皆さんは「影だけを踏む遊び」をやったことはありますか? 読んで字のごとく、どこかの目的地へ向かって、建物やガードレールなどの影を伝って移動していく遊びです。
そんな遊びが作品全体のルールとなったゲームが『SCHiM』です。
7月14日(金)から7月16日(日)にかけて京都市勧業館「みやこめっせ」で開催中のインディーゲームイベント・BitSummit Let’s Go!!。今回私はこちらのイベントのビジネスデイに参加し、『SCHiM』の試遊を体験させていただきました。
本作は陰から影へと飛び移るゲーム性と、夕焼けや夏の日差しなどを思わせる単色を基調とした色合いによって、プレイヤーをなんだかノスタルジックな気持ちにさせてくれる素敵な作品でしたので、簡単なプレイレポートの形で紹介させていただきます。
文/うきゅう
まず軽く、本作のゲーム内容を紹介させていただきますと、プレイヤーは万物の影にひとつずつ宿っている魂「スキム」を操作しながら、ひとりの人間の影のなかでその成長を見守ります。しかし、ある出来事をきっかけにスキムと人間が離れ離れになってしまい、プレイヤーは“手遅れにならないうちに”スキムを元の人間のもとへと戻すべく奮闘します。
ストーリーを要約すると緊迫感のある、慌ただしそうなゲームのように感じるかもしれませんが、実際のところ作品の空気は緩やかで、プレイヤーはリラックスした状態でステージを遊び、物語の展開を追うことができます。
この緩やかな空気を生んでいるのが、本作のアートワークにあることは疑う余地もないでしょう。本作に登場するキャラクターたちは記号的にディフォルメされており、その表情を読み取ることはできません。
また、試遊の範囲ではキャラクターたちの会話シーンなどもなく、展開はパントマイムのような身体を使った大きな仕草によって窺い知ることになります。記号的なキャラクターたちによるボディランゲージが、作品全体にコミカルな印象を与えているんですね。
本作の緩さは、ゲームのルール部分にも通底しています。作中でプレイヤーの操作するスキムは影のなかでしか存在できず、影から影へとジャンプしながら移動していきます。
移動中に影の外にでてしまうと少し前のチェックポイントまで戻されてしまうのですが、戻されるまでに少しだけ猶予時間があり、一度だけならジャンプをすることもできます。ルール違反に対して「今のはセーフ」「ノーカン」などと言い張って遊びを続行した子供時代を思い起こさせるようなこの緩さが、なんとも言えず心地いいんですよ。
一方で、プレイヤーを童心に返すようなゲームプレイとともに作中ではプレイヤーが操作するスキムの片割れである少年が成長していき、恋をしたり、失恋したり、就職したり、なにをしでかしたのか首にされて職場を追い出されたり。といった様子が描かれていきます。
理想化されたノスタルジックな「在りし日」と、必ずしも思い通りとはいかない現実を過ごす「今日」の対比ですね。前述した、記号的で表情も読み取れないキャラクターたちの大げさな身振りだからこそ、遊んでいる自分自身の体験がオーバーラップしてきて、30分足らずのわずかな試遊時間ですらホロッと泣いてしまいそうでした。
そんな『SCHiM』の試遊も楽しめる、日本最大級のインディーゲームイベント・BitSummit Let’s Go!!は7月14日(金)から7月16日(日)まで、京都市勧業館「みやこめっせ」にて開催中です。
初日の14日(金)はビジネスデイとなっていますが、15日(土)と16日(日)は一般公開日となっており、一般/大学生の方は税込2000円、高校生の方は税込1000円、小・中学生の方は無料で入場できますので、興味のある方は是非展示ブースまで足を運んでみてはいかがでしょうか。
影から影へと飛び移り自らの片割れである肉体を追い求めるゲーム『SCHiM』はPC(Steam、itch.io)、PS5/PS4、Xbox One、Nintendo Switchにて発売を予定しており、発売時期は記事執筆時点では未発表となっています。