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いにしえの“ネトゲ廃人”が『ブループロトコル』を遊んで思ったことーー今のSNSよりも「居心地のいい場所」としての「オンラインゲーム」を考えてみた

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 ついに正式サービスが始まった『ブループロトコル』(以下、『ブルプロ』)。同時接続数は20万を記録し、国産オンラインゲームの新星として大きな注目を集めている。
 オンラインゲーム歴20年あまりーー古くは『Ultima Online』『Ever Quest』からMMORPGを遊び込み、国産オンラインゲームを一通り遊んで来た筆者も、本作には大いに注目していて、それこそベータテストの段階から参加してきた。

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画像はクローズドベータテスト最終日の様子。

 さて。そんな筆者が『ブルプロ』正式サービス後、しばらく遊んで率直に感じたのは、

 「なんだか、すごく“懐かしい雰囲気”があるオンラインゲームだ!」

ということだろう。

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街中で特に目的もなく雑談をしながら戯れる人たちや、何故か裸で踊っている人たち、それをなんとなく眺める人たち――そんな昔懐かしのネトゲでよく見た光景が、そこにはあった。

 オンラインゲーム特有の温かみ? 人情味? あるいはワイワイ感? 筆者がこれまでオンラインゲームで感じてきたなんとも言えない感覚を、本作では改めて感じさせられたのだ。
 思えば、最近のオンラインゲームは、良くも悪くもシステムが整備されたこともあって、そうした人の雑踏感みたいなものが薄れていたーーということもあったのかもしれない。

 具体的に何が他のオンラインゲームと違うのかと一言で言い表すのは難しい。しかし、このネトゲ特有のユルさ、温かみのようなものを、本作は狙って作り出しているんじゃないか?
 少なくとも、この空気感を大切にしているというのは、『ブルプロ』を遊んでいると確かに感じるのだ。

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フィールドで狩りをして小休止するとき、ほかのプレイヤーとたき火を囲んでいると、少しだけ寂しさが紛れる。特に会話はなくとも、誰かと同じ場を共有している、ここが自分ひとりだけの世界ではないと感じられた。

 「開発側がこの空気感を大切にしている」と思う根拠は他にもある。
 例えば、下の画像にあるタイムアタックやスコアアタックのランキング報酬を見てほしい。

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(画像は『BLUE PROTOCOL』公式サイトより)

 西暦2023年、令和5年の今に†(ダガー記号)て……

 この中二病センスの称号を用意するのは、どう見ても意図的というか……いにしえのネトゲを通ってきた人間の仕業なのは“確定的に明らか”だろう。いや、そうに違いない!!

 というわけで、本稿では、『ブルプロ』のどこに懐かしさをおぼえたのか? あるいは、その懐かしさの源泉はなんなのか?を探りながら、「そもそも、どうしてオンラインゲームは楽しいのか?」といった部分について、思ったことを少し書き連ねてみたい。
 また、すでに多くのオンラインゲームがリリースされ、成熟したタイトルも数多くある今、

 新作の国産オンラインゲームである『ブルプロ』を遊ぶ意義

とはなんなのか?(というと、大げさかもしれないが)についても探ってみたいと思う。

文/Leyvan

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フィールドでネームド(特定の条件で出現する強力なボス)と戦うときや、最大30人で挑むレイドミッションでは、チームもパーティもバラバラな人たちが一丸となって戦う「お祭り感」と緩やかな連帯感がある。
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大物を釣り上げようと釣りスポットに入り浸っていると、いつの間にか周りに人が集まってきて釣り大会が始まる。釣れた魚を報告し合ったり、思わせぶりなニクいヤツ(「カツオが来たか?!」と期待させてからのアンコウ)への文句を言い合うなど、何でもないようなことがちょっとしたイベントになる。

「そこに人がいる」と思えるライブ感。ライク(いいね)が緩く繋がるきっかけに

 オンラインゲームといえば、当然だが自分以外の数多くのプレイヤーが存在するものだ。

 今ではどんなゲームでもオンライン要素は当たり前のようにあり、ネットワークを通して誰かと一緒にゲームを遊ぶことは特別珍しいことでもなくなった。
 しかし、それでも数十人、数百人規模で同じエリアにプレイヤーが混在するMMORPGやMOアクションゲームは、「そこに人がいる」という格別の存在感、ライブ感がある。

 そんなオンラインゲームの中でも『ブルプロ』の良いところは、プレイヤーキャラクターの「顔」がよく見える点だと思う。

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キャラクターの顔がよく見えるのがとてもいい。ストーリーでも自キャラが喋ったり、表情豊かに動くので「うちの子かわいい」がモチベーションになる。

 ミッションに挑むとき、パーティメンバーの姿がしっかりと画面に映るほか、クリアしたときにも顔がはっきりと見えるように映るおかげで、「一緒に遊んだ人がどういう姿だったか」印象に残りやすい。

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 そして、楽しかったな、この人上手だったな、このキャラかわいい!orかっこいい!など、気になった人へライク(いいね)を送ってみたりもできる。

 人からライクをしてもらうとチャットログに通知が出て、コンタクトリスト(交流履歴)から相手に送り返すこともできるので、そこから冒険者カードを渡してフレンドになったり、といった流れで繋がりができることもある。

 別にライクをしてもらったからといって、特に何か報酬があるわけでもないのだけれど、「いいね」と褒めてもらえたらなんとなく嬉しいし、ライクをしてくれた相手がどんな人なのか気になったりもする。

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目を丸くして驚くうちの子かわいい。

 『ブルプロ』はまだリリースしたばかりなのでフレンド募集中な人が多いし、それとなくプレイヤー同士が交流したがっている空気感があるのもいい。

 プレイヤー同士が交流するにはちょっとしたきっかけが必要で、気軽にリアクションしたり、フレンド申請できる空気感はとても大事なことだと思う。

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滅多にお目にかかれないマグナカツオを釣り上げた人をお祝いしている一枚。自キャラが薄着なのは「脱げばカツオが釣れる」と助言されたからです信じてください!(釣れなかった)

荒削りなところはまだまだ多い。が、それもまた”体験”として

 『ブルプロ』はまだリリースしたばかりのオンラインゲームであるが故に、まだまだ荒削りなところがあるのは事実。

 今、多くの人に遊ばれている国産オンラインゲームといえば、『ファイナルファンタジー XIV』などが代表的な例と言えるが、それらの長年続いているオンラインゲームと同じようにコンテンツが充実/成熟していくには、それこそ年単位の運営期間が必要だ。
 現状の『ブルプロ』はすべてのコンテンツが整備されているわけではなく、まだまだ行き届いていないところや「なぜ?」と思うところも少なからずある。

 ただ一方で、それがむしろ“印象的な体験”に繋がっていたりする場面もある。

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「妙に高精細なキャベツ」が話題になったことも。ミンスターホルンの畑にあるので見に行ってみると実際スゴイ!

 例えば、手探り状態で遊んでいるプレイヤーが行き詰まりやすいところで、周りにいるプレイヤーに助けを求めてパーティを組む……みたいなやりとりが生まれていた部分などは代表例だろう。
 メインストーリーの「天恵の聖堂」ダンジョンを攻略するクエストなどは、妙に難度が高く、ひとりで挑戦してもなかなかクリアできないので、チャットなどを通じて仲間募集を呼びかけたり、その場でパーティを組むこともあって、オンラインゲームならではの”やりとり感”が感じられたのはとても良かった。
 そういったアナログ感というか、未開拓な雑踏感みたいなところは、オンラインゲームの醍醐味の一つと言える気がするからだ。

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海水浴しているうちの子がベリッシモかわいい。

 『ブルプロ』をプレイしていると、そんな風にたくさんの課題を抱えつつも発展していった、過去のさまざまなオンラインゲームの懐かしい思い出がよみがえる。
 思い返して見ると、過去のオンラインゲームの思い出も、良くも悪くもプレイしていて引っかかる部分が印象深い体験になっていたようにも感じられる。
 例えば、初日のサーバートラブル、いわゆる“ログインゲー”なんかも、オンラインゲームにおいては一種のお祭りであり、いわば恒例行事だとさえ言える。過ぎてしまえば「そんなこともあったね」とプレイヤー同士で語り合うネタになったりするのだ。

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手つなぎジェスチャーで和気あいあいとしたスクショも撮りたかったけど、手を繋ぐ相手がいないぼっちなので断念。私が……私がアステルリーズのツチノコです……。

コンテンツの成長と発展を一緒に体験して共有すること

 長い年月をかけて運営していくオンラインゲームは、ゲームを遊ぶプレイヤーと開発・運営チームが一緒に育てていくものだと、個人的には思う。

 長期連載の漫画や何クールも続くアニメ、長年活動し続ける音楽グループなどと同じように、作り手と受け手が関係性を築いて相互に作用しながら発展していく――その過程を経験して、共有することもまた、オンラインゲームの魅力の一つなのだと、これまでの経験を通して感じている。

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 運営型のゲームタイトルというと、昨今では『Fate/Grand Order』『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』『ブルーアーカイブ』といった人気ソーシャルゲームがある。

 もちろん、それらのタイトルもたいへん魅力のあるものだが、ソーシャルゲームはどちらかというとゲームの体験をリアルの友人知人やSNSなど、「体験をゲーム外で共有する」ことが多いように思う。例えば、ガチャの結果を知人と見せ合ったりするのはその典型だろう。

 一方で、MMORPGなどじっくり遊び込むタイプのオンラインゲームは「ゲーム内で体験を共有する」ことがメインで、この違いは大きいのではないか。
 同じ世界で、同じ時間に、同じものを誰かと共有する楽しさ、体験の“濃さ”は、今でもオンラインゲームの大きな強みだと言える。

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 現在遊ばれているオンラインゲームは、気がつけば10年以上も続いているベテランばかりになっていて、ゲームもプレイヤーも成熟している。
 そんな状況の中で、『ブルプロ』のような新しいオンラインゲームが登場して、オンラインゲームを初めて遊ぶ若いプレイヤーが参入することには、非常に大きな意義があるのではないか。実際、『ブルプロ』を遊んでいると、非常に若いプレイヤーが多いように感じられるところもある。

 かつては『Ultima Online』、『EverQuest』といったMMORPG黎明期から、『ファイナルファンタジー XI』『ラグナロクオンライン』など国内で爆発的な人気を獲得した00年代初頭のMMORPG、そして『ファンタシースターオンライン2』『ドラゴンクエストX』、『ファイナルファンタジー XIV』などなど、さまざまなオンラインゲームが登場した。

 そして、それぞれの世代のプレイヤーが、「はじめてのオンラインゲーム」という特別な体験をしたのだ。

 はじめてのオンラインゲームは、全てが新鮮で、知らない誰かに「よろしく!」と挨拶をして、返事があるだけでも嬉しく思える。
 「ありがとう」と言ってもらえて、人の役に立てたと実感する。現実とは違う世界がそこに広がっている……そんな感動と喜びの連続だ。

 『ブルプロ』は、現代の若いゲーマーにとっての「はじめてのオンラインゲーム」になりえるタイトルである。

 オンラインゲームならではの濃い体験をーー現実とは違う世界がそこにあり、その中で人と出会い、いろいろな体験を共有し、仲間が出来ていく面白さをーーぜひ多くの人たちに味わってほしいと願わずにはいられない。

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『ブルプロ』がたくさんの人にとっての「居場所」になりますように

 最後にもうひとつ、オンラインゲームの大きな魅力は、その世界がゲームを遊ぶ人にとっての「居場所」になることだと思う。

 家庭、学校、職場、行きつけのお店、インターネット、SNS、Discord……人によって居場所になり得るところはさまざまだと思うが、実際、居場所だと感じられるところがどれだけあるだろう?

 もしかしたら、「ここが自分の居場所だ」と思えるところがあまりないかもしれない。

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 近年ではSNSによって人と人が簡単に繋がれるようになって、ネットと現実の境目が昔に比べると非常に曖昧になった。

 それによって恩恵を受けることが多々ある一方で、「繋がりすぎている」ことによる弊害も決して少なくないのではないかと感じている。
 いつでもどこでも、誰とでも繋がれて、気軽に連絡を取り合える。体験を共有できる。

 みんな、繋がっている。

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 本当に……?

 形としては、繋がっている。だけど、本当に実体のある繋がりなのだろうか。

 思うに、現在のSNSに感じられる、ある種の窮屈さ、息苦しさの正体とは、「逃げ場の無さ」なのだと思う。
 現実とネットが地続きであるゆえに、常に他人との比較にさらされるし、時には自分が攻撃の対象にすらなりえる。いまやSNSは、自分の言いたいことも自由に言えない場所になってしまっているからだ。

 以前は、インターネットは現実とは切り離された世界だった。
 ネットにリアルを持ち込むなんてとんでもない!という風潮があったことを、もう忘れかけている人も多いかもしれない。
 しかし、いま思えばその忌避感は、ネット民たちの居場所を奪われる恐怖からだったのだと理解できる。

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 「現実と切り離された場所」であることは、居場所を見つけるうえでは重要な部分だと思う。
 なぜなら、現実と距離があるからこそ、そこで出会う人々とはフラットで、対等な関係でいられるからだ。

 以前、オンラインゲームが自分にとっての居場所になり得たのは、現実への負い目を感じることなく、他人と対等に関係が築ける場所だったからに他ならない。

 だからこそ、自分にとってはオンラインゲームこそが「居場所」になっていた。

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 居場所とは、あるか無いかではない。
 自分が「ここが居場所だ」と感じられるかどうか、である。

 もちろん、必ずしも望むところに自分の居場所を見出だせるわけではないかもしれない。学校が、職場がそう感じられたら幸せなことだと思うが、残念ながらそうじゃない人ーー自分も含めてーーもいるだろう。

 そんな中で、オンラインゲームでは、その世界で自分に役目があること、仲間がいて、人から必要とされることが嬉しかった。

 同じ「世界」を仲間たちと共有できるのが楽しくて、ときにはつらいことでも分かち合えるのが嬉しくて、愛おしかった。

 バーチャルな世界でも、画面の向こうにいる人たちの本当の顔がわからなくても、そこで感じていた気持ちは、絆は、仮想なんかじゃない。

 現実よりも、よほどリアルに感じていた。

 そこが、「居場所」だったから。

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 あのときの仲間たちは今、どうしているだろう。

 あの人は今、元気で、幸せでいるだろうか……。

 かつてのオンラインゲームの世界で経験したことは、間違いなく自分の人生の体験の一部となっているし、今となっては、懐かしく振り返ることができる「思い出」になっている。

 居場所はたくさんあっていい。思い出もたくさんあるといい。

 たとえひとつでも、居場所だと感じられるところが見つけられたら、それはとても幸せなことだと思う。

 どうか、『ブルプロ』がたくさんの人にとって「居場所だと感じる世界」になりますように。

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ライター
ゲーム、模型、ファッション、ドール、オーディオなどさまざまなジャンルの沼を渡り歩くスワンプウォーカー。関心のあるものに後先考えずに全てを捧げる狂戦士。手がけた代表的な記事は 「人はなぜ少女にメカをくっ付けるのか」 「うつ病の自分が『DEATH STRANDING』を遊んで、“実感”を取り戻した話」など。
Twitter:@Leyvan44

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