遡ることおよそ3週間前の3月10日……私は頭を抱えていた。
そう、この日は待ちに待った『STRANGER OF PARADISE FINALFANTASY ORIGIN』……略して『FFオリジン』の体験版の配信日!
何故かラフな格好をしたおじさんがガーランドと殴り合っていたり、何故かラフな格好をしたおじさんが執拗に残虐なアクションでモンスターを虐殺していたり、発売前からその異様な絵面のインパクトが話題を呼んでいた。
こんなゲーム……楽しみでしかない!
しかし体験版を起動した私を待っていたのは……突如始まる風のカオス「ティアマット」との戦い! 黄金の平原で何故かスマホを片手に持っている主人公! 何の説明もないまま「ウィース」ぐらいのノリで出会う主人公とその仲間たち!! もうそのまま数か月時が飛んで船でくつろぐ主人公と仲間たち!!!
きっと読者の中には「ま〜〜〜たコイツ話盛ってるよ…」と思う方も居るだろう。しかし主人公が登場し、仲間と出会い、数ヶ月経つまでのこの一連の流れは本当に約10分程度で済まされてしまう!
本当なら30分ぐらいかけて説明して欲しいところが……たったの10分程度で終わってしまう! だからもうこっちは何も分からない! このラフな格好をしたおじさんは何故スマホを持っているのか? この飯屋で待ち合わせしてたぐらいのノリで加入してきた2人組は何者なのか? 何も……何も分からない!!
私は頭を抱えていた。いくらなんでも何も分からなさすぎる。だがしかし、私の脳内にはまだ希望的観測があった。「多分これはデモバージョンもとい体験版だから、ある程度の説明をカットしてアクション部分だけを楽しんでもらうように作ってあるのだろう」という藁にもすがるような希望的観測が……。
だから私は先行配信された体験版の「製品版にデータを引き継げる」という特典を捨てて、改めて製品版で『FFオリジン』の冒頭を確認することにした! ええい何が引き継ぎだ! 3時間程度の先行プレイなんぞくれてやるわ!!
なら……体験版ごと持っていけ!!(光の戦士)
文/ジスマロック
※この記事には『FFオリジン』本編のネタバレが割と含まれています。プレイ中およびプレイ予定でネタバレをされたくない方は、できればここで引き返すことをオススメします。ついでに書いておきますが、『FFオリジン』はあくまで「FF1の要素と設定を用いた別の作品」であり、「FF1と地続きの作品ではない」ということは留意してください。よろしくお願いします。
そして……たんきゅうのたびははじまった。
すいません。製品版でもそのままでした。
ウ……ウソやろ
こ……こんなことが
こ……こんなことが許されていいのか
『FFオリジン』は『ファイナルファンタジー』シリーズ35周年の節目の年に発売されたタイトル。そのため、「カオス」や「光の戦士」などの一部の設定、世界観がシリーズの初代でもある『FF1』から引用されています。
なので、旅立つ時もFF1のあの有名な構図がオマージュされたエモい感じのシーンが流れる……のですがそれどころじゃねえ!
こんなんやってる暇あるならもっと説明してくれよ!? いやもちろん『FFオリジン』のこの旅立ちのシーンも好きではあるんですが! ちゃんと好きではあるんですが!!
主人公のジャック・アッシュ・ジェドの3人が最初に訪れるステージは「カオス神殿」。ここもしっかりFF1をオマージュしています。
そしてダンジョンの最奥で待ち構えるのはあのガーランド……「っぽい何か」。FF1にて最初に戦うボスでもあり、最後に待ち構えるボスでもある彼「っぽい何か」と戦うことになるのですが……コイツを倒すと中から「ネオン」と名乗る女の子が登場します。
な……なんで?
そしてその勢いのままネオンが仲間となり、ジャック・アッシュ・ジェド・ネオンの4人でカオス討伐のための旅に出ます。
しかしFF1は「クリスタルを携えた4人の光の戦士がカオスを倒して世界を救う」という物語になっているため、FF1的には何も間違っていないんですね。いや、間違ってないんだけども!
同シリーズ内では『FF7』『FF8』『FF10』などの数々の作品に参加している野島一成氏の「カオスは存在しない」「カオスは人々の心のを蝕む終末思想だ」などの独特なセリフ回しも相まって、なんかこう……FF1どうこう言ってる場合じゃない凄まじい空気が形成されているのが本作の独特な魅力! 引き込まれる人は一瞬で引き込まれてしまうこと間違いナシ!
そして主人公のジャックの「何故なのかは分からないが俺はとにかくカオスを倒したい。何故なのかは分からないが俺はカオスを倒さなきゃ気が済まないんだ(要約)」という謎のカオス殲滅メンタルによって4人の光の戦士はカオス討伐の旅に繰り出すのですが……ここで一旦今作の戦闘システムに触れておきましょう。
『仁王』や同シリーズ内では『ディシディア ファイナルファンタジー』も手がけた「Team NINJA」によるFF史上最も残虐なアクションも本作の大きな魅力! 何が起きているのかは何も分からないが暴力だけはウソをつかない!
発売前の時点では「『ダークソウル』風では?」と言われていた本作のアクション要素ですが、ちゃんと難易度設定が用意されているため、4時間かかってもツリーガードを倒せなかった私のようなアクション下手野郎でも難易度を下げれば「無双」シリーズぐらいの大雑把なプレイで難なく進められます。
そして注目すべきはこの「ジョブ」システム。
FF1だけでなく『FF3』に『FF5』、『FF14』にも取り入れられているシリーズでは由緒正しいお馴染みのシステムですが、FFシリーズに登場するジョブをスキルツリー形式で習得していくことでジャックたちのバトルスタイルも変化する!
豪快に大剣を振り回す「大剣士」を育成すれば斧まで振り回せる「戦士」へ、槍を用いて戦う「槍士」を育成すればジャンプを使えるあの「竜騎士」へ、魔法を繰り出す「魔術士」を育成すればお馴染みの「白魔道士」と「黒魔道士」に分岐。
今作のジョブは「基礎」「上位」「最上位」の3つに分類されており、基礎ジョブのスキルツリーで習得した上位ジョブを育成することで、さらなる「最上位」ジョブを修得可能!
たとえば「黒魔道士」「戦士」「バーサーカー」の3つの上位ジョブのスキルツリーを伸ばすことで、固有スキルの「あんこく」でHPを消費して攻撃力を上昇させる「暗黒騎士」にジョブチェンジできたり、「白魔道士」と「黒魔道士」のスキルツリーを伸ばせば最強魔法の「アルテマ」を発動できる「賢者」にもなれる!
しかしどのジョブを選ぼうが結局ジャックは執拗に残虐なアクションでモンスターを虐殺してしまいます。白魔道士だっつってんのにスケルトンの首は折るし、白魔導士だっつってんのにゴブリンの頭を思いっきり踏み潰す。
流石に10時間ぐらい続けてこの残虐超人っぷりを見てると「な、なんでそんな酷いことするの……?」という慈愛の心が芽生えてきます。
このせかいは あんこくにつつまれている
そして発売約一ヶ月前に唐突にTwitterで発表されたこの「歴代FFをモチーフにしたステージ」という衝撃の要素。
ジャックたち光の戦士一行は、歴代ファイナルファンタジーの舞台を「何者か」が模して作り出した世界を巡りながらカオスを討伐していきます。
カオス神殿の次に訪れるのはこの「海賊のアジト」。ここは全世界プレイヤー数が2500万人を突破している大人気MMORPG『FINAL FANTASY XIV』の最初のダンジョン、「天然要塞 サスタシャ侵食洞」をモチーフにしたステージ。
あ、あまりに見覚えがありすぎる……初めて訪れたはずなのに、何度もレベルを上げるためのルーレットのようなもので訪れたことがあるような気が……。ちなみにエッダちゃんは付いてきません。DLCに期待しましょう。
あまり『FFオリジン』自体には関係のないことかもしれませんが、歴代FF要素を吸収し続けてきた側のFF14【※1】がこうして「モチーフにされる側」に回ったのがなんだか感慨深いです。
※1「FF14の歴代FF要素」
プロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏直々に「FFのテーマパークを目指す」と宣言されている通り、FF14にも負けず劣らず歴代FFをモチーフにしたステージが数多く登場する。FF3のクリスタルタワーや、FF6の魔列車など、歴代ファンにはたまらない要素がてんこ盛り。気になったアナタに「ファイナルファンタジーXIV フリートライアル」というものが存在する。
何気にボスの「ビッケ船長」も「アップヒーバル」を撃ってくるこのこだわりっぷり。原初の解放からフェルクリーヴ連打は流石にやってきません。(「アップヒーバル」は今作の戦士も使用できるため、明確にFF14ネタかと問われると怪しい部分ではありますが……)
今作の「歴代FFモチーフステージ」のすごいところとして、「歴代のFFを要素として取り込んではいるものの、あくまでFF1の世界観からは外れすぎていない」という点があると思っています。
この海賊のアジトにて関わってくる「ビッケ船長」と「港町プラボカ」はもちろん原典のFF1に登場する要素。そこにFF14のダンジョンをぶっ込むとなると、いくらか元のFF1の空気をぶち壊してしまいそうな気もしますが……同じくFF14のサスタシャでも海賊と戦うので、そこの世界観があまり壊れていません。
しかもFF14側のサスタシャでボスとして登場していた「サハギン」も上手いこと海賊のアジトの雰囲気に噛み合っており、ファンサービスと世界観のマッチが両立されている!
「FF1の世界観から外れすぎてはいない」というよりかは、「歴代FFの要素を引用する際のFF1との組み合わせが上手い」と言った方が正しいかもしれません。
……さて、「歴代FFとFF1の組み合わせが上手い」とか言った後に紹介するステージではありませんが、この「光歪の水郷」はガッツリ元ネタ側に寄せたステージとなっている! ははっ、ファイナルファンタジーだからね! あまりひとつのことに捉われてはいけないよ!
このステージのモチーフ元は『FF13』に登場する「サンレス水郷」! あまり緑が無かったコクーンの中で唯一豊かな森林が広がっており、このステージの透き通るような美しいBGMが印象に残っている方も多いのでは!?
もちろん今作のBGMもサンレス水郷のメロディが一部組み込まれています。
やったぜ!
加えて、FF13のサンレス水郷に用意されていた「天候操作」ギミックまで再現されており、「光歪の水郷」はとにかく原作再現がすごい!
一応ここで断言しておくと、今作の「歴代FF要素」はあくまでエッセンスでしかなく、最終局面で歴代主人公が全員助けにくるとかそういう仮面ライダーの映画みたいな現象は起こりません。
ただ、マップ内のエリアには元となっている作品の主人公や物語を想起させる名称が付けられています。
反乱軍として帝国と戦う『FF2』をモチーフにしたステージには「反乱に身を投じた者たちの回廊」、神というシステムによって構築された世界の中で神に反旗を翻すFF13では「反逆者が歩んだ原生林」、盗賊のジタンが主人公の『FF9』ステージでは「生命繋ぐ盗賊が駆けた森」、何度倒しても蘇る厄災「シン」を倒す旅に出るFF10のステージでは「厄災の終結を夢見た銀嶺」など、分かりやすいネタからマニアックなネタまで、オタクが嬉しい数々の歴代要素がここでは紹介しきれないほど組み込まれています。
しかもその最奥で待ち構えるボスも、FF1に登場していたボスの姿や名前を残しつつもどこか原作の要素を匂わせる風貌をしています。
FF2をモチーフにしたダンジョンには「黒騎士」が、FF12に登場するレーソーローボー……ではなく「レイスウォール王墓」をモチーフにしたダンジョンには見たことも聞いたこともない形をした土のカオス「リッチ」が待ち構えています。いや、こんなゾディアークみたいなリッチおるか?
ただ、これも「ステージのボスにも歴代要素を盛り込んでいます」と明言されている訳ではなく、もしかしたら私が「この独特な形状……これはゾディアーク!」と勝手に勘違いしているだけの可能性もあるため、その辺はご了承ください。
こんなアナザーライダーみたいな手法のカオスを手当たり次第倒しまくっている内に、ジャックたちは徐々に徐々に自分たちの記憶を思い出していきます。
そもそもステージを巡っている最中、何かと仲間が「ここ、見覚えがある気がする……」と口にしていたり、ジャックの無双っぷりを見て「あの強さは間違いなくジャックだ!ついに巡ってきた!」と示唆的なことを漏らしていたり……。
冒頭こそ何も分からずひたすら困惑だけが続きますが、『FFオリジン』はジャックの記憶が明らかになるにつれ、プレイヤーにも徐々に徐々にこの世界の全貌が明らかになっていきます。
ええいもう説明がめんどくさい!
要は『FFオリジン』はFF1よろしくループ【※2】しているのです!
ゲーム開始時に何の説明もなく戦わされた風のカオス「ティアマット」。最初の戦いは一度倒したと思ったティアマットが復活して不意打ちをされたところで即座にチュートリアルが始まってしまったのですが……二度目のティアマット戦は不意打ちを覚えていたジャックの咄嗟の起点により死んだフリ攻撃を回避!
※2「FF1のループ」
こちらもやたらと複雑なので説明を放棄したくなるレベルなのですが、FF1には「最序盤に光の戦士に倒されたガーランドが2000年前にタイムスリップして未来に4体のカオスを送り込んでいた」という衝撃の真実が用意されています。どうしても気になった方は調べてみよう!
このティアマット戦のように、ジャックだけでなくアッシュ・ジェド・ネオンも「なんらかの方法」でループを繰り返していることが明言自体はされないものの本編が進むにつれて示唆されていきます。
それだけでなくティアマットを撃破したら突如現れた謎の美女「ソフィア」の存在と、カオス神殿で突如現れたネオンの存在を照らし合わせることで、「カオスは魔物でも終末思想でもなく人間が変異している存在」という事実も浮かび上がってきます。
恐らく文頭で「またFFが訳分からん世界観展開してるよ……」と思っている方もいらっしゃるかもしれませんが、『FFオリジン』はちゃんと段階を踏んだ上で世界観の謎が開示されていくので、冒頭の「3分でわかるFFオリジン!」とでも言わんばかりのあの異常なスピード感はある意味では計画的とすら言えるのかもしれません。
まあ進めれば進めるほど数々の謎が明かされはするものの、ジャックたちのカオス殲滅珍道中は特に変わらず続きます。今作のステージはひとつを除いて全てが歴代FFステージで構成されており、序盤から終盤、頭から尻尾まで歴代FFが最後までたっぷりなのです。
大きな山場を超えた終盤で特に印象的なのは『FF11』に登場する「デルクフの塔」をモチーフにした「古代人の塔」!
見てくださいよこの入った瞬間プロマシアの呪縛が始まりそうな佇まいを!
『FFオリジン』に限らず、FFはシリーズ全体を通して歴代要素の引用やゲスト出演などがあったりなかったりするのですが、FF11やFF14などのオンラインナンバリングタイトルの要素がこうして大々的に登場するのは割と珍しいような気がします。
今作の「原作リスペクトへのこだわり」は先ほどの光歪の水郷でも触れましたが、こちらもFF13に負けず劣らず気合の入った仕上がりとなっている!
見よ、FF11プレイヤーであればテンションが上がるような上がらないようなこの見覚えのありすぎる内装! ああ、デルクフ認証キーを取りにインビジスニークでやたら長い塔を登った記憶が蘇る……。
しかも塔の内部にはあのマジックポット族まで配置されており、デルクフの塔に対する並々ならぬこだわりを感じる!
もう少し探せば他のステージにも配置されているのかもしれませんが、『FFオリジン』内のマジックポット族はこの古代人の塔でしか確認できなかったため、恐らくFF11を再現するために用意されたモンスターなのだと思われます。2022年にデルクフの塔をめっちゃ気合入れて再現するゲーム、流石に変態じみてきてないか……?
それだけに留まらず見覚えのある形状のワープポイント、いかにも鍵を落としそうなギガース、「認証の鍵」に「幻影の鍵」など、登場するモンスターやステージのギミックにまで異様なほどFF11が盛り込まれています。いやこれ絶対FF11激推しマン紛れ込んでるだろ!?
今回紹介し切れなかったステージの中にも好きなステージはもちろん沢山あるのですが、「FFオリジンで一番好きなステージはどこ?」と聞かれたらこの古代人の塔を挙げるかもしれません。そのぐらい異様に気合が入ってます。
最後に紹介するのはこちらの『FF15』に登場する都庁……ではなくインソムニア城をモチーフにした「不夜城」!
えっ、もう記事のほとんど歴代FFステージ紹介してるだけだって? そろそろ本筋に触れろ? む、そんなこと言うとバラード、ピーアン歌ってあげないにゃん。
記事の最初に貼った船の上でくつろいでいる画像である程度は伝わると思うのですが、『FFオリジン』は全体的な「FF15以降」感がすごいゲームだと個人的に感じています。
FF15と言えば、やはり仲間たちの和気あいあいとした空気や、ファンタジーと現代が融合を果たしたようなビジュアルが強く印象に残りますが、特に『FFオリジン』では戦闘中でもずっと喋ってるあの感じが色濃く受け継がれている!
動画は一例となっていますが、こんな感じでとにかくキャラクターが戦闘中だろうがなんだろうが喋り続ける! オオカミの口を引き裂いたり、ボムを両手で思いっきり潰したり、とにかく残虐なアクションを繰り出した次にはピクニックに来てるぐらいのノリで楽しく会話し始めるのでなんか段々温度感が分かんなくなってきます。
歴代FFのステージを再現しつつも特にFF15の血を色濃く受け継いでいるように感じる今作が、FF15をモチーフにしたステージでこんな感じの会話してるとそれだけでFF15ファンとしてはこう……だいぶ来てしまうものがある訳です……。
原作のシナリオを匂わせるエリア名ももちろん完備。個人的には「共に旅をした従者の間」が一番のお気に入りです。FF15は仲間と思い出を作ることがとても大切なゲームなので、そこで「共に旅をした従者の間」とか言われるとね……ね! ね!! ね!!!
せんしたちよクリスタルにしゅくふくを……
最初は何ひとつ分からないまま始まった『FFオリジン』でしたが、徐々に徐々にその謎めいた世界観が明らかとなり、最後には張り巡らされた全ての線が収斂します。
ルフェイン人、ジャックたちの出自、カオスとは何なのか……これらの全ての情報が点と線で繋がり、断片的に開示されていた情報が一枚のジグソーパズルのように組みあがるような感覚を今作の最終盤では味わえます。
この記事では最後に「セーラ姫とジャック」について紹介して締めくくらせていただきます。記事で紹介しきれなかった謎が気になった方は……FFオリジンを買ってください。よろしくお願いします。
『FFオリジン』の主人公、ジャック。その本名は「ジャック・ガーランド」。
発売前のPVでもこちらのシーンが公開され話題を呼んでいましたが、単刀直入に行ってしまえば『FFオリジン』は「ガーランドというキャラクターがFF1のラスボスになるまでの物語」を解き明かすゲームなのです。
FF1の最初のボスでもあり、ラスボスでもある「ガーランド」。時間逆行を行い過去から未来へ4属性のカオスを送り込むタイムリープ戦略こそ強く印象に残る彼ですが、実はFF1を遊んでも「ガーランドって結局どういう奴なん?」「なぜガーランドはセーラ姫をさらったのか?」「なぜガーランド(カオス)は2000年も支配を続けていたのか?」などの疑問点は完全には明かされません。
これはFF1が制作された当時の技術面の制約もあるでしょうし、そもそもFF1自体がある程度物語の解釈をプレイヤーに委ねている部分もあるので、「FF1が説明不足」とかそういうことを言いたい訳ではないです。(ディシディアなどの派生作品で補足されている部分もありますが、流石に果てしないので今回は割愛させていただきます)
しかし『FFオリジン』は今こそ「ガーランド」という人物を再解釈することに挑戦したタイトルです。
ガーランド……もとい主人公のジャックはタイムリープを繰り返す度に記憶を失ってしまいます。が、タイムリープを行ったとしても外付けで記憶を保存することができる「黒水晶」をセーラ姫に託すことで、最初にジャックとセーラ姫が出会った時の記憶を保存させておいたのです。
親愛、または愛情……とも取れる関係を築いていた最初のジャックとセーラ姫は、ある約束を交わしていました。
「たとえば、セーラ様をさらって逃げるとか」
「お父様が兵を出します」
「それは手強い。ならばいっそ、私がカオスになってしまうのも良いかもしれません」
……さあもうみなさんお分かりでしょう! あとはもう説明しません!
えっ、もうこの記事自体が「何も分からない」って?
そんな方は……『FFオリジン』を買ってこの物語の真相を確かめてください!
まあ見て分かる通り今作のシナリオは100人中100人が何の文句もなく完全に面白いと断言出来るほど万人受けするようなものではありません。どちらかと言うとかなり尖った構成の部類だとは思います。しかし、「何も分からないまま終わる」などということはありません。ちゃんと説明されて、ちゃんと全てに決着がつきます。さらに言うならば、「FF1の光の戦士はプレイヤー自身」という最も調理が難しい部分も損なってはいません。FF1が好きな方こそ、最も楽しめる内容に仕上がっています。
私個人として、このゲームで最も惹かれた部分はやはり「歴代FFステージ」の部分でした。一応今作でステージ化された作品は一通り触ってはいますが、全部の作品が一切の文句がなく大傑作だったとは流石に言い切れません。
しかし、改めて今作でサンレス水郷をモチーフにしたステージを遊んだ時に、「ああ、やっぱり俺はFF13が好きなんだ……」と再確認することができました。私にとって『FFオリジン』はある意味「追憶の旅」だったのかもしれません。
今こうしてゲームを紹介する記事を書かせてもらっているのもある意味ではFFシリーズのおかげですし、FFに人生を歪められたと言っても過言ではありません。私にとって『ファイナルファンタジー』とは、大好きなゲームである以上に「人生の恩人」のような存在でもあるのかもしれません。
なのでこうして『FFオリジン』の楽しさを伝える記事を書いて、できるだけファイナルファンタジーシリーズに恩を返していければ……と勝手に思っています。この記事で少しだけでも『FFオリジン』のことが気になっていただけたのであれば、それ以上の幸せはありません。
最後の最後に勝手な私個人の思いを書いてしまいましたが、とにかく『STRANGER OF PARADISE FINALFANTASY ORIGIN』はPS5・PS4・Xbox Series X/S・Xbox One・PCで好評発売中!
「高難度」をウリにしている部分はありますが難易度を下げれば割とサクサク進められるので、『Ghostwire:Tokyo』や『星のカービィ ディスカバリー』の合間に触ってみてもいいかもしれません! 令和にFF1を再解釈する『FFオリジン』を、どうかよろしくお願いします!