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フリーランスのクリエイターがコロナ禍を乗り切るため、国のあらゆる補助金・給付金制度を活用してみた──日本初、ライトノベルの出版に持続化補助金が適用?

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 フリーランスという働き方がある。
 特定の組織や会社に属さず、個人の裁量で仕事をする働き方だ。その数は今や1000万人、働く人の5人に1人がフリーランスというデータもある。

 ゲーム業界も決して例外ではなく、今やイラストレーターや筆者のようなゲームシナリオライターなど、多くのスタッフが直接的・間接的にフリーランスとしてゲーム開発に加わっている。

 フリーランスは個人の裁量で自由に仕事ができる反面、クライアントの経営状況への依存度が高く、不況下では仕事が激減しやすい。
 そして今、全世界がコロナ禍の脅威にさらされている。新型コロナウイルス感染者数の動向は未だ目が離せないし、外出自粛の影響で国内外の経済は大きく悪化している。今年、仕事が激減したフリーランスの例など枚挙に暇がないだろう。

 記事の性質上、ここで私事を差し挟むことをご容赦頂きたいが、筆者もその一人だ。まず筆者の職業はライターであり、主な収入源はゲームシナリオライティングと本(小説や実用書)の執筆による原稿料や印税ということになる。

 ここ数年は子育てのため仕事量を減らしていたが、その子供も今年から幼稚園に通う予定だったので、この春から仕事量を増やす予定だった。ところが、非常事態宣言に伴い幼稚園は休園。予定が大きく狂ってしまった。

 また、以前こちらの記事でも書かせて頂いたが、幸いなことにゲームシナリオ業界は昨今隆盛であり、筆者もあるゲーム開発案件に一年以上前から参加させて頂いていた。世界観設定にシナリオ管理、ライター集めにイラストレーター推薦と、気合いを入れまくっていた案件だ。

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 広告費は縮小せざるを得ないが、クリエイターに支払うPV制作費だけは削れなかった。その甲斐のあるクオリティにはなったと思う。よければ見てほしい。

 なお筆者の新刊『人生∞周目(インフィニティ)の精霊使い 無限の歴史で修行した元・凡人は世界を覆す』は10月17日(つまり本日)にファンタジア文庫より発売される。

フリーランスのクリエイターがコロナ禍を乗り切るため、国のあらゆる補助金・給付金制度を活用してみた──日本初、ライトノベルの出版に持続化補助金が適用?_010
(画像は人生∞周目の精霊使い 無限の歴史で修行した元・凡人は世界を覆す (ファンタジア文庫) | 師走 トオル, ミユキ ルリア | Amazonより)

 この際、別に広く「買ってください」と申し上げるつもりはない。スマートフォンを媒介としたいわゆるリッチメディア隆盛のこの時代、小説というジャンルで張り合うのは容易ではない。

 ただ「こういう物語が好き」という人にとって、小説は依然として楽しめる娯楽であることは間違いない。本書は「過去に転移する力を手に入れた主人公が、幼い頃の自分を育てることで最強の力を手に入れる。そして生まれ育った孤児院を守るため、最強の力で世界をひっくり返す」という内容であり、「そういう話が好き」という方に情報が届けばそれでよく、そのために補助金を活用して大きく宣伝する予定だった

 残念なことに、筆者の目論見は採択者発表の延期というアクシデントにより失敗しつつある。読者諸氏におかれては、もし補助金の活用を考えているのなら、こういったイレギュラーの可能性を考え、できるだけ早く申請しておくべきだ。幸い、一度採択さえされてしまえば、補助金を使用できる期間はかなり長く設定できる。

 なお<コロナ特別対応型>最後の募集となる第5回受け付け分の締切りは12月10日だ。恐らく前回の例からいって応募者は殺到するだろうし、商工会・商工会議所の協力がいることを考えれば、締切り直前の応募は不可能と考えた方がいい。行動するなら今だ。

終わりに:世界的に見ても手厚い制度を知り、活用しよう

 日本のコロナウイルス対策の是非について、本記事で触れるつもりはない。だがことフリーランスへの支援策という点に限っては、世界的に見ても手厚いと言われている。

 もっとも、制度を知り、利用しなければどんな手厚い政策もなんの意味もない。特に国の政策はともかく、地方自治体の制度は信じられないほど知られていない。この記事が少しでもクリエイター系フリーランスの参考になれば幸いだ。

 最後にまったくの余談だが、作家が自分の本を出す度に数十万円の宣伝広告費の自己負担が必要になる未来になれば、出版業界の状況は相当に危機的と言えるだろう。だが今はコロナ禍という別種の危機の最中である。作家ではなく個人事業主という観点から考えれば、今年だけは例外と考えて行動すべきだと思う。

 特に、個人事業主には持続化給付金があった。その用途は一切制限されていない。生活費に充てる、仕事の損失補填、営業費用、いっそ気分転換の娯楽費に充てる、すべて個人の自由だ。

 そこで今回、筆者は『持続化給付金』の一部と『小規模事業者持続化補助金<コロナウイルス対応型>』を組み合わせる方法を選択してみたというだけの話だ。

 結果的に計画は大きな修正を迫られたし、宣伝効果についてはやってみないと分からない部分もある。だがPV動画製作にあたっては、同じ立場のクリエイター系フリーランスに充分な報酬を支払うこともできた。
 給付金や補助金の使い方を知ってさえいえれば、このようなことも可能だということは覚えておいて損はないだろう。

本記事を執筆するにあたって、次の方々にご協力・ご監修いただきました。この場を借りて深く御礼申し上げます。


・監修:税理士 上野将史


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著者
フリーランスのクリエイターがコロナ禍を乗り切るため、国のあらゆる補助金・給付金制度を活用してみた──日本初、ライトノベルの出版に持続化補助金が適用?_011
師走トオル
作家、ゲームシナリオライター。
プログラマー、プランナーとしてゲーム業界に勤務した後、2003年に法廷ミステリー『タクティカル・ジャッジメント』にて富士見ヤングミステリー小説大賞準入選。同作にて作家デビュー。
主な著作に「火の国、風の国物語(富士見ファンタジア文庫)」「僕と彼女のゲーム戦争(電撃文庫)」「バイオハザード7 レジデントイービルドキュメントファイル」「フリーランスが知らないと損する お金と法律のはなし」など。

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