オートバトル、ガチャ、インスタンス、そしてスマホ対応。
現在「MMORPG」と呼ばれる作品の多くは、これらの要素を中心に設計されている。
しかし黎明期のMMORPGが隆盛を誇っていた頃、その最大の醍醐味は、サーバー内で活動する膨大な数の生身のプレイヤーとの偶発的な関わりによって生じる、「何か」であったはずだ。
『AION2』は、その「昔ながらのMMORPG」を真正面から目指し、2026年にグローバルサービスを開始する新作タイトルである。
とはいえ、多くの読者にとってはイメージできないかもしれない。そのような新作タイトルは久しく登場していないのだから。
NCといえば、そうした現代MMORPGの鉄板路線を走ってきたメーカーだ。その当事者が原点回帰に向かったのだから、歴史を知るものとしては驚くほかない。
そんな『AION2』が、2026年9月、ついに日本へ上陸する。
これに先立ち、エヌシージャパン本社にてメディア向け先行体験会が開催され、筆者も迷わず参加した。公私ともに追い続けてきたMMORPGの続編であり、G-STAR 2025での鮮烈な体験も忘れられない。期待は、高かった。
しかし、3時間の取材を終えて、筆者は不思議な戸惑いを覚えていた。
その戸惑いは、記事を書き進めるうちに腑に落ち、やがて別の感情へと姿を変えていった。
取材・文/kawasaki
※今回は韓国・台湾のバージョンを取材しているため、掲載スクリーンショット内のテキスト等はグローバルのバージョンとは異なる可能性があります
AIONは、変わっていなかった
ゲームを起動すると、カットインムービーが始まった。短めのチュートリアルをこなし、プレイヤーキャラクターのカスタマイズを行い、拠点エリアへと赴く。
その一連の流れが、前作AIONそのものだった。
キャラクタークリエイトから飛行まで、グラフィックスが大きく強化されていることは一目でわかる。
翼を広げてフィールドを滑空すると、眼下に広がる景観の美麗さは息をのむものがあった。
他メディアの記者たちとパーティを編成して、前作AIONにもあった名物ダンジョン「炎の神殿」にも挑戦した。攻撃距離が伸びる“クロメデ武器”を求め、このダンジョンに何百回も通い詰めた想い出がフラッシュバックし、胸にこみ上げるものがあった。
しかしプレイしながら、筆者はある感覚を拭えなかった。
「AIONの続編なのだから、これくらいは当然だろう」
それが3時間の取材を終えた筆者の、正直な感想だった。
ソロプレイの体験会で、MMORPGの何がわかるというのか
そもそも、この取材形式でMMORPGの何がわかるというのか。
今回の先行体験会で筆者が触れたのは、キャラクタークリエイト、チュートリアル、フィールドでの自由探索、ソロ向けダンジョン「悪夢」、そして用意されたパーティでのダンジョン「遠征」の攻略だ。
見知らぬプレイヤーと偶然に出会う体験はなく、前作AIONを傑作たらしめた数百人が入り乱れる大規模戦闘など、影すら見えなかった。
それは当然だ。そういう取材だったのだから。
しかし、それこそがMMORPGの本質ではないか。
MMORPGの“Massively”──「大規模な」を意味するこの言葉が真に指し示すのは、単なるサーバーのキャパシティではなく、人が集まることで初めて生まれる熱量や体験であるはずだ。
メディア向け先行体験会という形式で測れるのは、グラフィックの品質、操作感、個別コンテンツの完成度といった「器」の部分に過ぎない。
筆者が17年間追い続けたAIONの本質は、その器の中に何が入るかにある。それは、人が集まってこそ体験できるものだ。
よくぞ帰ってきてくれた
そして、ここまで書き進めてきて、筆者はようやく自分の戸惑いの正体に気づいた。
ソロプレイ中心の体験会ではMMORPGの本質に触れられなかったこと、そして17年間追い続けてきたがゆえの、無意識の期待過多。そのいずれもが、AION2そのものへの正当な評価ではなかった。
筆者が無意識に求めていたのは、安易な革新ではなく、「あの頃のMMORPGそのもの」だったのだ。そうであれば、従来路線を踏襲したAION2に対し既視感を覚えるのは至極当然だ。
思えば、あの頃のMMORPGは「もうひとつの社会、人生」と呼ぶにふさわしいものだった。
見知らぬプレイヤーに突然ヒールをもらい、気づけばフレンドになっていた。
野良パーティでの全滅をきっかけに、固定メンバーが生まれた。
サーバー内に名物プレイヤーがいて、その存在がひとつの伝説になっていた。
ゲーム内での出会いが現実の結婚に結びついた例も、まったく珍しくなかった。
これらはすべて、開発者が用意したシナリオではない。生身の人間が大量に同じ空間に集まったからこそ、偶発的に生まれたドラマだ。
黎明期のMMORPGにおける醍醐味は、効率とは真逆のところにもあった。人生と同じように。
しかしMMORPGが歳月を経て進化するなか、その非効率を徹底的に排除した。
短時間で確実に報酬が得られるよう効率化が進み、見知らぬ他者と深く関わるリスクとコストは限りなく削ぎ落とされた。誰でも主役になれる一方、誰もが似たようなゲーム体験をたどるようになった。
その結果、MMORPGのゲームプレイは「効率的なコンテンツ消化作業」へと変質した。クリアして、装備を更新して、ボスモンスターを倒して、それで終わり。「あのとき、あの場所で、あいつと出会った」という体験が生まれる場所は、静かに消えていった。
歴戦のMMORPGファンがこの「進化」に複雑な感情を抱くのは、ある意味当然ではないか。
AION2は、MMORPGジャンルが長年抱えていた上記の命題に対するひとつの答えだ。多彩なPvE/PvPコンテンツを主軸に据え、広大なワールドで多数のプレイヤーが干渉し合う昔ながらのMMORPGの設計を、2026年において実現している。
トレンドに逆らい、「Massively」であることにこだわり続けるゲームが、今この時代にリリースされる。それがどれほど稀で、どれほど貴重なことか。
17年越しに帰ってきたAION2に、筆者は素直に言いたい。よくぞ帰ってきてくれた、と。
17年という時間がもたらした、確かな進化
では、17年という年月は、AION2に何をもたらしたのか。
まずビジュアル面の圧倒的な進化だ。AION2はUnreal Engine 5を採用し、4K解像度や120FPS、そしてDLSS 4によるモーション補完処理にフル対応している。
しかしこれは、直接目にしなければ伝わらない類の進化だ。そして困ったことに、実際に体験するプレイヤーのPC環境がハイスペックでなければ、AION2のグラフィックスの真価は伝わりきらないのである。
実はこれ自体が、AION2が抱える課題のひとつでもある。
筆者はG-STAR 2025で、超ハイエンドPCでAION2を体験したが、あのときの衝撃は筆舌に尽くしがたいものがあった。待機状態でキャラクターが脈打つ躍動を、ディーヴァの翼の先端の揺らぎを、翼で大空を自由に駆け回る喜びを、今もはっきり覚えている。
この世界をもっと深く知りたい。その先にある景色を見てみたい。
そんな感情がプレイのモチベーションとして自然に湧き上がっていた。
かたや今回のメディア先行体験会のPC環境は、4K/60FPSであった。
ただし、これは注記せねばならないことだが、筆者は今回、取材内容を全編録画する必要があった。そして経験上、3時間の取材をフル録画する場合、4Kでは画質やフレームレートが劣化する懸念があったため、ゲーム内設定をあえてフルHDに落としてプレイしていた。
フルHDの画面でも、AION2は2026年の新作MMORPGとして十分に高画質である。
だが筆者は、G-STAR 2025のAION2を体験しており、グラフィックスの真価を目撃している──4K、120FPS、DLSS 4でプレイするAION2は、誰もが目を奪われずにはいられない、更に一段上の世界であることを。
話を戻すと、AION2の進化はビジュアル面だけではない。プレイフィールにも、確かな変化があった。
特に大きいのは、AION2は手動操作を徹底的に重視しており、多くの攻撃スキルや呪文が移動しながら詠唱可能という点だ。
大半のMMORPGはターゲットを固定してスキルを順番に押す「ターゲット型」が主流で、特にキャスター系は「詠唱中は立ち止まらなければならない」というデメリットと引き換えに高火力を持つバランス設計が多い。
AION2はその前提を根本から覆しており、キャスター系のクラスでさえWASDキーで動き回りながら逃げ撃ちが可能なスキルもある。
さらに、照準を自分で合わせるノンターゲット形式のバトルも選択可能だ。
ターゲットとノンターゲットを状況に応じて使い分けられるこのような設計は、MMORPGの歴史を振り返っても珍しい。これらの戦闘システムがプレイヤーの習熟によってどこまでの深度に達するのかは、3時間の取材では想像がつかないのが正直なところだ。
MMORPGの原点回帰という挑戦を、いかに届けるか
NCが、昔ながらのPC向けMMORPGの原点回帰に本気で取り組んでいることは、もっと目に見える形での行動にも表れている。
日本では、AION2のスマホ版は展開されない。
先行してサービスされている韓国版では完成し、問題なくローンチしているにもかかわらず、だ。
「スマホ版」と聞いて何を思い浮かべるかは、読者の想像に委ねたいが、その選択をしなかったことが、NCの意志を雄弁に物語っているだろう。
ただ、課題がないわけではない。AION2が抱える最大の命題は、NCとエヌシージャパンが日本市場でいかにこのゲームを届けるか、という一点に尽きる。
スマホゲームや手軽なゲームしか知らない若い世代に、腰を据えて遊ぶPC向けMMORPGの醍醐味をどう伝えるか。
「MMORPG」と聞いて多くの人が思い浮かべてしまう、「オート操作やガチャによるエグい集金システム」というイメージを、いかに払拭するか。
そして、ハイスペックなPCならではのビジュアルの凄さを、いかに体験させるか。
どれも一筋縄ではいくまい。
しかし、これほどまでのゲームを作り上げたNCと、スマホ版を展開しないという決断をしたエヌシージャパンに、解決できないはずがない。その日が来るのを、筆者は今から心待ちにしている。
2026年9月、筆者はAION2のサーバーに降り立っているだろう。
あの頃のMMORPGに感じた「何か」を、もう一度この手で確かめるために。

















