MMORPGは長く遊ばれてきたジャンルだが、「楽しむために始めたにもかかわらず、いつの間にかストレスになってしまう」と感じる人も多いのではないだろうか。過度な課金、ヒーラー不足、勝者総取りの競争……これらがジャンルの「慣習」として定着していることは否めない。
7月22日より日本でサービス開始となるMMORPG『ヴァンピール』は、そういった慣習を最初から「問い直す」ところから設計が始まったゲームだ。
開発を率いるのは『リネージュ2 レボリューション』を手がけたネットマーブルのプロデューサー・ディレクター陣。つまり、「MMORPGの問題点をいちばんよく知っている人たち」が作ったゲームでもある。
『ヴァンピール』はGoogle PlayおよびApp Storeの両ストアのセールスランキングで1位を獲得、7月22日から日本でもサービスが開始される。
今回電ファミは、プロデューサーを務めるハン・ギヒョン氏、エグゼクティブアートディレクターを務めるチェ・ナムホ氏、ビジネス部門にてディレクターを務めるチョン・スンファン氏へメールインタビューをする機会をいただいた。そこで本稿ではその様子をお伝えしていく。

編集/柳本マリエ
※この記事は『ヴァンピール』の魅力をもっと知ってもらいたいネットマーブルさんと電ファミ編集部のタイアップ企画です。
「自分が本当に遊びたいMMORPG」とはなにか? ヴァンパイアでMMORPGの慣習を疑う
──『ヴァンピール』の開発をスタートしたきっかけを教えてください。なぜヴァンパイアをテーマに選んだのか、世界観を構築するうえで意識したことも含めて聞かせてください。
ハン・ギヒョン氏:
長年MMORPGを開発し、またひとりのプレイヤーとして楽しんできた立場から、このジャンルが持つ魅力と同時に、限界についても間近で見てきました。
MMORPGには、多くの人とともに成長し、競い合う楽しさがあります。一方で、時間が経つにつれ、一部のシステムがプレイヤーに疲労感を与えるようになっていたのも事実です。異なるプレイスタイルを持つユーザーをひとつの競争構造に押し込めることや、過度な成長負担、反復的な課金構造、勝者中心のコンテンツ設計などは、ジャンルが長く抱えてきた課題だと考えています。
私自身もMMORPGが好きなユーザーとして、「楽しむために始めたゲームが、なぜいつの間にかストレスになってしまうのか」という疑問を抱いてきました。そして『ヴァンピール』プロジェクトを始めるにあたり、自分自身にひとつの問いを投げかけました。「自分が本当に遊びたいMMORPGとは、どのようなものなのか」と。
『ヴァンピール』は、その問いから出発したプロジェクトです。単に新しい世界観や新しいコンテンツを作るのではなく、MMORPGが当然のものとして受け入れてきたさまざまな慣習や構造を、改めて見つめ直すところから始めました。
特に、従来のMMORPGが主に中世ファンタジーの世界観にとどまっていたことに対し、『ヴァンピール』ではヴァンパイアという題材を通じて、より強烈で大人向けの「ダークファンタジー」な世界を表現したいと考えました。これにより、アートやキャラクター表現、戦闘演出などにおいても、既存タイトルとは異なる体験を提供できると考えています。
つまり『ヴァンピール』は、「MMORPGとはこういうものだ」という固定観念に挑戦するプロジェクトです。成長、競争、経済システム、そして世界観や表現方法に至るまで、慣れ親しんだ枠組みを大胆に変え、「ユーザーがもう一度楽しさを感じられるMMORPGを作りたい」という思いが、開発の大きなきっかけとなりました。
──ヴァンパイアという題材を選んだ理由についても詳しくお聞かせいただけますでしょうか。
チェ・ナムホ氏:
既存のMMORPG市場を見ると、中世ファンタジーや神話をベースにしたコンセプトが主流です。完成度の高い作品は多い一方で、設定や構造がある程度定型化されているという印象もありました。私たちはその枠組みをそのまま踏襲するのではなく、より強烈で差別化された世界観に挑戦したいと考えました。その中で選んだテーマが「ヴァンパイア」です。
ヴァンパイアは単なる種族設定ではなく、生と死の境界、欲望と禁忌、魅惑と恐怖が共存する象徴的な存在です。こうした感情の濃度をMMORPGの構造に落とし込むことで、より強い没入感を提供できると判断しました。
ストーリーにおいても、典型的な英雄譚からの脱却を目指しました。『ヴァンピール』の主人公は「選ばれし英雄」ではなく、死から物語が始まる人物です。
人間勢力である「教団」は、ヴァンパイアを排除するために、同じ人間に対してさえ非人道的な実験を行います。主人公もその実験体となり、かろうじて脱出するものの、最終的には教団によって命を奪われ、その死の果てにヴァンパイアとして生まれ変わります。その後の物語は、世界を救う英雄譚ではなく、自分を破壊した世界へ「復讐」する旅として展開していきます。
このように、「挫折」「怒り」「復讐」といった、より極端で現実的な感情を物語の出発点に置くことで、既存MMORPGでよく見られる典型的な英雄の構造を意図的にひねっています。また、全年齢を意識した安全なファンタジーではなく、大人のユーザーに向けた「洗練された強烈さ」を目指した点も、ヴァンパイアというテーマを選んだことと不可分です。
ゲームプレイそのものが「世界観をより深く感じさせる構造」にしたい
──ゴシックホラーとMMORPGを組み合わせる際に特に意識したポイントを教えてください。また、プレイヤーにはどのような体験をしてほしいと考えていますか。
チェ氏:
もっとも悩んだのは、「雰囲気」と「プレイヤー体験」のバランスです。
ゴシックホラーという世界観は魅力的ですが、それをMMORPGにそのまま持ち込むと、かえって遊びづらさにつながる可能性があります。暗く重い雰囲気が強すぎると、プレイヤーが長時間ゲームにとどまりにくくなります。一方で、世界観を薄めすぎると、『ヴァンピール』ならではのアイデンティティが失われてしまいます。
そこで私たちが重視したのは、世界観を無理に押しつけるのではなく、自然にゲーム体験の中へ溶け込ませることでした。たとえば、ヴァンパイアの弱点である日光を単なるペナルティにせず、「血の関門」という設定で表現したこと。また、「吸血」を不快な要素ではなく、すべてのクラスが戦闘の中で使う重要な生存メカニズム(回復要素)として活用したことが、その代表例です。
世界観がゲームプレイを妨げるのではなく、ゲームプレイそのものが世界観をより深く感じさせる構造にしたいと考えました。
もうひとつ意識したことは、ゴシックホラーの雰囲気がプレイヤーに疲労感を与えないようにすることです。初めてログインしたときの暗く冷たい印象は強く残しつつ、地域ごとに表現や描写を変え、明るく多彩な背景も体験できるように構成しました。
最終的に私たちが目指したのは、プレイヤーが『ヴァンピール』の世界に接続した瞬間、これまで遊んできたMMORPGとは明らかに違う何かを感じながらも、自然とその世界に長くとどまりたいと思える体験でした。
ハン氏:
ひと言で申し上げるなら、「MMORPG本来の楽しさ」をもう一度感じていただきたいです。
MMORPGとは本来どのようなジャンルだったのかを考えると、答えはとてもシンプルです。ともに成長し、協力し、競い合うこと。その過程で生まれる仲間との絆、強敵を倒したときの達成感、クラン【※】がひとつになって勝利をつかんだときの感動。これこそが、多くのユーザーがこのジャンルを長く愛してきた理由でした。
※クラン
ギルドに相当するプレイヤーの集団組織。本作では複数人での協力プレイや大規模なクラン間戦闘(GvG)の核となる単位。クランが活性化するほど、GvGなど上位コンテンツへのアクセスが広がる設計になっている。
しかし、いつしかその本質が薄れていったように感じています。課金が成長のすべてになり、プレイヤーの実力に取って代わり、ゲームを楽しむことよりも「課金のプレッシャーに耐えること」の方が当たり前の体験になってしまいました。
そこで、『ヴァンピール』はその本質へ立ち返ることを目指しました。「ダイヤファーミング」によってプレイした時間が実質的な成長につながるようにし、GvG【※】コンテンツでは課金額ではなくクランの戦略とチームワークが勝敗を分けるように設計しています。ひとりで成長し、クランメンバーと協力し、ほかのサーバーと競い合う。そのすべての過程を、課金の負担なく純粋に楽しめるようにしたいと考えました。
※GvG(Guild vs Guild)
ギルド(クラン)同士が大規模な集団戦を行うコンテンツ形式。MMORPGにおける長期プレイの核となることが多く、個人の強さだけでなくクランの戦略・団結力が問われる。本作でもGvGがロードマップの中心に据えられており、勝者にはサーバー内での実質的な権限が付与される。
「すべてのプレイヤーが主役になれる戦闘」とは? ヒーラー廃止と3つの差別化設計
──現在のMMORPG市場で、本作ならではの差別化ポイントを教えてください。
チョン・スンファン氏:
『ヴァンピール』は、既存MMORPGのユーザーが長年感じてきた主な不満を正面から解決することから出発しました。
ひとつ目は、「戦闘設計の革新」です。「すべてのプレイヤーが主役になれる戦闘」を目指しました。既存MMORPGの慢性的な課題であったヒーラー不足や役割の強制を解消するため、タンク・アタッカー・ヒーラーという従来の役割構造から、ヒーラーを大胆に取り除きました。
すべてのクラスを攻撃中心に設計しつつ、ヴァンパイアの本質である「吸血」が戦闘における重要な生存メカニズムとして機能します。敵をより激しく攻撃するほど体力が回復する構造となっており、「攻撃こそが最善の生存手段」になります。つまり、どのクラスを選んでも戦闘の中心に立つことができます。
ふたつ目は、「合理的な成長システム」です。「プレイした時間がそのまま資産になる」構造を目指しました。一定レベル以上になると、フィールド狩りやダンジョンプレイだけで「ダイヤ」を獲得できます。また、ガチャシステムには「ケアポイント」構造を導入し、低レアリティが続くほどポイントが加速度的に蓄積され、ほしい報酬により早く到達できるようにしました。課金が絶対的な優位を決めるのではなく、継続的にプレイするユーザーが正当に強くなれるエコシステムを作りました。
3つ目は、「成長と競争の場の分離」、そして日本ユーザーのニーズを中心に置いたGvG設計です。成長を妨げられたくないユーザーはプレイヤーキラー(以下、PK)が厳しく制限された成長エリアでプレイし、戦闘を楽しみたいユーザーは戦闘特化型インターサーバー【※】コンテンツ「ゲヘナ」で大規模PvPを楽しめるよう、空間を明確に分けました。
※インターサーバー
通常、MMORPGの各サーバーは独立していてプレイヤー同士が交わらないが、インターサーバーコンテンツはその壁を越えて複数サーバーのプレイヤーが同一フィールドで戦う仕組み。本作では戦闘特化エリア「ゲヘナ」がこれに該当し、異なるサーバーのクランと大規模なPvPが楽しめる。
特に、日本のMMORPGユーザーとの事前コミュニケーションを通じて最も強く確認できたのは、GvGへの深い期待です。そのため、GvGコンテンツをあとから追加するのではなく、最初からロードマップの中心に据えて設計しました。
ローンチ直後の「聖物防衛戦」を皮切りに、「クラン占領戦」「争奪戦」、そして「ヴァンピール クランチャンピオンシップ」まで、クラン単位の協力と競争がゲーム全体を貫く重要な軸となっています。勝者にはサーバー内で実質的な権限が与えられ、敗者にも貢献度に応じた報酬が付与されるため、より多くのユーザーが最後まで戦場に残って戦う理由を持てるようにしました。








