「早く出せ」ではなく「もう次が来るのか」。MMORPGの常識が逆転した
──続いて、グローバル版の仕様について聞かせてください。7月上旬に、韓国版向けのアップデートが発表されましたが、あれはグローバル版にも反映されるんでしょうか。
ソ氏:
ゲームシステムの根幹にかかわるアップデートは、ほぼすべてグローバル版にも導入されます。
ただ、ストーリーやダンジョン、あとは新規クラスといったコンテンツ類は、少し事情が違うんです。
韓国版はすでに8か月近く先行しているので、今回のアップデートには、その先行プレイヤー向けのコンテンツも多く含まれていて。そこはグローバル版の進み具合を見ながら、ペースを合わせて導入していくつもりです。
──そのコンテンツを出していくペースが重要になりそうですが、先行している韓国では、そのあたりはうまくいったんでしょうか。
ソ氏:
それが……韓国ではかなり速いペースでコンテンツを追加していったんですが、それが逆に、プレイヤーに嫌がられてしまって。「まだ現行のダンジョンも遊びきっていないし、ほしいアイテムを集めきれていないのに、もう次が来るのか」と。
──MMORPGの歴史を振り返ると、たいていは逆で。コアプレイヤーがコンテンツを食い尽くして、「次はまだか、早く出せ」と急かす声のほうが多かったですよね。
ソ氏:
そうなんですよ。実はそこ、事前にいちばん心配していた部分でもあったんです。
世の中には、ゲーム以外にも娯楽がそこらじゅうにあふれている。そこに後発で飛び込むわけだから、「たっぷり用意しなきゃ勝負にならない」という強迫観念のようなものがあって。
それで満を持してコンテンツを盛り込んだら、逆にユーザーが面食らってしまった。こんな反応をされたことがなかったので、こっちがびっくりしましたよ。
キム氏:
アップデートを急ぐことが、必ずしもユーザーの幸せにはつながらなかった。その反省もあって、グローバルでは焦らず、その地域のユーザーの進み具合をしっかり見ながら、順を追って、少しずつ世界を広げていくつもりです。
──今後のアップデートは、全世界で足並みを揃えるグローバル・ワンビルドを目指すのか、それとも地域ごとに実装ペースをずらしていくのでしょうか。
キム氏:
開発する側としては、グローバル・ワンビルドのほうが圧倒的に楽なんですよね。
ですが、いま話した理由により、少なくとも韓国版とグローバル版を同じビルドで運営するのは、難しいと思っています。
──バージョンの管理は、どういう構成になるんでしょうか。「韓国」と「それ以外の全世界」で分けるのか。それともアジア、北米、欧州……といった具合に、地域ごとに細かく分けていくのか。
ソ氏:
「韓国・台湾」がひとつ、「グローバル版」がひとつ、という形になると思います。
──ということは、日本は北米や欧州などと同じ「グローバル版」で、コンテンツの実装タイミングも共通になる、と考えていいですか。
ソ氏:
はい、そうなります。
──グローバル版の仕様を統一したというのは、個人的に感慨深いです。前作『AION』では、日本向けの独自仕様、つまりカルチャライズのために運営チームがとても頑張っていましたから。
キム氏:
そうですね。もし「これは日本向けにどうしても必要だ」と感じる要素が出てきたら、そのときは日本だけでなく「グローバル版」として、全世界に同時に届けるつもりです。
──これまで各社がカルチャライズに力を入れてきたのは、国によってプレイヤーの遊び方や好みが大きく違うからですよね。その、嗜好の異なる人たちを、「グローバル版」というひとつの仕様に収めてしまうことに、不安はないんでしょうか。
ソ氏:
そこはですね、『AION2』って本当にいろんな要素が詰まっているんですよ。
作り込まれた世界観があって、カスタマイズがあって、5人パーティのコンテンツもあれば、レイドも、PvPも、PvEもある。つまり、それぞれの人が「自分の好きなもの」を選んで楽しめるだけの引き出しが、最初から全部そろっているんです。
だから、地域ごとに作り分けるというより、その豊富な選択肢の中から、各自が好みに合わせて取捨選択して遊んでくれればいい。それが、先ほどお話しした多様性を支えているんだと思います。
──なるほど。国ごとに提供コンテンツを変えるのではなく、「『AION2』にはすべてが入っている。その中から好きなものを選んでくれ」という発想なんですね。
キム氏:
それに──正直に言うと、僕らは韓国で生まれ育ち、韓国でゲームを作ってきた人間なんです。しかも、『AION2』はまだグローバルローンチも迎えていない。つまり、海外のユーザーの生の声を、まだ受け取れていないんですよ。
そんな状態で、「日本の好みはきっとこうだろう」「北米ならこうだろう」と想像だけで作り込んでも、それがどこまで正解に近いのか、自分たちでも確信が持てないんです。
だからこそ、まずは出してみる。そこでプレイヤーの声が上がってきたら、それに最大限寄り添って、すり合わせながら作り込んでいく。そういうスタンスで考えています。
──「日本ではこれが受けそうだから、日本向けに実装する」のではなく、日本発の要素であっても、良いものは全世界に届ける、というわけですね。
ソ氏:
そうですね。ちょっと大きな話になりますが……これは、僕らの夢でもあって。
国境なんて関係なく、どの国の人が遊んでも面白い。そう胸を張れるゲームなんだと、世界に証明してみせたいんです。
──壮大な話から落差が激しくて恐縮なのですが、日本は、いわゆる「スクール水着」のアバターアイテムが売れるという謎の法則があるんです。ああいったものも日本専用ではなく、ワールドワイド向けに展開されると。
キム氏:
(笑)そういう話で盛り上がるのは、どうやら万国共通みたいですね。
ただ真面目に言うと、「嫌われるもの」には世界共通の傾向があって、逆に「好かれるもの」は国によってバラバラなんですよ。
だから、世界のどこかで「これは受け入れられない」というものが出てきたら、その地域だけでなく全世界で対応を急ぎます。
逆に「好かれるもの」は──実はもう、あれこれ準備してあるんです。まだ出していないだけで(笑)。
──グローバル版が共通仕様であることに関して、もう1点質問があります。『AION2』のサーバーは、天族と魔族のプレイヤーが丸ごと分断できる仕様となっています。たとえば、日本の天族プレイヤーが多いサーバーと、北米の魔族プレイヤーがマッチングする、なんて展開も起こりうるのでしょうか。
キム氏:
技術的にはできますが、現実的には通信遅延がネックになります。
ただでさえシビアなアクションを要求する『AION2』で、地球の裏側にいるような人たちとの間でマッチングを行うと、フェアなPvP環境を実現するのが難しい。
だから「日本の天族vs北米の魔族」は厳しいとしても、近いリージョン(地域)のあいだで、国を超えたマッチングを行えるようにする予定です。
世界で唯一、新作MMORPGを作り続ける会社へ。5年後のNCが目指す場所
──以前、『AION2』のPlayStation 5版についてお話しされていましたが、現在の進捗はいかがですか。
ソ氏:
順調に進んでいます。できるだけ早く、詳細をお届けできるよう頑張っています。
今お伝えできることは、ゲームパッドの利便性向上のための改善作業を行う予定でして、グローバルリリースのタイミングで提供できるよう、努めております。
──PC版はNVIDIAと密に連携してGeForce向けにチューニングしてきましたが、PS5はまったく別のハードです。PCで積み上げた最適化のノウハウは、そのまま通用するものなんでしょうか。
キム氏:
正直なところ、PC版のグローバル展開でさえ、どこまで響くか、まだ読みきれていないんです。ただ、コンソール版についても、PC版と近い手応えは感じています。そこは素直に期待しているところですね。
──NCは『AION2』で、昔ながらのPC向けMMORPGというジャンルを復活させたと思っています。しかも今後は、『Horizon』を題材にしたMMORPGなども控えています。5年後のNCは、世界のゲーム業界でどんなポジションにいると思いますか。
ソ氏:
残念なことではありますが、グローバルで見ても、MMORPGを手がける企業は、どんどん減ってきています。そういうなかでNCは、世界でも数少ない──いや、唯一MMORPGを作り続ける会社になるんじゃないか。そう考えています。
それに、いまお話しできるのは『AION2』や『Horizon』のことくらいですが、実は水面下では、ほかにもいくつものプロジェクトが動いているんですよ。『AION2』の先にあるNCにも、ぜひ注目していてほしいですね。
キム氏:
本当に、MMORPGを作れる会社はもう多くないんです。だからこそ、いつか「MMORPGといえばNC」と言ってもらえるような存在になれたら。それが僕らの夢ですね。
──それでは最後に、この記事を読んでいる日本のMMORPGファンに向けて、いちばん伝えたいことを、あらためてお願いします。
キム氏:
アトレイアで、会いましょう。
ソ氏:
本当にMMORPGが好きな方なら、『AION2』にはきっと、探し求めていたものすべてがあると思います。僕らも、最後の最後まで全力で準備しますので、たくさんの方に来ていただけたら、これ以上の幸せはありません。
9月、『AION2』でお会いしましょう。
<了>
目先の売上を潔く捨て、”良心”を選ぶ。多様な遊び方と、敵の攻撃を見切って避ける「後判定」のアクションを、とことん突き詰める。『AION2』は、そうやって作り上げられた一作だ。
それを、成功のさなかでも決して驕らない作り手たちが率いている。
──この記事を読むあなたに、個人的に、ひとつ伝えたいことがある。
注目作のMMORPGがサービスを迎える瞬間の動乱は、何物にも代えがたい体験だということを。
最適解も、テンプレートも、まだ誰も知らない。誰もが手探りで広大な世界へ飛び出し、思い思いのスタイルで走り出す。
あの熱気は、攻略情報が出そろった後では味わえない。たとえサーバーがダウンして「繋がらねぇよ!」とSNSで嘆き合う騒ぎさえ、“お祭り”の一部になるのだ。
かつて、前作『AION』を長年支えてきた元運営スタッフは、「情熱を注ぎ込んでプレイしたMMORPGは、人生の一部になる」と語ってくれた。本当に、その通りだと思う。
NCの“賭け”が実を結ぶのかどうか、いまはまだ誰にも分からない。だからこそ、日本上陸を迎える2026年9月、あなた自身の目で見届けてほしい。
──その時間もまた、あなたの“人生”になるはずだ。








