「刺さる人にはブッ刺さる」数々のインディーゲームの名作がこう評される背景には、少人数での制作ゆえに、作り手の“味”が濃厚に凝縮されて現れることがあるのではないだろうか。クリエイターの趣味や嗜好、「好き」を詰め込んだ熱量を持った作品には、やはりプレイヤーの心にも響く力があるはずだ。
今回、2月2日(木)より台湾・台北にて開催されていた「台北ゲームショウ」で出会った『Cuisineer』も、そんな作品のひとつである。シンガポールの開発スタジオ「BattleBrew Productions」による本作は、キュートすぎるケモノ美少女×レストラン経営×ローグライトアクションという、さまざまな要素を盛りに盛ったようなゲームだった。
『Cuisineer』はひと言で語れば、かわいらしい猫耳美少女の「Pom」がレストランを経営をしていくシミュレーションゲーム。レストラン経営にあたっては、もちろん料理を作る必要がある。その料理を作るための材料集めのパートが、見下ろし型のローグライトアクションゲームとなっているハイブリットな作品だ。
ゲームの流れとしては、まず食材集めからはじまる。いくつかのテーマや難度で分かれた複数のダンジョンが存在しており、その中からひとつを選んで潜入。ダンジョンは階層が分かれており、下に行けば行くほど難度が上昇し、HPが0になってしまうと今まで獲得していたアイテムをほとんどロストしてしまう。
プレイヤーは弱攻撃、強攻撃、回避、必殺技など駆使しながら、野生の敵キャラクターたちを討伐していく。装備や必殺技はカスタマイズが可能となっており、ある程度自由なスタイルで戦闘を組み立てられる。
操作感は最近の作品でいうと『Hades』『TUNIC』のような見下ろしアクションの定番スタイルのようなものを採用しているため、この手のゲームに慣れている人はすんなりと入り込むことができる。また、難度が上がっていくと敵の攻撃も熾烈になっていくため、なかなかな歯ごたえも期待できそうだ。
食材を集めたらレストランの経営パートに。レストランの開店時間は自分で選ぶことができ、好きな時に好きな時間だけレストランを営業することができる。開店したらお客さんが来店して注文を告げるので、その注文にあわせてキッチンで材料を駆使しながら料理を作っていく流れとなる。ストアページによると100種類以上のレシピが存在しているそうだ。
こうして稼いだお金は自分の装備の購入や強化に使うことができる。街に出るとさまざまなかわいらしいケモノキャラたちがお店を経営しており、そこでコミュニケーションをとりながら買い物ができるという具合だ。
本作はシンガポールのデベロッパーである「BattleBrew Productions」が制作しており、ブースにいたリードデザイナーであるShawn Toh氏が質問に答えてくれた。
本作は10人ほどのチームで制作をしており、メンバーにはアクションゲームが好きな人、シミュレーションゲームが好きな人と、さまざまな趣味嗜好を持った人たちが集まっているという。
シンガポールと言えば、多民族国家としても知られる国だ。人口の40%弱が永住者およびその他外国籍の人。さらに、ひとつの国に英語、マレー語、中国語、タミル語の話者が生活しており、大体多くの人が二か国語を使い分けている。そんな多様な文化が混ざりあう国から生まれた『Cuisineer』もまた、色とりどりの料理が並ぶおもしろい作品になることが期待できそうだ。
Continuing on from last week, my parents used to cook curry for the Fireflame Festival and share it with the rest of the town!
— Pom @ Cuisineer (@cuisineer) November 9, 2022
It's so versatile and you can eat it with bread, rice, and even noodles!#cuisineer #indiedev #gamedev #pomrestaurantrecipes pic.twitter.com/5PEpvpBoZU
A while back I introduced Ice Kacang from the Bird's Eye Isles, but different places have their own version.
— Pom @ Cuisineer (@cuisineer) December 7, 2022
Hailing from the country of Gochu, this version of shaved ice is silkier and smoother on the tastebuds!#cuisineer #indiedev #gamedev #pomrestaurantrecipes pic.twitter.com/p3ftZk8K1i
そして、レストラン経営というコンセプトが思い付いた背景には、コロナで外食がなかなかできないという制限があったそう。家族や友人と心置きなく外食を楽しめなくなってしまう悲しみは、どの国でも、どんな文化でも共通なのかもしれない……と感じさせられたエピソードだ。
また、主人公の「Pom」の性格はおっちょこちょいだそう。そんな性格だとレストラン経営ができるか難しいと思われるが、ひとりっ子な上に、親からこのレストランを受け継いだため、その困難を乗り越えなくてはならず、それもまたひとつ本作のテーマとなっているそうだ。
また、本稿の執筆時点ではSteamストアページには英語表記しかないものの、日本語をはじめとしたさまざまな言語にローカライズされる予定だそう。日本語のアナウンスが出たら即座にニュースとして取り上げたいと思う。
コロナ禍の制約から生まれた、シンガポールのかわいくて面白いインディーゲーム『Cuisineer』にこれからも注目していきたい。