いま読まれている記事

ガチャなき挑戦は、なぜ受け入れられたのか。MMORPG『AION2』開発者が語る”良心で稼ぐ”設計

article-thumbnail-260729d

1

2

3

「早く出せ」ではなく「もう次が来るのか」。MMORPGの常識が逆転した

──続いて、グローバル版の仕様について聞かせてください。7月上旬に、韓国版向けのアップデートが発表されましたが、あれはグローバル版にも反映されるんでしょうか。

ソ氏:
ゲームシステムの根幹にかかわるアップデートは、ほぼすべてグローバル版にも導入されます。

ただ、ストーリーやダンジョン、あとは新規クラスといったコンテンツ類は、少し事情が違うんです。
韓国版はすでに8か月近く先行しているので、今回のアップデートには、その先行プレイヤー向けのコンテンツも多く含まれていて。そこはグローバル版の進み具合を見ながら、ペースを合わせて導入していくつもりです。

MMORPG『AION2』インタビュー。開発者が語る

──そのコンテンツを出していくペースが重要になりそうですが、先行している韓国では、そのあたりはうまくいったんでしょうか。

ソ氏:
それが……韓国ではかなり速いペースでコンテンツを追加していったんですが、それが逆に、プレイヤーに嫌がられてしまって。「まだ現行のダンジョンも遊びきっていないし、ほしいアイテムを集めきれていないのに、もう次が来るのか」と。

──MMORPGの歴史を振り返ると、たいていは逆で。コアプレイヤーがコンテンツを食い尽くして、「次はまだか、早く出せ」と急かす声のほうが多かったですよね。

ソ氏:
そうなんですよ。実はそこ、事前にいちばん心配していた部分でもあったんです。
世の中には、ゲーム以外にも娯楽がそこらじゅうにあふれている。そこに後発で飛び込むわけだから、「たっぷり用意しなきゃ勝負にならない」という強迫観念のようなものがあって。

それで満を持してコンテンツを盛り込んだら、逆にユーザーが面食らってしまった。こんな反応をされたことがなかったので、こっちがびっくりしましたよ。

キム氏:
アップデートを急ぐことが、必ずしもユーザーの幸せにはつながらなかった。その反省もあって、グローバルでは焦らず、その地域のユーザーの進み具合をしっかり見ながら、順を追って、少しずつ世界を広げていくつもりです。

──今後のアップデートは、全世界で足並みを揃えるグローバル・ワンビルドを目指すのか、それとも地域ごとに実装ペースをずらしていくのでしょうか。

キム氏:
開発する側としては、グローバル・ワンビルドのほうが圧倒的に楽なんですよね。
ですが、いま話した理由により、少なくとも韓国版とグローバル版を同じビルドで運営するのは、難しいと思っています。

MMORPG『AION2』インタビュー。開発者が語る

──バージョンの管理は、どういう構成になるんでしょうか。「韓国」と「それ以外の全世界」で分けるのか。それともアジア、北米、欧州……といった具合に、地域ごとに細かく分けていくのか。

ソ氏:
「韓国・台湾」がひとつ、「グローバル版」がひとつ、という形になると思います。

──ということは、日本は北米や欧州などと同じ「グローバル版」で、コンテンツの実装タイミングも共通になる、と考えていいですか。

ソ氏:
はい、そうなります。

──グローバル版の仕様を統一したというのは、個人的に感慨深いです。前作『AION』では、日本向けの独自仕様、つまりカルチャライズのために運営チームがとても頑張っていましたから。

キム氏:
そうですね。もし「これは日本向けにどうしても必要だ」と感じる要素が出てきたら、そのときは日本だけでなく「グローバル版」として、全世界に同時に届けるつもりです。

──これまで各社がカルチャライズに力を入れてきたのは、国によってプレイヤーの遊び方や好みが大きく違うからですよね。その、嗜好の異なる人たちを、「グローバル版」というひとつの仕様に収めてしまうことに、不安はないんでしょうか。

ソ氏:
そこはですね、『AION2』って本当にいろんな要素が詰まっているんですよ。

作り込まれた世界観があって、カスタマイズがあって、5人パーティのコンテンツもあれば、レイドも、PvPも、PvEもある。つまり、それぞれの人が「自分の好きなもの」を選んで楽しめるだけの引き出しが、最初から全部そろっているんです。

だから、地域ごとに作り分けるというより、その豊富な選択肢の中から、各自が好みに合わせて取捨選択して遊んでくれればいい。それが、先ほどお話しした多様性を支えているんだと思います。

MMORPG『AION2』インタビュー。開発者が語る

──なるほど。国ごとに提供コンテンツを変えるのではなく、「『AION2』にはすべてが入っている。その中から好きなものを選んでくれ」という発想なんですね。

キム氏:
それに──正直に言うと、僕らは韓国で生まれ育ち、韓国でゲームを作ってきた人間なんです。しかも、『AION2』はまだグローバルローンチも迎えていない。つまり、海外のユーザーの生の声を、まだ受け取れていないんですよ。

そんな状態で、「日本の好みはきっとこうだろう」「北米ならこうだろう」と想像だけで作り込んでも、それがどこまで正解に近いのか、自分たちでも確信が持てないんです。

だからこそ、まずは出してみる。そこでプレイヤーの声が上がってきたら、それに最大限寄り添って、すり合わせながら作り込んでいく。そういうスタンスで考えています。

──「日本ではこれが受けそうだから、日本向けに実装する」のではなく、日本発の要素であっても、良いものは全世界に届ける、というわけですね。

ソ氏:
そうですね。ちょっと大きな話になりますが……これは、僕らの夢でもあって。
国境なんて関係なく、どの国の人が遊んでも面白い。そう胸を張れるゲームなんだと、世界に証明してみせたいんです。

──壮大な話から落差が激しくて恐縮なのですが、日本は、いわゆる「スクール水着」のアバターアイテムが売れるという謎の法則があるんです。ああいったものも日本専用ではなく、ワールドワイド向けに展開されると。

キム氏:
(笑)そういう話で盛り上がるのは、どうやら万国共通みたいですね。

MMORPG『AION2』インタビュー。開発者が語る

ただ真面目に言うと、「嫌われるもの」には世界共通の傾向があって、逆に「好かれるもの」は国によってバラバラなんですよ。
だから、世界のどこかで「これは受け入れられない」というものが出てきたら、その地域だけでなく全世界で対応を急ぎます。

逆に「好かれるもの」は──実はもう、あれこれ準備してあるんです。まだ出していないだけで(笑)。

──グローバル版が共通仕様であることに関して、もう1点質問があります。『AION2』のサーバーは、天族と魔族のプレイヤーが丸ごと分断できる仕様となっています。たとえば、日本の天族プレイヤーが多いサーバーと、北米の魔族プレイヤーがマッチングする、なんて展開も起こりうるのでしょうか。

キム氏:
技術的にはできますが、現実的には通信遅延がネックになります。
ただでさえシビアなアクションを要求する『AION2』で、地球の裏側にいるような人たちとの間でマッチングを行うと、フェアなPvP環境を実現するのが難しい。

だから「日本の天族vs北米の魔族」は厳しいとしても、近いリージョン(地域)のあいだで、国を超えたマッチングを行えるようにする予定です。

MMORPG『AION2』インタビュー。開発者が語る

世界で唯一、新作MMORPGを作り続ける会社へ。5年後のNCが目指す場所

──以前、『AION2』のPlayStation 5版についてお話しされていましたが、現在の進捗はいかがですか。

ソ氏:
順調に進んでいます。できるだけ早く、詳細をお届けできるよう頑張っています。

今お伝えできることは、ゲームパッドの利便性向上のための改善作業を行う予定でして、グローバルリリースのタイミングで提供できるよう、努めております。

──PC版はNVIDIAと密に連携してGeForce向けにチューニングしてきましたが、PS5はまったく別のハードです。PCで積み上げた最適化のノウハウは、そのまま通用するものなんでしょうか。

キム氏:
正直なところ、PC版のグローバル展開でさえ、どこまで響くか、まだ読みきれていないんです。ただ、コンソール版についても、PC版と近い手応えは感じています。そこは素直に期待しているところですね。

MMORPG『AION2』インタビュー。開発者が語る

──NCは『AION2』で、昔ながらのPC向けMMORPGというジャンルを復活させたと思っています。しかも今後は、『Horizon』を題材にしたMMORPGなども控えています。5年後のNCは、世界のゲーム業界でどんなポジションにいると思いますか。

ソ氏:
残念なことではありますが、グローバルで見ても、MMORPGを手がける企業は、どんどん減ってきています。そういうなかでNCは、世界でも数少ない──いや、唯一MMORPGを作り続ける会社になるんじゃないか。そう考えています。

それに、いまお話しできるのは『AION2』や『Horizon』のことくらいですが、実は水面下では、ほかにもいくつものプロジェクトが動いているんですよ。『AION2』の先にあるNCにも、ぜひ注目していてほしいですね。

キム氏:
本当に、MMORPGを作れる会社はもう多くないんです。だからこそ、いつか「MMORPGといえばNC」と言ってもらえるような存在になれたら。それが僕らの夢ですね。

──それでは最後に、この記事を読んでいる日本のMMORPGファンに向けて、いちばん伝えたいことを、あらためてお願いします。

キム氏:
アトレイアで、会いましょう。

ソ氏:
本当にMMORPGが好きな方なら、『AION2』にはきっと、探し求めていたものすべてがあると思います。僕らも、最後の最後まで全力で準備しますので、たくさんの方に来ていただけたら、これ以上の幸せはありません。

9月、『AION2』でお会いしましょう。

<了>

MMORPG『AION2』インタビュー。開発者が語る


目先の売上を潔く捨て、”良心”を選ぶ。多様な遊び方と、敵の攻撃を見切って避ける「後判定」のアクションを、とことん突き詰める。『AION2』は、そうやって作り上げられた一作だ。
それを、成功のさなかでも決して驕らない作り手たちが率いている。

──この記事を読むあなたに、個人的に、ひとつ伝えたいことがある。
注目作のMMORPGがサービスを迎える瞬間の動乱は、何物にも代えがたい体験だということを。

最適解も、テンプレートも、まだ誰も知らない。誰もが手探りで広大な世界へ飛び出し、思い思いのスタイルで走り出す。
あの熱気は、攻略情報が出そろった後では味わえない。たとえサーバーがダウンして「繋がらねぇよ!」とSNSで嘆き合う騒ぎさえ、“お祭り”の一部になるのだ。

MMORPG『AION2』インタビュー。開発者が語る

かつて、前作『AION』を長年支えてきた元運営スタッフは、「情熱を注ぎ込んでプレイしたMMORPGは、人生の一部になる」と語ってくれた。本当に、その通りだと思う。

NCの“賭け”が実を結ぶのかどうか、いまはまだ誰にも分からない。だからこそ、日本上陸を迎える2026年9月、あなた自身の目で見届けてほしい。

──その時間もまた、あなたの“人生”になるはずだ。

1

2

3

編集者
元4Gamer。『Diablo』 『Ultima Online』 『EverQuest』 『FF11』 『AION』等々の、黎明期のオンラインRPGにおける熱狂やコミュニティ、そこから生まれたさまざまな文化は今も忘れられません。

この記事に関するタグ

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合がございます

新着記事

新着記事

ピックアップ

連載・特集一覧

カテゴリ

その他

若ゲのいたり

カテゴリーピックアップ