死ぬほどこだわっていて、CEDEC【※】で発表もしています。

※CEDEC:国内最大級のゲーム業界向け技術カンファレンス。

下岡氏:
3Dモデルだと破綻しやすい「あおり」の角度も、『ブルプロ』はかなりちゃんとしていますよね。あれは本当にすごい。

福﨑氏:
『ブルプロ』のスクショって、「スクリーンショット」というよりは「ポートレート」みたいな性質のものも多くて。アップの写真が撮りやすいキャラモデルと、スクリーンショット周りの機能などがうまく噛み合っているんだと思います。

鈴木氏:
そういえば「東京ゲームショウ」にいらしたプレイヤーさんに、スクリーンショットの写真集をプレゼントしていただいたことがありますよ。「すごいことしてる!」って驚きました。

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プレイヤーからプレゼントされた写真集。

下岡氏:
被写体となるモデルの方の他に、カメラマン役の人がいるんですよね。自分は写り込まず、撮影に専念するという。

福﨑氏:
アビリティのエフェクトを光源として使っているから、撮影係が4、5人いるって聞きました。「ゲーム内にレフ版が欲しい」なんて言われたことまであります。

──光源役は私もやったことがあります(笑)。

一同:
(笑)。

福﨑氏:
『ブルプロ』では衣装や見た目の部分でお金をいただく以上、フォトモードが一種のエンドコンテンツになるのではないか、という話はしていました。

ビジュアル的なこだわりに関しては唯一無二のゲームだと思っているので、そこを綺麗に出力できるようにしようと。

──「レフ板」の他にも、プレイヤーさんから要望を貰ったりはするのでしょうか。

福﨑氏:
よく言われるのは、時間偽装機能ですね。フォトモードの間だけ、ゲーム内の時間を自由に設定できるような機能です。

下岡氏:
これはよく言われますね。僕も撮影にお付き合いしたことがあるのですが、構図が固まってから、光源の向きがちょうどよくなるまで待機するんですよ。「日の出まであと15分です」みたいな感じで。

福﨑氏:
ただ、その苦労や努力込みで「すごいな」って思えるところもあると思うので、なかなか難しいですね。

鈴木氏:
便利にするべきところとそうでないところ、みたいな話に繋がってきますよね。

福﨑氏:
そういう苦労や努力がある意味では強固なコミュニケーションになっている部分もありますから。「この時間しか撮れないぞ」みたいな結束ができたり(笑)。

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編集長
電ファミニコゲーマー編集長、およびニコニコニュース編集長。 元々は、ゲーム情報サイト「4Gamer.net」の副編集長として、ゲーム業界を中心にした記事の執筆や、同サイトの設計、企画立案などサイトの運営全般に携わる。4Gamer時代は、対談企画「ゲーマーはもっと経営者を目指すべき!」などの人気コーナーを担当。本サイトの方でも、主に「ゲームの企画書」など、いわゆる読み物系やインタビューものを担当している。
Twitter:@TAITAI999
ライター
ゲーム、模型、ファッション、ドール、オーディオなどさまざまなジャンルの沼を渡り歩くスワンプウォーカー。関心のあるものに後先考えずに全てを捧げる狂戦士。手がけた代表的な記事は 「人はなぜ少女にメカをくっ付けるのか」 「うつ病の自分が『DEATH STRANDING』を遊んで、“実感”を取り戻した話」など。
Twitter:@Leyvan44
サブデスク
美少女ゲームとアニメが好きです。「課金額は食費以下」が人生の目標。 本サイトではおもにインタビュー記事や特集記事の編集を担当。
Twitter:@takepresident

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