ほぼテキストのみのゲームでありながら、TRPG風の雰囲気、自由度の高いキャラクターの育成、ハクスラ的な装備探しとそのカスタマイズなど、RPGの根源的な楽しさを不足なく盛り込んだiPhoneのスマッシュヒット作『ナイト・アンド・ドラゴン』。
多くのゲームファンに支持されたこの作品に、待望の続編が登場しました。
『ナイト・アンド・ドラゴン2 – 狂乱の時代 -』です。
2015年に公開された前作の正統進化といえる内容。
システムに大きな変化はありませんが、ミッションのボリュームは前作の2倍となっており、パーティーメンバーの拡大や、時間経過でアイテムや経験値を得られる「派遣」が加わっています。
また、ゲームバランスが見直されており、アイテムのソート機能など、インターフェイスも改良されています。
スピーディーにテンポ良く遊べ、延々と育成や収集に没頭できるハマり度の高さは健在。
BGMやサウンドも、今作は最初から備わっています。
有料アプリとなっており、価格は360円。
最初から広告は取り除かれており、もちろんガチャやスタミナはありません。
開発したのは、日本の個人制作者の方です。
まずはキャラクターメイキングから。
種族、信仰、そしてステータスの振りわけを行います。
今作は種族と信仰に応じて、キャラクターに「控えボーナス」が与えられます。
これはパーティーの「控えメンバー」にしたときに全員に適用される効果で、常に主力メンバーにするのであれば影響ありませんが、このボーナスが種族と信仰で決まるのは覚えておきましょう。
そして重要なのは、STR(腕力)やMAG(魔力)などのステータス。
このゲームはレベルアップしても基本ステータスは変動しないため、初期ステータスは後々まで影響します。
最初に作るキャラクターはひとりのみ。
他の仲間は通常、「商会」の「訪問者紹介」のコマンドで、訪れている人の中からスカウトします。
優秀な人はそうそう見つかりませんが…… とりあえずふたり雇って、3人パーティーにしておきましょう。
最初は商会の規模が小さいので、それ以上、所属させることはできません。
クエストをクリアして「貢献レベル」を上げれば、所属人数は徐々に増えていきます。
冒険者を雇って「パーティ編成」を行ったら、商会で装備を購入します。
このゲームのレベルは武器別になっていて、剣を使って戦えば剣技のレベルが、火炎の杖を装備して戦えば火炎魔法のレベルが上がります。
そしてレベル5になれば最初の「スキル」を習得でき、これは別の武器に変えても使用できます。
剣技の「斬撃」を覚えれば、弓に変えても斬撃を繰り出せ、聖風魔法の「ヒール」を覚えてから氷結魔法に変えれば、氷結系を習得しながらヒールでの回復を行えます。
それとは別に「クラス」(職業)もあって、こちらは武器レベルの最大値と、使える防具の種類に関わります。
転職には一定の武器レベルが必要ですが、条件を満たしていれば自由に変更可能。
物理攻撃職の「ファイター」や「ソルジャー」は魔法系の最大レベルが5しかないため、レベル10が必要な魔法は使えなくなりますが、「魔法限界UP」や「全限界UP」の効果がついた装備を身に着ければ、魔法の最大レベルを補填できます。
最大レベルを上げる控えボーナスもあり、融通が利くゲームなので、状況に合わせて職業を変えながら、さまざまなスキルを活用していくことができるでしょう。
準備を整えたら、いよいよ冒険に向かいます。
メインストーリーが進行する「ミッション」と、ギルド仕事の「クエスト」がありますが、クエストをある程度クリアしないとミッションは実行できません。
クエストを選ぶと、ちょっとしたストーリーが表示され、すぐにバトル開始。
戦闘はリアルタイム制のコマンドバトルで、キャストバーが溜まって行動可能になったら、実行したいスキルのボタンを押します。
キャストバーが溜まるのが速く、どんどん選んでいかないといけないので、けっこう忙しいです。
最初は主力のコマンドが「攻撃」しかないので、それを押していれば良いのですが、範囲攻撃や回復魔法などを習得し、使いわけが必要になると混乱してしまうことも。
ただ、今作から「ウェイティング」というシステムが導入され、誰かのキャストバーが最大になるとゲームスピードが通常の30%に減速するようになりました。
よって、ある程度は余裕を持って選ぶことが可能。
このウェイティングは設定で変更でき、0%にして一時的に進行を止めることもできます(ただ、ウェイティングをあまりかけないほうが、経験値は増えます)。
職業やスキルには敵に狙われやすくなる「注目度」というステータスがあり、そのコントロールも大切です。
範囲攻撃をバンバン連発していると後衛の魔術師でも敵のターゲットにされてしまうので、前衛が注目を集める「名乗り」などの行動を使い、敵を引き付ける必要があります。
行動の速いキャラが敵をバシバシ殴っていたら、敵からもバシバシ殴られてすぐ倒れた、みたいなことが起こりがちなので、常にヘイト(敵対心)を考慮しましょう。
なお、パーティーの主力メンバーは前作と同じ4人ですが、他にふたりの控えメンバーを加えた、6人での冒険を行えます。
控えメンバーは前述したように「控えボーナス」を適用でき、さらに主力メンバーの1/2の速度ですが、習得しているスキルを自動で使ってくれます。
主力メンバーもキャラクター名をタップすればオートにすることができ、オート時の作戦も設定可能。
自動で手軽にプレイすることもできます。
クエストのバトルは3戦で、3分ほどで終わります。
勝利できれば経験値とともに、たくさんの装備を得られるでしょう。
戦闘で得た装備には「攻撃力UP I」や「命中UP II」、「SP消費カット」や「状態異常抵抗」などさまざまな魔法効果がランダムで付いています。
これらは戦力に大きく影響し、より強力な装備を探すのもゲームの楽しみですね。
弱い装備も役に立たないわけではありません。効果を取り出すための素材になります。
商会の「工房」で「魔晶石錬成」を選び、同じ魔法効果、たとえば「防御力UP I」が付いた装備を3つ選択すると、それらが分解されて「魔晶石+防御 I」が作られます。
これを効果数が最大でない装備に「魔晶石合成」すると、「防御力UP I」を付加できます。
ゲームが進むと「SPがすぐ尽きる」や「毒を食らいすぎ」といった各キャラの弱点が見えてきますが、それをピンポイントで補うことができ、目に見えて強くなったり、使い勝手が良くなったりするので、装備を作るのが楽しくなってきます。
キャラの基本ステータスを簡単に上げられないため、魔法効果の付加はその点でも重要です。
合成には「コア素材」と呼ばれるアイテムも必要ですが、これはパーティーを送り出すことで一定時間後に報酬を得られる「派遣」でまとめて得られます。
派遣では経験値も得られるので、オフライン中でもレベルアップを行えます。
スマホのゲームなのに、ソーシャルゲームの対極に位置する作品。
綺麗なイラストも派手な演出もありませんが、プレイヤーの想像力を働かせる作りと育成の楽しさを感じるシステムには、古典的なRPGを思い出させる良さがあります。
『ウィザードリィ』やTRPG系の作品が好きな方に特におすすめですが、意外と万人に支持されているのは、ハクスラの楽しさの要点を押さえ、余計なものがそれを邪魔していないからでしょう。
テンポを損ねる動画広告や、ガチャ運次第のバランスといったものはもちろん、自由なゲームプレイを阻害するややこしいルールも、ここにはありません。
必要なものがあって、不必要なものがない。ただそれだけですが、だから面白い。
ぜひ遊んで欲しいゲームのひとつです。
ナイト・アンド・ドラゴン2 – 狂乱の時代 –
古典RPGの楽しさを凝縮した人気ハクスラの続編
・RPG
・Shinjiro NAKAGAWA(日本、個人)
・360円
文/カムライターオ
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