おもしろさの秘訣は「感情をどう動かすか」。『PICO PARK』は、引き出したい感情から逆算して作られている
──実際の配信では、『ソニック』35周年の新しい展開として発表され、会場でもすごい歓声が起こっていました。海外からの反響も大きかったと思いますが、おふたりの実感としてはいかがですか?

三宅氏:
まず『PICO PARK』のファンの方々についてですが、僕たちが思っていた以上にすんなりと受け入れてくれたな、という印象です。
島津氏:
そうだね。良い意味でびっくりしたよね。
三宅氏:
従来の『PICO PARK』は特定のキャラクターものではなく、フラットでシンプルなデザインだったからこそのとっつきやすさがありました。そこにソニックというキャラクターが乗ったとき、どう思われるかが少し読めなかったんです。
でも、ふたを開けてみれば「新しいアクションが入って、どんな楽しい協力プレイができるんだろう」と好意的に受け止めてもらえました。それはすごくうれしかったですね。
一方で『ソニック』ファンの方々にとっても、本作の存在は誰も予想できなかったと思います。でも、「なんか楽しそう」「可愛らしい」と意外なほど温かく受け入れてもらえました。ただ当然、『PICO PARK』自体を知らない方々もいて、「これはどういうゲームなんだ?」と戸惑う声があるのも把握していますし、それは当然の反応だと思っています。
島津氏:
先ほども少し触れましたが、『PICO PARK』はもともと、比較的カジュアルな層に遊ばれているゲームですからね。
──カジュアル層に受けている中で、「コアなゲームファンに届けたい」というのはある意味で挑戦的ですよね。初出しの場として「Summer Game Fest」を選んだのも、そうした目的があったのでしょうか?
島津氏:
そうですね。初出の場所をどこにするかについては、他にもいろいろな選択肢があったと思います。たとえば『PICO PARK 2』のときは任天堂さんの場でお世話になったりと、僕らにとって得意な場所での発表もできたはずです。
でも今回は、あえてゲームファンの方々に「なんだこれ?」と言われに来ました。まずはそこからスタートしたかったんです。
── なるほど。
島津氏:
もちろん、「なんだこれ。本当におもしろいのか?」と疑っている人も中にはいると思います。
でも、発表の後に三宅が言ってくれた言葉がすごく心強くて。「なんだこれ? と言っている人たちにまずは気づいてもらう。そして実際にプレイしてもらったときにおもしろいものになっていれば、絶対にファンになってもらえる。だから俺は、中身のあるものを作る」と、力強く語ってくれたんです。
それを聞いて、おもしろいものができるなと、プロデューサーとしても今ワクワクしているところです。
三宅氏:
自信満々に言うのもなんですが、キャラクターをお借りする立場として、そこは責任を持たなきゃいけないと思っています。
思い返せば『PICO PARK』も、ヒットする前は「チープなゲームだ、つまらなそうだ」と散々言われていたんですよ。でも、実際に触ってもらえたら「おもしろい」と評価されて、ある時期から「チープ」「つまらなそう」という声が聞こえなくなりました。それは、おもしろさの価値が伝わったからだと思っています。
だから今回も、僕たちががんばらなきゃいけないのは、「本当に楽しいゲームなんだよ」ということを伝え、触ったときに実感してもらうことだと思っています。
島津氏:
今日、Play Days【※】の初日を迎えて、インフルエンサーの方々が次々とプレイしてくださっているじゃないですか。
僕はそれをビビりながらX(旧Twitter)でエゴサしていたんです。「大丈夫かな」と思いながら見ていたら、「発表の時はつまらなそうだと思ったけど、やったら超おもしろかった」という投稿がいくつかあって。そういうのを見ると、ちょっと感慨深いですね。
※SGF期間中に開催されるメディア・インフルエンサー向けの試遊イベント。
三宅氏:
そうですね。まさに『PICO PARK』の最初の頃に見た光景だなと。「つまらなそうだ」から「やってみたらおもしろかった」に変わる瞬間というか。
島津氏:
なるほどね、三宅の中ではすでに経験済みの出来事なわけだ。
三宅氏:
はい。ずいぶん前に味わった、すごく久しぶりの感覚だなって。
──最初は「ちょっとつまらなそう」と思われても、プレイしてみるとおもしろく感じる。そのおもしろさの秘訣はどこにあるとお考えですか?
三宅氏:
秘訣と言えるかはわかりませんが、僕は常に「ゲームを通して人々の感情をどう動かすか」しか考えていないんです。まず感情ありきで、「こういう感情を引き出したいから、このギミックが必要だ」という作りかたをしているんです。
その狙いが機能しているかを確認するために、発表の日を迎えるまでに内々で何度もテストプレイを重ねました。「よし、このステージではちゃんとこういう会話が生まれるな」「こんな風にわちゃわちゃ盛り上がるな」と、感情が引き出せているかを確認するんです。
テストプレイには、普段あまりゲームをプレイしない自分たちのスタッフたちや、セガの方々にも参加してもらいました。そうしたカジュアル層とコア層の両サイドの意見を見て、細かくチューニングを繰り返した結果が今の形です。
感情の動きを計算しつつ、実際のユーザーテストで確認と調整を繰り返して、ようやく今日を迎えたという感じですね。
わあっと集まって盛り上がり、笑って終わる。プレイヤーに残したいのは、純粋な思い出と感情
── 先ほどインフルエンサーの方々が遊ばれているというお話がありましたが、基本的にはみなさん4人でプレイされているんですか?
島津氏:
そうですね。今回のPlayDaysの運営はセガさんのアメリカの方々に協力して頂いていて、基本は毎回4人プレイで楽しめる状態にしてもらっています。
──ちなみに本作のプレイ人数は、最大何人なのでしょうか。
三宅氏:
ふたりから最大8人までです。ここは従来の『PICO PARK』とまったく同じですね。

──試遊では、初対面のプレイヤー同士でも自然と盛り上がっていたのでしょうか?
島津氏:
めちゃくちゃ盛り上がっていました。僕らもビビりながら見守っていたんですが、本当に安心しました。
ただ、僕自身はプロデューサーという立場で、直接手を動かしてゲームを作っているわけではないのですが……客観的に見て、「ふたりから8人プレイ対応」って文字にするのは簡単でも、ふたりで遊んでも8人で遊んでもゲームバランスが崩れないって、ある種「狂っている」と思うんです。
それが僕が『PICO PARK』を一緒にやりたいと思った理由のひとつでもあります。しかも今回は『ソニック』のIPをお借りして、ギミックが大幅に増えていますよね。さらに三宅は「テイルスは飛べないと意味がない」「ナックルズは滑空できないと」と、キャラクター固有のアクションまで追加しているわけです。
そうすると「このタイミングで誰かが空を飛ぶかもしれない」といった不確定要素が一気に増えますよね。それをふたりから8人のどの人数で遊んでも、ちゃんとバランスがとれて楽しめるものにするなんて、並大抵のことではありません。
先ほど「見た目がチープだと言われた」という話がありましたが、感情を揺さぶるための緻密な計算と中身の苦労において、彼はものすごい能力を持ったクリエイターだと心から信頼しています。
── 以前、別メディアのインタビューでは「初代『PICO PARK』をUnityに移植した際、標準の物理エンジンだと挙動の計算が複雑になって苦労した」というお話をされていましたね。
三宅氏:
Unityには標準で物理エンジンが入っているんですが、それを使って『PICO PARK』の挙動は作れないと思いました。だから『PICO PARK』の物理演算は、完全に自前物理なんですよね。
──独自の物理演算のうえに、今回はさらに『ソニック』のアクションまで落とし込んできたと。
三宅氏:
はい。ただ、1作目の物理演算は僕ひとりで作りましたが、今回は前作同様にジェムドロップさんと協力しています。システムの実装部分はジェムドロップさんにお願いし、僕はそのうえでさまざまなギミックやレベルデザインを構築しているという体制ですね。
──一見するとすごくシンプルに見えるけれど、じつはとんでもなく中身が詰まっている。そのすごさが伝わるといいですね。
三宅氏:
見た目だけで「チープだ」と言われることもあるかもしれませんが、あの独自の物理演算を完全に実装したうえで、さらに最大8人のネットワーク同期まで対応させています。
その技術的な難易度はちょっと想像できないかもしれませんが、決して簡単なことをやっているわけではないんですよ。
島津氏:
ただ、そういう裏側の苦労は、プレイヤーには一切感じさせたくないんです。別に「僕たちの技術がすごいんです」と自慢したいわけではありません。
ごく普通に、ふたりから8人が集まってわあっと盛り上がって遊ぶ。そして遊び終わった後に「あんな会話をしたよね」「あそこで何回も落ちて笑ったよね」という、純粋な思い出や感情だけが残る。それが僕たちの願いであり、このゲームに込めた思いなんです。
三宅氏:
ふたりだろうが8人だろうが、何人プレイであっても「共通して生まれる会話」ってあると思うんですよ。もちろん、大人数だからこそ生まれる会話や、ふたりならではの会話もあります。ただ、「人数に関係なく盛り上がる会話」という軸も確実にあって、僕はそれを道しるべにして作っているんです。
もちろん、最初から頭の中で100点のものができているわけじゃありません。だからこそユーザーテストを重ねて、その会話がちゃんと引き出せているかを確認する。それを道しるべにしていろいろな人に遊んでもらいながら調整していけば、必ず正解にたどり着くと信じています。
だから『PICO PARK』の『1』も『2』も作れたと思っていますし、今回の『SONIC PICO PARK』も良いものに仕上がっていると思います。

オンラインで離れていても、「会話」だけは確かに生まれる。それこそが『PICO PARK』が最も大切にしているもの
──あともうひとつお聞きしたいのですが、本作はオンラインマルチプレイ対応ですよね。オンラインで遊んでいる人たちのフィードバックや反応は、どのように確認しているのでしょうか?
三宅氏:
今回も内々で、オンラインでのテストプレイを実施しました。その際、テスターの方々に「画面共有してください」とお願いして、僕も通話に入ってただひたすら見ているんです。
とはいえ、開発者が見ていると言いづらいこともあると思うので、極力そう感じさせないような雰囲気を作って、「本当に、僕のことはボロクソに言っていいのでご自由に遊んでください」と伝えてやってもらいましたね。
──オンラインで物理的に離れていても、プレイ中の会話の盛り上がりはオフラインと変わらないものですか?
三宅氏:
もちろん、オフラインのローカルプレイとオンラインがまったく一緒の体験になるとは言いません。でも、少なくとも『PICO PARK』で一番大事にしている「会話」は、ローカルでもオンラインでも生まれるものだと手応えを感じています。
──それがまさに、先ほどの「言い訳が立つ事故」ですね。
三宅氏:
「おいソニック、何やってんだ」「いや違うんだよ」という、あのやりとりですね。
島津氏:
従来の『PICO PARK』で言うと、「ピコキャット」という猫のキャラクターが赤や青、黄色などに色分けされていました。
だから、たとえば会社の同僚や大学の先輩たちと遊んでいるときに「赤がずっと落ちてる。赤、何やってんだよ!」とツッコむと、「うわあ、すみません先輩」みたいなやりとりが起こる。それがおもしろいわけじゃないですか。オンラインでも配信でも、同じような盛り上がりが起きています。
そうした「言い訳が立つ事故」をさまざまな形で誘発させることで、みんながコミュニケーションをとる。ゲーム内で起きた事故やちょっとした文句って、本当に傷つくようなものではなく、ただの笑い話ですよね。次の日に「お前、あんときひどかったよな」と言いあえたりするのは、すごく尊いことだなと思っているんです。
三宅氏:
それに今回、キャラクターを通すことによる「会話のしやすさ」というのは絶対にあると思うんですよ。
たとえば島津がソニックを使っていたとして、若手スタッフが「島津、何やってんだよ」と直接言うのと、「ソニック、何やってんだよ」と言うのは、心理的ハードルがまったく違うと思うんです。
──なるほど、キャラクターが人間関係の「クッション」になるわけですね。
三宅氏:
そうですね。まさに良いクッションになってくれると思います。
