【赤野工作・ChinaJoy弾丸レポ】“パクリ大国”なんて言ってる場合じゃない! 独自のゲームも飛び出し世界戦略が着々と進む、日本人が知らない中国ゲーム産業のリアル

1

2

3

「VRのニーズ」はどこにある?

 「ゲームのテーマパーク」という比喩が大げさだなぁと思った方は、ぜひ一度、こちらの動画をご覧になってみてください。これは「AORUS」のブースが出展していた『AORUS 720-degree Motion Simulator』【※】。その名のとおり上下左右に360度回転するのが特徴のマシンで、若者たちによって体験を待つ長蛇の列ができていました。

※AORUS 720-degree Motion Simulator
台湾のPCメーカーGIGABYTEが、ゲーミングブランドAORUSのシンボル的な存在として2017年5月末のCOMPUTEX TAIPEI 2017でお披露目した大型筐体。ChinaJoyでも、文字どおり720度近い回転範囲の中でレースゲーム『Redout』が楽しめた。

 ……どうです? 「テーマパーク」という説明もあながち間違ってはいないでしょう?
 このように間違いなく、「ChinaJoyには見たこともない中国産のガジェットが並んで」います。なぜならChinaJoyは会場の展示面積が広く、ハードウェア関係の企業も多く参加しているゲームショウだから。巨大なVR機器の出展が見られるのも、考えてみれば当然の特徴なんです。 個人向けのVR機器は高い買い物ですから、中国では外出先で気軽に楽しめる大型VR筐体に高い需要があるのでしょう。

 中でも面白かったのは、年始より出荷が開始された全方向トレッドミルのVRコントローラー「KAT Walk」【※】のブース。すっごく滑りやすい靴を履いてすり鉢状の場所を歩くことで、VR空間での歩行を擬似的に再現するという機器ですね。身体を支えるアームが背中から伸びているので、安定感には不安がありますが束縛感は軽減されています。スカートを履いている女性でも遊びやすそうな作りになっているでしょう?

※KAT Walk
キックスターターで出資を集め、2017年1月から出荷され始めた中国発のVRトレッドミル(ウォーキングマシン)。同カテゴリで先行しているVirtuix Omniなどに比べ、体のまわりを囲むリングなどがないため、手脚の可動範囲が大きく取れるのが特徴。具体的には、ヘッドマウントディスプレイを装着し、腰の部分を各種センサーの入ったハーネスでホールド。マウスのソールのような滑りやすい加工がなされたシューズを履いて、すり鉢状のプラットフォームの中を歩くと、鉢底に向かって足が滑り、映像と合わさって移動している感覚が得られるという仕組みで、FPSなどに向いている。赤野氏に同行した編集は脱出時に派手に転び、肋骨にヒビが入った。それくらいよく滑る。

 これの何が面白かったって……、多くのメーカーが一様にこの「KAT Walk」を展示していたことですよ。电魂、光竞、华硕、Intel……、いちばん大きな展示を行っていたのは、本来だったら「戦車型VR」みたいなファミリー向けのアミューズメントマシンを得意とする「NINED」というメーカーなんですよ?

 そんなメーカーですらこうしてコアゲーマー向けのVRコントローラーを会場に展示しているということは……、「中国のVRは今後これがトレンドになる」と、需要を彼らが肌で感じている可能性を思わせます。

 ゲームショウに出展されているゲームは、その国のゲーマーの需要を覗く鏡。テーマパークのようなこのChinaJoyにも、こうした「中国のゲーマー」の需要は顔を覗かせています。

 ファミリー向けのVR機器を開発している「WASAI」が出展していたのは、「子どもでもVRが遊びたい」というキッズゲーマーの声に応えるアーケード設置型のVRマシン。
 Viveブースの近くに出展されていたのは、「VR体験をよりいっそう濃厚にしたい」というコアゲーマーの声に応える3Dプリンターで作られた拡張機器のコーナーでした。

 中華圏におけるVRヘッドマウントディスプレイのトップメーカーHTCの「Vive」も、そうした需要の変化には繊細に対応をしてきています。VR体験そのもののPRを行うこれまでのブースの方向性から打って変わって、今年のブースは『乖离性百万亚瑟王VR』【※】を主題に置いたソフトウェア体験の一点攻勢!

 「Vive」と「Oculas」を真隣りに並べて性能比較させるようなブースも登場し、VRが「技術として目新しい段階」から「商品として取捨選択されている段階」へと、需要が移行しているさまを見せつけられた気持ちになりました。

※乖离性百万亚瑟王VR
「亚瑟王」でアーサー王。つまり、スクウェア・エニックスとGREEが2017年にリリースしたRPG『乖離性ミリオンアーサーVR』を指している。

 一方で、現時点ではまだどういう需要があるのか未知数な展示もあります。ヒューレットパッカードとIntelが展示していた「疯狂对战椅」です。『Overwatch』を遊んでいるとPCが床ごと動くというマシンで、ことあるごとに煙がブシューっと吹き上がる演出もついていました。

 ふたりでゲームを対戦するためのマシンなのですが……、状況に対してどういう法則で床が動いていたのかすらもわかりませんでした。いや……、遊んでいた人のあの笑顔を思い出すに、中国にはもうすでに、こういう遊びかたに対する需要が芽生えているのかもしれませんが。

配信人気のあるゲームたち 

 中国のゲーマーの需要がもっとわかりやすく現れている展示もあります。中国で多くの人に遊ばれているゲームと言えば……、『Overwatch』に『Hearthstone』、『王者荣耀』に『League of Legends』【※】(以下、『LoL』)と、e-Sportsとして人気の高いタイトルがズラリ。

 対戦ゲームの観戦が非常に人気のある中国では、ここ数年で動画配信サイトの新規設立が相次ぎ、その結果として「ChinaJoyでは中国で大人気のe-Sportsの対戦会が行われている」んです。このChinaJoyにも、数多くの動画配信サイトがブースを出展しています。

※League of Legends
Riot Gamesが2009年にリリースした、5対5で敵陣を制圧しあう、いわゆるMOBA(マルチプレイヤーオンラインバトルアリーナ)ゲーム。MOD文化の中から生まれたゲームにして、いまや全世界的でもっとも普及しているゲームのひとつで、スポーツライクなゲーム性が高く、e-Sportsなどでも種目の筆頭として挙げられる。日本語版は2016年になってβ版が登場。

 とは言え、どれだけ配信サイトの数が多くても、配信人気のあるゲームは一部のタイトルに限られています。ChinaJoy現地でもそれは変わらず、配信サイトのブースはどこも「人気のゲーム」の対戦会を企画しようとするので……、結果として、ほとんどのブースで企画の内容が似通ってしまっているんですよ。
 内容が被ってしまっている以上、他のブースと差別化を図るには演出やタレントの豪華さで勝負するしかない。いまこの場所で行われている競争こそが、各サイトどうしの差別化そのものにも繋がっているというわけです。

 たとえば下の写真、左側のブースは「全民直播」。2015年サービス開始のサイトで、いまでは『LoL』のプロリーグの試合を配信していますね。サイト内で有名な生主やコスプレイヤーもこぞって出演し、当日の対戦会も大いに盛り上がっていたようです。
 右側のブースは「熊猫直播」。こちらもほぼ同時期にサービスが始まった配信サイトですが、会場で対戦会が盛り上がっていたゲームタイトルは……こちらももちろん『LoL』! 動画配信サイトどうし、同じ土俵で真っ向勝負をしているわかりやすい例だと言えるでしょう。

 大きな資本との勝負を避けて、別の道で生き残ろうとしているサイトもあります。下の写真、左側は「触手TV」スマホによる動画配信特化のサイトなので、人気タイトルもスマホゲームである「王者荣耀」です。このあたりは他サイトと差別化ができている数少ない例でしょう。

 ゲームメディア「游戏风云」といっしょにChinaJoyにやってきた「九秀直播」も面白い例です。なにせこのサイトは美女のお喋り配信に完全特化しているサイトなので、むしろ他のサイトにタレントを売り込むつもりでこの場所に来ているんでしょうから。

 しかしながら、ChinaJoyで「人気プレイヤーによる人気のゲームの対戦会」を企画しているのは、なにも動画配信サイトのブースだけではありません。

 そもそも彼らのブースのすぐ近くには、『LoL』と『王者荣耀』【※】のパブリッシャーである、世界最大のゲーム会社「騰訊」の超大型ブースがそびえ立っています。世界最大のゲーム会社のブースだって、ChinaJoyでは観客を集めるのに必死になって企画を立ち上げるんです。ステージ上で披露されるパフォーマンスはもちろん……「人気プレイヤーによる人気のゲームの対戦会」ですよ!

※王者荣耀
騰訊が2015年にリリースした、iOS/Android用のMOBAゲーム。ヒーローにあたるキャラクターには、元の時代のころまでの中国の歴史上の人物が当てられており、そのほかにもアーサー王や宮本武蔵、アテナ、SNKのナコルルや右京、不知火舞なども登場する。

 騰訊ほど巨大な企業になると、そのパフォーマンスの規模もすさまじいものになります。大型ステージが用意されているのはもちろんのこと、通路を挟んで向かい側にもうひとつ大型ステージを用意。27日の昼から30日の夕方まで、ぶっ通しで自社タイトルの試合が開催されていました。

 スクリーンに映っているQGHappyは『王者荣耀』のプロリーグ(KPL)で春季赛を征した強豪。一般日に呼ばれていたEdwardGaming【※】は、『LoL』のプロリーグ(LPL)で目下単独首位に立っているチームです。タレントの豪華さでは配信サイトは……やっぱり発売元には敵いませんね。

※EdwardGaming
『League of Legends』のプロリーグ(LPL)に参加している中国のチーム。結成以来、プロリーグのランキングでは常に首位を争うほどの強豪である。

 ちなみに、中国にはゲーム配信に特化した動画配信サイトがあります。そのサイトの名前は「战旗直播」。「Live For Gamers」という硬派なスローガンのもと、クオリティの高いゲームプレイ動画を提供するために設立された硬派なサイトです。

 『三国杀』【※1】や『PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS』【※2】の配信が人気なのもこのサイトの特徴のひとつで、もちろんこのChinaJoyにも大きなブースを出展していました。目玉の出し物は……、なぜかはよくわからないんですけど、メリーゴーランドでしたね!

※1 三国杀
2008年に発売が始まった、中国・游卡桌游による三国志が題材のカードゲーム。イタリアのカードゲーム“Bang!”が下敷きとなっている。武将と身分(役割)がカードによって指定され、装備や錦囊(魔法のようなもの)カードを使って、役割に応じた相手を倒すことが目的となる。現在の中国でもっとも遊ばれているカードゲームのひとつ。

※2 PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS
略称はPUBG。韓国に拠点を置くBlueholeによって制作されているMMO・FPS/TPS。2017年3月にSteamで早期配信され、2018年春に正式なリリースが予定されている。ひとつのサーバーに100人のプレイヤーが集まると戦闘が開始され、最後の1人になるまで戦い抜くシューティングゲーム。ストーリーは存在せず、ゲーム開始時はアイテムなども所持していないため各自がフィールドで調達していかなければならないなど、非常に自由度の高いゲームである。日本映画『バトル・ロワイアル』に着想を得て制作された。

1

2

3

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

新着記事

新着記事

ユーザー協賛プロジェクト

世界征服大作戦

電ファミの記事は協賛者の皆さまの支援によって成り立っています!

世界征服大作戦とは?

電ファミのファンクラブです。ゲームを中心にしながら、ひいてはマンガやアニメなど、エンタメ全般を扱うファンクラブへの成長を目指します。主要メンバーとして、元週刊少年ジャンプの編集長・Dr.マシリトこと鳥嶋和彦氏なども参加。面白いコンテンツによる世界征服を本気で企むコミュニティです。

詳しくはこちら

ピックアップ

連載・特集一覧

カテゴリ

その他

若ゲのいたり

SNSで更新情報をお届け!

カテゴリーピックアップ

若ゲのいたり〜ゲームクリエイターの青春〜

若ゲのいたり〜ゲームクリエイターの青春〜の記事一覧