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なぜ、令和生まれのオンラインRPG『ブループロトコル』からは、昔ながらの「オンラインゲーム」の雰囲気を感じるのか? 「8時間かけてジュノに行く」「究極のエンドコンテンツはチャット」──根源にあったのは、開発陣が『FFXI』で体験した「人との交流」の楽しさだった

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『ブルプロ』のコミュニケーション哲学

──お話を聞いていると、古きよき「オンラインゲーム」の楽しさをいかにして現代の人たちに届けるか……が、『ブルプロ』の命題のひとつにあるのかなと感じるのですが、そのあたりはいかがお考えなのでしょうか。

下岡氏:
『ブルプロ』で初めて体験するという方が多い以上、「過去のオンラインゲーム経験がないとおもしろさがわからない」といったことは避けたいと考えていました。だからこそ、経験がある人からすると、物足りない部分が出てくるとは想定はしていました。

──往年のプレイヤーが戻ってきてくれたら嬉しいですし、一方で未経験の人に対してこのおもしろさをどうやったら伝えられるんだろう、という悩みはありますよね。

下岡氏:
やはり根底にはコミュニケーションの楽しさというものがあるべきなんですが、ただ、コミュニケーションって難しくて。それこそ、僕たちの『FFXI』経験みたいに、最良の友だちができたとしたら、何のゲームだろうが楽しいんですよ。仲のいい友だちと遊んでいるわけですからね。

それはそれで良いことですが、一方で誰もが誰もがそれを望んでいるわけではないというのがあって。極端な話ですが、友だちを作ることが同調圧力みたいになってしまってはよくないですよね。

──人と人との距離感の話ですから、難しいところですよね。ワイワイやりたい人もいれば、静かに遊びたい人もいます。

下岡氏:
ですから、開発側でできることとしては、可能な限りそのバランスをとっていくことだと思っています。

たとえば、自動でミッションに参加できる「マッチングサポート」でレベル上げが追いつきやすいようにしてあげたりとか、近くの人と簡単にパーティを組める「今すぐパーティ」で助け合いがしやすいようにしてあげたりとかですね。

開発当時に「クラス理論」と呼んでいた考えかたがあって、学校のクラスって、学年は同じだけど、さまざまな人たちが一箇所に集まってきますよね。その中で、とくに仲が良くなる人もいれば、友だちにならない人もいる。だけど少なくとも「知らない人」から「知ってる人」になる意識みたいなものは芽生えます。

『ブルプロ』の「今すぐパーティ」でも、そこから仲良くなる人もいれば、黙って抜けていく人もいるし、ときどき挨拶してくれる人もいる。進捗が似たような人が集まって遊べば接触率がふえ「知っている人」が増えるんじゃないかということを意識していました。

──手を振るジェスチャーをしたり、「ありがとう」のスタンプを送ったりしますよね。

下岡氏:
あらかじめ「ここまでやったら抜けますね」と言ってくれる人もいますよね。いろいろな人がいますが、こういったやり取りを何度も繰り返す中で友だちになれる人がいたら、それはもっと楽しくなるよね、と思っています。

必ずしも友だちを作らなきゃいけないということではないんですが、そういう機会は増えるようにと設計していますね。

──本来はパーティを組むのって、人に呼び掛けたり、申請を送ったりしなければならないので足が重く感じる部分もありますが、、「今すぐパーティ」は自動で近くの人とマッチングするので、ゆるく繋がることができますよね。「よければどうぞ」みたいな感覚です。

下岡氏:
「今すぐパーティ」をつけていると、ウェルカムな雰囲気が出ていますよね。ただ、それも「やらなきゃいけない、やったほうがいい」ではなく「得意な人、好きな人が自由にやる」がいいと思っていて。

自分から飛び込んでいくのが苦手な人もいるし、人を誘うのが好きな人もいます。そういうところのコミュニケーションをしやすくするためのものだと考えてもらえればと思います。

──似たような仕組みだと「ライク」がありますよね。チャットを送ったり、フレンド申請をするでもなく、ちょっと「ライク」を送るだけでゆるめのコミュニケーションがとれるのがすごくいいなと思っています。

鈴木氏:
「ライク」はまさしく緩めのコミュニケーションを意識して作られたものです。チャットを送るのってどうしても一歩踏み出さなければいけないので、「いいね!」という気持ちを、ミッション終了後などに気軽に送れるようにする、というのは意図的に作られています。

下岡氏:
「ライク」もそうですが、スタンプ機能なども、わざわざ喋るよりはポンと送るという感じの、いま風のコミュニケーションに合わせるということを意識しています。条件による自動返信はうまく攻略に使っていただいたりもしていますね。

『ブループロトコル』インタビュー:昔ながらの「オンラインゲーム」の雰囲気を感じるはなぜなのか_015

「アステルリーズは、いつ戻ってきても拒絶しないような街」。サービス開始からの1年間を振り返る

──ここまで『ブルプロ』がどういった思いのもとに作り上げられてきたのか、それはどういった形でゲーム内に表れてきているのか、といった話を伺ってきました。実際にサービスが開始してから1年が経ったわけですが、振り返ってみてどのような1年間でしたか?

下岡氏:
本当に考え続けて、走り続けた1年間で、あっという間でした。

鈴木氏:
本当に、早いと思いました(笑)。

下岡氏:
振り返ってみると「もう1年経つんだ」という驚きもあるんですが、その中で、プレイヤーさんの声を聞きつつ、自分たちでよくないとわかっている部分でも、開発には長い時間がかかるものがあったりして。

そういうところをうまくキャッチボールできない時期から、ちょっとずつ歯車がかみ合い始めて、プレイヤーさんからも期待の声を頂き続けていた、というのが本当に力になりましたし、それがあったからここまで来ることができました。そういうことを、感謝とともに伝えたいですね。

『ブループロトコル』インタビュー:昔ながらの「オンラインゲーム」の雰囲気を感じるはなぜなのか_016

──コミュニケーションの力みたいなものが、ゲームの運営自体の支えにもなっているということですね。

鈴木氏:
当初開発運営で考えていたゲームのモデルと、お客さまから実際にいただくご要望やデータを見た時に、ズレがあった部分というのはあって。そこが不満として「『ブルプロ』よくないよね」と言われている箇所が多々ありました。

そこに対してちゃんと向き合って変えていかないといけないけど、時間のかかるものも多かったので、できるところから優先順位をつけて徐々に改善してきたという形です。

──プレイヤーの声はしっかり届いていて、問題も把握しているけど、現実の問題とも折り合いをつけなければならないと。

鈴木氏:
いまの『ブルプロ』がアンケートなどでよく言われるのは、やりこみ要素がないということです。

スクリーンショットや街の雰囲気を楽しんでいただいている方がいる一方で、もっとゲーム部分を楽しみたい、もっとこの世界で遊んでいたいのにやることがない、という状態でした。毎月のアップデートは入れているのですが、結局代わり映えがしなかったんです。

そこで今回のアップデートでは、やりこみ要素を追加し、そこを突き詰めた先の目標をきちんと提示するということをしました。そして、その目標を達成するためには、たくさんミッション周回をしなければならないので、そうした時の心の変化が起きるように、ラッキー要素の楽しさやうれしさみたいなものも向上させています。

──単なる要素追加というよりは、ゲームの遊びかたみたいなところに変更が加わったんですね。

鈴木氏:
今回のアップデートはエンドコンテンツのサイクルという箇所の改修なんですが、「エンドコンテンツにたどり着きやすいようにする」施策はこれまでのアップデートで行ってきました。

経験値の獲得量を上げてレベル上げをしやすくしたり、武器を配布したり、クリア率の低いミッションにも調整を入れました。始めやすく、エンドコンテンツに辿り着きやすいゲームになっているので、過去にやめてしまった人にも、もう1度プレイしてもらえると嬉しいですね。

──ストーリーを進めるだけなら、本当にスムーズに進行できるようになっている印象があります。リリース初期のころ「天恵の聖堂」がソロでは難しくて。あの周辺にはすごくたくさんのプレイヤーがいたので、その場で呼び掛けてパーティを組んで……という、すごくオンラインゲーム的な体験をしたのを覚えています。

福﨑氏:
そういった箇所の改善はしてきているので、エンドコンテンツも早い段階で楽しめるようにはなっていると思います。

あとは、今回の「フチ座り」のような、シチュエーション部分の機能は今後も増やしていきたいですね。エンドコンテンツが縦の広がりだとすれば、横の幅に相当するような、ちょっとしたミニゲームだとか、ゲームの進行度に関係ない遊びは、いろいろ出していきたいですね。

不具合の修正やシナリオの追加など、「やるべきこと」はあるのですが、それと同じくらいこだわっている機能やシチュエーションという「やりたいこと」もあるので。今後もバランスを取りながらアップデートしていきたいと思っています。

下岡氏:
アステルリーズは、いつ戻ってきても拒絶しないような街になっていると思うし、そういうシステムは今後も用意しつづけると思います。

僕は最近深夜4時ごろに『ブルプロ』をプレイすることがあるんですが、人の少ない時間帯なので独特の結束感があるんですよね。いっとき離れてたけど戻ってきた人の復活祝いをやっていたりするんですよ。

そういったゆるい繋がりだとか、街全体がウェルカムな状態なのが『ブルプロ』の良さだと思っているので。キャラを消さない限りは、いつ帰ってきても自分の居場所があると思います。

福﨑氏:
結局今の『ブルプロ』の空気感って、僕たちが準備して仕込んだ部分もあると思うんですが、プレイヤーさんたちの中で作り上げた雰囲気という部分もかなり大きいと思っています。その空気感を壊さないように、うまく維持しながら、より良いものに繋げていくことを目指したいです。

「トレハン・ハクスラ的な方向性」を目指したアップデート

──この1年を振り返ったとき、ゲームとしての転換期として「武器ドロップ率の大幅アップ」や「限界突破の実装」のアップデートかと思います。『ブルプロ』の遊びかたが大きく変わったのかなと。

下岡氏:
あのときのアップデート( Ver.1.02.100 )があったからこそ、今回のアップデート( Beyond)が「トレハン・ハクスラ的な方向性」に定まったというのは多分にあります。

当時は武器ドロップというとただのラッキー要素で、基本的には武器はクラフトで作るものでした。ただ、武器を作るためにはいろいろな素材を拾って、そのうえでたくさん周回をして……。とにかく時間のかかるゲーム性になってしまっていたんです。ですので、かなり早い段階から「トレハン・ハクスラ的な方向性」を目指していました。

鈴木氏:
「トレハン・ハクスラ的な方向性」のほうがプレイヤーのみなさんが求めているものに近いだろうという感触はあったのですが、その規模のアップデートになると実装するまでに時間がかかってしまう。ですので、まずは武器ドロップ率の調整や限界突破の実装など、できることから順次に実装していたわけです。

『ブループロトコル』インタビュー:昔ながらの「オンラインゲーム」の雰囲気を感じるはなぜなのか_017

──今回のアップデートでは「ヴァリアントアリーナ」という、パーティを組んで参加するランキングコンテンツも追加されましたよね。

鈴木氏:
「ヴァリアントアリーナ」は最高難易度のコンテンツという扱いです。4ヵ月をワンクールと位置づけて、プレイヤーのみなさんには期間内のクリアを目指して挑戦していただきます。

最初のうちはとくに難易度が高く、時間経過とともにより強力な装備が提供されていき、徐々に難易度がマイルドになっていく、という流れです。その分、早くクリアできた人にはランクの高い勲章が付与されるようになっていますし、クリアタイムを競う形にもなっています。

下岡氏:
今回のアップデートでは武器の効果にレア度の概念も導入されて、より強力な装備が手に入るようになりました。ただ、せっかく強い装備が手に入ったら、その活躍の場がほしいじゃないですか。それが最高難易度コンテンツを用意したという側面もあります。

──最高レアリティのレジェンダリー武器はこれまでの武器と比べると明確に強さが違って、ゲーム体験も変わってきそうですね。

鈴木氏:
レジェンダリーは……かなり変わりますよ。

下岡氏:
あれはもう……ヤバイよね。プレイヤーさんがその場のヒーローになれるようなことは起きると思います。

福﨑氏:
レジェンダリーの効果に関しては、説明文を読んだら使いたくなるような、ロマン的なところを重視して作りました。

「自分にはこのレジェンダリー合わないな」という好き嫌いが発生するのも許容しているくらいです。ただその分、わかりやすいスーパープレイが発生するようなことにはなると思っています。

──パーティの窮地を救って、「お前すごいじゃん」みたいな感じですよね。

下岡氏:
そういったスーパープレイや、ヒーロー的な体験をしたあとに、会話が生まれることが重要ですよね。言いかたは難しいですが、究極のエンドコンテンツって「チャット」みたいなところがあると思っているんです。

今日は『FFXI』の話に始まり、本当にたくさんのことを喋らせていただきましたが、それはやっぱり思い出があるからということに尽きると思うんです。

いつでも戻ってこれるし、それが何年か経ったときに、思い出として語れるってことが、オンラインゲームのよさだし、『ブルプロ』もそうありたいなっていうのはありますよね。

福﨑氏:
いっしょにゲームを遊んでいた人同士だといくらでもエピソードトークができちゃいますよね。『ブルプロ』もそういった思い出に残っていくことが目標だと思っています。思い出に残るためには、感情の振れ幅が大切なので。そういうものを作り出していきたいです。

下岡氏:
プレイヤーのみなさんはけっこうな時間をゲームの中で過ごされますよね。

僕の持論ですが、それって本当の生活とそこまで変わらないと思うんです。そこには本当の友人と本当の友情があるから、共有した思い出はいつまでも残りますし、それが『ブルプロ』の目指していきたいところです。

福﨑氏:
……今日お話していて、また『FFXI』を遊びたい気持ちがでてきました(笑)。

一同:
(笑)。

『ブループロトコル』インタビュー:昔ながらの「オンラインゲーム」の雰囲気を感じるはなぜなのか_018


『ブルプロ』開発陣による『FFXI』での強烈な原体験。それは「(画面の)向こう側にいる人」との交流であり、接する相手が人間だからこそ感じられる楽しさ。人間同士だからこそ育まれた思い出だった。

開発陣がかつて謳歌したそんな体験を『ブルプロ』でも……。そんな思いが込められた本作には、決して機能的ではない、ゲーム的には大きな意味がない、「無駄なところ」がある。しかし、それこそがMMOらしい雰囲気を作っており、居心地のよさに繋がっているのだろう

そんな理想だけでなく、プレイヤーの寄せる期待との「ズレ」についても向き合ってきたこの1年。「やりこみ要素が少ない」とも評されたリリース初期の状態から、アップデートを重ね、改善に取り組んでいる。「トレハン・ハクスラ的な方向性」に舵取りをした本作が、今後どのような体験をプレイヤーに届けていくのか。2年目の歩みを見守りたい。

「アステルリーズは、いつ戻ってきても拒絶しないような街になっている」──そうある限り、『ブルプロ』の世界は人と人との思い出を紡いでいく場所になり続けそうである。

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編集長
電ファミニコゲーマー編集長、およびニコニコニュース編集長。 元々は、ゲーム情報サイト「4Gamer.net」の副編集長として、ゲーム業界を中心にした記事の執筆や、同サイトの設計、企画立案などサイトの運営全般に携わる。4Gamer時代は、対談企画「ゲーマーはもっと経営者を目指すべき!」などの人気コーナーを担当。本サイトの方でも、主に「ゲームの企画書」など、いわゆる読み物系やインタビューものを担当している。
Twitter:@TAITAI999
ライター
ゲーム、模型、ファッション、ドール、オーディオなどさまざまなジャンルの沼を渡り歩くスワンプウォーカー。関心のあるものに後先考えずに全てを捧げる狂戦士。手がけた代表的な記事は 「人はなぜ少女にメカをくっ付けるのか」 「最高のゲーム用ヘッドフォンを求めて」など。
Twitter:@Leyvan44
サブデスク
美少女ゲームとアニメが好きです。「課金額は食費以下」が人生の目標。 本サイトではおもにインタビュー記事や特集記事の編集を担当。
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