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最大4人協力プレイ可能な2Dホラー『Hidden Deep』は、「地底」の恐怖とロマンをこれ以上ないほどに表現したスルメゲーだった

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 「地底」には恐怖とロマンが詰まっている。

 太陽の光が届かない暗闇。頭の上から無言で押さえつけてくる「大地」の圧力。基本的には「地上」に住む我々人間にとって、「地底」は異世界にも近いような場所だ。ゲーマーならば一度は聞いたことが、あるいは潜ったことがあるであろう「ダンジョン」にも地下のイメージは強い。

 筆者はジュール・ヴェルヌの『地底旅行』を小学生のころに読み、そのミステリアスな地下世界、スリリングな冒険に心を躍らせた。もちろん実際に行くことは怖いが、その恐怖はロマンにも結びつく。「地底」には不気味な魅力があるのだ。

 その恐怖とロマンを、ゲームとしてたくみに表現しているのが今回紹介する2Dアクションゲーム『Hidden Deep』である。本作の舞台は海底からさらに1.6kmも潜った採掘および研究用の施設だ。ここではかねてから未知の現象が発生しており、それを調査すべく研究チームが派遣されていたが、彼らとの連絡は突如として途絶えてしまったという。

 プレイヤーは次なるチームのリーダーとして、この場所で何が起きたのかを突きとめ、生存者を救出するというミッションに挑む。映画『エイリアン』『遊星からの物体X』、またゲーム『Half-Life』に強くインスパイアされたという本作の雰囲気は、地底に感じる不気味な魅力をこれ以上ないほどに表現していると感じた。

 本稿では、本作のシステムとゲーム性を紹介しつつ、その卓越した雰囲気づくりの手法を分析していこうと思う。なお、フォトリアル調のグラフィックでは無いものの、グロテスクなシーンやクリーチャーが多数登場するので、そういったものが苦手な方は注意していただきたい。

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文/久田晴


※この記事は『Hidden Deep』の魅力をもっと知ってもらいたいDaedalic Entertainmenさんと電ファミ編集部のタイアップ企画です。

たくさん死んで、学んだことを活かして進む洞窟探検

 まず、本作の基本的なシステムから紹介していきたい。ゲームを通して2Dのマップを探索していくステージクリア型のアクションゲームとなっており、パズル的な要素も強い。ちなみに難易度は3段階から選ぶことができ、筆者は真ん中を選択した。

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難易度を上げると敵の量が増え、リトライの回数が減るようだ

 ゲーム中のマップは実際に歩いたり、視野に入れた部分だけが記録されていく。そのため、初見プレイ時には洞窟同士のつながり方が分からず、右往左往することになるだろう。敵の位置なども表示されないので、索敵は基本的に自分の目と耳だけが頼りだ。

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 ミッション中で使えるガジェットは多岐にわたるが、代表的なものは「グラップリングフック」だろう。壁に打ち込み、ロープを巻き取ったり伸ばしたりしながら徒歩ではいけない場所を進む、本作でもっともお世話になるガジェットである。

 ただし、その動きに爽快感は無い。ぶらんぶらんと振り回されながら、もぞもぞと這い上がっていく、あるいは降りていく移動が主軸となるからだ。天井などに打ち込んで振り子移動をすることはできるが、あまりスピードをつけすぎて壁に当たると残酷な死を迎える羽目になる。

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あくまで慎重に動く必要がある

 フックに限らず、本作の操作キャラクターは非常に死にやすい。少し勢いをつけて落下すると砕け散るし、揺れるリフトにぶつかっても死ぬ。クリーチャーの攻撃は最低でも5分の1程度の体力を持っていくし、ご丁寧にフレンドリーファイアもするので味方が近くにいると発砲にも気をつかう。

 だが、その死にやすいゲーム性ゆえかリトライは非常に快適だ。細かにチェックポイントが用意されており、死亡地点からほど近いところに数秒でリスポーンする。おおよそ敵との距離も空いた状態になっているので、仕切り直してから落ち着いて挑むことができる。ただし、1ステージの間にリトライできる数は限られているので注意しよう。

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 ゲームを始めたてのころは、道は分からず、操作はおぼつかず、ひとつの洞窟を降りるのさえも恐ろしかった。しかし、メインミッションではマップは常に一定、敵の配置も比較的統一されているので、学んだことは確実に生きる。初見で40分かかった道のりも、2回目ならば15分足らずで踏破できるようになるのだ。

 このプレイヤーの成長を強く感じさせる仕様は、一見非常にシビアなゲームに思える本作で、モチベーションを支える重要な柱である。「こっちは行かなくていい」「ここは敵が出る」など、プレイしていくうちに不気味な地下洞窟が「庭」になっていく感覚は、強い万能感を与えてくれる。

じりじりと追い込まれるような緊張感の高い戦闘

 続いて、本作に登場するクリーチャーたちと戦闘システムについてより深く紹介していきたい。とはいえ、1月25日(火)に早期アクセス版が配信されたということで、筆者のプレイ時点ではそれほど多くの敵や、戦略が登場しているわけではない。
 
 各映像などに映ってはいても、ゲーム本編に実装されていない敵も存在するようなので、今後のアップデートにも期待したいところだ。

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 メインミッションの中で見られたのは「飛行型」「ナメクジ型」「クモ型」「ムカデ型」の4種類。なお、呼称については筆者が勝手に名づけたものである。全体を通して赤黒く、巨大化した虫のような印象を与えてくるうえ、独特の鳴き声がプレイヤーの不安感を誘う。

 一番よく出会うのは「飛行型」、文字通り空中にいても問答無用で襲いかかってくるので、フックを使って昇り降りをする際も警戒が必要だ。本体の攻撃力は本作の登場エネミーの中では低いが、稀に体力の半分を削る「ナメクジ型」を投下してくることもあり、油断がならない。

 次によく見るのが「クモ型」で、飛行型と比べると空中に浮かばない分硬く、攻撃力も高い。「巣」のようなものから多数出現することもあり、弾薬の消費が激しくなる。

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 「ムカデ型」は見る機会は少なく、しかし現時点での本作では最もインパクトのあるクリーチャーだ。洞窟の天井部分に潜んでおり、プレイヤーが近づくと飛び出し、丸ごと捕食してしまう。
 出てくるところに銃を構えておいて4,5発撃ち込めば停止する。敵というより、トラップに近い存在だと言えるだろう。

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初見プレイ時には相当に驚かされる

 実は、本作に登場する1体1体の敵はそれほど強力なわけではない。縦横無尽に素早く動き回るわけでもなく、しっかり銃をあてればすぐに死ぬ。後ずさりしているだけで追いつかれないようなシーンも多い。

 が、周囲の状況が絡みあうと話は変わってくる。例えば、フックで移動している際はハンドガンしか扱えず、リロードもできないという制約がつく。この状態で複数の飛行型に襲われると非常に苦戦を強いられることとなる。

 ほかにも、手持ちの照明は照準先に依存するので、死角になっていた背後や頭上から奇襲を受けたり、崖や行き止まりに追い込まれたり、仲間に射線が被って撃つに撃てなかったりと、殺され方を数え上げれば切りがない。

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 このように、本作の戦闘は決して高度なテクニックを要求されるものではないが、確かな「難しさ」を持っている。それは、ひとえにこの地底の世界がプレイヤーにとってアウェイであることを示すものだ。

 だからこそ、死にながらも学び、的確なプランとアクションで攻略していくことがとても楽しい。次はこうしてみよう、ここはああしてみようと、試行錯誤を繰り返していれば必ず道は開ける。

ひとりで複数のキャラクターを動かすパズル的な楽しさ

 さて、本作はひとりで動かなくてはならないことも多々あるが、プレイヤーの立場は「チームのリーダー」である。すなわち、複数のキャラクターを並行して動かしていくステージもある、ということだ。

 記事執筆時点では、同時に登場するキャラクターは最大4人。「スカウト」「エンジニア」の2種類に分けられている。グレーの制服がスカウト、黄色がエンジニアとなっており、ひと目でわかる。

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 スカウトはなかばプレイヤーの分身ともいえる存在で、すべてのステージで扱う。「スキャンボール」と呼ばれる偵察用のドローンや地面に穴をあけるための爆薬、グラップリングフック、アサルトライフルなど多彩なガジェットと武器を装備できるのが特徴だ。スカウト(偵察・斥候)の名の通り、探索に秀でたキャラクターである。

 特にスキャンボールは優秀で、自分で歩くよりもはるかに早く周囲の地形を把握し、マップに記録できる。おまけに電撃の攻撃機能もついているので、倒しにくいけれど進行の邪魔になりそうな場所にいる敵は、先んじて焼き殺しておくのも手だ。

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スキャンボールの残数には注意しよう

 対して、エンジニアは上で挙げたようなガジェットや強力な武器を持てず、銃はハンドガンのみ、グラップリングフックも使えないので移動の幅は狭い。代わりに、クレーンやリフトのような設備と、掘削機やトレーラーのような重機を動かすことができる。

 リフトで重機を運搬し、クレーンで荷物を積み込み、指定の場所まで運ぶ、といった流れのミッションもあり、ここではエンジニアが大活躍する。このようなギミックを攻略していく際は、エンジニアが安全に仕事をできるようスカウトで道を切り拓いていくようなイメージだ。

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リフトもゆらゆら揺れるので、落ち着いて焦らず操作しよう

 操作するキャラクターはいつでも変更でき「左へ移動」、「右へ移動」といった簡単な命令も出せる。しかし、操作していない間も無敵になるわけではなく、襲われても無抵抗でやられてしまうので、しっかりと安全を確保しながらチームを進めていく必要がある

 また、繰り返しになるがフレンドリーファイアも発生するので互いの立ち位置には気を使おう。咄嗟に操作キャラクターを切り替えても、銃を抜き構え、照準を合わせるころには手遅れになっている場合が多い。

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不幸な事故であった

 複数のキャラクターを並行して運用するというと難しそうなイメージも持たれるかもしれないが、極端にややこしくなることはない。2種類のキャラクターの性能を把握したうえでステージに向き合えば、おのずとやるべきことは見えてくるようなデザインになっている。

インスタントに新鮮な体験を味わえる「チャレンジモード」

 ここまでは本作のメインミッションについて紹介してきたが、すでに実装されているおまけモードとして「チャレンジモード」がある。ここでは、ミッション目標や敵の数、リトライ数、などを自由に設定し、ランダムに生成されるステージを攻略していく遊びが楽しめる。

 ランダム生成のため、さすがにメインミッションほどのやりごたえはないものの、いつでも新鮮な心持ちで攻略に臨めるので、本編をやりつくしてしまったという方にこそおすすめしたい。

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ミッション目標もあらかじめ選択できる

 また、1月25日(火)からの早期アクセス段階でオフライン協力プレイ、さらにはSteam Remote Playを活用した疑似的なオンライン協力プレイに対応している。残念ながら筆者自身が協力プレイを試すことは叶わなかったが、複数人で潜れば攻略も楽になるだろう。

 Steamストアページの記述によれば、早期アクセス期間中にオンライン協力プレイも実装する予定があるとのこと。どういった仕様になるかはまだ不明だが、本作の設定に基づいた「チーム」での探索ができれば、さらなるエキサイティングな体験も期待できそうだ。映像などで見られる、人の死体に寄生したようなクリーチャーも活躍するかもしれない。

アクションの難しさが「地底」の恐怖やダークな雰囲気を巧みに表している

 『Hidden Deep』は「地底」というスリルと魅力に満ち溢れた舞台をたくみに表現した2Dアクションゲームだ。早期アクセス版ということもあり、少し敵やギミックのバリエーションに物足りなさは感じたものの、数々の苦労を乗り越えてクリアできた時の達成感はとても大きい

 全体的な移動の重さやスピード感の無さが、作品全体の雰囲気を底上げしているという点が、本作の特徴であり、優れた部分である。ただ難しく不便なだけではなく、クリーチャーのはびこる洞窟というダークな印象を強め、生身の人間の弱さをリアルに表現することに一役買っている。

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 もちろん、死に覚えのゲーム性とゲーム全体を通した暗い雰囲気、そしてグロテスクなクリーチャーと、人を選ぶ要素も多々見られる。が、こういったモチーフをむしろ好むプレイヤーも決して少なくないだろう。

 また、先行してプレイしていた途中でもチュートリアルや操作説明が追加されたりと、細かな部分で改善が進んでいる。実は、プレイ途中では機能を把握できておらず、一時詰まっていた場面もあったのだが、その部分にも説明が追加されていた。 

 くわえて、ローカライズの精度が非常に高いことにも言及しておきたい。記事執筆時点でもメインミッションの日本語訳は、ほぼ完璧といって差し支えないレベルだった。文字のフォントもゲームの雰囲気にマッチしており、没入感をそがれたり、言語の壁でつまづくことなく快適に遊べる作品だ。

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 今後もさらなるメインミッションの追加や、新たなクリーチャーやガジェット、武器の登場などさまざまな発展が予告されており、ますます期待が高まる。ダークな雰囲気や死に覚えのゲーム性を好む方には、ぜひ手を付けてみていただきたい作品である。

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ライター
1998年生まれ。静岡大学情報学部にてプログラマーの道を志すも、FPSゲーム「Overwatch」に熱中するあまり中途退学。少年期に「アーマード・コア」「ドラッグ オン ドラグーン」などから受けた刺激を忘れられず、プログラミング言語から日本語にシフト。自分の言葉で真実の愛を語るべく奮闘中。「おもしろき こともなき世を おもしろく」するコンピューターゲームの力を信じている。道端のスズメに恋をする乙女。

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