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『ドルアーガの塔』のキャラが40年後もボクセルで「バチッと立つ」理由は、ナムコ黄金期の「謎の裏方部署」にあった。『NAMCO LEGENDARY Mountains』を機に明かされる、設計思想の正体

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僕にとってのナムコは、大学時代だった

──入社時はデザイナーだった篠﨑さんが、次第にゲームクリエイターの方に転身していった。当時のナムコにとって、そういう部署異動は普通にあったことなんですか。

篠﨑氏:
部署異動が簡単にできたイメージはないですが、80年代前半の頃は割と自由にやらせてもらえた感じでしたね。
「僕はこれがやりたい」というのがあった時に、通してもらえやすかったのではないかと。

あと、当時のゲーム業界やナムコにも勢いが感じられたので。「この方面が今盛り上がっているからチャレンジする!」、みたいなノリも生まれていた気もしています。

──篠﨑さん個人だけでなく、ナムコという会社自体も、ロボット事業からゲーム事業へと軸足を移していった時期だったわけですよね。

南治氏:
ロボット事業が花形だった会社が、ゲームでここまでやり切ったというのは、本当にすごいですよね。「黄金期」という言葉が生まれるほどの勢いだったわけですから。

篠﨑氏:
とにかく業界として、いろいろな意味で定まっていなかった時代なのではないかと。
ある意味「やったもん勝ち」みたいなところがありつつ、1980年代前半のナムコは、豊富なアイデアでクリエイティブしていたのではないでしょうか。

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THE TOWER OF DRUAGA™& ©Bandai Namco Entertainment Inc.

──クリエイティブセンターが終了となった後、ナムコのブランディングに注力する専門部署というのは存在したんですか?

篠﨑氏:
特になかったかと思います。僕が知らなかっただけかも知れませんが。

『NG』に関しても刊行は続いていましたが、もともと季刊だったのが月刊に移行するなか、外部から編集のプロの方も参加して作る形になりましたし。

──それは、ナムコを含むゲームが文化的地位をじゅうぶんに得たことで、クリエイティブセンターの役割が果たされた、ということなのでしょうか。

篠﨑氏:
それに近いのかもしれないですね。

ゲーム開発にまつわる業務は開発部内部で行うようになり、当時の僕のような別部署のスタッフが関わることは基本的になくなりました。見方を変えると、ゲーム開発における分業化が進み、ナムコという会社がいろんな意味で「普通」になっていったのではないかと。

──篠﨑さんにとって、あの頃のナムコを振り返って、どういった時代だったと思いますか。

篠﨑氏:
一言でいうと、僕にとっての「大学時代」だったかな、と。

特にクリエイティブセンターの頃は、少人数のサークル活動みたいな感じで、先輩と一緒に好きなことをたくさんやって、やりたいことをやらせてもらいました。当時は本当に楽しかった想い出ばかりです。

僕はナムコを離れた後もゲーム業界でずっと働いていたんですけど、ここ20年くらいは年相応というか、自分で絵を描いたり企画をやるというよりも、管理職やマネジメント的な仕事がどうしても増えるわけです。

ある意味当然の流れだと思うんですけれど、やっぱり燃焼しきれないというか、クリエイティブなことからは、どうしても離れてしまう面もある。

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そんなときに、40年前にナムコで働いていた頃のことを思い出すことがあります。

ただ、すごく楽しかっただけに、その想いを“卒業”した後も引きずって生きている実感が、頭の中の片隅に残っています。ある意味弊害なのかもしれないなと時々考えたりすることも。

──南治さんにも伺いたいのですが、現在のゲーム開発は職種の細分化が徹底されています。そういった現在のゲーム業界に身を置かれている南治さんにとって、篠﨑さんのお話を聞いて、当時の熱気に対してどういった印象を抱きましたか。

南治氏:
業界がこれからガンガン大きくなるし、変わっていく時期。その渦中で頑張られた篠﨑さんに対しては、ただただ「羨ましいな」と思います。

それと、最近はAAAタイトルでもない限り、ゲーム業界的には開発チームの規模が少しシュリンクしている面があるんですよ。職種の細分化は進んでいるものの、小さなタイトルだと複数を並行して見なければいけないとか、いろんな業務をやる、というケースもあります。

そういった意味では、近年は篠﨑さんがナムコで頑張られていた頃のゲーム業界に近づきつつある部分も感じています。

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あれから40年後、ドルアーガは「ボクセル」になって戻ってきた

──さて今回は、南治さんのビサイドが手掛ける新作ゲーム、『NAMCO LEGENDARY Mountains』についても触れたいと思います。このゲームでは、『ドルアーガの塔』を含むナムコ5作品のドット絵のキャラクターが、ボクセル化されて登場するのが大きな特徴です。

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篠﨑氏:
概要はうかがっています。あのドット絵がボクセルになったと聞いて驚きました。

南治氏:
ドット絵をボクセル化しているのがこのゲームの最大の特徴ですが、そのほかにもBGMやステージ構成など、『ドルアーガの塔』などの各ゲームにちなんで作っているんですよ。まずは実機でのプレイをお見せしますね。

(南治氏が実機を操作し、ボクセル化されたキャラクターたちが画面に登場していく)

篠﨑氏:
ボクセル表現というのは新鮮ですね。クオックスの正面って、こうなっていたんですね。
ローパーは、こうなるのか……(笑)。
おぉ、ちゃんとウィルオーウィスプに見えますよ。

南治氏:
プレイしていくと、これらのボクセルキャラクターを獲得してコレクションできます。

ドルアーガってキャラクターが多いじゃないですか。このゲームでは11種類しか出せないんで、どうしようかなと。そこで、それぞれの種類の中でパターンが変わるようにしているんです。例えば「魔法使い」の中だと、メイジとかウィザードとか、色々なパターンを用意しています。

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──BGMにもこだわっていますよね。

南治氏:
あらためて思うんですけど、ドルアーガの楽曲ってすごく「強い」んですよ。ドルアーガのBGMが鳴ると、もうそれだけでこの世界に一気に引き込まれるなと。

篠﨑氏:
このゲームのBGMはオリジナルの音源なんですか?

南治氏:
はい、オリジナルの楽曲を使用しています。

ドルアーガといえば、フロアに出てくるキャラクターによってBGMが変わるじゃないですか。このゲームでも、たとえばクオックスが出てきたら、ゲーム内のBGMもそのテーマ曲になるようにしている。ドルアーガが登場すると、ちゃんとドルアーガの曲が鳴ります。

篠﨑氏:
おぉ、それは良いですね!

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南治氏:
せっかくなので、収録している他の作品も見てみましょうか。

これは『ゼビウス』のステージです。「アンドアジェネシス」がだいぶデカいですよね。それと、「バキュラ」は単なる板で、ボクセルとして見るとアレなんですが、これはどうしても出したかったんです。

続いてこちらは『ディグダグ』のステージです。このステージでは元々のディグダグと同様、プレイヤーが画面を動かしているときだけBGMが流れるようにしています。だから、このゲームを遊んでいるときのサウンドだけを聞いていると、『ディグダグ』をやっている雰囲気なんですよ。

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──篠﨑さんにとって、実際に見た時の感想はいかがでしたか。

篠﨑氏:
パッと見て、キャラがとても可愛いですよね。それでいて、ボクセル表現なのが新鮮です。それに、僕はカプセルトイでボクセルのナムコキャラを集めていたから、全然違和感がなかったです。
このあたりのデザインのセンスは、小野浩先生【※】の独擅場ですね。

※小野浩:
ナムコのデザイナー(1957-2021)。『ゼビウス』『ギャラガ』『ディグダグ』など、ナムコ黄金期を代表する数々のキャラクターのドット絵を手がけた。「ドット絵の神様」の通称で知られる。

南治氏:
そう言っていただけると、嬉しいです!

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篠﨑氏:
ドルアーガのドット絵は僕が打ったわけじゃないけど、深い思い入れがある作品が、こうやって新しい形で表現されるのは良いものだと思いますね。

──南治さんにもお伺いしますが、2Dだったキャラクターをボクセル化するにあたって、どういうふうに開発を行ってきたのですか?

南治氏:
まずアーティストに作ってもらって、自分やスタッフで見ながら、「いや、これちょっと違うんじゃない?」と直してもらいつつ。それをひたすら、延々と繰り返してきました。

あとは、ボクセルでは立体感を重視したいんですけど、それと「見た目の可愛らしさ」を両立するのが大変でした。
もちろん、バンダイナムコエンターテインメントさんにも監修してもらっていて、それも参考になりましたね。

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──ボクセルだと、キャラクターによって造形上の制約も出てきそうですが、その点はどう処理したんですか?

南治氏:
実際のゲーム画面では、ボクセルキャラが「カプセル」に入っていますよね。実はこれ、開発途中まではカプセルに入っておらず、ボクセルキャラがむき出しになっていたんです。「やっぱりそのまま積みたいよね」というのがすごくあって。

でも、そうするとやっぱり当たり判定を含めて、ボクセルキャラの造形がゲーム性に直接影響が出てしまう。だから当初は、なるべく球体に近づけるようにしていたのですが、どうしても限界があって。最終的な判断として、カプセルに入れることにしました。

──『どうぶつタワーバトル』も『スイカゲーム』も、形状のふぞろいさが魅力のひとつではありますが、本作ではそうしなかったと。

南治氏:
ただ、カプセルに入れることで、それぞれの形状の個性はなくなるんですけど、その代わりに良かったこともありました。

完全に球体になっているので、カプセルが着地した際に、どのキャラでもプレイヤー側を向くようにしたんですよ。一番見た目が良い「正面」の姿を見せられますし、クルクル回る演出も可愛いですよ。

なぜナムコのキャラは「バチッと立つ」のか──ボクセル化という新たな可能性

──今回は往年のナムコの5作品がピックアップされていますが、これらはどういった基準で選ばれたのですか?

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南治氏:
ボクセル化したときに、収まりというか、見た目が良い作品を選びました。
この観点で考えると、ドットが荒い昔の作品の相性が良いんです。

同じナムコの昔の作品でも、『ドラゴンバスター』とか『源平討魔伝』の頃になると、プレイヤーキャラがデカくて相性が良くないのかなと。そういった意味だと、この5タイトルは視覚的にもわかりやすい。

篠﨑氏:
じゃあ、「システム2」【※】の頃は第一候補からは外れてしまうと。『ワルキューレの伝説』とか『オーダイン』とか。

南治氏:
『オーダイン』は拡大縮小ができたから、あれはもうシステム2ですよね。システム2の頃も好きな作品がたくさんあります。『アサルト』『メタルホーク』とか。

※システム2:
ナムコのアーケードゲーム基板の世代名。1988年に開発された高性能基板で、それまでのドット絵に比べてキャラクターのサイズや解像度が大きく向上した。『ワルキューレの伝説』『アサルト』などに使用された。

そのうえで、人気が高いものを選んでいきました。やっぱり自分はシューティングも好きだったので、『ギャラクシアン』、『ギャラガ』、『ギャプラス』、あと『ギャラガ’88』とかも含めてやれたら良かったんですけど。

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篠﨑氏:
『スカイキッド』は?

南治氏:
『スカイキッド』は悩みました! あのデザインはすごく良いのですが、お客さんへの訴求度がちょっと低めという面があって。

──他にはどういった基準で?

南治氏:
今回は数を絞らねばならないため、いわゆる「ナムコット」の作品は候補から外しました。個人的には『ファミスタ』とか入れたかったんですけど。

──クラシックゲームIPのキャラをボクセル化する展開は昔からありますが、ゲームとして大々的にフィーチャーされるのは本作が初めてのように思えます。飛びつくファンも多そうですし、これらのボクセルキャラが本作だけに留まるのはもったいないとも感じます。フィギュア化の予定などはないんですか?

南治氏:
今のところは未定ですが、個人的には期待しています(笑)。
バンダイナムコエンターテインメントさん的には、このゲームが「NAMCO LEGENDARY」のファーストケースですし、様子を注視している、とは言われています。

──篠﨑さんが40年以上前に注力したタイトルが、いま2026年に改めてこういった展開を見せていることについて、どう感じますか?

篠﨑氏:
レトロゲームブームって、IPを利用して昔のものをやるという流れが、もうここ10年ぐらいずっと続いていますよね。僕もレトロゲームのイベントに参加していて、そういう動きを肌で感じているので、自然な流れかなという感覚はあります。

──今回のボクセル化が軌道に乗れば、他の往年のIPのボクセル化も進む可能性が出てきそうです。本作が成功するか否かは、業界的にも結構大きいんじゃないでしょうか。

南治氏:
続くかどうかは本作の売れ行き次第です(笑)。

もし「次」があれば、ぜひナムコットの作品に絞ってやりたいですよね。ナムコットのオリジナル作品もそうですし、ドルアーガにしても、あえてギルとかがファミコンバージョンになっているみたいな。……4色だと、マジ辛そうですけど(笑)。

ともあれ、かつて2Dのドット絵で描かれていたキャラクターが、ボクセルという表現として認められていったら嬉しいですね。

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THE TOWER OF DRUAGA™& ©Bandai Namco Entertainment Inc.

篠﨑氏:
僕は『エルデンリング』『バルダーズ・ゲート3』などの最新ゲームも遊びますけど、確かに面白いんですが、いまのゲームって難しくなりすぎている印象もあります。昔はちょっとしたアイデアが一発あれば、それを軸にゲームが作れたんですよ。

だからこそ、こういうシンプルなゲームがもっと登場してほしいな、という気持ちもありますね。

──当時の想い出に浸りたい人もいるでしょうし、そういった人たちに寄り添うゲームがあってもいい。『NAMCO LEGENDARY Mountains』は、そんな一作になると思います。それでは本作に興味を持った人に向けて、南治さんからメッセージをお願いします。

南治氏:
この頃のナムコのドット絵のキャラって、ボクセル化しても「バチッと立つ」んですよ。そのことを強く感じましたね。そういった意味で、今回はとっても有意義だし、続いてほしいですよね。ですので、今回の『NAMCO LEGENDARY Mountains』、どうぞよろしくお願いします!

──篠﨑さんからも、最後にひとことお願いします。

篠﨑氏:
説明書を熟読することなく、シンプルに楽しく遊べるゲームはすごく良いと思います。そしてそのキャラクターが思い入れのあるものであればなおさらですね。

このゲームのように、オリジナルIPの要素を愛のある形で再構築したものが、もっともっと増えていく未来を期待したいです!

──本日は長時間ご対応していただき、ありがとうございました。

<了>


あれから40年余りが経った今、ナムコ黄金期のキャラクターがボクセルという新たな表現を得てゲーム画面に表れている。

ギル、カイ、ドルアーガ。彼らのドット絵が「バチッと立つ」設計だったからこそ、40年後の今も新しい形で世に出ることができる。それは、ゲームを単なる消耗品ではなく、長く愛されるものとして作ろうとした、80年代のナムコの仕事のひとつの結果といえるのかもしれない。

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その意味で、本作は単なる懐古ではなく、ひとつの実験でもある。
南治氏自身、「続くかどうかは本作の売れ行き次第」と語っていたように、かつての熱気を宿したキャラクターたちが、この先さらに新しい姿を見せてくれるかどうかは、まずは本作の手応えにかかっている。

6月25日発売の『NAMCO LEGENDARY Mountains』で、その新たな一歩を確かめてみてほしい。

DIG DUG™, MAPPY™, PAC-MAN™, THE TOWER OF DRUAGA™, XEVIOUS™&
©Bandai Namco Entertainment Inc.
©︎ BeXide

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編集者
元4Gamer。『Diablo』 『Ultima Online』 『EverQuest』 『FF11』 『AION』等々の、黎明期のオンラインRPGにおける熱狂やコミュニティ、そこから生まれたさまざまな文化は今も忘れられません。

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