爆発四散するボンバーマン。逃げるピポサル。
そしてそれをマジな顔して追いかけるのは、スネーク。
にわかには信じがたいこの絵面、すべて実際に『METAL GEAR SOLID Δ:SNAKE EATER』で起きている光景です。
「メタルギア」シリーズ全体をしっかり追ってきたわけではないけれど、過去にいくつかのタイトルを触ったことはある。そんな自分にとって、今回の『METAL GEAR SOLID Δ: SNAKE EATER』は、シリーズの中でも特に人気の高い『メタルギア ソリッド 3 スネークイーター(MGS3)』に初めて触れる機会となりました。
「伝説の傭兵」「潜入ミッション」「シリアスな戦争ドラマ」……。そんな印象をなんとなく抱いていたこのシリーズ。でも、実際にプレイしてみると、思っていた以上に変。いい意味で、だいぶ変なゲームだったんです。
ふざけているのに本気、ギャグもあるのに硬派。この不思議なテンションの振り方、なにか身に覚えがあるなと考えて、かつて学生時代に同級生とともに遊んだ『METAL GEAR SOLID PEACE WALKER』において、人間パチンコをティガレックスにブチ当てて爆笑した記憶がふいに蘇りました。
そうだ……『メタルギア』シリーズって、キメる時は全力でキメるし、ふざける時は本気でふざけてくる作品だった。
『METAL GEAR SOLID Δ:SNAKE EATER』は、2004年に発売された『MGS3』を、現行世代機向けにUnrealEngine5でリメイクしたタイトルです。
グラフィックの刷新はもちろん、システム・アニメーション・操作UIまで丁寧に現代風へとアップデートされており、“20年以上前の名作”を“2025年のゲーム”として違和感なく楽しめるように仕上がっています。
そして本作では、本編のシリアスな潜入アクションに加えて、プレイヤーの記憶に強烈な爪痕を残すもうひとつの側面。ピポサルやボンバーマンとのコラボゲームも復活/追加されているのです。
「猿蛇合戦」と「ボム蛇合戦」。一見すると完全にネタ枠なスペシャルゲームですが、実際に触れてみると、リメイクという形式だけでは語りきれない『メタルギア』ならではの奥深さがそこにあるようにも感じました。
というのも、アイディアこそ突飛でも、要素を切り出してみれば「ピポサルを捕まえるための潜入」「ボンバーマンを倒すための破壊」など、(少々こじつけかもしれませんが)すべてが本編と地続きのテーマになっているんですよね。
ふざけているようでいて、遊んでみるとちゃんと『メタルギア』をしているというか、妙に説得力がある。こういうノリが、本気のグラフィックとシステムでしっかり再現されていること自体がもうおかしくて、でも楽しい。
なんというか、真面目にふざける力を全力で注いでくるあたりに、シリーズがここまで愛されてきた理由のひとつが見える気がします。
今回は、そんなシリーズ最新作の先行体験会「『METAL GEAR SOLID Δ:SNAKE EATER』Tokyo_Media_Event」へ“潜入”し、判明した内容をご報告させていただきます! 開発者へのインタビューも掲載しているので、ぜひ最後までお楽しみください。
ピポサル、再び。“猿蛇合戦”で始まるスネークの夏休み
今回の試遊会で筆者が最初に遊んだのは、“猿蛇合戦”と呼ばれるスペシャルゲーム。これはかつて『MGS3』と『サルゲッチュ』との間で実現したコラボ企画の復刻版で、あのピポサルをスネークが捕まえるという、奇跡のような異種格闘技戦が現代によみがえったもの。
2011年にPS3/Xbox360向け発売された『メタルギア ソリッド 2』と『メタルギア ソリッド 3』のHDリマスター版『メタルギア ソリッドHDエディション』では収録されなかったこともあり、じつに20年ぶりの露出になるのだとか。復活もある意味奇跡……?
ストーリーは比較的あっさりとしていて、長期休暇中のスネークが、遠足に行ったカケルとヒカルの代わりにピポサルの捕獲を命じられるというもの。
その辺の小学生より簡単に呼び出されるって、伝説の英雄としての威厳ぇ……。
とはいえ、草むらに潜み、息を殺し、静かにピポサルを追いつめるというだけで、やっていることは本編の潜入とまったく同じ。なのに、相手がピポサルというだけでどうしてこんなにおかしいのか。
捕獲用の銃「特殊サル気絶銃」でサルを眠らせ、近寄ってゲッチュ! するという流れ自体も、『メタルギア』らしい無駄なリアリティがあっていちいち笑えてしまいます。
大佐ことロイ・キャンベルとスネークの間で繰り広げられるミッション前のブリーフィングでは、メタネタからジョークまでなんでもござれという極限仕様にも関わらず、こっそりピポサルへと忍び寄る緊張感は健在しているというカオス空間。でもなぜか「これも『メタルギア』だよな」という妙な説得力というか、納得感も感じられました。
……って、そんなワケあるかぁ!!!
新たなるスペシャルゲスト、『ボンバーマン』
ピポサルだけでなく、本作ではさらにブッ飛んだコラボが用意されています。それが『ボンバーマン』とのスペシャルゲーム“ボム蛇合戦”。
まぁ……KONAMIのIPだしな。
ギリギリ理解できるかも……と思っていると、画面に映っていたのは爆発四散するボンバーマンと、真顔で爆風に飛び込んでいくスネークの姿。
伝説の英雄は、ふざける時も全力。
こっちでもやっぱり楽しそうなスネークさんなのでした。
この“ボム蛇合戦”は、Xbox版限定で収録されるコラボコンテンツで、過去にPlayStationプラットフォームで展開されていた“猿蛇合戦”の代替ゲームとして新たに用意されたもの。
シリーズのテイストや世界観とはまったく関係がなさそうに思える『ボンバーマン』ですが、これが不思議と“潜入”というゲーム構造にガッチリとハマっている……ということもなく。
こっちはなんというか、いい意味で突き抜けています。
ピポサルと割と真面目に潜入ゲームを繰り広げていた猿蛇合戦とは打って変わって、こちらはただスネークが爆弾を投げつけるという“かなり危険”なスペシャルゲーム。とはいえ爆発の仕方はボンバーマンなので野蛮すぎない程よいギャグ感が楽しめました。
ピポサルを追いかけて、ボンバーマンを爆破して。散々楽しみながらも「スペシャルゲームばっかりやってていいのかな…?」と内心ドキドキしていたところ、本イベントではありがたいことに開発陣によるQAセッションと囲みインタビューも用意されていました。
登壇されたのは、シリーズ制作プロデューサーの岡村憲明氏、クリエイティブプロデューサーの是角有二氏、そして本作オリジナルのオンライン対戦モード「FOX HUNT」担当ディレクターの佐原祐氏の三名。
作品づくりの裏側から、リメイクに込めた想い、そしてあの狂気のようなスペシャルゲームたちの真相まで。気になることをいろいろ聞いてきました。

「開発中には『こんなんあったわ~』という感慨深い声が、あちこちから聞こえた」『METAL GEAR SOLID Δ: SNAKE EATER』開発陣QAセッション/囲みインタビュー
──今回のリメイクを制作しようと思ったきっかけはなんですか?
是角有二氏(以下、是角氏):
今回のプロジェクトは、原作である『メタルギア ソリッド 3』の魅力を今の世代に伝えたいという思いから始まりました。
オリジナルを知っている方には、現代のハードで蘇ったキャラクターの活躍を通じてもう一度あの感動を味わっていただきたいですし、初めて触れる方も予備知識なしで楽しめる作りになっています。

もともとは原作の完成度が高いこともあり、「グラフィックを進化させるだけで良いものになるのではないか」と思っていたのですが、制作を進めるうちにグラフィックの変更だけでは不十分であることがわかり、システムやアニメーションなども丁寧に見直しました。
結果として、当初の想定よりもかなり幅広い部分へ手を入れることになりましたが、それによって今のユーザーさんにも原作の魅力をしっかりと伝えられるようになったと思います。
──初めて「メタルギア」シリーズを遊ぶ人向けに特に力を入れた点やアピールポイントは何でしょうか。
是角氏:
本作で描かれるストーリーは、シリーズにおける「始まりの物語」なので、初めての方でも入りやすいと思っています。一方で操作や『メタルギア』特有の要素を新しいユーザーさんに伝えるために、「TIPS」という形で情報を提示することにしました。
TIPSでは仲間の無線に対するヘルプやわかりにくい攻撃を説明したりと、今まで知らなかった遊びの深さに触れられるようにしています。なのでぜひ、TIPSを活用していただければと思います。
また、TIPSは4段階で調整でき、プレーに慣れた人には邪魔にならないようにもできます。
──これまで含め『メタルギア』シリーズにはたくさんのイースターエッグが仕込まれていると思いますが、オリジナルにあったイースターエッグはそのまま残されているのでしょうか。また今回新しいイースターエッグも追加されていたりするのでしょうか?
是角氏:
オリジナルに入っていたイースターエッグは諸事情により削除したものを除き、LEGACY STYLE(レガシースタイル)でほぼすべてお楽しみいただけます。
新しいイースターエッグについては、今回導入したNEW STYLE(ニュースタイル)とLEGACY STYLE(レガシースタイル)の違いそのものが隠し要素になっている場面もあり、その点も楽しんでいただけると思います。
──開発中に「こんなのあったの!?」と驚いた原作の仕様や、本作の開発にあたって新しく追加した要素があれば教えてください。
是角氏:
知らなかった機能というのはほとんどありませんでしたね。ただ開発中は「こんなんあったわ〜」という声は本当に多く、当時作ったメンバーですら忘れていたような細かな仕様がたくさんありました。それを改めて思い出しながらチェックしていましたね。
また、そうした隠れた要素や攻略のヒントを伝えるためにも、先程ご紹介した「TIPS」機能が導入されています。攻略方法や面白い遊び方をサポートするものなので、オリジナルにあった遊び心を少しでも多くの方に伝えられればと思います。
──ゲーム中のボイスが当時の声優さんの演技そのままだった一方で、パラメディックのセリフなどに新しい台詞もあるように見受けられました。新規収録のボイスはどのくらいあるのでしょうか。
是角氏:
見つけてくださってありがとうございます(笑)。新しい台詞は多くありませんが、序盤で皆さんに気づいていただけるように入れています。
たとえば、操作説明については、オリジナル版ではPS2の操作説明を無線で仲間に伝える形式だったため、当時の声優さんに同じ演技で再収録していただきました。
──ゲーム開始時にシリーズ作品の中で好きなタイトルを選ぶ項目があり、報酬が違うようでした。選んだタイトルによって操作性やゲーム要素が変わるのでしょうか。ネタバレにならない範囲で教えてください。
是角氏:
これはオリジナルからある仕掛けです。選んだタイトルごとに違いがあり、この欄を選ぶとこうなるという仕掛けが入っています。どの選択でも何らかのアイテムがもらえます。また、『メタルギアソリッド3』発売当時は存在しなかった『メタル ギア ソリッド 4』や『メタル ギア ソリッド Ⅴ』を選ぶと独自のアイテムを入手することが可能です。
──「猿蛇合戦」の代替スペシャルゲームとしてXbox版ではボンバーマンが登場していましたね。どのような経緯でこのコラボが実現したのでしょうか。また、今後Xbox以外のハードでも遊べるようになりますか?
是角氏:
ハードが増えるので「猿蛇合戦」に相当するキャラクターやスペシャルゲームを用意することと、なにかしら他のIPとコラボさせることは最初から決めていました。
その中で猿蛇とデルタの両方に親和性があるIPを検討し、担当者から「『ボンバーマン』はどうだろうか」という提案があがってきたんです。
自社IPだったこともありますが、ピポサルさんとも親和性があることも大きな理由のひとつになりました。
モデルやアニメーションは比較的簡単に社内で借りることができたので、爆発させられるデモを作成して試してみたところ、一瞬で「これだ」と思えるほど楽しくて採用に至りました。今後どうするかは……どうするんでしょうね?
岡村憲明氏(以下、岡村氏):
検討中……(笑)。
皆さんのご意見やさまざまなプラットフォームで遊ぶ方々のことを考えながら、検討できればと思います。