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今更『クロノ・クロス』を遊んでアルティマニアまで買った男の記録。『クロノ・トリガー』で救われなかった者達をもう一度描くことに、意味はあるのか?

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どうしても『クロノ・クロス』がよく分からない。そんなアナタに

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 そもそもストーリーが難解、仲間の数は総勢45人でルート分岐アリ、適当にやってるだけでは到底勝てない戦闘システム……「こんなRPG、クリア出来る気がしない!」と感じている方はいないだろうか?

 そんなアナタのために、「クロノ・クロス アルティマニア」という物が存在する。ゲームメディアで全然関係ないところの攻略本が突然出てくる! ありなのか!? あったっていいだろうそんな記事!

 「インターネット全盛の時代に物理の攻略本を買う?そんな馬鹿な……」と思った方、あまりアルティマニアを舐めない方がいい。『クロノ・クロス』に限らずPS期のスクウェアRPGは何かと複雑なシステムを搭載した作品が存在しており、もはや「アルティマニアが説明書」とまで言われているゲームも一部あるとかないとか……。

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村長のラディウスから受けられるチュートリアルは正直分かりにくい。ラディウス、お前はアルティマニアを読め。

 とにかくこの「アルティマニア」、データ量がとにかく膨大。敵のHPや攻略法と言った基礎的な攻略情報に留まらず、回収が難しい隠しメッセージや前作『クロノ・トリガー』と共通している部分の細かな解説、果ては今作のディレクターを務めた加藤正人氏へのQ&Aコーナーなど、システム面からストーリー面までおよそ全てを網羅する全知全能の書だ。

 しかもなんと今回のリマスターを期に「クロノ・クロス アルティマニア」の電子化がされ、現在Kindleで電子書籍版のアルティマニアを購入することができる!

 直近だと『聖剣伝説 レジェンドオブマナ』のリマスター版の発売に合わせてアルティマニアのKindle版が発売されていたりと、リマスターに合わせた攻略本の電子化はこれからスタンダードになっていくのかもしれない。2000年に発売された攻略本が2022年に電子化とは、何かすごい時代が来てますね……。

 とにかく私個人としては『クロノ・クロス』はぜひ攻略本片手に進めてみることをオススメする。物理版となるとやはり中古にはなってしまうのですが、「攻略本と睨み合いながらゲームを進めていく」という体験は今だからこそ新鮮……かもしれません!

殺された未来が、復讐に来る。

 ここから先はさらに筆者の主観が強くなりますし、『クロノ・クロス』本編のネタバレにかなり踏み込んだ内容となっています。今作はストーリーが難解な上にプレイヤーに解釈を委ねている部分もいくつかあり、この記事で書かれていることが全てではありません。むしろ70%間違っているぐらいの気持ちで見ていただくのが正しいかと思われます。これから書かれていることはあくまで「筆者が感じたクロノ・クロス、筆者が考えたクロノ・クロスの解釈」なので、それを重々承知の上、読み進めていただけるとありがたいです。

 「殺された未来が、復讐に来る。」

 今作のキャッチコピーだが、これは一体何を指してるのか?
 「殺された未来」とは何なのか? 「復讐」は一体何に対して?

 記事冒頭で触れた「私は『クロノ・トリガー』よりも『クロノ・クロス』が好き」という話。その理由は「殺された未来が、復讐に来る。」というこのキャッチコピーに詰まっています。

 「殺された未来の復讐」というこのワードは恐らく何重にもかかっているのだが、まず第一に「殺された未来」とは、「『クロノ・トリガー』で世界が救われたことによって滅びを迎えようとしている『クロノ・クロス』の世界」のことでもある……と私は感じました。

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 これはあくまで『クロノ・トリガー』と『クロノ・クロス』は地続きではなく、「こういう時空もあるよ」という前提があった上での話なのだが、前作はA.D.1999年に世界を滅ぼすラヴォスをクロノたちが撃破することで歴史改変が発生して世界は救われた。しかし『クロノ・クロス』はその世界が救われた歴史改変によってまた新たな戦いが巻き起こる物語となっている。

 『クロノ・トリガー』がハッピーエンドを迎えたがゆえに、今滅びを迎えようとしている世界。完全無欠のハッピーエンドを迎えた作品に、「そのハッピーエンドによって今まさに犠牲になろうとしている時空があるとしたら?」という疑問を突きつけるのが『クロノ・クロス』なのです。

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 終盤で明かされる「龍神たちは恐竜人の未来都市ディノポリスが作り上げた生体システム」という真実。ここで言う「恐竜人」とは『クロノ・トリガー』にて撃破され未来が断たれた原始時代のボス「アザーラ」のこと。

 所詮恐竜人などひとつのRPGのひとつのボスキャラに過ぎないと言われたらそうなのだが、『クロノ・クロス』ではクロノたちにより撃破され奪われたはずの恐竜人の未来、「ディノポリス」が敵として立ちはだかる。めっちゃ殺された未来復讐に来てる!

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 正直私も、「クロノたちが歴史改変を行ったことによって世界は救われたけど、その歴史改変によって滅びを迎えている世界があるかもしれない」や「クロノは自分達の世界を救うために恐竜人を撃破して未来を奪ったけどそれは本当に正しいことなのか?」というこのゲームが突きつけてくる問題や疑問は、いわゆる逆張りのような物だと思う。

 しかし、真剣に真正面から逆張りをしているのだ。ここまで『クロノ・トリガー』という作品の中で切り捨てられてしまった可能性と真剣に向き合われたら、こっちだって真摯に受け止めざるを得ない。

 『クロノ・トリガー』が面白いRPGとして完成されるために「切り捨てられてしまったもの」に対し、RPG丸々一本使って真剣に向き合おうとするこのゲームの姿勢そのものが、私は大好きなのかもしれない。

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 「一つの生命を生かすために、別の生命を殺すのか?」 

 「一つの世界を救うために、別の世界を滅ぼすのか?」

 本作のラスボスでもある「時を喰らうもの」。クロノたちによって撃破された前作のラスボス「ラヴォス」が何とか生き延び、数多の並行世界や長い時間の中で倒れていった生物の無念を取り込み進化した存在。恐竜人が生み出した「龍神」とも合体しており、「敗北した者達」の集合体とも言える存在から放たれるこの問いは、まさに「殺された未来の復讐」を体現する。

 しかし、『クロノ・クロス』はこうした「『クロノ・トリガー』で未来を奪われた者の復讐」を描く面もある一方、「『クロノ・トリガー』で救われなかった者の救済」を描く面もあると私は感じている。

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 今作のメインヒロインの「キッド」。その正体は『クロノ・トリガー』に登場していた「サラ」の分身だった。彼女は「魔法王国ジール」の王女であり、ラヴォスからエネルギーを吸い上げていた魔神器を破壊しようとするのだが、その作戦は失敗に終わる。魔神器の暴走によって目覚めたラヴォスの力によって魔法王国ジールは崩壊し、以降は消息不明となる悲劇のキャラクターでもある。

 今作には主人公セルジュとキッドのボーイ・ミーツ・ガール的な側面もあるのだが、『クロノ・クロス』で繰り広げられる冒険は、前作で報われることのなかったサラとセルジュが出会い、共に世界を巡る救済の旅でもあったのかもしれない。

 『クロノ・クロス』の真のラスボス「時を喰らうもの(最終形態)」、それは「自らを含めた全ての消滅」を願うサラとラヴォスが融合した存在。

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 なんと今作のラスボスは「ただ攻撃して倒す」だけではバッドエンドに直行してしまう。定められた6属性のエレメントと「クロノクロス」を使用し、消滅を願うサラと無念の集合体でもあるラヴォスを「解放」することで初めてグッドエンディングに到達できる。『クロノ・クロス』は未来を奪われた者の復讐を描く一方で、未来を奪われた者を救済する物語でもある。

 ひとつの生命を生かすために殺された者、ひとつの世界を救うために滅ぼされた世界。それらの復讐を描いてきた『クロノ・クロス』だからこそ、最後は何も殺さない、何も滅ぼさない、「解放」によって世界が救われる。

 こうして考えてみると、『クロノ・クロス』は尽く『クロノ・トリガー』の真逆のゲームだと思う。

 戦闘システムが分かりやすいトリガー、戦闘システムが分かりにくいクロス、機械文明が印象的なトリガー、雄大な自然が印象的なクロス、話が分かりやすいトリガー、話がかなり難解なクロス、世界を巡る大規模な冒険を繰り広げるトリガー、ひとつの箱庭の中で冒険を繰り広げるクロス、ラヴォスを倒して終わるトリガー、ラヴォスを救って終わるクロス。

 一体どこまで狙ってやったのかは分からないけど、ここまで真逆になる続編があるのだろうか。

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 『クロノ・トリガー』は本当に綺麗に終わっている最高のゲームだ。その美しいエンディングに対して重箱の隅をつつくのが『クロノ・クロス』だと、正直私も思う。しかし、そこまでして『クロノ・クロス』で「存在できなかった未来」を描くことに意味があるのか、ないのか、そう考えた時、私は確実に意味はあると思います。

 未来を奪われた者、救われなかった者、存在できなかった未来。これらを描くことには、必ず意味がある。決して無意味なんかじゃない。これを描くゲームを丸々一本作ってしまったこと自体は確かにおかしいかもしれないけど、ゲームだからと言って、RPGだからと言って、存在自体が無意味なキャラなどどこにも居ない。

 これが私が『クロノ・クロス』が好きな理由。だから私は『クロノ・トリガー』よりも『クロノ・クロス』の方が好き。

ラジカル・ドリーマーズ -盗めない宝石-

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 あんなに綺麗に畳める空気だったのにこの記事はまだ終わらない! いつもそうや! 俺はしんみりした感じで終わらせるのが恥ずかしいから絶対最後にちょけるんや!

 『クロノ・クロス:ラジカル・ドリーマーズ エディション』のもうひとつの目玉、それこそはスーパーファミコン用のゲーム配信サービス「サテラビュー」にて配信されたこの『ラジカル・ドリーマーズ -盗めない宝石-』! 衛星から送られてきたゲームを遊べるとか、何か夢のある話ですよね……。

 これまで入手困難だったサテラビューのゲームがシレっと同梱されている。そう、本当にシレっと。今作が発表された2月10日のニンテンドーダイレクト、私はOPテーマの「CHRONO CROSS ~時の傷痕~」が流れてきた時点で「嘘!?」と狼狽してしまったので、この『ラジカル・ドリーマーズ -盗めない宝石-』がシレっと同梱されていることは後から知った。いや、そのぐらいぬるっと同梱されているのだ。

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 一部の細かい設定などは異なっているものの、この『ラジカル・ドリーマーズ -盗めない宝石-』は『クロノ・クロス』の原型となっているゲーム。7つのシナリオが用意されており、最初からプレイできる「kid 盗めない宝石」編がまんま『クロノ・クロス』の原型。

 主人公の「セルジュ」、盗賊の少女「キッド」、闇の魔導士「ギル」、この3人が辺境の貴族「ヤマネコ大君」の館に忍び込むところから物語は始まる。いや、思ったよりだいぶ原案だな!

 本作は半分ADV半分RPGといった趣になっており、ADVパートを進めていくうちにモンスターとエンカウントし、バトルが始まる。プレイヤーはここでセルジュがどのような行動を繰り出すかの選択を迫られるのだが……

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 不正解の選択肢を選びすぎると普通に死ぬ。当然の如くセルジュが死ぬと最初からやり直し。いや、普通に本編より難しくね……?

 ADVパートは少し歯応えのある感じに仕上がってはいるものの、『クロノ・クロス』の元となった作品を楽しめるのは間違いない。クロスに受け継がれる部分を見つけるのもヨシ、クロスとは違う部分に気付くのもヨシ、どちらにせよ『クロノ・クロス』にハマった人はきっと楽しめるはず。ぜひ本編のクリア後に触ってみよう。

 『クロノ・クロス:ラジカル・ドリーマーズ エディション』はNintendo Switch、PS4、Xbox one、Steamで好評発売中! フレームレートどうこうとか色々言われてるけど、私としては普通に問題なく楽しめると思います! 発売当時に遊んだ人も、まだ遊んでいない人も、ぜひ遊んでみてくださいね!

 最後まで読んでくれて……

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ライター
転生したらスポンジだった件
Twitter:@yomooog

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