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『アーマード・コア6』は「理想的なAC」の具現化であり、これまでのフロム・ソフトウェア作品のエッセンスを内包する可能性の塊だった

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 いよいよ発売が間近に迫る『ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON』(以下、『ACVI』)。

 X(旧Twitter)では、「アーマード・コア」の話題が度々トレンドに乗り上げて、その注目度の高さと勢いはとどまる所を知らない。

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 以前に掲載したメディア向け試遊会の記事では、チャプター1の内容と基礎的なゲーム情報をお届けしたが、今回の製品版レビューでは、PS5版のゲームプレイを通したストーリー体験を中心にチャプター2の内容をお伝えしていく。

 端的に言えば、「いつものAC」という安心感、懐かしさを強く感じたチャプター1に対して、チャプター2では、ACシリーズだけではなく、10年の間に発売されたフロム・ソフトウェア作品のエッセンスが「混ざっている」感覚、そして、これまでのACとは違う「型破り」な一面を感じ取ることができた。

 本稿では、それをストレートにお伝えしていきたい。

文/Leyvan

※本稿では、『ACVI』のゲーム開始からチャプター2までの内容を含みます。敵の倒し方などの具体的な攻略情報や、初見プレイの感動を著しく損ねるような情報は極力省いていますが、フロム・ソフトウェア作品の魅力である「想像/推測する楽しみ」について言及するため、一部の内容を取り上げています。


理想的なACでありつつも混沌としていて、少しずつ異なっている感覚。「差異」を感じることがとても楽しい

 まず最初に、ゲームプレイの面で感じたことについて触れていきたい。

 チャプター2の舞台である「ベリウス西部 – グリッド086」は、縦方向に多層的に積まれていて立体的な構造のマップで、最初に訪れる「グリッド086侵入」ミッションでは、かなり探索要素が強くなっている。
 過去のACシリーズでも遺跡の探索や、座礁船の内部探索、基地内部の探索など、探索が主軸のミッションは数多く登場しており、このミッションもその一つだと言える。

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 「グリッド086侵入」のミッション進行自体は、ナビとマーカーを頼りに進めば特に迷うことはないのだが、マップに隠されたAC用パーツの回収だったり、「ログハント」対象の強敵を倒してボーナスを得ようとすると、かなりボリュームのあるミッション内容へと変貌するのだ。

 その探索感だったり、敵との遭遇パターン、シチュエーションの豊富さは、近年のフロム・ソフトウェアのゲームで味わえる魅力と非常に近い。

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 しかし、『アーマード・コア』は自機が戦闘メカであり、ブースターの推力を使って急上昇したり、急速接近できるなど立体的かつダイナミックな機動ができること、横軸だけではなく縦軸の駆け引きが生まれる点が大きい。

 このフィーリングは知っているけど、“ACナイズド”されている、いい意味で「混ざっている」ような奇妙な手ごたえと安心感があったということを最初にお伝えしたい。

 メディア向け試遊会の記事でお伝えしたとおり、『ACVI』はゲームシステムの根幹が従来どおりのACで、バトルシステムの組み立て方、強敵と戦うときの駆け引き感だったり、考え方が今のフロム・ソフトウェアのスタイルに寄っている。

 ミッションをこなして、少しずつ機体をより良いパーツに組み換えて強化していく楽しさと、ミッション内容に応じて機体構成を見直し、アセンブルによって攻略の糸口を見つける遊びはこれまでどおりの『アーマード・コア』で、困難を乗り越える達成感だったり、プレイヤー自身の成長を喜べる感触は、従来のシリーズ作品以上にディープに味わえるようになった。

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 『アーマード・コア』であることの形式的な良さと、最新のフロム・ソフトウェア作品であることの良さが上手く融合している。

 製品版をじっくり触らせていただいた今でも、その印象は変わらない。

 事実、『アーマード・コア』シリーズを長年プレイしてきた経験と、近年のフロム作品、『ソウル』シリーズだったり、『SEKIRO』『エルデンリング』をプレイして培ったものが、『ACVI』ではどちらも活かせていると感じる場面が多々ある。

 「現時点における理想的なAC」でありつつも、AC以外のさまざまな要素が混ざっていて、少しずつ違う、異なるという感覚。

 昔のACと今のACで異なる部分、「差異」を感じながら新鮮に遊べることがとても楽しい!

 というのが、じっくりとチャプター2まで遊び込んだことで見えてきた『ACVI』の魅力だ。

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いつものACらしさと懐かしさが溢れて、思い出に浸りながら進める喜び

 ここからは、本作におけるストーリー体験だったり、ゲームプレイを通して味わう「ゲーム体験」としての『ACVI』を、私の体験談としてお伝えしていきたい。

 冒頭でも述べているように、物語の核心に触れるような情報や、初見プレイの感動を著しく損ねるような情報は極力省いたうえで書かせていただいた。

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 『ACVI』での主なゲーム進行方法とストーリーの見せ方は、『アーマード・コア4』(以下、『AC4』)のようなチャプター形式となっている。
 ガレージに収容された機体の中でブリーフィングをおこない、ミッション内容を確認した後に出撃シーケンスへと繋がる……そういった演出も含めて、『AC4』をプレイした身としては、とても懐かしく思えたのだ。

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 チャプター1をプレイしているときは、いつもどおりのACで、とても懐かしいACという印象を強く受けた。
 懐かしい。とにかく懐かしい。「昔、アーマード・コアをやっていた時の記憶」を想起するように構成されていて、まるで子供のときに父親と過ごした日々の思い出に浸るような感覚をおぼえていた。

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 昔、私が初めて『アーマード・コア2』をプレイして、その勢いのまま初代『アーマード・コア』から『アーマード・コア プロジェクトファンタズマ』『アーマード・コア マスターオブアリーナ』と追いかけたときのこと。

 苦手なブレードをうまく扱えるようになるために、初期ブレード(いわゆる「木刀」)縛りでひたすらアリーナにこもって、自分なりに「修行」をしていたときのこと……。

 そんな自分自身のACとの思い出、懐かしい記憶を思い出しながら、「ハンドラー・ウォルター」との仕事をこなしていた。
 少しずつ、着実に仕事の経験を積んでいき、確かな「実績」を積み上げていく過程は、シリーズ経験者にとっては勘を取り戻すためのリハビリ期間のようなものである。

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 そして、どことなく『AC4』と似た構図が続くことから『AC4』の主人公、通称「アナトリアの傭兵」と、それを献身的にサポートする「フィオナ・イェルネフェルト」のことを“思い出して(Remember)”いた。

 もちろん、『ACVI』からアーマード・コアをはじめて遊ぶ人にとっては、一から基礎をしっかり学べる期間として安心してプレイできるようになっているし、過去作とはストーリー的な繋がりがあるわけではない。
 そういったシリーズ物、続編にありがちな「過去作をやっていないと楽しめないんでしょう?」という心配をする必要はないだろう。

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型破りで「ロック」な新展開。シンダー・カーラに“師匠み”を感じた話

 そして、続くチャプター2の内容だが、チャプター1に比べると、かなりヒロイックな展開となっている。

 「グリッド086」と呼ばれる地点へ侵入するミッションを通して、「ドーザー」と呼ばれる“ならず者”たちを相手に単独で立ち向かっていくことになるのだが、このチャプター2は型破りで「ロック」な楽しさに溢れていると感じた。

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居合いのような鋭い斬撃を放つレーザーブレード「Vvc-770LB」は、個人的にとてもお気に入りのパーツ。チャージ時の展開ギミック、モーションは脳汁全開のカッコよさ。

 フロム・ソフトウェア作品の例でいうと、『メタルウルフカオス』のように孤軍奮闘な状態からスタートして、多勢に無勢で劣勢な状況を圧倒的な戦闘力でブチ壊していく快感があって、一貫してハイテンションで楽しむことができたというのが率直な感想だ。

 多数の敵を相手にするミッションでは、両手にガトリングを持って弾幕を張ると某大統領のように「レッツパァリィィィィィ!!!」と叫びたくなるほど気持ちがいい。

 さらに、体勢を崩した「スタッガー」状態の敵へ両手・両肩の全ての武装(それに加えてブーストキックとアサルトアーマー)をフル開放して叩き込むと、「これが“傭兵魂”だ!」と言わんばかりのテンションになっていく。

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 そんな風に大暴れしたくなるのは、やはりゲーム上のストーリー演出と、プレイヤー自身の習熟度、ゲームへの理解度がうまくリンクしているからなのだろう。

 チャプター1で着実に仕事をこなして、実績を積み上げた主人公「強化人間C4-621」と、それを操るプレイヤー自身の経験値、上達具合が違和感なく繋がる。

 そして、そろそろ「力を示せる頃合い」なので存分に暴れてこい!というのがチャプター2のワンマンアーミーなシナリオ展開、見せ方なのではないかと思った次第だ。

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ロマン溢れるパイルバンカー。シリーズファンの間では「とっつき」と呼ばれることもある射突型ブレードは『ACVI』でも健在。チャージした時の一撃は、ACすらも一瞬で撃破するポテンシャルを秘める。

 もうひとつ、チャプター2のプレイで感じた魅力は、チャプター1以上に『アーマード・コア』シリーズと、これまでのフロム・ソフトウェア作品の“なにか”を匂わせるような場面が多くなっていることだ。

 チャプター2で主人公と組むことになる「シンダー・カーラ」は、ならず者たちの集団「RaD」の頭目であり、最初は主人公の実力を疑っていた。

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 こちらが十分な実力を示すと、今度はカーラが主人公のために道案内をしてくれるわけだが、彼女の言動や立ち位置が……どこかで見たような気がしてならない。

 そう、『アーマード・コア』シリーズの過去作でいうと、『アーマード・コア マスターオブアリーナ』のラナ・ニールセンや、『アーマード・コア フォーアンサー』のセレン・ヘイズのようなキャラクター性を感じる。

 他作品でいうと、『ダークソウル』のイザリスのクラーナや『エルデンリング』の魔術師セレンのような師匠ポジションの人物にも思える。

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 もちろん、全てがそうだと言いたいわけではないし、私が勝手にそう感じ取っただけの話である。

 そんな風に連想するきっかけは、彼女の名前にある「シンダー(Cinder)」というワードから、『ダークソウル3』の「火の無い灰」を思い出したことにある。
 そして、カーラの口から出た「灰かぶり」のカーラという通称も、なんだか無性に気になってしまう……。

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 どうしてこんなにカーラのことが気になるのかというと、要するに私はフロム・ソフトウェア作品に登場する、プレイヤーを導いてくれる強い女性キャラクターが大好きだからだ。

 だがしかし、本作は『アーマード・コア』だぞ……?「騙して悪いが」という裏切り行為が平然と横行するような残酷な世界なのだから、そう簡単に気を許すわけにはいかない!
 そんなことを考えながらも、この先、私はシンダー・カーラの依頼を優先的に引き受けていくだろうという様子が手に取るようにわかるのが悔しい。そんな気持ちでいっぱいだ……。

 繰り返しになるが、これは私が勝手にそう感じているだけのことでしかない。

 いずれにしても、こういった具合に作中でなにかを“匂わせる”ワードが出てきたり、「この構図は!?」という演出が流れてきたときに、自分の中で連想しながらプレイしていくと、『ACVI』は多種多様な想像が膨らんで、より深く楽しめるのではないだろうか。

差異の先にあるものは、多様性?機体をカスタマイズするように、「無限の可能性」が拡がっていく

 ここまでに挙げた内容は『ACVI』のほんの一部であり、まだまだお伝えしたいことはそびえ立つタワーのように高く積み上がっているのだが、最後のまとめとさせていただきたい。

 今回の製品版レビューで体験したチャプター2では、「C兵器 シースパイダー」と呼ばれるボスが登場する。

※「シースパイダー」の登場は動画の17分ごろから

 異様な雰囲気が漂う蜘蛛のような形状の多脚型兵器で、「ろくでもない技研の遺産」と評されるシースパイダーと交戦すると、一瞬でBGMに意識を奪われてしまった。

 この曲は……「Cosmos」

 でも、違う。不気味に歪んでいて、何かが違う。

 形態変化した後の姿は、まるでアームズフォート「アンサラー」のようにも見えるが、やはり「違う」

 その後は、マルチエンディングを採用しているとの前情報どおり、『アーマード・コア ラストレイヴン』『アーマード・コア フォーアンサー』のように物語が分岐していくことを予見させるようなカットシーンで幕切れとなった。

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 個人的には、作中で流れるBGMがちゃんと「ACの音楽」で、サウンドチームの星野康太さんたちの味を感じるところが非常に嬉しい。

 もちろんそれだけではなく、これまでのACシリーズの音楽にはなかった新しいセンスも光る、新世代のACサウンドであることが本当に嬉しい。

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 10年ぶりに『アーマード・コア』シリーズが再始動するこのタイミング――今、この瞬間は「日の出(Sunrise)」の輝きを見ているような心境である。

※「Sunrise」:『アーマード・コア』シリーズの楽曲と、サウンドチーム「FreQuency」のオリジナル楽曲を収録した2ndアルバム「SUNRISE」のアルバム名、および楽曲名。


 これまでの『アーマード・コア』と、その間にあるフロム・ソフトウェア作品のエッセンス、そのすべてを内包して再構築されている『ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON』。

 間もなく、「惑星ルビコン3」での戦いが始まる。

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ライター
ゲーム、模型、ファッション、ドール、オーディオなどさまざまなジャンルの沼を渡り歩くスワンプウォーカー。関心のあるものに後先考えずに全てを捧げる狂戦士。手がけた代表的な記事は 「人はなぜ少女にメカをくっ付けるのか」 「最高のゲーム用ヘッドフォンを求めて」など。
Twitter:@Leyvan44

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