見て、判断して、体で避ける。『AION2』のバトルはなぜ気持ちいいのか
──さて、ここまではビジネス寄りの話が中心でしたが、ゲームの中身についても聞きたいことが山ほどあります。まずはバトルから。『AION2』の戦闘は、ほかのPC向けMMORPGやアクションRPGと比べて、どこが明確な差別化になっているんでしょうか。
キム氏:
大きく2つあります。ひとつは、飛行しながらの戦闘。これは前作『AION』から続く、『AION2』のアイデンティティと言えるものです。
『AION2』はフィールドの全域を飛べるようにしました。地上と空、両方を舞台にさまざまな冒険ができる。この自由度は、ほかにはなかなかないと思います。
──前作『AION』でも、全域で飛行できるアビスの空中戦は大きな醍醐味でしたが、今度はもっといろいろな局面で楽しめると。
キム氏:
もうひとつは、攻撃判定がリアルタイムで行われるシステムで、我々はこれを「後判定」と呼んでいます。後判定とノンターゲット形式が合わさったバトルは、ほかのMMORPGとの決定的な差別化になっています。
──その「後判定」について、従来の仕組みとの違いを詳しくお聞かせください。
キム氏:
『AION2』では、敵の攻撃の当たり判定が、モーションの見た目どおり、実際に攻撃が届いた瞬間に発生するんです。だから敵のモーションを見極めて動けば、ちゃんと避けられる。言い換えると、プレイヤーの操作がそのまま結果に出るんです。
これに対し従来のMMORPGの多くは「先判定」で、敵が攻撃モーションに入った瞬間に、もう当たるかどうかが決まってしまっている。極端に言えば、モーションはただの演出で、それを見てプレイヤーがどれだけ避けようとしても、結果は変わりません。
だから「先判定」の戦闘は、「相手の攻撃をやり過ごしながら、自分のスキルをどう回すか」という、どちらかというとローテーションの管理に近くなるわけです。
「後判定」だと、そこが根本的に変わります。敵の攻撃を「見て」「判断して」「体で避ける」。その一連の操作が、ちゃんと生死に直結する。うまく避けられたときの「今のは自分がやりきったぞ」という手応えと、被弾したときの「あ、今のは自分のミスだ」という納得感──この両方が、プレイヤー自身のものになるんです。
ここが『AION2』のバトルの、いちばんの気持ちよさだと思っています。
ソ氏:
ジャスト回避もありますしね。
──そのお話だけ聞くと、『AION2』はMMORPGなのか、それともアクションゲームなのか、分からなくなってきますね。
キム氏:
とはいえ、パーティープレイもできますし、多少のダメージなら受け流して進める場面も多いです。なので、ソウルライクのようなガチガチのアクションゲームというほどではありません。
ボス敵とのバトルでは、「これだけは絶対に避けてほしい」という攻撃は赤色で「予兆」が表示されるので、そこだけ気をつければいい。プレイヤーが疲れきってしまわないよう、そのあたりのさじ加減はかなり考えてバランスを調整しています。
「アクションが苦手だから『AION2』は楽しめない」というわけではまったくありませんので、そこは誤解しないでいただけると。
──『AION2』は現時点でも、インスタンスダンジョンが200種類以上あると聞いています。さすがに、これだけの数のギミックを丸暗記するのは無理ですよね。逆に言うと、『AION2』のダンジョンが暗記ではなく反射神経で対応できるゲームデザインだからこそ、ここまでの数を増やせるのかな、と思ったんです。
キム氏:
まさに、おっしゃるとおりです。
回避の間合いを読んで、うまくかわしきったとき──そこがいちばんアクションを感じられる瞬間だと思います。ちゃんと逃げながら、攻撃の手を止めずに繋いでいく。その緊張感と爽快感の両立こそ、僕らがいちばん届けたかったものなんです。
──先ほどバトルの差別化として挙げられたノンターゲット形式についても聞かせてください。実際のところ、これはプレイヤーにどのように活用されているのでしょう。たとえば「フィールドは従来のターゲット方式、ボス戦はノンターゲット」といった形なのでしょうか。
キム氏:
現在はどちらかというと、従来のターゲット形式のバトルの人気が高いです。特にボス戦のような、相手が決まっている状態でのバトルでは、プレイヤーは移動やスキル回しに専念できますから。
ですが、ノンターゲット形式ならではの見せ場も結構あります。たとえば大量の雑魚モンスターと戦うときは、あえて特定の敵をターゲットせずに、たくさんリンクさせてから、範囲攻撃による「まとめ狩り」を行うのが強力です。
──そもそもの話なのですが、『AION2』がノンターゲット形式のバトルを導入した狙いは、どこにあったのでしょうか。
キム氏:
先ほどの「後判定」と同様に、MMORPG上でアクション要素をとことん追求したかったんです。
でも同時に、ノンターゲットが必須になってしまうと、純粋なアクションゲームに近くなってしまう。そうなると、アクションが得意な人しか攻略できないゲームになる。それは避けたかった。
だから従来のターゲット形式をベースに、プレイヤーの選択肢のひとつとしてノンターゲット形式を選べるように、いまの形にしたんです。
──では、ターゲット形式を選ぶ人が多い現在の比率は、狙いどおりだったんでしょうか。
キム氏:
概ね満足しています。操作システムに関しては、ノンターゲット、ターゲット、ロックオンのオン・オフ……かなり多彩なオプションを用意しているんです。
だから腕に自信のあるコアプレイヤーには、自分の手に馴染むカスタマイズやプレイスタイルの追求そのものを、ぜひ楽しんでほしいですね。
冒険もせず、ただ街を走り回る。それも『AION2』の”正解”だ
──『AION2』のパーティプレイは、最大4人からのスタートでしたよね。ノンターゲット形式では通信速度などのハードルが高く、アクション性を担保するために4人に絞らざるを得なかった──そんな事情もあったのでしょうか。
キム氏:
そういうわけでは全然ありません(笑)。
技術的な面に限っていえば、4人でも8人でも12人でも、あるいは前作『AION』のフォース(24名)でも、すぐに実現できます。
ですが、仮に実現したところで、人数が多すぎてなかなかマッチングできなければ、なんの意味もありません。あくまでプレイヤーの体験本位で考えた結果、最初は最大4人に設定し、心配が杞憂だったので5人に増やした。こういう流れですね。
──ついつい、コアプレイヤー向けの質問が多くなってしまうのですが……一方で『AION2』は、カジュアルなゲーマーにもしっかりアピールできる作品だと思うんです。そのあたりの魅力も、ぜひ紹介してください。
ソ氏:
それはもう、いろんな楽しみ方があるんですよ。
たとえば見た目まわりの遊びひとつとっても、本当に豊富で。装備を分解した素材から見た目を集めていく方も多いですし、カスタマイズの幅も広いので、衣装で遊ぶ方、ペットを集める方、アイテムを作る方とか……。
なかには、これといった目的もなく、ただ街を全力で走り回っている人もいますよ。まぁ、僕もたまにやるんですけど(笑)。
キム氏:
先日、一般プレイヤーを招いて座談会を開いたんですが、そこでも驚いたことがあって。『AION2』には「シューゴ・フェスタ」というミニゲームを集めたコンテンツがあるんですが、それだけを延々と遊んでいる、という方がいらっしゃったんです。冒険もせず、キャラの成長にもこだわらず、ただそのミニゲームが面白いから、と。
──同じMMORPGにログインしているのに、やっていることがまるで違う。
キム氏:
そうなんです。まったく違うプレイスタイルの人たちが、アトレイアという同じ世界で、誰にも束縛されず、思い思いに過ごしている。……これって、僕ら自身が、まだいちプレイヤーだった頃に、心を奪われたものそのものなんですよ。
誰かに決められた「正解」ではなく、自分だけの遊び方を見つけられる。あの頃、時間を忘れてMMORPGに夢中になった、あの感覚。それを、自分たちの手で、もう一度この世界に取り戻せた。
そこは、素直に胸を張りたいところですね。
──とても……とてもいい話ですね。この10年近くのMMORPGが失いかけていた文化だと思います。
ソ氏:
つくづく、そう思いますね。
それと、プレイスタイルの多様性についてもうひとつ言うと、『AION2』の期間制クエストはウィークリー(1週間)単位なんです。だから、平日は忙しくて手をつけられなくても、週末にまとめて片付ければいい。ライトに遊びたい方でも、無理なく楽しめるゲームです。
──個人的には、デイリークエストがあると「ログインしなきゃ」という義務感になってしまって、それがストレスに感じることもあるんですよ。
キム氏:
まぁ、開発会社の立場からすると、DAU【※】を維持するために、毎日来てほしいんですよね。だから不安で、ついつい「毎日ログインする理由」を詰め込んでしまいがちです。
でも、僕ら自身も出張が多い身で。1週間遊べないと「あー、もったいないな」とは思うけど、それが行き過ぎると、理不尽さや面倒くささにつながってしまう側面もある。
やっぱりゲームは、娯楽ですから。「サボると自分だけ置いていかれる」──そんな気持ちをプレイヤーに抱かせないように。そのうえで、ちゃんと面白いと思ってもらえるように。そこを目指したんです。
※DAU:デイリーアクティブユーザー数。1日にそのゲームを利用したユーザーの数を示す指標
10年前のグラボでも動く──最高峰の映像を、すべての人へ
──『AION2』のグラフィックスは、現在のゲーム業界の水準を大きく上回っています。開発者として具体的に、グラフィックスのどのあたりに注目してほしいですか。
キム氏:
まず1つ目は、キャラクターの顔ですね。プレイヤーの好みや個性をしっかり表現できるよう、作り込める項目をたくさん盛り込みました。
しかも、カスタマイズ画面で仕上げた顔が、そのままインゲームでも見えます。これができているゲームって、実はそう多くないんですよ。これを実現するために、本当に多くの手間をかけました。
2つ目は、地形の高低差です。ワールドが「生きている」と感じられるゲームって、意外と少なくて。たいていは平面的なんですよね。『AION2』ではフィールドの全域で飛行できることもあり、この世界を起伏のある「生きた世界」に見せることに、とことんこだわりました。
たとえば『AION2』では、遥か上空に浮遊戦艦や巨大なランドマークがあります。これらはただ遠くに見えているだけの「絵」ではなくて、実際にそこまで飛んでいって、上に登って下界を見下ろせる。世界そのものを探検する楽しさを味わってもらえるように作り込みました。
──ただ、グラフィックスの「すごさ」をどう読者に伝えるか、メディア側の人間である私自身が頭を悩ませている面もあるんです。だって、『AION2』が4K解像度や120FPS、DLSSに完全対応していても、読者のパソコン環境が対応していなければ、どうあがいても伝わらないじゃないですか。
ソ氏:
まぁ、そのジレンマは確かにあります。
とはいえ、こういうのって、僕らが「すごく綺麗に作りました!」と熱弁したところで、プレイヤーからすれば「そりゃあ、作った本人が言ってるから当然じゃね(笑)」と笑い飛ばされるだけなんですよ。
だから、実際に遊んだ方の口コミや、メディアのみなさんが触ってみて「これは本当にすごかった」と発信してくれる。そういう風に広がっていってくれたら、いちばん嬉しいなと思っています。
──たとえばですが、キャラカスタマイズのすごさを伝えるために、実在するアイドルやモデルの写真を取り込んで、ゲーム内のキャラに反映する──そんな機能って、実現できたりするものなんでしょうか。
ソ氏:
機能としては、もう実現できるんですよ。ただ、肖像権の問題がありまして。
というのも、『AION2』には、プレイヤーが自分で作り込んだキャラの外見データを、ほかのユーザーにゲーム内通貨で販売できる機能があるんです。
その機能を使って、以前あるアイドルそっくりの顔を作って販売していたプレイヤーがいまして、最終的に削除する事態になったんです。なので、そこは少し慎重にならざるを得ない、というのが正直なところですね。
──技術力が高すぎるのも、別の面で悩ましい。
キム氏:
ただ、肖像権の問題さえクリアできれば、実在の人物を取り込むというアプローチは、とても良いと思っています。
実は、韓国で「fromis_9(プロミスナイン)」というアイドルグループとのコラボ企画を始めたんです。各メンバーの姿をもとに、ゲーム内のカスタマイズだけで再現しました。これがもう、本物と見分けがつかないくらい似てると評判でして。
──『AION2』は、高性能なPCを用意すればするほど、その分だけ応えてくれるゲームだと思います。ただ、残念なことに近頃はPCパーツの価格が高騰していますが、この点についてはどのように受け止めていますか。
ソ氏:
そこは、僕らも本当にもどかしく思っている部分です。
『AION』を遊ぶうえでいちばんの環境は、やっぱりPCなんですよ。それを信じて、ゲーマーに最高の体験を届けたくて、何年もかけて、あらゆる面で頑張ってきた。
それだけPCに賭けてきたのに、肝心のPCが手を出しにくい価格になってしまっている。これは、なんとももどかしいですよ。
キム氏:
とはいえ、こればかりは我々ではどうしようもありません。こうしたなか、僕らにできるのは、PCスペックが低くても遊べるよう、徹底的に最適化することなんです。そこを詰めれば、ユーザーの金銭的な負担も軽くなりますから。
だからハイスペック化だけでなく、最適化にも力を入れています。
──最適化にあたり、どういった部分に注力していますか。
キム氏:
まず、プレイヤーキャラをはじめとした「見せ場」になる部分は、極力クオリティを削らないようにしました。
具体的には、PCに負荷がかかってくると、まずは遠くにいるモンスターや他プレイヤーから、少しずつ描画を落としていく。でも、自分のキャラクターと、一緒に戦うパーティメンバーは、どんな状況でも常にフルクオリティで見える。そこは徹底して設計しました。
遠くの景色についても同じで、Unreal Engine 5に搭載されたナナイト【※】やLOD【※】などの描画技術を駆使して、負荷を抑えながらも、質はギリギリまで保つバランスを追い込みました。
※ナナイト:緻密な3Dモデルを、質を保ったまま負荷を抑えて描画するUnreal Engine 5の技術
※LOD:遠くのものほど簡略化して表示し、処理負荷を下げる技術
──コアプレイヤーのなかには、ミドルスペック程度のPCで『AION2』を遊ぶ人も多いと思います。そういう人たちに、『AION2』の「本当の姿」を届けきれない点については、どう感じていますか。
キム氏:
『AION2』の実力を全部見てほしいという気持ちがないといえば嘘になりますが、それを言っても詮無きことですから。そもそも、それは開発者としてのエゴです。そういったエゴを押し付けるよりも、「いま持っているPCで、ちゃんと動く」ということを重視したいですね。
ありがたいことに『AION2』のグラフィックスのすごさが取り上げられることが多いのですが、この場を借りてあらためてお伝えすると、「ハイスペックPCでないと遊べない」MMORPGではありません。
それどころか、最近ではGeForceのGTX 1050 Tiでもちゃんと動くところまでチューンできていますし、この最適化にはけっこう自信があるんですよ。
──GTX 1050 Tiって約10年前のグラボですが、そんな環境でも動くんですか。……とはいえ、せっかくなら良い環境で遊びたいという人もいるはず。もしPC環境をアップグレードするなら、どのあたりを狙えばいいですか。
キム氏:
まず優先すべきは、グラフィックカードですね。
目安としては、GeForce RTX 3070や3060あたり。これが標準ラインという感覚です。もう少し余裕があれば40番台(※RTX 4070クラス)まで載せられると、ほぼフルスペックに近いグラフィックスが楽しめると思います。
──日本では昔から、ハイエンドなPCゲームが出ると、ベンチマークソフトが公開されるんです。PCショップの店頭で、その店の最高スペックのマシンに『AION2』の映像を流し続けてもらえれば、これ以上ないアピールにもなりますし。そういった展開の予定はありますか。
ソ氏:
ええ、それに関してはいま、まさに準備を進めているところです。
いろんなPCメーカーさんや、ベンチマーク関連の会社さんと、話を詰めていて。おっしゃるとおり、ベンチマークって、『AION2』のグラフィックの実力をいちばんストレートに見てもらえる手段だと思うんですよ。
僕らが口で「すごいです」と言うより、実際に動いている映像を見てもらうほうが、何倍も説得力がありますから。だから、ここはしっかり形にしたいと思っています。













