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まさかの裏設定もたっぷり聞けた! ネタバレ全開の『十三機兵防衛圏』プレミアム・トークイベントをレポート

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 アトラスは、2月16日にPS4向けドラマチックアドベンチャーゲーム『十三機兵防衛圏』のプレミアム・トークイベントを都内の「TUNNEL TOKYO」で開催した。今回のイベントは、先着購入特典として付属していた参加応募券で応募したファンの中から、抽選で選ばれた130名を招待して行われたものだ。

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 当日はあいにくの雨模様だったが、それを吹き飛ばすほどの熱量で会場には多くのファンが集結。一足お先に購入できるグッズに列を作ったり、声優陣のサイン色紙を写真に収めていたりと、開演前の雰囲気を楽しんでいるようだった。

 ちなみに本イベントは“ネタバレ全解禁”という趣旨で開催されたものだ。どちらかというと、裏設定などファンが知りたかった話しがいろいろと聞けたという感じで、ゲーム自体の面白さが半減してしまうというものではない。
 しかし、ストーリーに関する話題も数多く出たので、本編クリア後推奨の内容となっている。

取材・文/高島おしゃむ


関ヶ原編のラストはSF史に残る名シーンだ

 オープニングは、サプライズゲストとして伊藤フウさんが登場。本作を象徴する楽曲「Seaside Vacation」を披露するシークレットライブから幕開けした。
 歌唱後、収録時のエピソードについて聞かれた伊藤さん。「80年代のアイドル風」をイメージして歌ってほしいといわれたそうだ。

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写真左から伊藤フウさんと、司会を務める声優の磯村知美さん。

 続いて、本日のゲストである『十三機兵防衛圏』声優陣から、鷹宮由貴役の小清水亜美さんと比治山隆俊役の石井隆之さん、沖野司役の田村睦心さん、そしてコメンテーターとして声優の本宮佳奈さんと作家の渡辺浩弐さんが登壇。
 「『十三機兵防衛圏』愛好編-FAVORITE-」と題して、ゲスト陣が選んだお気に入りのシーンを紹介するコーナーが行われた。

 小清水さんが選んだのは「綱口くんとのバイクのシーン」である。バイクのシーン自体はいくつかあったが、ここでは網口愁に対して鷹宮由貴が本音で話しており、大事なシーンだと感じたそうだ。

 ちなみに下の名前を呼び合うというのも、本作では重要な要素となっている。いつ登場人物が下の名前で呼び合うようになるか、気にしながらプレイした人も多いことだろう。
 三浦慶太郎は硬派なタイプだが、なっちゃん(南奈津乃)のことを、はじめから「奈津乃さん」と下の名前で呼んでいた。これに対してゲスト陣からは、「やり手ですよ」という意見も飛び出していた。

 「比治山くんが椅子に拘束されてて沖野くんにめちゃくちゃにされてるシーン」を選んだのは、やはり石井さんだ。ちなみにちょっと独特な言い回しのシーン紹介になっているが、こちらは石井さんがアンケートで書いたものがそのままの形で使われていたという。

 シーンの映像に合わせて「もっとだ!」など、合いの手を入れるようにリアルタイムに台詞を重ねていく石井さん。そのたびに、会場内から大きな笑いが起きていた。
 ここから話題が広がり、出演陣から夜版として「ひじおき」(比治山隆俊と沖野司)限定のイベントをロフトプラスワンでやりたいという話しも出ていた。

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写真左2番目から、小清水亜美さん、石井隆之さん、田村睦心さん、本宮佳奈さん、渡辺浩弐さん。

 お次も「ひじおき」絡みのシーンだが、田村さんが選んだのが「焼きそばパン半分このシーン」だ。田村さんは、そこまで比治山はからかう対象で、好意はさほどでもないと思いながら演じていたそうだが、この焼きそばパンを半分に分けるシーンで、その優しさから「好きになったな」と感じたという。

 渡辺さんが選んだのは、関ヶ原が冬坂を受け入れるという重要な場面の「関ヶ原編の最後のシーン」だ。関ヶ原は、自分自身の正体がわからず苦しんでいて、過去の自分からメッセージが届き、それに命令される形で時間を超えて自分を探していく。
 それに対する冬坂五百里は、ひと目惚れという自分の直感だけを信じて関ヶ原を追いかけていく。自分の内面を探し続ける関ケ原と自分以外の存在を追い求める冬坂。その対比としての関係性がすごく好きだと渡辺さんはいう。この場面で関ヶ原は、過去の自分と決別するという決断を行い、冬坂という存在と向き合うことを決心する。これは、本当の自分は過去でも未来でもない、今ここにいる自分自身なのだというメッセージでもあるのだ。そのためSF的にも深く、かつロマンチックなシーンとなっている。渡辺さんは、「SFの歴史に残る名シーン」だと熱く語っていた。

 本宮さんが選んだのは、「沖野くんのラブレター回想シーン」である。手紙を渡すシーンで、沖野は冗談に見せかけて「好き」だと告白している。
 石井さんは、そのシーンを見る度に渡り廊下で素直に気持ちを受け止められなかったことに罪悪感を覚えると語っていた。また、本宮さんはその後に控える機兵機動のシーンもかっこよくて好きだという。なお、機兵起動シーンの中でも三浦慶太郎がお気に入りで、おでこに当てた手の動きが横のままでなく、下におろす動作をとっているところに感動しているようだった。

キャラクターごとに作られた時系列リストの中味を披露

 続いて、開発資料を紹介する「これが聖典だ!」のコーナーに。今回のイベント会場内には、エクセルで作られた時系列リストがずらりと貼られていた。
 かなり細かい内容になっており、A3用紙で28枚にもなるという膨大なリストである。

 横に並べられた列が、13人の主人公を含む、本作の物語にかかわるキャラクター名が表記されており、縦に並べられた行が上から起点として起きていった出来事として並べられている。A3用紙28ページ分の終点となる一番右の用紙の一番下にある出来事が「最終決戦」という着地となっていた。

 シナリオを手がけた神谷盛治氏も最終的には、この聖典を頼りにしていたとのことだが、一目して、さもありなん、と感服した。
 本作はさまざまな時代を越えて、物語が紡がれる構成であるため、単に「時系列」順に並べただけでは、出来事の因果関係がわからない。各キャラクターの行動原理に筋が通っているのか、ある登場人物が起こした出来事の裏で、他の人物が矛盾する行動をとっていないか、いてはいけない場所にいていないか、等々、それらをひとつひとつ丁寧に紡いでいった、まるでキャラクターのダイヤグラムのごとき資料である。
 続編は作れない、との発言を残念に思っていたが、この資料を前にしては、おいそれと手をつけることのできない物語であることを思い知らされたのである。

 なお、リリース前にも「柴久太の声優さんは上田燿司さんでしょ? 上田さんが高校生役を演じるなんてなにかあるに違いない」という話題が声優陣の間でも出ていた、とのこと。最後までプレイした後に他の配役も踏まえ振り返ると、可愛いところもありミステリアスなところもあり、少し恐いところもありと、これは上田さんにしか演じられない、と納得の起用だったという。

ヴァニラウェアの神谷盛治氏がファンの疑問にズバリ回答

 続いて「教えて!ヴァニラウェアさん」と題して、事前にファンから送られた質問に関して、ヴァニラウェアの神谷盛治氏からの回答を出演者たちが代読するというコーナーが行われた。こちらではその一部をQ&Aという形でピックアップしてご紹介していく。

──エピローグで郷登が東雲のことを、諒子と下の名前で呼んでいるのはそういう間柄であることを示しているのか。そもそも東雲の中学時代に、郷登と交際していた理由は?

神谷氏:
 「エンディング後につきましては、皆さんそれぞれのご想像を正解とさせてください。それこそが無限の可能性です」

 これに合わせて、郷登と東雲が分かれた経緯について書かれたプロットも別紙で来場者に配布されていた。

──「15人が共有するシミュレーションについて」。クローンの成長に合わせて、0歳から積み重ね、リセットのタイミングでクローンも1から生成し直すのか、あるいは、年齢に関係なくユニバーサルコントロールが作り出す設定の中で数年間を経験するのか。シミュレーション内の体感時間は現実世界と同じなのか?

神谷氏:
 「シミュレーションを見ている時間は実時間です。物理的に存在する肉体は、経年劣化、老化するので、リセットのたびに作り直しです。肉体はナノマシンにより、分解され続けたという、実は恐ろしい物語です。僕の肉体も経年50歳で劣化しています

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──主人公たちや周囲のキャラクターの中で、性格やストーリーがもっとも難産だったものは? 逆に、作りやすかったキャラクターは?

神谷氏:
 「作るのが大変だったのは、最初に着手した鞍部編です。システム自体を模索していましたから。東雲先輩編も、薬絡みの状態変化を僕がスクリプトで作っていたので、制御が大変でした。鷹宮編も、探索構造とキーワード管理が……それをいうなら、緒方編の電車管理が。思い返せば、みんな大変でしたね。一番早くストレートに作れたのは、網口編です。はしょりすぎて、ちょっと手抜きだったかなと不安だったのは比治山編。そして、ネガティブ気味な薬師寺編は、作っているときに気分もどんよりしていました。作っていて楽しかったのは、毒舌のしっぽ。調子のいい柴くんです」

──2188年に、東雲諒子が井田鉄也に裏切られて人類に絶望してダイモスコードを埋め込むのはわかるが、井田はどんな裏切りをしたのか?

神谷氏:
 「作中では、井田鉄也は3人の人格で分かれます。2188年の井田は、優秀だがプレイボーイで残酷にもなることができる男だったと思われます。仲間たちが醜く殺し合う最悪の状況の中で、最後はせめてと東雲は静かに自殺することを望んだのかもしれません。しかし、井田はおそらくそれを望んでいませんでした。永遠の別れとなる彼の最後のセリフが、彼女を奈落に落としあの行動に導く汚い言葉だった可能性が高いです」

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──地球を滅ぼしたナノマシン汚染とは? 生まれ変わりを目的とした犯罪など、人の倫理観の崩壊から文明が崩壊したのか? 東雲の頭痛&記憶の混濁のように、脳に深刻なダメージを与えることで廃人になる物理的なものなのか? どういった経緯で人類は滅びたのか。また、新人類となる15人のクローンにナノマシンを埋め込む危険性はないのか?

神谷氏:
 「150年以上も変われば、倫理観も少しは違うでしょうが、作中で地球が滅んだ原因は流行病のように広がる攻撃的なナノマシンです。ウィルスのプロセスを模したナノマシンなら、対抗手段より早く進化し続けるだけで、種を滅ぼすことができます。生身の15人は、ナノマシン・インナーロシターを保持していますし、箱船計画最終工程の必須技術です。ナノマシンも道具に過ぎず今のネットやエネルギー事情と同様に、すべては使い方次第ではないでしょうか。ちなみに、インナーロシターの元ネタは1955年に制作された映画『宇宙水爆戦』(原題:This Island Earth)に出てくる、宇宙人の交信装置インターロシュターです。名前ついでにもうひとつ。ユニバーサルコントロールの元ネタは、竹宮惠子先生の漫画『地球へ…』です」

──16年間のシミュレーションが始まるときに、人々の人格や初期設定は何を元に用意されたのか?

神谷氏:
 「人工知能の権威である、2188年の鞍部玉緒さんが、夜なべして編み上げた600万人のデータ設定です」

──比治山(一周前)は、AIになった後、どの機兵に組み込まれたのか? そして、その後どうなったのか?

神谷氏:
 「19番機兵に組み込まれていたAIは、前周の比治山のAIです。これもまた語れなかった裏設定になりますが、残念ながらカットされた19番機、比治山最後のシーンというのがありました。AIに再構築された比治山は、そもそも記憶と人格の損傷が激しく、元々不安定な存在でした。それが、機兵汚染事件をきっかけに様々な不具合が生じ、自らを消去するよう沖野に懇願するというシーンです。もうひとりの俺のことはいい。戦場に出る慶太郎を守ってやってくれと、彼の最後の願いは今周回の三浦が19番機に乗ることで叶えられるという、熱い展開の予定でした」

──薬師寺恵の料理が得意な理由は、家庭環境によるものなのか? また、恵のどこがのほほん娘なのか?

神谷氏:
 「裏設定ですが、薬師寺家はシングルマザーで母はキャリアウーマン。娘をしっかりと育てつつも、仕事仕事でスキンシップが少なめであるため、恵は奥手な性格に。家事全般は恵が行っていたため、料理はお手の物でした。作中では覚醒後しかお見せできなくて、申し訳ありません」

──不真面目だった沖野は、やはり親子関係などが原因でひねくれ気味になってしまったのか?

神谷氏:
 「2188年の沖野は、政府主導の人口調整政策にて優秀な遺伝子を元に作られた、いわゆるデザインベイビーです。幼い頃は里親に、その後は施設で育ちました。世界に役立つように人格教育が施されており、その反動で性格は少し歪んでいます。その物語は、僕の頭の中では竹宮惠子さんの漫画っぽいイメージですね」

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──緒方父は、なぜ自分のクローンではなく稔二のクローンの中に自分の人格を再現するように仕向けたのか?

神谷氏:
 「緒方憲吾は、自らの意志でAIになったのではなく、よりどころを失った森村がAI化。AIが箱船計画での復活を考えました。そのため、肉体もDNA情報もすでにありません」

──ドロイドの技術を使って生み出された人格やクローンは、別のセクターに移動したときにユニバーサルコントロールの排除対象にならないのか?

神谷氏:
 「ユニバーサルコントロールは、スタッフ(人間)が追加で作り出した特別なもの以外を管轄しています。セクター0に移されたAIもスタッフが作ったものという認識であり、スタッフのIDを偽装して作ったドロイドも“世界”とは別の特別なものとして管轄外になります。ダイモスも機兵も同様に管轄外なのです。」

──比治山の好物はなぜ焼きそばパンになったのか?

神谷氏:
 「比治山のイメージ元となったのが当初、鈴宮和由先生の漫画『とってもひじかた君』の土方歳三、そして亜月裕先生の漫画『伊賀野カバ丸』のカバ丸でした。カバ丸の好物が焼きそばだったので、比治山もそうしようと思ったのですが…、システム上、片手で食べられるものしか表現できないので、「焼きそばパン」になった経緯があります。ところで、最近僕は会う人にやたらと「焼きそばパン」を頂きます。こんなことなら、自分ではとても手が出せないような高級料理にしておけばよかったと思ったりしました」

──みんな前向きな理由でボロボロになった東雲先輩の登場の理由は、井田のため。その井田は、最後まで東雲にした事への反省はなし。
 網口は「井田の記憶が」とあんまりな理由で東雲にモーションをかける。そして、なにより井田への思いから様々な罪を犯しているなど、彼女に関しては見ているのが痛々しく辛かった。エンディングの東雲は、井田のことを思っているのか?

神谷氏:
 「本編が終わった後で、すべての真実を知った井田が、因幡にまでさとされては反省するほかなく、その償いもあってのセクターの復旧だと思います。網口も井田に翻弄された彼女を記憶で知っているので哀れに思ったのでしょうが、何でも自己解決しようとする東雲先輩には実はまったくそんなものは必要ないのです。井田への思いは、機兵絡みでしか記憶にない東雲先輩。大きく変わった長い生活の中で、ある意味異様な推進力を持つ彼女が、同じ場所にとどまっているとは到底思えませんが、あなたはどう思います?」

 これにて質問コーナーは終わりだが、まだまだ質問への回答は残っているため、別途公開される予定だ。

 サイン入りグッズなどが当たる抽選会が行われた後、再び伊藤フウさんが登場。ラストは全員スタンド状態&手拍子の中で「Seaside Vacation」を歌い、締めくくった。
 全般的に温かい雰囲気の中で進んでいった今回のイベント。あらためて作品自体の完成度の高さとファンの思いが伝わってくる内容であった。

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 ゲームをプレイしていて、ここまでの感想を抱くタイトルは、数年に一度あるかないかだと思うが、本作は、明らかに“そういう類のなにか”である。よく出来ているとか、ストーリーが良いとか、単純にそういった言葉だけでは片付けられないなにかが、本作をプレイしていると、ひしひしと感じられる。

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