“原作らしい”クリーパーや、“リアリティ”をもって描かれるスケルトン。数々のキャラクターを描くにあたって、監督が重視したのは「16ビット感」
──ブロック世界のゲームを実写化するにあたって、どの程度デフォルメを行って、どの程度リアリティを持たせるか、といった点はどのように判断されたのでしょうか?
個人的には、クリーパーやエンダーパールなどはかなりゲームに近く、反対にスケルトンやゾンビなどはリアリティに寄せた表現になっていると感じました。
ヘス氏:
なによりも大切にしたのは、「キューブっぽさ」ですね。映画を作るにあたって、さまざまなコンセプトアートを考案しながら練り上げていったのですが、原作の「16ビット感」をいかにして出していくかということを大事にしながらルックスを作り上げていきました。
クリーパーなどもいろいろと試行錯誤したキャラクターで、最初に出てきた案は「甲羅のないカメ」のような不気味なものだったんです。「これはちょっと違うな」と思って別案を出していくなかで、最終的には原作の『マインクラフト』らしい、アイコニックな姿に戻っていきましたね。
スケルトンに関しても工夫が必要で、原作のスケルトンには関節がありませんよね。それを映画に落とし込むにあたって、どうやって関節をつけるか。ゾンビに関しても、どういった肉付けをするかといったことを考える必要がありました。
スティーブのターコイズ色のシャツやキャラクターの四角い頭などの象徴的な要素を保持しつつ、映画としてどのように肉付けしていくかというのはいろいろな案を出して考えてきました。
そんななかでデザインチームやVFXチームには頼りっぱなしで、特に『猿の惑星: 創世記(ジェネシス)』や『THE BATMAN-ザ・バットマン-』などでVFXスーパーバイザーを務めたダン・レモンさんとはいろいろ協議を重ねましたね。最終的に落ち着いた案に関しては、満足のいくものに仕上がったと思っています。
──原作の尊重するべき要素はそのままに、実写映画版としての表現方法を模索したわけですね。
ヘス氏:
さまざまなコンテンツクリエイターの方が、YouTubeなどで自分なりの「実写版『マインクラフト』」の映像を作っていらっしゃいますよね。僕たちが今回の映画で表現しているのも、そのなかのバリエーションのひとつであるという認識をしているんです。
なので、英語の原題も「Minecraft the Movie」ではなく、『A Minecraft Movie』なんですよ。
オラフソン氏:
僕としては、『マインクラフト』にそこまで慣れ親しんでいなかったとしても、一目見れば「これは『マインクラフト』の映画だ」とわかるようなビジュアルを意識しました。
そのためにも、たとえば山を作るのであれば、「実写の山をブロック状に近づけていく」のではなく、「ブロックから始まったものを、いかにして映画メディアの形にしていくか」といったアプローチをとったんです。
今作の美術は、『ロード・オブ・ザ・リング』の3部作に関わったグラント・メイジャーさんに担当してもらっています。僕は彼の大ファンなので、同僚として意識して働くのもやっとなほどの緊張感のなかでやらせてもらいましたね。
スケルトンなどクリーチャーの一部は「実際に俳優がコスチュームを着て演技した」。原作要素を尊重しつつ、監督のこだわりや俳優陣の魅力も存分に発揮
──ヘス監督の作品は、『ナポレオン・ダイナマイト』【※】や、本作もそうですが、「冴えない人々が思いがけない行動をすることによって輝く」といった瞬間を描くことが多い印象があります。「冴えない人々」への愛を感じる作風ですが、そういった人々を描くにあたってのポリシーなどはあるのでしょうか。
【※】
『ナポレオン・ダイナマイト』……2004年に公開された、ジャレッド・ヘス監督のコメディ映画。
ヘス氏:
どういうわけか、僕はそういった「忘れられし人々」に惹かれるんですよね。いち映画の観客としても、そういった人々が旅路を経ることでヒーローになっていく、といったストーリーを見ることに充実感を感じるタイプなんです。
今作でも、人生がイマイチうまくいっていない、知らない者同士が集まって、叙事詩的なアドベンチャーを体験することになります。
そのなかで、創意工夫やチームワークの力を発揮して、ありえないハードルを乗り越えていくようなストーリーを作りたかったんです。
本作は言うならば、『ロード・オブ・ザ・リング 旅の仲間』ならぬ『ナードの仲間』といった感じで、そういう映画を作ることにとてもワクワク感を感じていました。
──ここまでは本作の「『マインクラフト』らしさ」についてを中心にうかがってきましたが、一方で映画からは「本作ならでは」の楽しさも大きく感じました。
スティーブとギャレットが抱き合うことで「人間サンドイッチ」になってエリトラで空を飛ぶシーンなどは、とても馬鹿馬鹿しくも、同時にとても感動的な気持ちになったんです。
他にも、ギャレットたちが鶏に乗ったゾンビの「チキンジョッキー」とレスリングをするシーンなども非常にヘス監督らしいと感じました。こういったシーンはやはり監督のこだわりとして入れたものになるのでしょうか?
ヘス氏:
ガストの気球に乗ったピグリンたちから逃げるために、エリトラで空を飛んで逃げるシーンですよね。あれは他ではやられていないようなチェイスシーンを作りたくてこだわったところになります。
撮影開始前に2年以上かけてストーリーボードを練り続けたという話をしましたが、何度も練り直しを重ねて洗練されていった末に出来上がったのがあのシーンなんですよ。
実は、あのシーンの構想元は『ネバーエンディングストーリー』の男の子が、「ファルコン」に乗っているシーンなんです。あのシーンのように「ジャック・ブラック(スティーブ役)がジェイソン・モモア(ギャレット役)に乗っかっている」という光景を作りたかったんです。
ジェイソン・モモアさんからも、「ピグリンから追いかけられるなら、こういうやり方もあるんじゃない?」といった提案もあったりして。彼自身もいろいろなアイデアを出してくれたんですよ。
スティーブ役のジャック・ブラックさんに関しては、アスリート俳優としてトップ5に入るような素晴らしい俳優さんだと思っています。以前ご一緒した『ナチョ・リブレ』【※】でもそうでしたが、レスリングシーンをやらせたら、すごくおもしろおかしい人ですよね。
【※】『ナチョ・リブレ 覆面の神様』
2006年に公開されたジャレッド・ヘス監督のコメディ映画。本作でスティーブ役を務めるジャック・ブラック氏が主演。
なので、おっしゃられた「チキンジョッキー」のシーンは僕も気に入っていて、僕としてもおもしろいシーンになったと満足しています。
オラフソン氏:
僕も格闘シーンには感動しましたね。本作のピグリンたちはCGなのですが、スケルトンなどのクリーチャーは実際に俳優さんがコスチュームを着て演技しているんですよ。
本作のスタントコーディネーターさんは、以前にもジェイソン・モモアさんと組んだことのある人であったり、『ジョン・ウィック』シリーズに参加した経験のある方なのですが、僕自身、そのコーディネーションを見ていて驚くばかりでした。
ナタリー役のエマ・マイヤーズさんの格闘アクションもクオリティが高くて感動しましたね。
──映画版に登場した要素が今後ゲーム版にも再輸入されるような予定はあるのでしょうか?
オラフソン氏:
それでいうと、ガストやピグリンがネザーを出てマイクラワールドに出現するというのは、ゲーム版にはない、映画独自の要素ですよね。それに関しては、ゲーム版の『マインクラフト』でも、ガストを手なずけて乗れるようになるアップデートが予定されています。
ぜひ、ゲームでも映画でも、『マインクラフト』をお楽しみください。(了)
「バケツの水による落下ダメージ軽減」「溶岩を使った焼き鳥製造機」など、トレーラームービーの段階から『マイクラ』要素満載で、「『マインクラフト』世界の再現に相当力を入れているな」と感じさせる本作。
実際に試写会に行ってきた感想としては、ヘス監督の原作リスペクトと、MOJANG社の監修に裏打ちされたマイクラワールドの描写の上に、個性的な俳優陣の演じるキャラクターたちのコミカルな活躍が、『マインクラフト』好きな子供たちに向けた冒険譚であると同時に、大人にとっても肩の力を抜いて楽しめる作品になっていると感じました。
映画『マインクラフト/ザ・ムービー』は4月25日(金)より全国の劇場で公開予定です。オープニング興行収入が3億ドルを超え大きな話題ともなった本作。ゴールデンウィークに見に行ってみてはいかがでしょうか。
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