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指先だけでなく、頭もフル回転させる“忙しさ”でハイになれる! SFアクション『スカーズ アバブ』の目が回るほど忙しいバトルが予想以上に楽しすぎた

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 “忙しさ”というのはある種、最高にスパイシーな刺激かもしれない。もちろんワーカーホリックを肯定するわけでもなければ、筆者がものすごく勤勉なわけでもない。ただ、例えゲームでも忙しなく動いたあとって謎の充足感があるよね……というお話である。 

 単にゲームスピードが早いのが好き、というわけでもなく、贅沢を言えば頭の回転の方も求めたくなる。なんというか、「この危機的状況下でクールに計算して、スマートに攻略する俺カッコイイ……」がやりたいのだ。だからほどほどに速くてハイになれるけど、思考を働かせるくらいの余裕は欲しい、というのが本音である。

 そういう意味で、今回ご紹介する『スカーズ アバブ(Scars Above)』はまさに筆者の求める“忙しさ”にぴったりの作品だった。未知の惑星に流れ着いてしまった主人公がクリーチャーと戦い生き延びる姿を描くSFアクションゲームなのだが、この主人公、設定上では「科学者」なのである。

 そのため、ゲーム中でも巨大な武器で辺り一面を焼き払ったりとか、超スタイリッシュな近接アクションを決めたりとかはできない。その代わりに用意されたのが、電撃や炎、氷といった「属性」を持つ武器たちである。優れた状況判断とその場に適した武器の選択が求められる、まさに“インテリっぽい”戦い方が楽しめる作品だ。

 そういうわけで、本項では『Scars Above』の簡単なゲームシステムと、プレイヤーを夢中にさせる“忙しさ”をはじめとした魅力をご紹介していきたい。恥ずかしながら筆者としてもノーマークな作品だったのだが、予想以上に楽しむことができたため、ぜひご一読いただけると嬉しい。

文/久田晴

※この記事は『スカーズ アバブ』の魅力をもっと知ってもらいたいPLAIONさんと電ファミ編集部のタイアップ企画です。


しっかり整えられた土台で直感的に遊べる

 本作の基本システムはアクション性を重視したTPSと言えるもので、操作系もシューター作品に慣れている方ならすぐに順応できるほどなじみやすいシンプルなものに整えられている。

 射撃主体のゲームとしては珍しい「スタミナ制」を採用しており、ローリング回避やダッシュにはスタミナを消費する。非戦闘時のダッシュはかなり消費量が少なく抑えられているので、探索中のストレスはそれほど大きくない。基本的には戦闘にメリハリをつけるための要素と考えていいだろう。

 設定上、主人公の「ケイト・ワード」は“博士”だ。軍人ではなく、装備している武器も元々は工具だった代物をカスタマイズして銃の代わりに運用しているような設定となっている。そのため、弾薬を垂れ流して敵を一掃するというような戦い方はできず、緊張感の強い戦闘を乗り越えていくといったような感触を抱いた。

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 上述した通りのスタミナ制、慎重に立ち回ることが求められるモブ敵とのバトル、敵が復活する代わりに回復薬と弾薬の補充ができるチェックポイントの「柱」……いわゆる「ソウル」からの波動を感じる部分はいくつもある。
 ただ、経験値ロストなどのデスペナルティは無く、随所にはチェックポイントに通じるショートカットも用意されているため、多少は心軽やかにほっつき歩いて死ねるゲームバランスとなっている。

 ミニマップなどは用意されていないが、基本的には次に進むべき場所のポインターと、多少のログのチェックで進むべき方向は把握できる。探索で得られるのはおもにアビリティの取得に使う経験値や戦闘用のリソース、ストーリーを補完するログなどなど。マップに配置されたオブジェクトを射撃して広範囲に炎を広げたり、周囲をスキャンしてアクティブになっていない敵を先制攻撃したりと、注意を怠らなければ戦闘も優位に進めやすい。

 近接攻撃も最序盤から用意されているが、スタミナを消費する&威力が特別高いわけではない&弾薬が豊富に手に入る、と複数の事情が重なり、そこまで日の目を見ることは無さそうな印象だった。とはいえ、成長要素であるアビリティの中には近接でトドメを刺せば体力が回復するといったものもあり、試してみる価値はあるかもしれない。

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 このように比較的オーソドックスな基礎システムのうえに築かれている『スカーズ アバブ』だが、その面白さの肝はやはり“属性”を活用する戦闘アクションにある。次項ではその内容について少し詳しく解説していきたい。

属性効果と多彩なアイテムを駆使する忙しない戦闘が輝く

 まず『スカーズ アバブ』では複数の銃を使い分けることができ、それぞれが別種の属性を持つ。もっともシンプルなライフル風のものは電撃チャージして放つ炎グレネードランチャーのような軌道で範囲攻撃ができる氷……といった具合だ。

 そして電撃であれば水を伝播して複数の敵にダメージを与えることができるし、氷はヒットさせ続ければ一時的にターゲットの動きを止められるなど、属性ごとに特性が用意されている。また、氷属性で水面を凍らせて通り道を作るなど、戦闘だけではない運用方法も用意されている。

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 また一部の敵には“弱点”が設定され、こちらを対応する武器で攻撃することで大きなダメージを与えられる。ただし敵も常に撃ちたい部分を露出してくれるわけではないので、攻撃の隙を突いたり、氷属性で動きを鈍らせたりと工夫する必要が出てくるだろう。

 敵の種類や周囲環境、各武器の残弾数と相談しつつ、リアルタイムに有利な状況を作り上げていく必要があるため、戦闘中に考えるべきことはかなり多い。特にボス戦などでは回避しながら弱点を狙い、ときにリロードや相手の特殊行動に対する対処を行い……と目まぐるしい濃密なバトルを体験できた。

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 もうひとつ『スカーズ アバブ』の戦闘に深みを与える要素がさまざまなアイテムの使い方だ。本作ではHP回復、毒などの状態異常解除、弾薬補給などの行動がひとつのリソースに集約されており、リングメニュー形式から選んでおいて、ワンボタンで発動するといった形を取る。

 もちろん無制限に使用できるわけではなく、各アイテム使うたびに共通の資源である「繊維」を消費していく。ただし繊維はフィールド中に数多く散らばっているほか、倒した敵からも入手できる場合があり、比較的ふんだんに利用しながら進むことができる。

 とはいえやはりリソースが共有されているので、どれもこれもと使いすぎると肝心なところで「回復ができない!」といった事態に陥ってしまう。特にHPの回復はチェックポイントごとに補充できるものも別スロットで用意されているので、よく考えて運用すると良いだろう。

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 また、アイテムの中には繊維ではなく「バッテリー」を消費するものもあり、こちらには数回分のダメージを肩代わりしてくれるシールドや、炎攻撃とあわせて使えば広範囲を燃焼させられる燃料グレネードのような投擲物などが登場していた。特に序盤では矢継ぎ早に使える武器、ガジェットが増えていくので、どんどん戦闘が楽しくなっていく。

SF映画のような雰囲気が充満した世界も味わい深い

 ここまでゲームシステムのおおよそを解説してきたが、本項では軽く『Scars Above』の世界の魅力と、その語り口の巧みさをご紹介したい。まず、プレイヤーキャラクターとなる主人公は「ケイト・ワード博士」。上でも触れた通り軍人や傭兵といった類の人物ではなく、あくまで科学者である。

 彼女は、地球軌道上に現れた謎の構造物「メタヘドロン」を調査するべく編成された精鋭チーム「SCAR」の一員だ。しかし、ケイトとチームメンバーはメタへドロンの謎の力により、未知の惑星に飛ばされてしまう。ひとり危険に満ちた星を歩くことになった彼女は、離れ離れになったチームメンバーを探すために歩き出す……といった流れで物語は幕を開ける。

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 本作の特徴のひとつが、非常に“SFっぽさ”のある演出と、主人公が“科学者”であるという点をうまく使ってSF映画のような雰囲気を作り上げている点だ。例えば初めて倒した敵は、スキャンすればケイトがその身体構造を分析してコメントしてくれたり、記録されるログから弱点を導き出せる場合もある。

 上述の通り「ソウルライク」的な要素も持つ『スカーズ アバブ』の主人公は“科学者”。ゲームとしても極端な高難易度を誇るわけではないが、たやすく前へ前へと進めるレベルでもない。つまるところ、プレイヤーには敵の行動パターンや弱点を“学び”、身に着けていく過程が自然と求められるのだ。

 自然に攻略を進めるうえで行っていく「学習」という行為そのものが、主人公・ケイトのキャラクター性と調和を果たす。攻略法を見出し、倒せた相手には自信をもって立ち向かえるようになる。そうしたゲームプレイ上の成功体験と、キャラクターであるケイトの成長がシンクロし、達成感へと結びついているように感じられた。

 もちろん、さまざまな属性を使ってスマートに攻略するという全体を通した戦闘のコンセプトや、現地の生物からヒントを得て武器を作るシチュエーションなど、彼女の科学者っぷりが発揮される場面はこのほかにもたくさんある。

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 また、空気の重そうな湿地帯や、あたりに点在する謎の人工物など、風景の面でも雰囲気づくりはばっちり。クリーチャーのデザインも良い感じに不気味で、中には奇襲を仕掛けてくる個体も存在する。危険に満ちあふれた未知の惑星を手探りで歩いている、そんな心細さを感じさせてくれた。

 特にインパクトの強いものが、序盤で探すことになるとあるメンバーの音声ログ。危険な状態に陥ってしまったらしい彼は、最初こそ冷静さを失わずに対処法を探していたようだが、徐々にその音声には狂気が入り混じるようになり……とまさにパニックホラー的な展開が楽しめる。彼の末路についてはぜひご自身の目で確かめていただきたい。

頭も使う“忙しい”バトルをお腹いっぱい楽しめるTPS

 『スカーズ アバブ』の戦闘アクションの楽しさをひと言で表現するならば、それは「忙しさ」だろうか。一般的な近接アクションのゲームと異なり、射撃が主体の作品なので、戦闘時には常に「エイム」という工程が必要になる。しかもクリーチャーには狙うべき弱点が用意されているため、とりあえず撃って当てれば良いというものでもない。ただ指が慌ただしいだけでなく、頭も回さなくてはならない「忙しさ」なのだ。

 本作の戦闘では、スタミナ管理がともなう回避、属性を切り替えながら行う精密な射撃、多彩なアイテムから必要なものを選定&運用という3つの要素が絡み合っている。ひとつひとつは多少ゲームに慣れているプレイヤーであれば心配ないレベルだが、もちろん実戦ではこれらが複合した状況に直面することになる。

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 特に緊迫した戦闘を振り返ってみると、本当に余裕が無かったことを思い出す。とある序盤のボス戦などでは、迫りくるマルチタスクにテンパって頭が真っ白になり、棒立ちで武器を選び始めてしまった一幕もあった。だが、終わってみるとそれが不思議と心地いいのである。我を忘れるほど夢中に、本気になれる戦いというものは、やはり何よりも健康に良い。

 プレイを始める前は「科学者が主人公って言ったって、シューターなんだから結局は頭に弾を当てればいいんだろ……」などと荒んだ思いも抱いていたが、実際に遊んでみると頭に当てるよりも大事なことがいくつもあった。頭脳とフィジカルの両方を駆使して戦う楽しみ。SF映画のような本作の世界でそれを表現するとき、「科学者の主人公」という設定は本当に最高のチョイスだったのかもしれない。

 『スカーズ アバブ』は2月28日(火)よりPS4、PS5、Xbox One、Xbox Series X|S、PC(Steam)向けに発売を開始する。SFファンの方はもちろん、少しユニークな歯ごたえあるバトルを楽しみたい! という方はぜひお手に取ってみてはいかがだろうか。

ライター
1998年生まれ。静岡大学情報学部にてプログラマーの道を志すも、FPSゲーム「Overwatch」に熱中するあまり中途退学。少年期に「アーマード・コア」「ドラッグ オン ドラグーン」などから受けた刺激を忘れられず、プログラミング言語から日本語にシフト。自分の言葉で真実の愛を語るべく奮闘中。「おもしろき こともなき世を おもしろく」するコンピューターゲームの力を信じている。道端のスズメに恋をする乙女。

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