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ついに「有機EL+240Hz」を両立するゲーミングモニタが来た!ASUSの「エンドゲーム」有機ELゲーミングディスプレイ『ROG Swift OLED PG27AQDM』レビュー

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 ASUSが発売した有機ELゲーミングディスプレイ、『ROG Swift OLED PG27AQDM』をご紹介します。

 ROG Swift OLED PG27AQDMは、台湾の雄ASUSが展開するゲーミングブランド「ROG Republic of Gamers」の高速応答ディスプレイ ROG Swift シリーズのうち、27インチ級で初めて、かつ現状唯一OLED (有機EL)パネルを採用するモデル。

 有機ELならではの深い黒と鮮やかな色彩を備えつつ、従来は画質とトレードオフだった高速応答240Hzを両立したこと、視線移動が少なく一望しやすい26.5インチサイズである点から、ゲーミングモニター界隈で待望されてきた製品のひとつです。

 この記事では「やっと有機EL画質と満足なゲーミング仕様が両立するようになった!」と嬉しくなる理由をゲーミングディスプレイ選びの観点からざっくり説明しつつ、実機を触って試したインプレ、実際の購入前に把握しておくべき点の順でお伝えします。

ASUSの有機ELゲーミングディスプレイ『ROG Swift OLED PG27AQDM』レビュー_001

文/Ittousai


結論から先出し

 結果だけを求めて近道したがる人のために、途中をすっ飛ばして結論から書くと、

・競技的ガチゲーミングも、ゲームの映像美と世界観の堪能も両立させる、期待通りのOLED画質

・無骨で実用本位なマットブラックのスタンドと極薄エッジ本体に、ゲーミングお約束のRGBライティングやプロジェクション(??)まで搭載した中二スタイリッシュデザイン

・テキスト作業向けメインモニタも兼用させたい場合はパネル特性に注意

 最近やっと選べるようになったゲーミング仕様OLEDディスプレイのなかでもバランスが良く、このクラスとしては選択肢の筆頭に登る高ポテンシャルな製品です。

製品概要、あるいはスペックの読み方

 モニターとしての基本的な仕様を書き写すと、

・対角26.5インチ2560 x 1440 (WQHD、16:9)のRWBG有機ELパネル、ノングレアコーティング。

・色域はDCI-P3 99%、コントラスト比150万:1、HDR10対応、最大輝度450cd/m2・HDRピーク輝度1000cd/m2(画面全体の3%)。

・最大リフレッシュレート240Hz、応答速度0.03ms (VRR(可変リフレッシュレート) / Adaptive-Sync / NVIDIA G-Sync compatible / AMD FreeSync Premium対応)。

・入出力はPC用で最大性能が使えるDisplayPort 1.4、汎用のHDMI 2.0 (~120Hz、VRR対応)、2ポートUSBハブ機能、3.5mmステレオミニ端子。

 ざっくりいえば、デスクに置いて近距離で使うゲーミングモニタとして好まれる27インチ級のサイズで、PCゲームではGPU性能とグラフィック設定の兼ね合いから「落としどころ」として定番の1440P解像度、特に競技的なゲームで重要な表示遅延・入力遅延を最小化する240Hz (1秒間に240コマ)の高リフレッシュレートを備えた、“これぞゲーミングモニター”という王道的な製品です。

ASUSの有機ELゲーミングディスプレイ『ROG Swift OLED PG27AQDM』レビュー_002

 しかしこの製品が王道・定番に留まらない画期的な点は、高コントラストで鮮やかな有機ELパネルを採用しつつ240Hzを両立したこと

 画素ごとに消灯して“真の黒”を表現できる有機ELディスプレイは、iPhoneならiPhone X以降、サムスンのGalaxy等ではそのずっと以前からモバイルではおなじみの技術。電源が切れて完全消灯なのか、黒を表示しているのか見分けがつかないアレです。

 HDRコンテンツが一般的になり、テレビでも高級機種は軒並み有機ELの高画質を売りにするようになって久しい一方で、ゲーミングディスプレイでは選択肢が非常に少なく、トレードオフも多い状態が続いていました。特に痛かったのは、手頃なサイズ感と120Hzや240Hzといった高リフレッシュレートを両立するOLED製品が極めて限られていたこと。

 家庭用ゲーム機でもPS5 や Xbox Series X|S世代では120fps (秒間120コマ)対応のゲームが珍しくなくなりましたが、手持ち機器の性能に応じてグラフィック設定を柔軟に変更できることがアドバンテージのPCゲーミングでは、勝敗や快適さに直結する滑らかさ、遅延の最小化を求める需要が強く、高リフレッシュレート対応が「ゲーミングディスプレイ」を名乗る条件のようにみなされてきました。

 誰もが一瞬の反応とエイミングに命を削るeSports選手というわけではありませんが、120fpsなど高フレームレートはたとえばレースゲームやフライトゲーム、シングルプレイのアクションでも、いわゆる「ヌルヌル動く」滑らかさで実在感や没入感に寄与します。【※】

※正直なところ「アスリートでもないかぎり60fps以上はほとんど分からないんじゃないの?」と思っていたことを告白しますが、120Hz以上に慣れてから60Hzに落とすと、コマ落としの早送りをスロー再生したような、等速なのに重いような、なんとも言えない違和感を自覚できます。

 せっかく高価なハイエンドGPUやゲーミングPCを導入しても、モニタ側が高リフレッシュレートに非対応ならば60Hzなりで出口に天井を設けられてしまい、持ち腐れになりかねない……。そんな事情も、ゲーミングディスプレイで高リフレッシュレートが求められてきた理由です。

有機ELテレビとどちらを選ぶか

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 有機ELの画質と高リフレッシュレートの両立という点ではテレビも有力な選択肢のひとつで、PS5やXbox Series X|Sを機に120Hz VRR対応のOLEDテレビを導入したゲーマーも多いと思われますが、テレビでは視聴環境やOLEDパネル部材の関係から長らく48インチが最小サイズで、ひとつ下の42インチが最近ようやく買えるようになった状況。

 42インチをPCで使おう!の流れもあり、実際にASUSもROG Swiftシリーズで42インチ4K138HzのゲーミングディスプレイPG42UQを用意しています。
 しかしデスクに置いて眼の前で使うことが多いPCゲーミングでは、大画面は視界を覆う没入感に優れる一方で、画面の端から端まで把握するには視線移動が大きくなりがち。画面全体を常に把握して反応したい競技的ゲーミングにはあまり向かない評価が一般的【※】です。

※「画面は広いほど大迫力で良いに決まってる」、「60インチ大画面テレビでゲームしてるけど何の問題もないよ?」という方も多いと思いますが、画面全体の状況を把握しつつプレイするゲームでは小さめの画面のほうが視線移動のぶん隙が少なくなります。たとえると、映画館の最前列で字幕を読んでいると俳優の表情が見えない状態。

 有機ELのテレビと高速液晶のPCモニター併用も手ですが、同じコンテンツで特に暗いシーンや暗転を比べると、液晶では真っ暗であるべき部分もぼんやりと灰色に光が漏れ、四角いディスプレイの物理表面や境界を意識させ、没入感を損なってしまうことがあります。

 このように何を捨てるか・優先するかの選択を迫られる状況が続いてきたことが、「有機EL画質・高リフレッシュレート・ちょうどよいサイズ」を兼ね備えたゲーミングディスプレイがゲームチェンジャーとして歓迎される所以です。

 ASUSがROG Swift OLED PG27AQDMにつけたキャッチコピーは「THE ENDGAME 1440P MONITOR」。エンドゲームとはまた大きく出たなと笑ってしまいますが、27インチ1440Pクラスで悩んでいたゲーマーにとってはあながち誇張でもありません

モノとして。無骨とケレンのバランス

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 こうした状況に満を持して投入されたROG Swift OLED PG27AQDMは、自称エンドゲーム・最終兵器に違わぬ力の入った製品。

 正面から見れば単なる四角で存在感を消すことが求められるゲーミングディスプレイながら、ROGシリーズらしいブラック基調にアクセントカラーの赤が映えるスタンドと本体も高級モデルにふさわしい存在感です。

 ディスプレイ部分は額縁が非常に細い「フレームレス」かつ、エッジ部分は有機ELの構造的な特性を活かした超薄型。斜めからでも非常に薄く、鮮やかな画面とROGロゴだけが宙に浮いたようなスタイルです(※ゲーム部屋が暗い)。

 最薄部は設置時に不安になるほど薄い一方、中心部は分厚くなるのもOLEDにありがちな設計。これは有機ELが不得手な輝度を稼ぎつつ熱を効率的に捨てるよう大型カスタムヒートシンクを載せているためで、パネル寿命の延長にも寄与します。

 「テレビかモニタか」関連では、ディスプレイ表面がノングレアのマイクロテクスチャーコーティングなのも注目点。光が拡散することで、グレア仕上げに対して色の純度や黒の表現でわずかにトレードオフはあるものの、照明が克明に映り込んだり、カットシーンで暗転するたびに鏡を見せられて我に返りダメージを受けることがありません。

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 お約束のライティングは背面右側ROGロゴと、三脚型スタンドの真下に照射するプロジェクションライト。大きなROGロゴは正面から見えませんが、排気口のパターンを活かしたピクセル風とアニメーションでなかなか映えます。

 スタンドの基部から真下を照らすプロジェクションは「良かれと思って」感がありますが、特に薄暗い環境では画面の邪魔にならない程度に全方向から視認でき、ヒカリモノ欲を満足させてくれます(弱設定にもオフにもできます)。

 スタンド可動域は高さ110mm、左右首振り30度、仰角20度・俯角5度、ピボット左右に90度で縦画面も対応。原則的にはゲーミングなので、正面の一番良い位置においたうえで調整する程度です。

 スタンドは取り外して一般的なVESAマウントにもできるため、マルチモニター環境でアームに取り付けたい等の使い方にも対応します。

 重量はスタンドなしで約2.8kgとそこそこの重さ。スタンド込みでは約6.9kgもあり、エッジの薄さに反してかなり重く感じるため、手を滑らせて落としたり尖った脚でなにかを突かないよう注意してください。

 細かいところでは、モニタ側で設定を変えるOSDのスイッチは画面下ROGロゴ裏に十字キーと左右ボタン。接続機器側とは独立したモニタ側の機能として、画面中央に照準を表示したり、タイマーを表示する「GamePlus」にも対応します。

 (余談。照準表示はチート!という声に対するポーズなのか、一応「Practice Mode」の但し書きがありますが、日本語設定では「十字線 (実践モード)」)

パネル特性からトレードオフも。テキスト用途では要事前確認

 待望のいいとこ取り製品ではありますが、あくまでゲーミングディスプレイとして設計された製品であって、一台であらゆる用途に最適……というわけでもありません。

 PCディスプレイとして考えた場合、事前に考慮が必要なのは、パネルが同サイズの4Kモニタよりはピクセルが目立つWQHD解像度であること、そして「RWBG」配列を採用すること。

 液晶ディスプレイの多くは光の三原色ことRGBで画素を構成することが一般的ですが、有機ELでは輝度を稼ぐため、純粋な白を含めたW-OLEDと呼ばれる技術のパネルが多く採用されています。なかでも「RWBG」とは、1画素を構成するサブピクセルの並びが「赤白青緑」の順になっていることを指します。

 ゲームや映像を表示するかぎりは明るい利点のほうが大きく、接写でもしなければ視認できないものの、小さなテキストなど1ピクセルあるいはサブピクセル単位で表示する場合は、文字の境界線に不自然なアーティファクトが現れる現象になります。

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ClearTypeチューナー画面を強調して撮影。「最も読みやすい~」部分のフォントサイズでは目立たないことに注目

 細かい話をすると、これはサブピクセル配列まで考慮して文字のエッジを滑らかにするWindowsの機能 ClearType で特に顕著。

 ClearTypeではこのサブピクセルの並びや白を含む4色を想定していないため、条件が揃うと細かいテキストの周囲にやたらと明るい画素が見える場合があります。回避策は文字のサイズを大きくするなど。

 一般的なゲームや、アプリケーションのメニュー程度ではあまり気にならず、もともと大きめのフォント設定で使っていれば問題ない場合もあるかもしれませんが、細かなテキスト作業にもメインで使いたい場合、店頭などで設定をいじって見え方を確認することを勧めます。

まとめ

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 ついに登場した有機EL画質・高速応答・ゲーミングサイズのディスプレイ。本来の用途であるゲーミングディスプレイとしては、自称「エンドゲーム」に違わぬ完成度です。

 高速応答をどこまで求めるか、大画面の没入感を取るか27インチの一覧性を取るかで悩むところですが、OLEDかつ競技的ゲーミング寄り仕様を優先するのであれば、テレビや40インチ級にはない魅力ある製品です。あと机上プロジェクションかっこいい。

ライター
テクノロジージャーナリスト兼よろず売文屋。テックメディア『テクノエッジ TechnoEdge』編集長。CEATEC AWARD審査員。 ゼルダ新作に向け失踪を試みるなど活動は多岐にわたる Bluesky:@ittousai.bsky.social
Twitter:@Ittousai_ej

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