7月27日は『MOTHER』シリーズが生まれた日。「エンディングまで、泣くんじゃない。」のキャッチコピーを代表に、豊かな「ことば」の表現が無二の魅力を生んだ名作RPGシリーズ

 7月27日は『MOTHER』シリーズが誕生した日だ。

 第1作にあたる『MOTHER』は1989年7月27日に、ファミリーコンピュータ向けに発売されたRPG。コピーライターやエッセイスト、タレント、作詞家など多彩な分野で活躍する糸井重里氏がディレクションやゲームデザイン、シナリオを手がけたことで知られる。

 2020年には、シリーズの「ことば」をすべて収録した書籍『MOTHERのことば。』が発売されるなど、ゲーム中の会話やテキストが強烈な個性を放つ作品として、今なお多くのゲームファンに支持されている。特に初代『MOTHER』の「エンディングまで、泣くんじゃない。」のキャッチコピーは非常に有名な一節と言えるだろう。

 当時のRPG作品はファンタジー風の世界を舞台としたものがメジャーであったが、『MOTHER』は現代を舞台としており、アメリカの田舎町「マザーズデイ」から物語は幕を開ける。デパートで買い物をしたり、ホテルで宿泊して回復したりと、ゲームプレイも当時のリアルな雰囲気を反映したようなデザインが用いられていた。

『MOTHER』ゲームプレイ画面
(画像は任天堂公式トピックスより)

 戦闘面ではランダムエンカウント方式を採用し、通常攻撃やグッズ(アイテム)のほか、超能力「PSI」を駆使したバトルが展開。戦闘終了時のバトルログも敵キャラクターによってさまざまなメッセージが表示されたりと、豊かな表現技法の片鱗はここでもうかがうことができる。

 主人公は公式サイトでは「ぼく」とされ、名前はプレイヤーが任意に決定する形を取っていた。公式スクリーンショットなどでは「ニンテン」などが用いられている場合が多い。仲間キャラクターとしては「ロイド」(おともだち)、「アナ」(おんなのこ)、「テディ」(もうひとりのおともだち)の3名が登場する。

 現在でも高く評価される音楽面は、アニメ版『ポケットモンスター』で知られる田中宏和氏と、バンド「ムーンライダーズ」所属の鈴木慶一氏のふたりが中心を担った。『MOTHER』、および続編の『MOTHER2 ギーグの逆襲』の音楽については、田中宏和氏、鈴木慶一氏、糸井重里氏の3名による対談「MOTHERの音楽は鬼だった。」が公開されているため、興味を持たれた方はぜひこちらも目を通してみていただきたい。

『MOTHER』ゲームプレイ画面2
(画像は任天堂公式トピックスより)

 続編となる『MOTHER2 ギーグの逆襲』(以下、MOTHER2)は1994年の8月27日、スーパーファミコン用のソフトとして発売。「大人も子供も、おねーさんも。」のキャッチコピーも印象深い。アメリカが中心となっていた初代『MOTHER』から世界規模へと物語の幅を広げ、さまざまな国や地域をモチーフとした多彩なロケーションを堪能しながら冒険を繰り広げていく。

 戦闘システムには多くの変更が取り入れられ、まずフィールド上にエネミーが表示されるシンボルエンカウント方式を採用。敵の背後から触れることで先制攻撃のチャンスを得たり、逆に背後から奇襲を受けるなど、ランダムエンカウント方式では不可能だったゲーム性を獲得した。

 バトル中のHP、PSIの使用時に消費する「PP」はドラムロール型に表現され、数値上はHPがゼロになる攻撃を被弾しても、ロールが終わる前に回復行動を行えば戦闘不能を回避することが可能。ターン制のコマンドバトルながら、素早い判断も必要とされるリアルタイム性を取り入れることに成功している。

『MOTHER2』ゲームプレイ画面1
(画像は任天堂公式トピックスより)

 本作にもユニークなキャラクターの数々が現れてくるが、その最たる例と言えるのが「どせいさん」の存在だろう。顔から足が生えているような一頭身の体躯、頭頂部に生えた1本の毛には赤いリボンといったその外見もさることながら、彼ら独自の言語を独特のフォントで表現。そのインパクトは絶大であり、2022年に発売された「どせいさんカチューシャ」は発売からすぐに売切れになるほどの人気を博した。

 主人公キャラクターは前作同様「ぼく」、仲間キャラクターは「ともだち」とされるが、それぞれ「ネス」、「ジェフ」、「ポーラ」、「プー」といったランダム選択における第1候補が、公式サイトなどでも表記されていることから広く知られている形だ。

 特に主人公は「ネス」の名前で『大乱闘スマッシュブラザーズ』シリーズ全作品に登場。「PKファイヤー」や「PKサンダー」、「サイマグネット」などといった超能力を駆使するキャラクターとしてデザインされている。こちらではボイスも搭載されており、声優は「カービィ」などとの兼役の形で大本眞基子氏が務めている。

 初代『MOTHER』と『MOTHER2』については、2003年に『MOTHER1+2』のタイトルでゲームボーイアドバンス向けに移植が行われた。また、こちらの2作品については2022年2月時点で「ファミリーコンピュータ&スーパーファミコン Nintendo Switch Online」に収録。この際には糸井重里氏からファンに向けたメッセージも送られた。

 記事執筆時点での最新作にあたる『MOTHER3』は2006年4月20日、ゲームボーイアドバンス向けに発売された。もともとはニンテンドウ64の周辺機器「64DD」向けタイトルとして開発されていたが、一度は開発中止が発表。その後に開発は再開され、前作『MOTHER2』から約12年もの時を経てようやく発売にいたったという経緯がある。

 本作のキャッチコピーは「奇妙で、おもしろい。そして、せつない。」、ゲームの序盤は複数のキャラクターたちが入れ替わり主人公となる、群像劇風の物語展開が特徴的。中盤辺りからは主人公「リュカ」が中心となり、愛犬「ボニー」や「クマトラ」、「ダスター」といった仲間たちとの冒険が紡がれていく。

『MOTHER3』ゲームプレイ画面1
(画像は『MOTHER3』Wii Uバーチャルコンソール販売ページより)

 フィールド中ではボタンを押し続けてから離すことで「ダッシュ」を行えるようになり、こちらのアクションを活用したギミックも用意されている。本作までの『MOTHER』シリーズでおなじみだった「父親に電話してセーブする」という仕様は廃止され、代わりにマップ中の各所に配置された「カエル」と話すことでセーブを行う。

 戦闘システム面では『MOTHER2』からシンボルエンカウント形式やドラムロール式のHPメーターといった要素を継承。そのうえで、戦闘曲のリズムにあわせてボタンを押すことで連続してダメージを与えられる「サウンドバトル」システムを新たに採用した。すべての戦闘BGMにリズムが設定されており、敵を眠らせることでリズムを掴みやすくなるといった戦略的な一面も生み出した。

『MOTHER3』ゲームプレイ画面2
(画像は『MOTHER3』Wii Uバーチャルコンソール販売ページより)

 ゲーム中には「サウンドプレーヤー」も収録されており、ゲームボーイアドバンスを音楽プレーヤーのように使うことも可能。最初からすべての曲を聴くことができるが、そのタイトルは冒険を進めるにつれて明らかにされていく形となっている。お気に入りの曲だけを聞いたり、リピートやシャッフル再生も利用できたりと、本作が音楽面に力を入れていることがうかがえる

 その音楽を手がけたのは。『大乱闘スマッシュブラザーズDX』をはじめとする数々のゲームタイトルの音楽で知られる酒井省吾。特に有名な楽曲としては、本作のテーマソングとなった「愛のテーマ」が挙げられるだろう。こちらは糸井重里氏自身が作詞し、大貫妙子氏が歌唱を担当した「We miss you ~愛のテーマ~」と呼ばれるバージョンも登場している。

 主人公「リュカ」はWii向けに発売された『大乱闘スマッシュブラザーズX』にて同シリーズに参戦。ネスと同名の必殺技を持ちつつも性能は細かく異なっていたり、『MOTHER3』に登場した「ヒモヘビ」を使用できたりとオリジナルな性能を持つファイターとしてデザインされた。

 『MOTHER』シリーズは『MOTHER3』が最終作であり、「『MOTHER4』は発売されない」ことは、2011年に発売された雑誌「BRUTUS」における糸井重里氏と当時の任天堂社長である岩田聡氏の対談でも明言されている。(参考:ほぼ日ニュース

糸井重里氏と岩田聡氏
(画像はほぼ日ニュースより)

 一方で、糸井重里氏が代表取締役を務める「株式会社ほぼ日」を中心にグッズやイベントといった展開は現在も続いている。上でも触れた『MOTHERのことば。』や公式トリビュートコミック『Pollyanna』シリーズなどが代表的な例だ。2022年には、ほぼ日が主催する「生活のたのしみ展2022」内で「MOTHERのデパート」がオープンするといった展開も見られた。

 また、ほぼ日の公式サイトでは上述した「MOTHERの音楽は鬼だった。」のほか、「『MOTHER』の気持ち。」(2003)や「『MOTHER2』ふっかつ記念対談」(2013)などといった貴重な読み物系コンテンツもアーカイブとして残されている。もちろん新グッズのニュースなども随時更新されているので、『MOTHER』シリーズを好む方ならば定期的にチェックしておいて損は無いだろう。

 ゲーム本編は3作品のみながら、数多のプレイヤー、そして少なくない数のクリエイターにも大きな影響を与えた『MOTHER』シリーズ。新作の登場こそ否定されているが、今なお多くのファンに愛され続けていることは想像に難くない。今後も魅力的なグッズやイベントといった形での展開が続き、本シリーズの魅力が長く語り継がれていくことを祈りたい。

ライター
1998年生まれ。静岡大学情報学部にてプログラマーの道を志すも、FPSゲーム「Overwatch」に熱中するあまり中途退学。少年期に「アーマード・コア」「ドラッグ オン ドラグーン」などから受けた刺激を忘れられず、プログラミング言語から日本語にシフト。自分の言葉で真実の愛を語るべく奮闘中。「おもしろき こともなき世を おもしろく」するコンピューターゲームの力を信じている。道端のスズメに恋をする乙女。
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