『MiSide : ミサイド』(以下、『MiSide』)というインディーゲームをご存じだろうか。「美少女スマホゲーム」の世界に入り、ヒロインである「ミタ」ちゃんと楽しい交流を繰り広げるほのぼの恋愛シミュレーションゲーム……の、皮をかぶったホラーアドベンチャーゲームである。
具体的なゲーム内容は先日公開されたプレイレポート記事に詳しいが、実は私はこの記事を執筆した際に些かの不安を覚えた。
というのも、本作は「美少女ゲームの皮をかぶったホラーゲーム」という作品であるから、記事でその展開についてネタバレすることは、(デモ版に含まれる内容とはいえ)このゲームを遊ぶ際プレイヤーが受ける衝撃を多分に損なうではないかと思ったのである。
そんな折、私は本作の開発を務める「AIHASTO氏」へのメールインタビューを日本独占でおこなう機会に恵まれ、インタビューでは本作のコンセプトやミタちゃんの造形、そして先ほど述べた「本作の衝撃的な展開を始めから明かすこと」についてもお話を伺うことができた。
その中でAIHASTO氏が語ったのは意外なことに、ネタバレを恐れるというよりもむしろ、「さらにその先の展開」へののびのびとした展望であった。
ゲーム内容やキャラクター、そしてストーリープロットまで、少人数での制作とは思えないクオリティの高さを誇る本作。デモ版が公開されてから一層多くのユーザーの期待を受ける中で、制作者たちが本作で実現したいことを語ってくれた。
※この記事は『MiSide : ミサイド』の魅力をもっと知ってもらいたい松竹さんと電ファミ編集部のタイアップ企画です。
アイデアのもとは「たまごっち」+「ホラー」!? ウィッシュリスト15万超を集めた期待の新作ゲームが目指したもの
—―まずは『MiSide』が生まれた経緯について教えてください。本作はホラーに美少女要素を加えた斬新なゲームですが、これを実現するにあたってどのような苦労がありましたか?
AIHASTO氏:
私たちはもともと、小さなホラーゲームの制作を始めた2人のアマチュアゲーム開発者でした。インディーゲーム開発の中でホラーが最も人気の高いジャンルの1つであることはよく知られる事実であり、これまでにもいくつかホラーゲームをリリースして小規模な成功を収めてきました。
しかし、本作ではこれまでと開発のアプローチの仕方を少し変え、ゲームのアートワークに美少女の要素を加えることにしたんです。私たちはアニメが大好きで、そのアートスタイルが持つ可能性やポテンシャルを身をもって知っています。
アニメでは可愛いキャラクターとホラーのコントラストが頻繁に用いられており、私たちはこれをゲームで実現したいと考えるようになりました。
そのうえで特に苦労したのは、美少女キャラクターというこれまで挑戦したことの無い新しいアートスタイルをゲーム制作の中で学ぶ必要があったことです。そしてさらに重要なこととして、アドベンチャーゲームのシナリオ制作についての困難にも直面することになりました。
というのも、これほど大きな規模のアドベンチャーゲームタイトルを制作するのは私たちにとって初めてのことであり、『MiSide』のストーリー制作はストーリースクリプトを使った私たちの最初の、ある程度本格的な仕事だったとも言えます。
—―AIHASTOさんにとっても大きなチャレンジになっているということですね。
AIHASTO氏:
実際、デモ版をリリースして、プレイヤーの皆さんからこれほどまでの支持が得られるとは思ってもみませんでした。自分自身まだこの成功を信じ切れていないほどです。
これを受けて、私たちはあらためてこのゲームを「どうやって継続させるか」、そして「どのように終わらせるべきか」について真剣に考えはじめています。
その意味で、『MiSide』とその人気は、私たちにとって非常に重要な経験になっていると言えるでしょう。
—―本作のアイデア(ホラーと美少女アドベンチャーの融合)は一体どこから着想を得たものでしょうか?
AIHASTO氏:
『MiSide』の最も重要なインスピレーションの源は、私たちが開発したゲームのひとつである『Umfend』です。このゲームにはロマンスとホラーの二つの要素があり、それらが結びつくことで独特の雰囲気を醸し出しています。
そしてもう一つは『たまごっち』です。
もちろん『たまごっち』は快適な雰囲気のゲームです。しかし、そんな雰囲気が次第に不穏な色合いを帯びて、最後には血まみれの宴会が繰り広げられる……そんなゲームが創れたら面白そうだとずっと考えていました。新しい企画を考えているときに、この2つのアイデアが組み合わさって、『MiSide』が誕生したんです。
—―本作のヒロインである「ミタ」ちゃんは看板となる重要なキャラクターですが、アニメヒロインのような彼女はどのようにデザインされたのでしょうか。
AIHASTO氏:
コンセプトを考える際は、もちろんアニメのセオリーを参考にしました。ヒロインは魅力的で、親しみやすい存在でなければなりません。そのうえで、ミタは可愛らしく、プレイヤーがコミュニケーションを取るのに違和感を覚えないようなデザインにすることを心がけています。
見た目についても、服装があまり挑発的なものにならないようにするなど、あくまでプレイヤーが親しみを覚えやすいものにデザインされています。
—―彼女の性格を描写するために、他にはどのような工夫が加えられていますか?
AIHASTO氏:
ミタのボディランゲージには特に気を遣っています。結果的に、ミタの動きは適切かつ穏やかで、親しみやすさの定義にぴったり当てはまるようなものに出来たと思います。
彼女はプレイヤーとの会話では指を絡めて熱心に耳を傾けますし、プレイヤーがじっと見つめると照れてしまいます。また、ミタは隙あらば何かをつまみ食いするというおちゃめな一面も持っていて、これはキュートかつユニークなパーソナリティを付与できたと思います。
親しみやすい素敵な女性キャラクターだと感じてもらえれば嬉しいです。
—―本作のタイトルである『MiSide』にはどういった意味が込められているのでしょうか。
AIHASTO氏:
ゲーム名は、ヒロインの名前と、プレイヤーが入る仮想のゲーム世界という2つの単語を組み合わせたものです。「Mita」+「Side」=『MiSide』、MiSideはミタのサイド、つまり彼女の世界を意味しています。
ネタバレを恐れるよりも”その先の展開”に期待してほしい—―。衝撃的な内容のデモ版のその先には「まったく予想していなかった展開が待ち受けている」
—―デモ版配信後のユーザーからの反響、特に本作のプロットについての反応はいかがでしたか?
AIHASTO氏:
プレイしていただいた方からの反応は非常に好評でした。ビジュアルと音楽が構成するゲーム内の心地よい雰囲気や、アニメーションの滑らかさ、緻密さにも評価をいただきましたね。
他にも、家の中を探検することでミタと交流できるシステムも好評でした。もちろん、本作のストーリーにも非常に興味を持っていただけました。皆さんが製品版で明かされるストーリーの続きも気に入ってくれることを願っています。そこにはまったく予想していなかった展開が待ち受けているはずです……。
—―本作の展開と言えば、デモ版のラストでは「恋愛シミュレーションからホラーへ一転」といったインパクトのある演出で話題になりました。
一瞬「本作の”ウリ”をこんなところで見せても大丈夫?」とも思いましたが、逆に言えばストーリーのフックを見せることで多くの潜在的なユーザーを獲得できたとも思います。本作のマーケティングについて何か意識していることはありますか?
AIHASTO氏:
実際、恋愛シミュレーションからホラーへという展開は、すでにデモ版で遊び尽くされていると考えています。
デモ版のラストはホラーな展開で幕が閉じますが、私たちが重視しているのは”あらゆるストーリー上のネタバレを避ける”ことよりも、そういった結末の先にまだ重要な展開が待ち受けている、とユーザーに感じてもらうことでした。
結局のところ私たちが最終的なターゲットにしているのは、既にデモ版を遊んで続きを待ち望んでいるユーザーたちです。
その点で言えば、デモ版のラストをあのようにしたことで結果的にユーザーを多く惹きつけることになったのは注目に値します。
もちろん ネタバレがマーケティング上で有害になりうることは事実ですが、それよりもまずはプレイヤーに驚きを与えることの方が重要だと考えています。
—―本作は日本のユーザーにとっても非常に魅力的なゲームに映るだろうと思われます。そのうえで、AIHASTOさんも日本のマーケットは意識されているのでしょうか?
また、本作は非常にクオリティの高いローカライズがおこなわれていると感じます。本作のローカライズについて、パブリッシャーとはどのようなやりとりをおこなっていたのでしょうか?
AIHASTO氏:
『MiSide』が日本のユーザーにとって魅力的なゲームになるかもしれない、という点については同意します。
正直なところ、ゲームの制作を計画した段階では、特定の市場については考えていませんでした。しかし、日本のアニメが長い間世界中の人々の心を捉えてきたことに異論を唱える人はいないでしょう。
日本語ローカライズについても、パブリッシャー(IndieArkと松竹)の仕事にはひとつの疑問も抱いていません。また、より良い他言語と作品のマッチングを実現するために、私たちもローカライズのプロセスに参加しています。
最終的には登場人物のセリフや感情、行動における全体の文脈を詳細に描写することができたと思います。もちろん、日本のプレイヤーからのフィードバックを楽しみにしています!
—―一人称視点の本作をプレイしていると、ゲームの世界に入り込んでしまうという設定も相まって、非常にVRでのプレイにフィットしそうな臨場感のある作品だと感じました。現状VRでのリリースは考えていますでしょうか?
AIHASTO氏:
ゲーム内のいくつかの場面は仮想現実向けに作られたようなものなので、VRはとても適していると思います。しかし、本作をVRでリリースすることは現状考えていません。私たちはVRゲームの開発経験がまだなく、VRでの開発は未だ謎に包まれた部分が多いのです。
それに、一部のミニゲームなどに関しては必ずしもVRと相性が良いとは言えないものです。もし我々のゲームにVR対応を追加すると決めた場合、多くの技術的側面を再考し、ゼロから再設計する必要があるでしょう。
—―あえて本作のジャンルを定義するとしたら、『MiSide』のジャンルは何になるのでしょうか。ホラー?それとも恋愛シミュレーションでしょうか?
AIHASTO氏:
このゲームにはホラーや恋愛シミュレーションの要素も含まれてはいますが、究極的に言えば本作は「アドベンチャーゲーム」以外の何物でもありません。
『MiSide』の大部分は物語で構成されており、プレイヤーにも本作をアドベンチャーとして遊んでいただきたいと考えています。ただ、恋愛シミュレーション的な要素はプレイヤーの要望に応じてこれからも増やしていきたいと考えています。
—―個人的に、本作の恋愛シミュレーション部分のクオリティは単なる「前フリ」以上のクオリティを持っていると感じます。この部分を強化していくというアイデアもあったのでしょうか? また、ホラー要素との演出バランスについてはどのように調整されたのでしょうか。
AIHASTO氏:
恋愛シム要素を強化するのも面白いとは思いますが、残念ながらゲーム開発におけるリソースは常に限られています。
したがって、現時点では『MiSide』の中に本格的な恋愛シミュレーションゲームを作るというアイデアは追求しませんでした。あくまでも全体の一要素だと考えて頂きたいです。
バランスという点では、感情の「揺らぎ」に焦点を当てています。プレイヤーはしばしば心地よい雰囲気やロマンチックな雰囲気に身を置きますが、ほとんどの場合、そのすぐ後には緊迫するホラーな空気に突入することになります。
そして、こうした演出上の振れ幅がプレイヤーの感情に「揺らぎ」を起こす。シナリオ演出ではそういった効果が生まれることを意図して調整しています。
—―システムのアップデート以外にも、ハロウィンやクリスマスなどではミタちゃんが可愛いコスプレ衣装を披露してくれていますね。今後もこのような季節ごとのアップデートや、あるいは着せ替えDLCの追加などもあるのでしょうか?
AIHASTO氏:
直近では、ミタの新コスチュームをゲームリリース直後に追加する予定です。また、近々「ピースフルモード」という大きな追加要素も制作する予定です。このモードではプレイヤーはミタと丸一日一緒に過ごすことになり、そこではユニークなコンテンツが様々に用意される予定です。
期間限定コスチュームなどのシーズンアップデートについては、開発スケジュールにも余裕ができたため、実現の可能性は高いと思います。(了)
ただでさえ衝撃的な内容を引っ提げてデビューした本作だが、この先にはさらにプレイヤーの感情を揺らがせる何かが用意されているというのである。なんと期待を膨らませてくれるインタビューだろう。
お話を伺う中で特に印象的だったのは、あくまで本作は「アドベンチャーゲーム」だということについてである。ミタちゃんのクオリティの高さやゲーム内容の緻密さを鑑みればそれ単体でもリリースできるクオリティを持つ本作だが、それでも本作で重視されているのは最終的には「物語」そのものなのだ。
こういった姿勢からも、AIHASTO氏が持つ本作のストーリーに対する揺るぎない自信を感じ取ることができた。それでいて、ユーザーの声をゲーム内に取り入れるという柔軟性も持ち合わせているというのだから驚きである。
『MiSide』は2024年12月11日(水)よりPC(Steam)向けに発売中。Steam上では発売一週間で早くも1万件以上のレビューを集め、うち98%が好評。最高評価「圧倒的に好評」を獲得している。興味のある方はぜひ本作をプレイしてみてほしい。