株式会社ポケモンが、7月17日よりよみうりランド内にオープンするネイチャーアドベンチャー『Pokémon WONDER(ポケモンワンダー)』。そのオープンに先駆けて、メディア向け発表会&先行体験会が7月1日に開催された。本稿ではその中から、主に先行体験会の模様を中心にレポートする。
取材・文/高島おしゃむ
この『Pokémon WONDER』は、大自然に囲まれたよみうりランドだからこそ実現できた企画ともいえる。同施設には、20年ほどまったく使われていなかった、広さ4500㎡ほどの森がある。
まさに大自然といったエリアが広がっているのだが、そこを最大限に活用してデジタルアイテムなどを使わずにリアルにポケモン探しを楽しむというのが、本イベントの醍醐味である。
初代『ポケットモンスター 赤・緑』が発売されたのは、今から25年前だ。町田市で生まれ育った田尻氏は、子供の頃森のような自然環境の中で昆虫採集を楽しんでいた。その体験から生まれたのが『ポケモン』だ。
ポケモン代表取締役の石原恒和氏は、田尻智氏の原体験に最も近いものを参加者に体験してもらえるのが、『Pokémon WONDER』といえるかもしれないと語った。
本イベントを企画・演出を務めたSIX INC.の本山敬一氏によると、『Pokémon WONDER』のゴールは、ポケモンを通じて子供たちが自然に触れて、目一杯遊んでもらうことだという。
自然に興味はあるが、一歩ためらってしまう子供が増えてきている。そうした子供たちに、どうやって自然の中に飛び込んでもらうのかが本イベントの最大の課題だった。もっとも重視したのが、ポケモンをどこにどのように隠すかということで、何が何でも自然に飛び込ませるような仕掛けを考えている。
謎解きクリエイターとして知られる、RIDDLER代表取締役の松丸亮吾氏は、これまでさまざまなポケモン関連のイベントを手掛けてきている。しかしこれまで作ってきた謎解きは、いずれも頭を捻ったりヒラメキで答えたりする爽快感はあるものの、どうしても出題者の存在がいて、質問を投げかけるようなスタイルになっていた。
そこで、もっと高次元の自分で考えることを楽しめるようにしたいとという想いを石原恒和氏に伝えたのがきかっけで、今回の企画がスタートしている。
今回の企画は、場所を提供しているよみうりランドにとっても魅力を再発見してくれたという意味でも いい話だった。よみうりランドの曽原俊雄氏によると、同氏が数十年間この仕事に携わってきたなかで、イベントで使われたことはほとんどなかったエリアが採用されている。
それが、『ポケモン』という強力なコンテンツによって活用されることにより、よみうりランド自体の可能性も引き出してくれたというわけだ。
霧の演出で非日常への冒険がスタート
やや前段が長くなってしまったが、早速イベントの内容をご紹介していこう。実際の先行体験会では、諸々の都合により順番が前後していたが、今回はわかりやすいように体験する流れに合わせた形にまとめている。
まず、イベントの体験者が訪れる場所が、「リサーチャーロビー」と呼ばれる建物だ。ここは最初にオリエンテーションを受ける場所になっており、本イベントの概要をアニメーションで紹介してくれる。
参加者の目的は、ポケモンリサーチャーとして森の中に隠れているポケモンを発見することだ。コースは、「古代の石垣コース」と「ささやきの竹林コース」の2種類が用意されており、それぞれ合わせて50種類以上のポケモンがあちらこちらに隠されている。すべてのコースを回るには、少なくとも2回はこちらのイベントに参加する必要がある。
ちなみに、今回は「古代の石垣コース」をメインにエリアの探索が行われた。
オリエンテーション終了後、最初に向かうエリアは「ワンダーフィールド」だ。実は、そこに向かうまでの間に、いきなり非日常的な体験がスタートする。なんと道を歩いて行くと、突然霧が吹き出してくるのだ。
これが濃霧というにはあまりにも濃く、目の前だけではなく足元さえよく見えないレベルとなっている。しかしこのドキドキ感が、冒険に出かけるということに対してのスイッチを入れてくれるようだった。ちなみに、この霧の演出は、「霧の彫刻家」として知られる中谷芙二子氏が監修を務めたものだそうだ。
「ワンダーフィールド」を探索する前に、参加者には「01」と書かれた冊子が渡される。その中には、探索するエリアの地図と裏側にクレス博士がまとめた調査ノートが書かれている。これらをヒントに、実際のエリアでポケモン探しがスタートする。
最初に訪れる「ワンダーフィールド」は、いわばこのイベントのチュートリアル的な場所だ。まずはこちらで第1の調査を行い、与えられた制限時間内でできる限りポケモンを見つけ出していく。参加者にはデジカメも貸し出されるので、そちらで見つけたポケモンをどんどん写真に収めていくこともできる。
このエリアだけは、「古代の石垣コース」と「ささやきの竹林コース」とも共通になっており、これ以降別ルートを探索していくという流れだ。「ワンダーフィールド」の探索が終わると、新たに「02」と書かれた冊子が渡され、同様にエリアを探索していく。02が終わったら03の冊子が渡され、別のエリアを探索していくといった感じである。
意外なところに隠れているポケモンたち
「ワンダーフィールド」の近くにあるのが、「先人の書斎」と呼ばれる古びた建物だ。ここは、クレソ博士のおばあちゃんが初めて森に入ったときに使用していた書斎という設定だ。
こちらもポケモンを探すエリアとなっているのだが、建物の中にはさまざまなものが置かれており、好奇心をかき立ててくれるような場所になっている。
「先人の書斎」の近くにあるもうひとつの探索エリアが「こもれびあきち」である。こちらには、探索中にキャンプを張っていた場所なのか、焚火の後やテントも設置されていた。このエリア付近で発見できるポケモンが、キャタピーとタネボーだ。
事前にどんなスタイルなのか知っている状態であっても、実際に自然の風景の中からポケモンを見つけ出すのはなかなか難しい。しかし、徐々に慣れていくことで目が鋭くなっていくのか、人によってはいろいろな場所に隠れているポケモンをすぐに見つけ出せるかもしれない。
探索エリアは元々あったものを最大限活用
「古代の石垣コース」には含まれていないが、「ささやきの竹林コース」に含まれている探索エリアの「ささやきの竹林」も体験することができた。この辺りは写真映えしそうな、見事な竹林になっているのだが、このイベント用に追加したものは3本程度だという。
ひとつ感心させられたポイントは、こうしたエリアに向かう途中にもあちらこちらにスピーカーが設置されており、不思議な音が流されていることだ。その中には鳥の鳴き声なども含まれているのだが、このスピーカーから流れる鳥の声を聞いて本物の鳥が反応するような効果も狙っているのだという。
最後に紹介する探索エリアは、「古代の石垣」だ。その名の通り、遺跡のような石垣が設置された場所となっているのだが、こちらではミノムッチ、トランセル、モクローといったポケモンたちが潜んでいた。
3つのエリアすべてで調査が終わると、最後にクレス博士に調査報告を行い、イベントは終了となる。イベント終了時には探索中に使用した冊子とは別に、表紙に厚紙を使用した冊子をもらうことができる。
自然ならではのトラブルも?
基本的に自然の中を歩くため、今回の雨が降っているようなときは靴も泥だらけになる。場所によっては水たまりやぬかるんでいるようなところもあるのだが、そうしたことも含めて自然をリアルに体験できるということだろう。
また、今回の体験会のように、天候によっては体験できないエリアも出てくる可能性も出てくる。このあたりの対応をどうするのかいろいろと考えているそうだが、そうしたことも含めて自然を舞台にしたイベントならではの体験といえるかもしれない。
もうひとつ、天候とは違った意味で大自然の影響を受けてしまうこともあるようだ。我々のグループを先導してくれた本山敬一氏によると、自然の中に設置したポケモンたちがタヌキやアリなどの自然の生き物たちに食べられてしまうことがあるのだという。
こちらも、自然な素材にこだわって作った結果ではあるが、そうしたトラブルが起きにくいように素材も選んでいるとのこと。
各探索エリアの移動はそれなりに歩く必要があるため、ちょっとしたトラッキング気分も味わえることができる。都会の生活にすっかり慣れてしまった子供や大人たちが、家族や仲間たちと一緒に探索することで忘れられない思い出作りができることは間違いないだろう。
開催は不定期となっているが、できれば夏の間にこの最高な体験を味わって欲しいイベントである。