総統は趣味で制度を設計されたようです
──グルッペンさんの動画の特徴のひとつに、学生などの仲間グループではなく、本気で組織を作ってマルチプレイをしていることが挙げられます。当初の繋がりを組織化するにはどのような過程を経たのでしょうか。
グルッペン:
これはほぼトップダウンで組み上げました。基本的に、物語を作ったり、制度を設計したりと、何かを練り込むことが趣味でして(笑)。
──制度を設計する? たとえば?
グルッペン:
たとえば『Minecraftの主役は我々だ!』という後継作がありますが、これは違反が起きないように、絶対にゲームがよじれないように何度もシミュレーションをして、法律みたいな条文を大量に作ってルールとしてプレイヤーに提示しましたね。
──どんなルールがあるんですか?
グルッペン:
たとえば、領内に作られた建築物に乗っている領主は攻撃してはならないんですが、領土外に作られた建築物に乗ったときなら攻撃していい。ただこれにも問題があり、領内の建築物と領土外の建築物が接着した場合はどう裁くかなどが発生します。
──そこまでいくともうゲームデザインですね。
グルッペン:
この場合、民法の紛争処理のように、条文を全部作って撒きましたね(笑)。抵当権が設定された土地の物件と債券の混同に関する判例をベースにしたんです。けっきょく単純な交通整理ですが、先に接着させたほうの状態を全体の建築物に適合しました。『マインクラフト』の中で建築要素と破壊要素、そして戦闘要素をバランスのいい感じに発揮させようと思い、本気で試行錯誤した結果のルールです。
──制度を作るのが好きなのは昔からでしょうか?
グルッペン:
古から伝わる、遺伝子に刻まれた何かですね(笑)。
──(笑)。それが『RPGツクール』での自作に自然に繋がっていくんですね(笑)。
グルッペン:
そういう意味で自作はまさしく必然的でした。じつはニコニコさんのお話をもらう前から、『RPGツクール』に触れ、作る練習をしていたりしていましたから(笑)。『大先生の日常』(『友人が俺の日常をRPGにしてみた』)を作ったときは、まったく今回の“RPGアツマール”の話などありませんでしたよね。
──『大先生の日常』を観て、“RPGアツマール”のロンチ作品をお願いしようと思ったんですよ(笑)。そもそもニコニコが初めてグルッペンさんに声をかけたのは、超会議というイベントでした。イベントにお呼びするときに、「どうやらこの人はひとりではないらしい」とまずわかり、メールを送ると、投稿者であるはずのグルッペンさんとは違う人からメールが返ってくる。
グルッペン:
そうなるでしょうね。
──その代理の方とやりとりをしていると、イベントにはまた違う人が来るという話に。何というか、御簾の奥にやんごとなきグルッペンさんがいるような感じで、「なんなんだ、このシステムは」となりました(笑)。
グルッペン:
それは趣味が発露した結果としての制度設計の成果ですよ(笑)。組織の内部に強靭な制度を作っていますから。まず各大臣がいて、そのうえで指揮系統を軍隊式に整え、それだけじゃつまらないので、ボトムアップ式の制度も整えて。
──実況者の皆さんにはひとりでやってる方が多く、人数がいてもリーダーがいたり、最近は事務所が付いていたりします。ところが“我々”の皆さんは初めてのケースというか、制度なんですよ。外交担当と自己紹介された方はイベントには出ず、本気で外交だけの担当だった(笑)。
グルッペン:
完全に渉外専門の外務大臣ですからね(笑)。「分業だよな」と、かなり意図的に本気で体制を作りましたので。
──なぜ、こんな不思議な形を選んだのですか?
グルッペン:
各人に、いちばん最適な役割を与え続けていたら、そうなりました。組織化してからの活動に必要な行動を予測して、「外交とか俺やりたくないから、誰かやらないか」と募ったんですね。じつは私はもう長いことニコニコのアカウントを使っていません(笑)。
──別の方が動画をアップしているんですか?
グルッペン:
組織で共有している動画置き場があり、そこに動画を作って置いておくと、定期的に上がっていくという仕組みがあるんですよ。
──会社のような組織運営ですね。いや国家か?
グルッペン:
イデオロギーも携えた国家です(笑)。
──組織の皆さんは、思想的には似ているんですか?
グルッペン:
私ほど体系的でラジカルではありませんが似ていますね。皆、共鳴するところがあり、お互いに自由な意思で集まっています。我々だの組織は入退が非常に自由なんですよ。「好きだったらいてね」、「楽しかったらいてね」という一方で、「自由意志で離れていいよ」と、そこはかなり徹底しています。我々だは組織というより空間に近いんです。みんな勝手にそこにいるだけです。
──グルッペンさんから一方的な指示が次々と出されているように感じますが、それは皆さん、自由意志で契約したうえで、楽しいからやっているわけですね。
グルッペン:
まさしくそうですね。ニコニコから依頼が届いたときも「行く人~」と声がけをしました(笑)。私は正直、我々の組織が表に出ていくことにけっこう否定的だったんですよ。ですが私の意志よりも各人の自己判断のほうが尊重されますので。
──小さいころから、そういう組織を作りたいと思っていたんですか?
グルッペン:
これは私の欲望といいますか、狂信的な野心といいますか……いや、私がどうこうというよりも、人間はそうあるべき、それが絶対的な真理だろうと思っているので。
──そういうグルッペンさんに皆さんは共鳴されていると。
グルッペン:
何をするにも背景に論理があり、どんな疑問にも絶対答えられますので、だからみんな納得しますよね。
──ニコニコのチャンネルには、かなりの人数が国民として入会されています。その皆さんはグルッペンさんの論理に惹かれて入会しているのでしょうか。あるいは誰々がカッコいいなどファン的な要素があるんですかね?
グルッペン:
それは議論の余地がありますね(笑)。いろいろな方々がいると思います。とはいえチャンネル内でも論理は貫徹され、議会制民主主義【※】を築き上げるという愚行を犯しています(笑)。
──議会を運営されていますね。
グルッペン:
“我々議会”と名乗っていますが、比例代表で各個人メンバーが政党を形成してマニフェストを発表し、選挙をします。選挙は掲示板を開放して、国民にそこに書き込んでもらいます。
──投票できるのはチャンネルの会員だけですね?
グルッペン:
ええ。「代表なくして課税なし」【※】ですので。
──比例代表でトップになるとマニフェストを実行できるんですか?
グルッペン:
株主総会に近いですね。票の獲得割合、持ち分だけ主張ができるんですよ。議会の過半数の同意を得たら、政策が実行されます。
──これまでどんな政策を実行しましたか?
グルッペン:
「クトゥルフ神話のテーブルトークRPGを作れ」というものなどが。作成されたのは議会の提案によるものです(笑)。
──実際にあの動画『個性豊かなクトゥルフ神話TRPG』は人気になっていますからね(第一話が25万再生超)。
グルッペン:
あれは完全に議会の指示です。国民様の命令で作られたと(笑)。
──ほかにも同様の事例はあるんでしょうか?
グルッペン:
じつはその制作に時間を取られていまして……。いまは再編集が終わったところですね。あとは細かな雑務処理ですね。アーカイブとして動画をアップするときは、コメントを付けたほうがいいとか、ダメだとか。そうした細かい内紛がありますが、そういうものも議会で決定しています。そのほうが国民の意思が繁栄されている状態ですし、いざとなれば修正も可能なので。そうした制度のほうが政策の正当性が担保されているかなと。
──制度や組織は腐敗したりしないんですか?
グルッペン:
ああ、腐敗はするでしょうね(笑)。主張する割合が変わるだけで議員はいっしょだから、民主集中制【※】みたいになりますよ(笑)。
──そうやって議会制民主主義を作り、政策を実行し……“我々”の皆さんは、最終的にどこにたどり着こうとしているんでしょうか?(笑)
グルッペン:
それは我々議会と国会と連結して日本を独裁……じゃなく(笑)、私はニコニコ動画という空間が非常に好きなんです。私はかつて『HoI II』AAR wikiを復活させるためにニコニコ動画にやって来たんですよ。そこで頑張って人を集めたりして、なんとか復興させるように頑張ったんですね。そして現在、どうやらニコニコ動画先輩がGoogleガバメントとかいう政府にボコられているらしいので、つぎはそれをなんとかしようと(笑)。
──それ、世界一強い相手ですよ(笑)。
グルッペン:
「世界一強いアルファベット社【※】をなんとか打倒せにゃならん」という感じですかね(笑)。日夜、戦力を整え、思想を整備して。ただ、そう考えて活動するのが普通かなと思っていたんですが……どうやら世の中そうではないらしいということが最近わかってきました(笑)。
──(笑)。そもそもニコニコのどういうところがお好きなんでしょう?
グルッペン:
ゲマインシャフト【※】みたいなところですね。その空気が好きです。ニコニコ動画って、学校で言えば文化祭で、「うわ、やりたくね~」とか言いそうなヤツらが集まっていますよね? まさしく私もそういう人間なので、そういう輩が集まれる場所は居心地がいいんですね。
──居心地のいい空間を守るために、日々戦っていると(笑)。
グルッペン:
みずからの居場所を守るために戦う……ああ、カッコいい(笑)。まあ、今回の“RPGアツマール”で、ニコニコ動画がまた盛り上がるのでよかったと思っています(笑)。これは絶対にうまくいきますよ。
──その「絶対にうまくいく」という分析をお聞きしたいのですが……。
グルッペン:
これまでの『RPGツクール』は発表の場が限られてましたが、今回“RPGアツマール”と結合することでAK-47になるわけです。
──?
グルッペン:
つまり“アツマール”は、すごい低コストで大量の弾をバラ撒ける、14歳くらいの子どもでも扱える小銃なんです。
──いったい誰を撃つんですか(笑)。
グルッペン:
“アツマール”により、いままで頭の中に自作ゲームの構想を持っていたけど発信力のなかった人間に、武器が配布されたわけですよ。大衆が等しく発信の可能性を持ったことで、特権階級によって占められていた都市を包囲する戦いがここで始まるわけですよ。『RPGツクール』って、ほぼ誰でも触れられるやさしさなので、これは膨大な供給力になり得るし、『モンスト』や『パズドラ』など、スマホで出ているゲームなら再現できるソフトなんですよ。それを大衆に大量に配り、蜂起の場をニコニコさんが用意したわけです。これはまさしくAK-47を配りまくる国家とそれを手にする勢力のような構図です。そのおかげで世界中が紛争だらけですからね。いやいや、そりゃあ米国軍もアフガニスタンから追い出されるわけです。
──ありがたいご評価ですが、ニコニコが紛争の根源のようです(笑)。
総統は「歴史は、調べ尽くせない最強のコンテンツ」とお考えのようです
──歴史のおもしろさや『HoI』のおもしろさは、どこにあるんでしょう?
グルッペン:
私が推したいポイントは、国家という主体がいちばんオモロイことをやっているのが見られるのが歴史というコンテンツなんですね。国家がおもしろいのは、人類が生み出した最強過ぎる組織だからです。容赦なくウン百万人という人を殺せますし、逆に福利厚生を爆発的に充実させることもできるほど、やることがダイナミック。ゆえに管理するため、憲法ができるんですが。めちゃくちゃ強いからおもしろいです。
──国家というと、ウェストファリア体制【※】のころから着実に主体としてのレベルを上げ、いまに到るわけですよね。
グルッペン:
そうですね。その国というものの歴史が……『ヘタリア』【※】というマンガがありますよね? ああいう風に擬人化できるぐらいおもしろい動きをしてるんですよ。しかも、国の中にも人間がいて、それぞれに動いている。こんなおもしろいコンテンツはありません。武器もあるし、人もいっぱい倒れます(笑)。歴史は、いくら調べても永遠に全部を知ることはできない最強のコンテンツですよ。調べれば調べるほど細かいことがいっぱいありますからね。
──いちばんおもしろいのは第二次世界大戦ですかね?
グルッペン:
私が好きなのは第二次世界大戦ですが、ほかの時代もおもしろいですね。「なぜ第二次世界大戦が好きか?」と問われると、「国家とはこういうものだ」という形がある程度できたうえで大暴走するからです(笑)。あとはどうしても国家権力がメチャクチャ強い時代が好きですから、現代も好きです。
──キャラが立っていると(笑)。
グルッペン:
超キャラが立っている。しかも、ナチスドイツとソビエト連邦などは真善美【※】が整っていますからね。もうナチスドイツ先生など、死にかたまで芸術的ですからね。13年で崩壊するという。
──グルッペンさんが好きな歴史コンテンツは、書籍、マンガ、映画など、そういうカテゴリーの中では何かありますか?
グルッペン:
書籍ですと『人間的、あまりに人間的』【※1】が好きですね。第二次世界大戦関連の書籍の有名どころは、かなりいろいろと押さえていると思います。たとえば……チャーチルの第二次世界大戦回顧録【※2】。それからリデル・ハート【※3】やアントニー・ビーヴァー【※4】。あと歴史群像はここまで全巻読んでいます。本はつねに読んでいますんで……ああ、『わが闘争』【※5】はつまらなかった。あれがおもしろいという人間がわからない(笑)。
※2 第二次世界大戦回顧録……第二次世界大戦時に英国首相を務めたウィンストン・チャーチルが、退陣後の1948年から6年にわたり刊行した大著。1950年にはチャーチルは政権を奪回し、1953年には現役首相ながらノーベル文学賞受賞に到る。
※3 リデル・ハート……20世紀を代表する英国の軍事評論家。紀元前から第二次世界大戦までの戦争を分析した大著『戦略論』で知られる。
※4 アントニー・ビーヴァー……英国の歴史ノンフィクション作家。元英国陸軍所属。スターリングラード、ベルリン陥落、ノルマンディー上陸作戦などの題材をリアルに描いている。
※5『わが闘争』……アドルフ・ヒトラーによる、1925-1926年刊行の書。生い立ちやナチス結党の経緯などを描く自叙伝と、政治手法、戦争観、教育観、そして人種主義などの政治的な世界観を書いている。
──歴史好きの方、とくに男性の場合は、武器や戦艦など、兵器に興味のある方が多いのですが、グルッペンさんはいかがですか?
グルッペン:
私はじつはあまり兵器には興味がないんです。どちらかというと、もっとマクロな戦略規模の話が好きで、あとは政治思想、政治体制の話ですね。ここでも好きなのはやはり制度なんですよ(笑)。
──グルッペンさんのような政治体制好きが集まると、どんな話になるのでしょう?
グルッペン:
政治体制好きにもいろいろいますからね。どうなんでしょう。いわゆる共産趣味者と呼ばれる人が集まると、スターリンの作った内務人民委員部(НКВД)【※1】という暴力機関があるんですが、「こいつらがいかにおもしろい悪行をしていたか」という話をひたすら語り合うとか(笑)。この機関が皆殺しをする、「革命の防衛のため」などの理論的背景がおもしろいんですよね。思想というものは凄まじい力を持ち、そして「自分が正義である」と信じて行動するので、人を殺すにしても非常に容赦がない。また、思想から制度ができるんです。唯物弁証法【※2】に基づいた国家体制を築いたのがソビエト連邦ですし、また我が国の法秩序は自然法に由来して形作られていますよね。ナチスだったら指導者原理【※3】で、社会ダーウィニズム【※4】の影響を受けている。ナチスはなんでしょうね、ニーチェ【※5】を曲解したよくわからん思想です。
※2 唯物弁証法……ヘーゲル的な弁証法(概念は対立によって、より高い次元で止揚する)と、唯物論(精神的な活動は、物質的な身体に基づく)を結びつけ、階級間の格差を闘争によって克服し、止揚する(革命を起こす)ことで、人間は絶えず新たな創造を続けていけるとする、後述するマルクスの思想のひとつ。
※3 指導者原理……指導者に対して無条件の服従と忠誠を求める理論。ナチスが掲げた基本原理。
※4 社会ダーウィニズム……社会進化論。生物学的な進化論を社会に適用した思想。当初は自然や社会・文化が単純なものから複雑なものへの移行することを進化と捉える思想だったが、複雑さの極まった自由主義的な目的論から、適者生存を唱えるものへと変質し、優生学や生存圏の考えかたを導き出した。
(画像はWikipediaより)
──とくに好きな思想家はいますか?
グルッペン:
それはもう完全にニーチェですね。でも、表立ってはヘーゲルと言っています。ニーチェと言ってしまうと、わかる人には今後の付き合いかたを考えられてしまうので(笑)。
──戦略ゲームを物語にするときも、国力は政体に由来して、その政体は何から生まれているのかというと、そこはやっぱり思想にたどり着くんですね。
グルッペン:
第二次世界大戦当時の国家は、国家社会主義思想、共産主義と社会主義思想、そして自由主義の3軸の鼎立でした。当時はみなイデオロギーに準拠して国家すなわち制度を作り、軍隊を作り、戦争を行っていたわけです。戦争のしかたも、主義主張に則り、イデオロギーを本気で信じている集団が決めていた。国際政治もイデオロギーにそって行動していたわけです。
──これを物語としてなぞったのが、『HoI』のAARであり、現代的な動画にしたのがグルッペンさんたちの作品だと。
グルッペン:
そのとおりです。『第二次世界大戦の主役は我々だ』を観ると、ヒトラーがどんな思想を持っていたのかをよく知ることができます。
── 一時期盛り上がった現代思想の言論も、いまは落ち着き、僕らも含め、若者は政治を語る言葉をそれほど持っていませんからね。
グルッペン:
いまはイデオロギー対立がなくなってしまった世界なので、あまり選択肢がありません。
──現代は、ゆっくり動画などでもおもしろくできないものでしょうか?
グルッペン:
いや、まだ対立は山ほどはありますし、戦争はそこらじゅうで起きていますし、おもしろい国家も勢力も残っているので、できますよ。ただ、フランシス・フクヤマ【※】が『歴史の終わり』と言ったように、イデオロギーの対立が終了したいま、正直、この世界は自由民主主義で確定したので、第二次世界大戦のときほどはおもしろくはありませんな。共産主義が盛り返すには、「もう、ちょっと無理があるかな」と思うので。つぎの体制って何でしょうかね? 資本主義、自由主義はそれはそれで問題点もいろいろあるから、枠内でどうやって修正していくのかという話になるでしょう。そうなると、最強だったイデオロギー対立に比べ、民族対立などのワンランク落ちる争いになりますよね。
──ともあれ『第二次世界大戦の主役は我々だ』は世界史に疎くても、ゆっくりという外側がまずおもしろい。ゆっくりに惹かれて入ると、とにかくわかりやすいんです。言葉も練られていて、「噛み砕いておもしろく話す」ということをすごく意識されたんだろうなと思います。
グルッペン:
そうですね。完全に小学生に解説するために作ったというか、仲間を増やすために作ったので(笑)。
──どんなことでも、ほぼ一行で説明していくので、世界史に詳しくない身でも、凄くわかりやすいんですよ。本を読んでの勉強だと硬い話になりがちですが、グルッペンさんの動画は、気さくな先生が自分たちの言葉で授業をしてくれるように、スルッと入ってくるんですよね。
グルッペン:
それはじつはゆっくりの優れた点でして。ゆっくりは頭の弱い設定なので、強制的に言葉が単純化されます。だからあまり長く喋れないんですよ。そういう意味で非常に便利なツールなのかもしれません。
──そのあたりには、やる夫と共通する何かを感じますね。2008年ぐらいからゲームを中心に、ゆっくりが解説や実況をするカルチャーが生まれ、時間とともにいろいろなものを解説したり罵倒する存在としてニコニコに定着していきました。ゆっくり動画界隈にはとても広く多くの方がいる一方で、これがなんなのかはあまり語られていません。グルッペンさんの目から見て、ゆっくり界隈とはどんなところなんでしょうか?
グルッペン:
ゆっくり界隈は……交流がほとんどなかったからなあ。おっしゃるとおり、ゆっくり動画は、やる夫のニコニコバージョンですよね。根はいっしょだと思います。大衆にもっとも伝えやすい形が、やる夫やゆっくり動画だったと。ニコニコで生まれ、いろいろな思想や表現方法がある市場メカニズムの中で洗練された、いちばん心地よい存在なんでしょうね。
──歴史コンテンツに限らずとも、何かを解説するときに、やる夫とゆっくり動画以上に熟しているものは、ほぼないと思います。
グルッペン:
彼らは思想の自由市場で生き残ったキャラクターなので(笑)。
──そのゆっくり動画初期に『HoI II』を題材にした「第二次世界大戦の主役は我々だ」から、語るゆっくり動画というものが生まれたのではないかなと捉えていますが、いかがでしょう。
グルッペン:
どうでしょうね。私がゆっくり動画を作るに当たって、おもに参考にしたのはAAR wikiなので。
──そのマッチぶりを他の方が見て続いていったのかなと。
グルッペン:
ん~、そうなのかな? ちょっとわからないです。