【赤野工作・ChinaJoy弾丸レポ】“パクリ大国”なんて言ってる場合じゃない! 独自のゲームも飛び出し世界戦略が着々と進む、日本人が知らない中国ゲーム産業のリアル

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中国産コンテンツの胎動

 多くの動画配信サイトが限られたパイを奪い合う一方で、自前でコンテンツを用意するようになった動画配信サイトもあります。近年ゲーム事業に力を入れ始めた「bilibili」【※1】のブースでは、中国でも絶大な人気を誇る『Fate/Grand Order』【※2】の展示がど真ん中に。

 そしてそれと並ぶように、今年の春にリリースされたシューティング『碧蓝航线』が展示されていました。キャラクターがかわいいでしょ、これ? bilibiliが自前で開発した新作弾幕シューティングで、擬人化された戦艦を自機として操作するゲームなんですよ!

※2 Fate/Grand Order……画像左。2015年よりサービスを開始した、iOS/Android用RPG。主人公が3騎のサーヴァントを率いて戦うターン制コマンドバトルの戦略性と、100万字を超える圧倒的ボリュームのメインストーリーを堪能できる。2017年5月時点で累計900万ダウンロードを突破し、中国や台湾でもサービスが行われているほか、2017年6月には北米で英語版の配信が開始された。

※1 bilibili
哔哩哔哩。上海幻電信息科技有限公司による動画共有サービス。画面にコメントが流れるのが特徴で、なんとなく日本の某サービスに似ているが、名前は『とある魔術の禁書目録』の御坂美琴の愛称からとのこと。日本のアニメの配信やスマートフォン用ゲームの中国展開に積極的で、最近では『刀剣乱舞-ONLINE-』や『Fate/Grand Order』なども展開している。

 じつは日本でもすでにリリースは予告されているんですが、ローカライズの手間もあってか配信はまだまだ先になる見込み。ChinaJoyで発表されている中国向けの情報であっても、日本のゲーマーとして是が非でも最新の情報は手に入れたいところなんです。

 長らく和製ゲームのローカライズを行ってきた企業が、独自開発したゲームを日本市場へ送り出す立場に変わろうとしている。中国のゲーム産業が発展するのに伴い、ChinaJoyの発信する情報にも世界的な需要が生まれている。そんな話も、いまでは珍しくもなくなってきました。

 中国産コンテンツも15年前と比べて格段に日本に入りやすくなってきただけに、ひとつひとつの展示物が持つ情報の価値も昔とは大きく変わってきています。こちらは日本でも放映されたアニメ『靈劍山』のブース。展示されていたのはスマホ向けのゲームでしたが、日本じゃリリースの告知すらされていません!

 隣りにあるのは来年TOKYO MXで放送予定のアニメ『银之守墓人』【※】のブース。中国では『银之守墓人:对决』というタイトルでゲーム化がすでに発表されており、発表を待っている日本人としてはただただ羨ましさだけが募ります。

※银之守墓人……中国のマンガ制作集団零盟によるWebコミック。凄腕のゲーマーが、美少女ゲーマーとの関わりの中で、ゲーム中の世界に吸い込まれ……という物語。TOKYO MXにてアニメ化がなされ、2018年から第2期も予定されている。

 「ChinaJoyでは日本で遊べない中国のゲームが展示されてい」たのもいまは昔。中国産CGアニメ『The King Of Fighters Destiny』のブースなんて、ここ自体がアニメの「全世界配信」を宣伝するために用意されていたようなブースでしたからね。

 ChinaJoyでの中国向けのプロモーションが、そのまま世界に向けてのプロモーションとしても披露されている。ブースの中央に配置されていたこの不知火舞のフィギュアだって……おそらくは世界中からSNK【※】ファンが拝みに訪れたことでしょう。

※SNK……1973年創業の老舗ゲームメーカー。『サスケvsコマンダー』、『アテナ』など独特の魅力を放つアーケードゲームをリリースしたのちに、新日本企画という旧社名の頭文字を取ってエス・エヌ・ケイと改称。1990年にはオリジナルのプラットフォームNEO-GEO/MVSをリリース。以後、『餓狼伝説』、『龍虎の拳』、『サムライスピリッツ』、『ザ・キング・オブ・ファイターズ』など数々の対戦格闘ゲームシリーズを送り出し一時代を築く。ピークを越えた2000年に一時アルゼ(当時)傘下となり、2001年には経営破綻。プレイモア社が権利を引き継ぎ、SNKプレイモア社への商号変更を経て、2015年に中国資本37gameの傘下になったのち、『ザ・キング・オブ・ファイターズ』など看板タイトルが復活(中国では『ザ・キング・オブ・ファイターズ』は『拳皇』と言われ、絶大な人気を誇る)。2016年に商号もSNKに復し、現在に至る。

 万代南梦宫(バンダイナムコ)上海の展示物なんて、感心を通り越して笑っちゃいましたよ。
 このブースで展示されていたのは『龙珠』(ドラゴンボール)や『航海王』(ワンピース)と言った日本の漫画のゲーム化作品だったのですが、それらのゲームは上海の現地法人が中国市場向けに開発していたものらしく、日本人の私でさえ見たこともないゲームばかりだったんです。

 日本の漫画の新作ゲームがリリースされる情報を、わざわざ日本から中国まで確認しに来ている! ChinaJoyの発信する情報が、私たちが遊ぶゲームに直結するようになったんだと。

加熱するショウ合戦

 「ゲームのテーマパーク」だったはずのChinaJoyが、産業の発展とともに「新作ゲームの見本市」としての役割を期待されるようにもなってきている。今回そんなChinaJoyの変化をもっともわかりやすく感じさせてくれたのが……、コンパニオンさんたちの「スカートの丈」の変化です。

 この記事の最初に、私は「ChinaJoyはコンパニオンさんの露出度が凄いらしいんです」と聞かされてこの場所に赴いたんだと、そう書きましたよね。しかし……、どうでしたか? この記事に、そんな露出度の高いコンパニオンさんの写真は1枚でもありましたか?

 そうです、もうChinaJoyにはいないんですよ、そんなコンパニオンさんは。

 企業間でのパフォーマンス競争が過熱した結果、ChinaJoyでは数年前まで半裸のコンパニオンさんまで会場に並ぶようになっていたんですが……。3年前に「良質なゲーム体験を伝える邪魔になる」と非難が集まり、運営がコンパニオンさんの露出に罰金を科すようになったんです。胸元が2cm以上開いていた場合、へそ下が2cm以上開いていた場合は5000元(約83000円)の罰金。

 2017年のChinaJoyを彩るコンパニオンさんたちのスカートの丈の長さには、このゲームショウが「見本市」へと生まれ変わる願いが込められているというわけです。

 ChinaJoyにおける出展内容の変化とは、つまりはそれを見たがっている中国のゲーマーの変化に他なりません。2014年より中国市場に正式参入したXbox OneとPlayStation4のブースでは、それぞれ『非常英雄』と『西游记之大圣归来』というふたつの国産タイトルの名前が挙がっていました。

 『非常英雄』のニュースが中国内に出回ったのは6月に行われたばかりのE3。『西游记之大圣归来』のニュースが出回ったのはChinaJoy直前に行われたPlayStation Press Conference in Chinaでの発表内です。

 一部の中国のゲーマーにとっては、ChinaJoy現地に駆けつけてでも情報が知りたい待望のゲームだったのでしょう。SIESH(ソニー・インタラクティブエンタテインメント上海)やMicrosoftのブースは大きなブースではありましたが、目を惹くほどに派手なパフォーマンスは行われていませんでした。しかしブースには終始来客が溢れていて、新作ゲームにはどれも長蛇の列ができあがっていました。

 他のブースも同じです。あれこれ豪華な展示はたくさんありましたが、やはり来客がカメラをいちばん向けていたのは……新作ゲームの数々。阿里游戏の『刀剑兵器谱』に空中网の『装甲战争』、完美世界の『射雕英雄传手游』に騰訊の『初音未来:梦幻歌姬』と……、このChinaJoyが新しいゲームとの出会いの場になった人もたくさんいるでしょう。

 こうして改めて2017年のChinaJoyを振り返ってみると、このゲームショウが「テーマパーク」から「見本市」へと転換していく兆しは、大小さまざまな部分から感じられました。

 これまではお土産代わりにバラ撒かれていたはずのグッズ類も、新作ゲームの事前登録やゲームの試遊回数によって配布される形式が主流になりました。ステージ上に美人コンパニオンが並んでいるブースも以前と比べて数が少なくなり、そもそもステージ前にもカメラマンではなくお客さんたちが陣取っているなと思ったことも印象に残っています。

 しかしそれでもなお、この場所から人は減ってはいません。むしろ今年はさらに来客数が増え、34万人という史上最多数を記録したそうです。派手で目を惹くパフォーマンスは以前より減っているにもかかわらず、ChinaJoyを訪れる人々は変わらず増え続けている。

 それは裏を返せば……、ゲームそのものを目当てにChinaJoyを訪れる人々が、年々増えている良い証拠でもあると思うのです。
 ゲームそのものの魅力が、美人のコンパニオンよりも集客力を持つようになった。……ちょっと、都合が良すぎる解釈かもしれませんが。

いましか見られない中国の姿

 いかがだったでしょう。「ChinaJoyはとにかく人が多くて暑い」、「ChinaJoyには見たこともない中国産のガジェットが並んでいる」、「ChinaJoyでは中国で大人気のe-Sportsの対戦会が行われている」、「ChinaJoyでは日本でも遊べるようになって欲しい中国のゲームがたくさん展示されている」、そしてもちろん……「ChinaJoyにはもう、露出度の高いコンパニオンがほとんどいない」。
 皆さんがこれまで想像していたChinaJoyと、現実のChinaJoyにはどの程度の差があったでしょうか。

 インターネットの発展に伴い、情報は誰もが発信できるようになり、情報はどこでも手に入るようになりました。その結果として、情報発信の場である「見本市」としてのゲームショウの価値は年々低下していると言われています。
 20年以上もの歴史を誇る見本市であるE3も、2017年からは一般来場者にも門戸を開放し、見本市からユーザーイベントへの大きな転換を図りました。東京ゲームショウ、gamescom、G-Star……。ゲームショウは世界に数あれど、どのショウも同じ問題を抱えていることは間違いありません。

 しかし世界でもっとも「パフォーマンス」に特化したゲームショウだったChinaJoyは、むしろいまこのタイミングで、世界に情報を発信する「見本市」への転換期を迎えようとしています。中国発のゲームに見るべき作品が増えたからなのか、世界中の目が成長する中国市場へ向くようになったからなのか、あるいは……ゲームという娯楽が中国社会に浸透した結果、どんなパフォーマンスもゲームの面白さには勝てなくなってしまったのか。理由はあまりに多岐にわたりますし、ここでは断定するような物言いはやめておきましょう。

 皆さんも一度、ChinaJoyまで遊びに来てみませんか。ここはとにかく人が多くて暑いゲームショウですが、見たこともないような最先端のガジェットがいくつも並んでいて、中国で大人気のe-Sportsの対戦会が盛大に行われていて、日本でも遊べるようになって欲しい新作ゲームがたくさん展示されていて、そしてもちろん……ゲームを真剣に遊ぶことの邪魔にならない程度に、笑顔の魅力的なコンパニオンさんたちが皆さんを待ってくれていますから。

 何より、ゲームは自分の手で遊んでみなければ楽しさがわからない。ChinaJoyを訪れている人々の大半は、そんな理由でわざわざ上海まで足を運んでいるんでしょうしね。(了)

 赤野氏が書くテキストの特徴は、ふたつある。ひとつはディティールの積み重ねだ。テキスト中のちょっとした事実でも綿密に裏付けを取ることで、氏はあたかも現実の延長線上にあるかのように架空の話を語り、そうすることで読み手はフィクションとノンフィクションの狭間を境目なく漂い、気持ちの置きどころを探しあぐね、結果として妙なグルーブ、あるいは浮遊感を得ることになる。

 もうひとつの特徴は、あまねくゲームに対する赤野氏の惜しみない愛情だ。たとえ誰がどんな意図で作ったのかわからないようなゲームであっても、「すべてのゲームは愛されるために生まれてきた」と信じて疑わないメンタリティが氏のテキストの底には流れている。初めは冗談か何かかと思って、ヒネたスタンスで氏の言説に耳を傾けたとしても、読み手はいつしか氏がキラキラした眼差しでゲームを圧倒的に肯定する状況を前にして、自分の曇った心を恥じ入る気にさえなってくる。

 「僕はレビューしか書けませんから」とうそぶく赤野氏だが、そうした特徴は、今回のようなノンフィクションに基づいたリポートでも顕在で、ChinaJoyで出遭ったすべての展示に興奮し、すべてのゲームに目を輝かせている氏の姿が見えてきたことと思う。実際、同行していた記者はそうした赤野氏の様子を目の当たりにしてきた。そしてこの近くて遠い国中国を、中国のゲームを、こうして赤野氏というフィルターを通すことで、行く以前より好きになって帰ってきた。

 さて、電ファミでは、遠からず赤野氏によるリポート第2弾をお届けする予定。上海の街やその郊外を脚を棒にして練り歩き、ネットカフェ、ゲームセンター、合法的なゲームショップ、そうでないところなど、さまざまなゲームが遊ばれている/売られている情景を見てきた。これが赤野氏というフィルターを通すとどのような光景として描き出されるのか。乞うご期待。

【プレゼントのお知らせ】

 

 赤野氏(@KgPravda) の直筆サイン&イラスト入り『The video game with no name』を抽選で5名様にプレゼントいたします(ちなみに5冊には、赤野氏が描いたそれぞれ別のイラストが!)。

 

 

 詳しい応募方法は電ファミニコゲーマーの公式ツイッター(@denfaminicogame)をご覧ください。ご応募お待ちしております!(書籍提供:KADOKAWA)

【あわせて読みたい】

 

【対談:「ゲームキッズ」渡辺浩弐×赤野工作】「そのゲームが面白くないなら、遊んでるヤツがつまらない」ゲームレビューの文学性とメタフィクションの可能性とは?

 電ファミでは、本稿の著者・赤野工作氏と、作家の渡辺浩弐氏の対談も掲載中。未来のゲーム像をSFとして描く二人が語る、メタフィクションとしてのゲーム語り、そして現実と虚構が入り交じるメタフィクションが持つ魅力とは?

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