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『プリンス オブ ペルシャ』新主人公は『バガボンド』の影響を受けて生まれた…⁉ 日本アニメ・マンガ好きの開発者が“新たなひねり”をくわえたシリーズ最新作の魅力を聞いてみた

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 「アラビアンナイト」のようなお洒落な雰囲気、そして殺意マシマシの罠とシビアな足場渡りアクション。筆者が『プリンス オブ ペルシャ』というタイトルに抱いていたイメージはそのようなものだった。

 6月9日(金)に「Future Gaming Show 2023」にて発表された新作『プリンス オブ ペルシャ 失われた王冠』(以下、失われた王冠)を見る限りでは、そのイメージはそれほど間違っていなかったように思える。

 しかし本作の発表には過去作のファンからはもちろん、単に「メトロイドヴァニア」系の新作タイトルとしても注目する声が見られたのは特筆しておくべきポイントだろう。

 現在、日本でもメトロイドヴァニアというジャンルそのものの人気が高まっている。となれば『失われた王冠』を「『プリンス オブ ペルシャ』の新作」ではなく、あえて「良さげなメトロイドヴァニア」として見てみることにも価値があるはずだ。今や、名作と呼ばれる作品がいくつも並ぶ同ジャンルにおける、『失われた王冠』の魅力とは何なのか?

 本稿ではUbisoft Forwardにあわせ、アメリカ・ロサンゼルスのMagic Boxで開催されたリアルイベントで体験できた『失われた王冠』デモ版のプレイフィール、そして記事後半には本作のゲームディレクター・Nournir Radi氏へのインタビューをお届けする。

 特にインタビューでは『バガボンド』をはじめとする日本のマンガ・アニメからの影響など、意外なエピソードもお聞きすることができた。ぜひ、最後までご一読いただければ幸いだ。

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文・取材/久田晴


難しい! だけどミスを恐れる心配が少ないプラットフォームアクション

 まず、会場でデモ版を遊んで得た感触は……最高に楽しかった!

 アクションは多彩だが、それぞれの操作は直観的でなじみやすい。回復リソースが乏しく緊張感の高いバトルは、慣れていくうちにどんどん楽しくなっていく深みも持ち合わせる。決して簡単な作品ではないが、余計なストレスを排除し、難しいことがしっかりと面白さにつながっているような印象を受けた。

 例えば『失われた王冠』の注目ポイントのひとつが、主人公・サルゴンが持つテレポート能力だ。こちらはテレポートボタンを一度押すと、そのとき立っている場所にサルゴンの幻影のようなものが現れる。そしてもう一度ボタンを押せば幻影のところまで瞬時に戻ってくるという、“巻き戻し”にも近い仕様のものとなっている。

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 最初に感じたテレポートの魅力は、お手軽なチェックポイントとして機能してくれる点だ。安全な位置に幻影を設置しておけば、飛び越えるのが難しそうな足場やタイミングがシビアなトラップにも安心して挑戦できる。

 筆者は長らく足場から足場へ飛び移っていく、いわゆるプラットフォーム・ゲームと呼ばれるジャンルには苦手意識を抱えていた。今回の体験会でも「足場が渡れないまま試遊時間なくなったらどうしよう……」と心配していたのだが、このテレポート機能は前へ一歩を踏み出す心のハードルを大きく引き下げてくれた。

 「ワンミスですべてが台無しになる」、「マグレで通過できたところに再チャレンジしなくてはならない」など、プラットフォーム・ゲームに不慣れなプレイヤーの心を折りかねないシチュエーションの予防として機能してくれるはずだ。

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 テレポートはもちろん保険としてだけでなく、アクションの幅を拡張することにも活用できる。例えば突進してくる敵を前方向へのジャンプで避けるとき、幻影をあらかじめ残しておけば、後ろから走って追いついて攻撃するよりもスムーズに反撃できる。強力な範囲攻撃の回避などにも活躍してくれるだろう。

 バトル面についてはいったん後に回すが、筆者が体験した序盤のステージでも殺意にあふれるトラップの数々や、“乗っているとなくなる足場”などが登場。壁ジャンプやスライディング、弓で射撃して足場を作るなど進むためにやるべきことは多く、アクションゲームとして単純に難しい面を持ち合わせていることは間違いない。

 それでも操作はスマートで慣れるまでに時間はかからず、また色々なところを見て回っていても自然と正規ルートにたどり着けるようなマップデザインがなされている。くわえて上述したテレポートの便利さもあわさり、現代的で遊びやすい、洗練された2Dアクションゲームだと感じた。

 なお、上でも少し触れたとおり本作は「メトロイドヴァニア」要素が強く、体験版の段階でも“今はまだいけない”ロケーションを複数確認している。さらに多彩なアクションが楽しめるであろう製品版に期待しておきたいポイントだ。

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好みのプレイスタイルを存分に発揮できるバトルアクション

 『失われた王冠』のバトルはとにかくやれることが多い。

  通常攻撃と溜め攻撃にはじまり、弓による射撃とチャージして投げるチャクラム、防御・回避面ではパリィにスライディングとバックステップ、もちろん戦闘中でも重要なジャンプ、そしてゲージを使った必殺技のような「ゾーンアビリティ(Zone Ability)」……など、どれも性能自体は複雑ではないが、的確に使い分けていくとなると存外やり応えがあるものだ。

 例えば敵の攻撃ひとつとっても、攻撃のラッシュで潰してしまうか、ジャンプやバックステップで距離をとって避けるか、スライディングで裏に回って避けるか、あるいはリスクをとってパリィすることで大きなリターンを狙うか。テレポートでいったん逃げてしまってもいいし、演出付きのゾーンアビリティで無理やりねじ伏せてしまうこともできる。

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 くわえて集団を相手にするシチュエーションも頻繁に訪れるので、その場その場での最適解を導き出すのは非常に難しい。裏を返せば、プレイヤーが思い思いのスタイルで場を切り抜けていく、高い自由度を備えたアクションと言えるだろう。

 ただその中でも、特にリターンが大きい行動がパリィだ。通常の攻撃であれば受け流して大きな隙を作れるし、矢をそのまま弾き返してダメージを与えたり、飛行する敵の突進もいなしてスタンさせられる。敵が赤く光ったのちに繰り出す大技を除いて、タイミングさえ掴めば大半の攻撃に有効な手段となり、ゾーンアビリティのゲージが大きく溜まるメリットもある。

 くわえて、敵キャラクターが黄色く光った後に行う攻撃に対してパリィを成功させると特殊演出が入り、大ダメージを与えられる。ボス戦でも訪れる好機なので、まずはこのタイミングを狙ってパリィを使えるようになると一気に戦闘の爽快感が増していくはず。

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 そして体験版で相手にしたボスが、以前に公開された映像でもその姿を確認できた「ジャハンダル」。ライオンのような体にサソリの尾、翼も生えているうえ、ヤギっぽい角を備えた悪魔のような顔という欲張りセットな怪物だ。

 欲張りセットな見た目通り、爪を使った攻撃はもちろん、尻尾で突き刺してきたり、大空に舞い上がってボディプレスしてきたりとアクションも多彩。リトライを重ねながらひとつずつ対処法を理解していくボス戦の感触は、筆者の好物である“死にゲー”にも近い大満足の内容だった。 

 ちなみに、体験会のジャハンダルは本来よりも“ちょっと強め”に調整してあったことをプレイ後に伝えられている。上で羅列した多彩なアクションも、本来であればこの時点ですべてがそろっているわけではないそうで、ボスの強さもそれに合わせた形とのこと。製品版ではもっと時間をかけて学びながら腕を磨いていくことができるのだろう。

主人公・サルゴンは『バガボンド』に影響を受けて生まれた…⁉

 ここまでは体験会を通して得た筆者自身の感想をお伝えしてきたが、以下には本作のゲームディレクターを務めるNournir Radi氏へのインタビューを掲載する。体験版のプレイからでは分からない、本作のストーリーやキャラクターにまつわる部分もお聞きすることができたため、ぜひご一読いただければ幸いだ。

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Nournir Radi氏

──本日はよろしくお願いいたします。先ほどデモもプレイさせていただきましたが、思わず熱くなるほど楽しい内容でした。

Mounir Radi氏(以下、Radi氏):
 ありがとうございます(笑)。開発スタッフも喜んでくれると思います。

──では、まず本作は『プリンス オブ ペルシャ』という歴史あるシリーズの新作となるわけですが、オリジナルストーリーと新たな主人公というところで、これまでシリーズに触れてこなかったプレイヤーも遊びやすそうな印象を受けました。

Radi氏:
 はい、本作は『プリンス オブ ペルシャ』シリーズのリニューアルをイメージして制作しています。「2Dアクション」という形になったのは原点回帰という意味もありますが、開発陣にはこのジャンルに秀でたスタッフがそろっており、そのノウハウを活かしてシリーズのルーツをたどりつつ、新たなチャプターを築きたいという想いもありました。

──原点の『プリンス オブ ペルシャ』ですと、主人公がお姫様を助けに行く……という王道のあらすじですが、今回は不死隊に所属する戦士の主人公・サルゴンが「プリンス」を助けに行く流れになっていますよね。

Radi氏:
 そうですね(笑)。シリーズの歴史はリスペクトしなければなりませんが、そのうえでちょっとしたひねりを加えたい、というところで今作はこうした主人公を採用しています。ただ、ストーリー面で「若者が成長して大人になる姿」を描くというところは過去の作品からも受け継いでいますし、そういった物語が展開していきます。

──主人公の成長はひとつキーワードになりそうですね。ほかの不死隊のメンバーも登場していましたが、彼らと共闘するような展開はあるのでしょうか。

Radi氏:
 少しネタバレになってしまうので深い言及は避けますが、実は今日遊んでいただいたデモの部分でも、正式版では不死隊のメンバーたちが登場します。……ときには難しい決断を迫られる場面も訪れますよ。

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──なるほど……。本作は近年ホットな「メトロイドヴァニア」的な要素の強い作品となっていますが、開発においてはどのような点を意識されていたのでしょうか。

Radi氏:
 メトロイドヴァニアというジャンルは近年ではポピュラーな存在ですが、実はこのジャンルのゲームを作るのは非常に難しいんです(笑)。ただ、今作では何度も失敗して、あまりにも時間がかかりすぎてしまうようなゲームプレイは避けたかったんです。サルゴンのテレポートもそのために用意しました。

 くわえて、ゲーム中すべてがプレイヤーにとって意味のある体験になるよう心がけています。ゲームプレイに細かな調整を行い続けたのはもちろん、ストーリー面もジャンルにフィットするようなシナリオを考えだしました。

──メトロイドヴァニア作品は難しいものが多い印象ですが、確かにテレポートの存在が不慣れなプレイヤーの支えになってくれるように感じました。

Radi氏:
 そうですね、ふだんプラットフォーム・ゲームをプレイしない方に向けた配慮もテレポートのひとつの意味です。それと同時に、本作ではアクションの組み合わせという点を特に重視しています。

 テレポートをはじめ、多くのアクションが用意されている中で、プレイヤーの方がそれを自由に組み合わせて自分好みのプレイスタイルを作り上げられるようなシステムを目指しています。これは「自分のやり方を貫きたい」と考えている主人公・サルゴンの性格にもマッチしているものですね。

──アクション面ですと、デモを体験する中ではパリィが非常に強力だという印象を受けました。

Radi氏:
 はい、ハイリスクハイリターンなパリィを成功させ、押されていた戦況を一気に巻き返す、そうした爽快感をひとつ重要な要素としてバトルをデザインしています。パリィに成功するとゾーンアビリティを発動するためのゲージも大きく溜まる、単にダメージを与えるチャンスという以上の価値を持っているのはそういう理由です。

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──ありがとうございます。それではそろそろお時間も近くなって参りましたので日本のファンに向けて何かメッセージをお願いいたします。

Radi氏:
 実は私たちは『ドラゴンボール』『ナルト』『鬼滅の刃』といった日本のアニメが大好きでして。本作のサルゴンも井上雄彦先生のマンガ『バガボンド』の主人公・宮本武蔵から大きく影響を受けているんですね、サルゴンが二刀流なのもそれが理由だったりします(笑)。

 なので日本からの影響という観点からも、本作『プリンス オブ ペルシャ 失われた王冠』に注目していただけると嬉しいですね。

──それは意外な接点でした(笑)。本日はありがとうございました!(了)


 Ubisoft Forward/Magic Box イベントで体験できた『失われた王冠』に関する内容は以上となる。体験会で味わえた内容は作品のごく一部だが、インタビューの内容もふくめ、本作が見据えている方向性については見えてくるものもあるのではないだろうか。

 特に『バガボンド』からの影響など、意外な日本との接点についてもお聞きすることができた。日本アニメのエッセンスが、ペルシャを舞台にどのような形で昇華されているのかにも注目していきたい。

 『プリンス オブ ペルシャ 失われた王冠』は2024年1月18日にNintendo Swtich、PS4、PS5、Xbox One、Xbox Series X|S、PC(Epic Games Store、Ubisoft Store)での発売を予定している。今後も本作に関するさらなる情報公開を待ちたいところだ。

ライター
1998年生まれ。静岡大学情報学部にてプログラマーの道を志すも、FPSゲーム「Overwatch」に熱中するあまり中途退学。少年期に「アーマード・コア」「ドラッグ オン ドラグーン」などから受けた刺激を忘れられず、プログラミング言語から日本語にシフト。自分の言葉で真実の愛を語るべく奮闘中。「おもしろき こともなき世を おもしろく」するコンピューターゲームの力を信じている。道端のスズメに恋をする乙女。

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