郷愁すら感じさせる音楽とシンオウ地方の雰囲気
シンオウ地方最大の持ち味と言えば、やはり北海道をモチーフにしているが故のどことなく落ち着きがあって美しい雪国の風景だろう。
ひでんわざを使うとどこからともなく現れる野生のポケモンも、やたらめったら強い敵も何もかも変わっていて「俺は本当はダイヤモンド・パールなど遊んでいなかったのでは…?」と自己不信に陥ってしまいそうではあったが、この風景は当時をそのまま、かつ新しく表現してくれている。
私がダイパで最もお気に入りの音楽「209ばんどうろ」は、そんなシンオウ地方特有の空気感を楽曲ひとつだけで完璧に奏でている。鐘のような冷たくも爽やかな音色から始まり、冒険のワクワク感を明るく楽しいメロディラインで繋げたこの名曲は、たとえ何年経っても色褪せない。
進めれば進める程「こんなストーリーだったっけ…?」と思ってしまうぐらいダイパの内容を覚えていなかった私でも、この曲だけはどこか耳に焼き付いていた。
思い出という物は、記憶する物ではなく焼き付く物なのかもしれない。
別に私は北海道で生まれた訳でもシンオウ地方で生まれた訳でもないのに、この音楽とこの風景にどこか「郷愁」に近しい何かを感じてしまう。私が生まれた頃から常に傍らにあり続けたポケットモンスターシリーズであるが故に巻き起こるこの感情は一体どうしたらいいのだろうか。
このぼんやりとした「良さ」を言葉にしてしまった瞬間、これはキッサキの雪のように溶けてなくなってしまうような気がするので、私の心の中にしまっておく事にする。
温故知新の箱庭グラフィック
今回のダイパリメイクが発表された際、最も賛否両論だった部分はやはり「グラフィックが微妙じゃないか?」という点だろう。
確かにまあ剣盾のあの等身高めのグラフィックに慣れた後、しかも待ちに待ったダイパリメイクでこんな感じになってしまった時の落胆は分からないでもないのだが、ちょっと待って欲しい。
何か…こう…思ったよりもちもちしてて可愛くないですか?
ど、どうしたらいい!?
この「何か動画とかで見ると微妙な気がするけど実際に動かすと思ったよりかわいいもちもち感」を、どう文章という媒体で表現したら良いんだ!?
上記の画像のマーズ(左側の赤髪の人)も、何かもちもちしててかわいくないですか?
この実際に動かさなければ伝わりづらい絶妙なグラフィックの良さは、先程の「シンオウ地方の雰囲気」とも密接に関わってくる。
DSで動かしていたあのダイヤモンド・パールの風景…いや、『ポケットモンスター ダイヤモンド・パール』というゲームそのものを取り巻く全体的な雰囲気こそがDSのあのグラフィックにあり、今回のやたら原作再現にこだわったダイパリメイクではあの「箱庭感」そのものを令和に蘇らせる方針だったのかもしれない。
だからこのグラフィックも、「ダイヤモンド・パールのリメイク」という議題に対する一つの解答なのだと私は思う。「懐古厨が作ったゲーム」などの手厳しい意見も分からなくはないが、ダイパリメイクは「こういう選択肢もポケットモンスターにはある」というマイルストーンにもなり得るのではないだろうか?
スクウェア・エニックスより発売されている『OCTOPATH TRAVELER』のHD-2Dのような、「懐かしさと新しさを両立したポケットモンスター」の可能性を、ダイパリメイクは追求したのかもしれない。
新しさを追求し古きを切り捨てる、昔を追い求め今を蔑ろにする、そのどちらかに絞る考え自体がもう古く、新旧両立された温故知新ゲームが世に出る事が、新時代のポケットモンスターの訪れを告げる………のか?
すいません。
ここまで言っといてなんですけど2等身のアカギは流石に面白いと思います。
お前だけは本当に変わらない、ポケッチ
いろいろなことが変わった令和のシンオウ地方、そんな中驚くほど変わっていなくて逆に安心すらしてしまうのがこのポケッチ。
これは元々DSの下画面に表示されていたオマケ機能のような物で、旅をするにつれ段々とアプリの数が増えていき最終的にその数何と「25種(プラチナ当時)」の機能が使えるようになる多機能腕時計だ!その内実際に使われる機能は2~3種程度なのがポケッチの醍醐味だぜ!!
幼少期に「暇つぶしにポケッチのお絵描き機能をいじくりまわしていたら実験に失敗したモンスターみたいなものが二度と消えなくなって絶望した」という体験をしている方、私とお友達になれるかもしれません。
「いや何も変わってないんだったらポケッチ紹介する必要なくない!?」と思うかもしれないけど本当に何も変わっていないとやっぱテンション上がるってもんじゃないですか!?
だってデジタル時計とアナログ時計が両方搭載されてて、デジタル時計が1番目の機能でアナログ時計が9番目の機能(私のポケッチはそうだったがもう少しアプリが増えると順番も変わるかもしれない)で肝心の機能の一覧を開く機能が無いから時計の表示切り替えるために8回ボタン連打しなきゃいけないんですよ!?ポケッチ…やっぱりお前最高にポケッチだぜ!
目立って変わった点があるとするならば、DSと違いSwitchは画面が一つしかないため放っておくと勝手に画面の右上にひょっこりポケッチが生えてくる所だろうか。
このびみょ~~~~~に邪魔な感じ、あまりにもポケッチ解釈が一致しすぎて逆に困るぐらいポケッチしている。ポケッチ様には、どうか素敵なアナタのままで居て欲しい。
相変わらず強すぎるシロナ
数々のダイパキッズを蹴散らしてきた最強の存在、シンオウ地方チャンピオンシロナ。
私はもうダイパの時点でこのシロナのあまりの強さに1ヶ月近く詰まされ続け、人生で初めての「挫折」を味わった。あの屈辱、2度と忘れはしない。
だから今回のダイパリメイクでは、14年かけて蓄えてきた俺のポケモン知識をこの女にぶつけると決めていたのです!もうあの時のように遅れは取らない!!
タイプ相性、技の効果、種族値、努力値、もう何もかも私はシロナの上を行っている!小学一年生のジスロマックとは違うのだよ!ジスロマックとは!!
は?????????????
これまで私がダイパリメイクを紹介してきて1つ思った事は、このゲームは「変わっているようで変わっていない」し、「変わっていないようで変わっている」のだ。
シロナの強さもまさにそう。ポケットモンスター ダイヤモンド・パール最後の門番として立ち続けるシロナの圧倒的な存在感。その理由は「強い」、ただそれのみ。
当時ダイパを遊びシロナにひたすら辛酸を舐めさせられ続けたキッズは十数年の時を経て、そこそこにポケモンというゲームの仕組みを理解して帰ってきた!!
シロナも十数年の時を経て、あの圧倒的な「強さ」は変わらないまま、しかし当時シロナの目の前で床を舐め続けたダイパキッズこそまんまとハマる大量の新技に賢いAIを引っ提げてまたしても私の目の前に現れた!!!
画像の敗北例は、シロナがルカリオに交代してきたので「どうせ格闘のインファイトが飛んでくるに違いない」と高を括ってギャラドスに交代した所、まさかのシロナのルカリオがわるだくみをおっぱじめて「特殊ルカリオ!?!?」とあまりの予想外の事態に転げ回っている内にあれよあれよと4タテされた時の1枚だ。いや、特殊ルカリオ!?!?!?
しかし私だって負ける訳には行かない!!!
またしてもこのまま1ヶ月シロナに負け続けたら私の14年間の人生は何だったのだ!?14年私がポケモンと歩んできた人生を肯定するため、私は私のためにシロナに打ち勝つ!!!
ヤ、ヤチェ持ってやがるッ!!!!!!
数多のダイパキッズの心を粉砕し、殿堂入り前のプレイヤーを阻む最後にして最強のゲートキーパー、その名はガブリアス。600族かつLv66という信じられない大怪獣唯一の突破口こそ、「ドラゴン・じめん」というタイプに4倍弱点を突けるこおりタイプの技だった。
しかし10年以上待たされたシロナが氷対策などしていないはずもないッ!
あの最強のガブリアスは一度だけ氷タイプの技の威力を弱めるヤチェのみを片手に地獄より舞い戻ったッ!!!
おいどうすんねんこれ!?いや今これリアルに締め切り5日前(シロナと激闘を繰り広げたのは11月24日)やぞ!?せっかく電ファミさんで書かしてもらうってのに「シロナ強すぎて締め切り間に合いませんでしたテヘ」で許される訳ないやろうが!?!?
小学一年生の私を一か月苦しめ続けたシロナ、またしても私の人生の岐路に立ちはだかると言うのかッ!!私のライター人生を潰すつもりか、我が人生の仇敵シロナッ!!!
………とまあ、今こうして記事を書いている時点で茶番も良い所ではありますけど、無事にシロナは倒せました。
実は小学一年生当時の私はあまりのシロナの倒せなさに絶望し、「友達からLv100のフローゼルを借りてぶちのめす」という達成感もクソもない禁忌に手を染めたのですが、今回14年振りのリベンジを果たす事が出来ました。ありがとうございます。
フローゼル貸してくれたりょうちゃん、見てるか!?俺がガタックゼクター【※6】のアゴ折っても許してくれるしLv100のフローゼルも貸してくれたりょうちゃん、俺自力でシロナ倒せたよ!!!
※6「ガタックゼクター」
『仮面ライダーカブト』に登場するクワガタモチーフのライダー、「仮面ライダーガタック」が変身する際に使用するクワガタ型ガジェット………のオモチャ。私の過失でガタックゼクターの魂とも言えるアゴを折ったのに何故かりょうちゃんは許してくれた。我々ダイパ世代直撃ライダーはまさにカブト~キバ辺りである。
さて…ここまでダイパリメイクの内容を振り返ってみたが、私はこの作品を遊ぶ前からずっと思っていたことがある。
『ファイナルファンタジー Vll リメイク』に『ポケットモンスター オメガルビー・アルファサファイア』、あの懐かしの作品を今再びとリメイクされていたものは、いつも自分よりも少し上の世代の人達の物だった。
だから今回のダイパは、「ついに自分達の所にもこういう懐かしのリメイクが来たんだ!」と、やっと出番が回ってきた打者のような何とも言えない嬉しさに包まれたのです。
私がずっとダイパリメイクに「ノスタルジーに浸ってみたかったのに内容を覚えていないからそんなに懐かしさゆえの感動が無い」と言っていたのは、どこか「懐かしの物に触れてノスタルジックな感動を覚える」という行為を通して、少し背伸びをしてみたかったからなのかもしれません。だって大人の人達が感じていた事を今自分が感じられるのだとしたら、ちょっぴり大人な気持ちになれるかもしれないでしょう?
だけど私は内容をあまり覚えていなかったので、ダイパリメイクでノスタルジックな感動を覚える事は無かった。私は大人だから味わえる感動を、未だ逃し続けているのだろうか。いつになったら大人になれるのだろうか。それともこのまま子供の頃の記憶だけが消え続けて、懐かしさを一生覚える事のない寂しい大人になってしまうのだろうか。
でも、今回ダイパリメイクを遊んでひとつだけ、たったひとつだけ思い出した事があります。
それは、「ダイヤモンド・パールが大好き」という事です。ゲームの内容はあまり覚えてないけれど、「このゲームは大好き」と小学生の時に焼き付いて心の中に残り続けていた霧のようにぼんやりとした気持ちを、少しだけきりばらいして鮮明に出来たような気がします。
『ポケットモンスター ダイヤモンド・パール』は、私にとっての宝石なのかもしれません。たとえどんなに記憶の片隅に追いやったとしても、また取り出してジムバッジのように磨けば輝きを取り戻して、初めて触った時の煌びやかな美しさを私に思い出させてくれる。
ダイパリメイクを遊んであまり大きな感動はないし、あの時ダイヤモンドを遊んでいた自分と比べて大人になったような気持ちもあんまりない。
でも、あのダイヤモンドの輝きだけは、まだ私の心の中には残っていたのかもしれない。
あの時私に輝きをくれたダイヤモンド、成人を前にした私の目の前にもう一度現れてくれてありがとう。今でもあなたの事が大好きです。
また私はあなたの事を忘れちゃうような気がするけど、いつの日か本当に大人になって取り出したら、もう一度あの輝きを見せてくれると嬉しいです。
……………って何かもうダイパというコンテンツ自体が終わるみたいな書き方してますけど別に終わってはいないですからね!?
『Pokémon LEGENDS アルセウス』もめちゃくちゃ楽しみにしてま──す!!
いや割とすぐ宝石取り出すやんけ!!!!!!