2017年ころから成長が鈍化。「内製ラインのスタジオ化」などで組織の立て直しを図り、新たな体制で再始動
──『神姫PROJECT』以降も順調に成功を積み重ねているのでしょうか?
東條氏:
それが……『神姫PROJECT』に追いつけ追い越せと、タイトルは多数出したものの、2017年ころから成長カーブが鈍化してしまったんです。「もう右肩上がりのイケイケドンドンではいられないぞ」と痛感しました。
そこで原点に立ち返り、プラットフォーマーとしてユーザーフレンドリーであること、そして参画してくれるゲームタイトルが活用しやすい環境を作ることに舵を切りました。
DMM GAMESの難しいところは、プラットフォーマーであり、パブリッシャーであり、デベロッパーでもあるという構造です。これらの視点を最適化するために、社内に複数のスタジオ制を敷くなど、組織の立て直しを図りました。
──スタジオ制を導入したことで、制作現場にはどのような変化が生まれましたか?
東條氏:
各スタジオに独立性を持たせたことで、それぞれの思想やカラー、得意分野を色濃く反映したゲーム作りが可能になった点が、大きいと思います。
立て直し前の巨大な組織体制のままでは、どうしても全体で均一な思想を共有しようとしてしまい、結果としてタイトルの「尖った部分」が丸まってしまうんです。
また、自分たちが心から責任を持てないコンテンツに関わることで、どこか「やらされ仕事」のような感覚が蔓延してしまうこともありました。
その点、スタジオ制に移行してからは、クリエイター自身が「おもしろい」と信じる内容に対して、責任を持ったゲーム制作に取り組めるようになってきていると感じます。
──クリエイターの熱量を最大化する理想的な体制ですね。とはいえ、組織を再構築する期間において、リリースタイトルのラインナップへの影響は避けられなかったのでは?
東條氏:
おっしゃる通りです。この改革を2019年ころから3年ほどかけて行ったのですが、ちょうどサービス開始10周年などの節目と重なってしまいまして……。リソースを組織再編に割いた影響もあり、本来であれば10周年に合わせてもっと仕掛けられたのではないかと正直悔やまれます。
しかしその分、体制変更後には『ティンクルスターナイツ』や『マブラヴ ガールズガーデン』といった大型タイトルを送り出せるようになりました。
──一方で、全体を統括する立場にある東條さんは、「尖った」ゲームに対する経営的な判断を迫られることも多くなるかと思います。そういった判断や責任の負担が大きくなることはないのでしょうか?
東條氏:
もちろん、予算を承認する過程では「なぜこれを作るのか」、「どういう勝算があるのか」という説明はしてもらいますし、そのうえで最終承認を行っています。
また、各タイトルの開発の進行具合についても、複数の部署を横断する横串組織のような専門チームを設けて、客観的な審査も行っています。
とはいえ、その審査結果を踏まえて「そのプロジェクトをどうするか?」という最終的な判断については、基本的には各スタジオの責任者と話し合って決めますし、大抵の場合は彼らの判断を尊重して任せていますね。
──ある程度の自主性は持たせつつ、最終的な承認を行う体制を築くことで、負荷を抑えているわけですね。では、東條さんが企画にゴーサインを出す「判断基準」とは、具体的にどのようなものでしょうか?
東條氏:
大きく3つの基準がありますね。
ひとつ目は、企画立案者の中に明確な「勝ち筋」があるかどうか。企画の責任者がそのタイトルの「強み」や「魅力」と共に、「だから勝てるんだ」という部分を他人に熱量を持って伝えられないようでは、成功するのは難しいと考えています。
ふたつ目は、「リスクに対する算段」です。単に「リスクが低いからよい」というわけではありません。リスクが高かったとしても、「そのリスクをどう乗り越えるか」までセットで設計できているかが重要です。
そして3つ目が、「賛否が分かれるもの」であることです。 100人に聞いて100人が「まあまあいいね」と答える平均点のものより、「リスクが高いのでは?」と反対する人がいる一方で、「いや、絶対にやるべきだ!」と熱弁する人がいて、意見が真っ二つに割れるような企画。いわゆる「尖っているかどうか」ということですね。そういう熱のある企画に対しては「やる意味がありそうだ」と判断することが多いですね。
4000万人のユーザーを抱え年間700億円を売り上げる、DMM GAMESが見据える「海外展開」。さらなるシェア拡大を目指す
──2017年に合同会社として設立されたDMM GAMESは、2020年にEXNOAへと商号を変更しています。まさに体制変更の時期と重なりますが、会社としての規模感はどのようになっているのでしょうか?
東條氏:
現在、EXNOAだけでいうと社員数は約800名です。一時期は1000名を超えていたので少しスリム化はしましたが、事業スタート当初に比べるとだいぶ大きな組織になりました。
──ゲーム事業だけでそれだけの社員がいるというのは、すごい規模ですね。
東條氏:
私たちはプラットフォーマーですから、自分たちが先陣を切ってコンテンツを供給し続けなければなりません。そのためには、どうしても手数が必要になります。
おかげさまで、現在は会員数が約4000万人、年間売上高は700億円以上の規模にまで成長しました。立ち上げ初日の売上が2万円だったことを思えば、感慨深いものがあります。
──初日2万円からの成長と聞くと夢がありますね。
東條氏:
しかし、近年は開発コストが高騰する一方で、ヒット作の売上が急に2倍、3倍と跳ね上がるわけでもありません。
ですから、つぎの戦略として「海外でのシェア拡大」を掲げています。国内だけではなく、外貨を稼げる体制を作らなければならない。
国内外を問わず、鍵になるのはやはり「IP」と「ユーザーコミュニティ」だと考えているので、それらを生み出すための投資は、今後も積極的に行う予定です。
DMMグループには「DMM pictures」のようなアニメ事業やデジタルコミック出版事業の「CLLENN」、スクラッチやオンラインクレーン事業など、IP関連の事業が多数あります。今後はグループ全体でIPの枠を広げていきたいと考えています。

──「会員数4000万人」というのは相当な数ですが、東條さんとしてはまだまだ拡大の余地や勝算は見えているのでしょうか?
東條氏:
たとえばいま、他社さんのIPとコラボするとして、私たちが誰もが知っている世界的に著名な版権を呼べるか? と問われれば、現状では難しいです。
私たちは「エッジの効いた表現」を攻めてきたので、そこでファンを獲得できた反面、届いていない層も山ほどいるわけです。
ですから、おもしろいコンテンツを作るのは大前提として、より客層を広げ、メインストリームに近い場所へたどり着くことができれば、規模はまだまだ拡大できるはずです。
──「エッジの効いた表現」と「メインストリーム」は相容れるのが難しい印象があります。このふたつは、将来的に交わっていくものなのでしょうか?
東條氏:
私は今後「オタクがマジョリティになる」と思っています。現状でも拡大はしていますが、まだまだマイノリティだと思います。
世界規模で「オタクがマジョリティになる未来」がくると考えているので、私たちの作っているゲームや投資しているコンテンツが、いわば“メインストリーム”になる可能性を秘めているという意識で動いています。
企画の持ち込みも大歓迎。「新たなIPの創出」を掲げ、『終天教団』をはじめさまざまな取り組みを実施中
──最近では、『ダンガンロンパ』などで知られる小高和剛さん率いるTookyo Gamesさんとの取り組みとして『終天教団』がリリースされました。このような取り組みは今後も続けられるのでしょうか。
東條氏:
「新しいIPを生み出す」という観点では、こういったご縁を活かしていくのが非常に効果的だと感じています。
今回のケースはまさにその好例です。小高さんはコンシューマー等のアドベンチャーゲームで多くの実績をお持ちの方ですので、その強みを最大限に活かすために、パッケージ販売も含めた「アドベンチャーゲーム」として展開する判断をしました。あくまで「クリエイターの強みを最大限に活かす」。そうした柔軟な形での展開は、今後も積極的に続けていくつもりです。
──つまり、他社からの企画持ち込みは今後も歓迎ということでしょうか。
東條氏:
はい、大歓迎です。いまでもつねに受け付けています。
私たちの中には、過去の膨大な経験から得た「失敗に関する知識」も蓄積されています。 持ち込んでいただく企画が、それらの課題を解決したうえで「おもしろさ」を提示できているか。そこが重要な基準になります。
──近年は個人開発のインディーゲームから世界的ヒットが生まれていますが、個人の方と組む可能性もありますか?
東條氏:
現状の制度としては設けていませんが、今後は大いにあり得ます。
ただ、どうしても私たちの扱う「運営型のソーシャルゲーム」は、長期的な運用リソースが必要不可欠です。これを個人や少人数で回していくのは、物理的に非常に困難ですが、コンテンツを作るうえで、個人クリエイターの才能と連携するアプローチは模索していきたいですし、今後注力していきたい領域のひとつです。
DMM創業者・亀山氏からの教えが東條氏の経営判断の土台に
──東條さんのお話をうかがっていると、クリエイターの「作りたい」という欲求を重視されている印象を受けます。トップダウンで指示するよりも、現場からあがってくる企画に注力したいということでしょうか?
東條氏:
おっしゃる通りです。ゲーム事業の立ち上げ当初から「作りたいものがあるなら、本気で作って、そのうえで稼いでくれ」と言い続けていますし、現在もそのスタンスは変わりません。
経験上、責任のない「やらされ仕事」はほとんど失敗しています。しっかり向き合って、ひとつひとつ積み重ねれば周囲からの信頼も得られる。そうすると、自身の経験から「成功のために解決すべき課題」も見えてきます。
結果として、新たな投資も呼び込めるようになる。そういういいサイクルを回しやすいのが我々の強みだと思います。なにせ、非上場ですからね。
──ものづくりにおいて、非上場が大きなアドバンテージになっているのはわかります。
東條氏:
めちゃくちゃ大きいですよ。例えばもし上場していたら、クオリティに不安があるタイトルであっても、株主への説明や決算のために「リリースする」という選択を迫られる瞬間があるかもしれません。
でも、我々は違います。「納得いかないなら来期に回そう」と即断できるんです。会長の亀山【※】に「ここ遅れます」と伝えれば、「わかったよ」と返ってきて、それで終わり。この意思決定の速さと柔軟さは強みだと思います。
※亀山敬司氏:DMM.comグループ創業者。合同会社DMM.com 会長。
──亀山会長は日本有数の実業家ですが、影響を受けた部分はありますか?
東條氏:
「勝ち筋を意識する」ことは亀山から学んでいる部分だと思います。
また、問題や課題というのは発覚するタイミングが早ければ早いほど、とれる選択肢も多くなるので、いかに感情を挟まず、正しい情報を早く共有してもらうか。こういう考え方も、亀山の影響を受けている部分だと思います。
──亀山会長から細かい指示が飛んでくることはあるのでしょうか?
東條氏:
立ち上げ当初から基本的に指示はなく「困ったときに相談する」という距離感で任せてもらっています。
──その関係性は、EXNOAが大規模な組織を抱え、年間700億円の売り上げを出すほどになった現在も変わっていないのですか?
東條氏:
変わっていません。ただ、事業の雲行きが怪しかったときは別です。 先ほどお話しした2017年頃の停滞期には、「なぜダメなのか」、「どう改善するか」という説明をする機会はありました。
たとえば、自社開発のタイトルが不振だった際、「自社開発に力を入れる意味はあるのか?」はもちろん、「リスクを抑えて他社との協業にすべきでは?」や「プラットフォームビジネスに特化したほうがいいのでは?」といった、事業構造の根本に関わる議論を行いました。
──場所(プラットフォーム)だけ提供して手数料をもらうビジネスだけではなく、「自分たちで作る」という道を選んだのは、どのような理由があったのですか?
東條氏:
外部からタイトルを誘致するだけでは、他社のプラットフォームとの差別化が図れなくなってしまいます。
また、私たちがプラットフォームとして実現したい新機能や、パブリッシャーとして試したい施策に挑戦するためには、融通の利く自社パブリッシングタイトルが必要不可欠です。
たとえその作品単体では勝ち筋にならなくても、「つぎの勝ち」を引き寄せるために必要なトライというものがある。そして、その「つぎ」のチャンスを迎えたときに自社タイトルであれば利益を最大化することができます。
「だからこそ、リスクをとってでも自社パブリッシングでやるべきなんです」という話を亀山にして、「それならこういう条件だね」、「じゃあこうしよう」といったやりとりを交わしました。
──ファースト(自社開発)、セカンド(協業)、サード(他社開発)のタイトル比率について、「その比率をどのようにしていくべきか」を東條さんはどう考えているのでしょうか?
東條氏:
具体的に「この比率で行こう」と決めているわけではありません。ただ、いまは内製ラインを強化しています。内製ラインが強くなると武器が増えるようなものなので。
──東條さんが考える、DMM GAMES(EXNOA)の「勝ち筋」や「強み」とはなんでしょうか?
東條氏:
やはりDMMプラットフォームのユーザー基盤と「エッジの効いたコンテンツ」です。ただ、昨今は「生成AI」の波が来ており、インディー領域も含めてコンテンツ市場への参入障壁が劇的に下がっています。クオリティはさておき、誰もがコンテンツを作れるようになったことで、市場におけるDMMの占有率は減少していく可能性があります。
しかし、私たちには長年培った制作力と、AIだけでは真似できないユニークなアイデアを形にする力があります。さらに、自分たちの「プラットフォーム(土俵)」を持っている。この強みがある限り、まだまだ戦えると考えています。
──たしかに。プラットフォームという「場」を持っている強みは大きいですね。
東條氏:
エンターテインメントというものは、コンテンツを供給し続ける必要があります。
ですが、手当たり次第に出すのではなく、自分たちの強みを活かし、相乗効果のある高品質な作品を定期的にリリースする。それがユーザーさんによろこんでもらえる秘訣だと考えています。
そうしてIPとコミュニティが育てば、ゲームの外へも展開しやすくなります。アニメやコミック、あるいは3Dライブイベントなど。 コンテンツ単体ではなく、シーン全体を包括的に捉え、シームレスかつ効率的に市場をとっていく。それが私たちの目指す「勝ち筋」ですね。
──ユーザーコミュニティに関しては、DMM GAMESは非常に印象的な数字を持っていますよね。ひとり当たりの平均プレイタイトル数が「4.2本(2023年データ)」というのは、非常に高い数字です。何か意図的な仕掛けがあるのでしょうか?

東條氏:
プラットフォームの中で様々なジャンルが遊べるように工夫しています。
カジュアルや放置系など気軽に遊べるタイトルから、戦略を求められるやり込み要素が多いタイトルまで、プラットフォームの中で様々なジャンルのタイトルが遊べるようなラインナップを意識しています。
特に、最近のトレンドである「放置系」タイトルが増えていることはこの数字の要因のひとつになっていると思います。
企画段階から「メインで遊んでもらう」のではなく、「なにかのついでに立ち上げてもらう(サブゲー)」ような設計にすることで、結果として複数のタイトルを並行して楽しんでいただけているのだと思います。
また、これはDMM GAMES特有の文化かもしれませんが、新作が出ると「とりあえず小さい金額でも課金して遊んでみる」という方が結構いらっしゃるんです。
それだけ深く愛してくださるコアユーザーに支えられているのが、DMM GAMESという場所なんです。
──そういった熱烈なユーザーさんがいるというのは、プラットフォームとして非常に心強いですね。最後に、DMM GAMESのファンの方へ向けてメッセージをお願いします。
東條氏:
私たちプラットフォーマー、パブリッシャーというのは、どこまでいってもファンのみなさんあっての存在です。
今後も、数ある選択肢の中から「これだ」と選んでいただけるような、熱狂できるゲームや場所を作り続けたいと思っていますし、多様化するニーズにひとつでも多く、応えていける会社でありたいですね。
2026年にDMM GAMESも15周年を迎えます。ですが、そこはゴールではありません。この先も20年、30年、50年と続いていくプラットフォームであり続けるつもりです。ぜひ末永くよろしくお願いいたします。(了)
初日売上2万円という絶望的な船出から、パブリッシャーに門前払いされながらも、『艦これ』や『刀剣乱舞ONLINE』といった常識外れのメガヒットを生み出し、PCブラウザゲーム市場という独自の生態系を築き上げた15年。
振り返れば、そのブレイクスルーの根底には、作り手の圧倒的な熱量とそれをおもしろがり支え続けた熱烈なユーザーとの共犯関係があった。
「ファンのみなさんあっての存在」。東條氏の飾らない言葉には、15年という歳月をユーザーと共に歩んできた信頼が滲んでいた。
2026年の今年、15周年を迎えるDMM GAMES。これからもゲーマーの多様な「好き」を受け止める巨大な遊び場として、進化し続けてくれることを期待したい。


