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これは、歴代で一番嫌な気持ちになる最高傑作。『FF』ナンバリング全作をプレイした男が40000字で考える『FF16』のすべて

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「斬鉄剣」って、マジでなんなんだよ

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 FFには、「オーディン」という召喚獣がいる。そのカッコ良さから、シリーズでも屈指の人気召喚獣である。もちろん『FF16』にも、オーディンはいる。

 だけど、「FFのオーディン」は歪んでいると思う。

 これだけは絶対に譲れない。「FFのオーディン」は、間違いなく歪んだ存在だと思う。そもそも「オーディン」は、あの北欧神話の神様がモデルとなっていると思われる。甲冑に身を包んだ存在。馬に乗っている。これはもう……あのオーディンなのだ。

 そしてここで問いたい、「オーディンの武器」って、なんだろうか?

 そう、「グングニル」だ。主神オーディンが持つ、あの有名な槍。というか、それしかない。スレイプニルとかルーン文字とかいろいろあるかもしれないけれど、「オーディンの武器」と言えば、グングニル以外ありえない。

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 が、FFのオーディンの武器は「斬鉄剣」なのである。

 なぜだ、なぜ「斬鉄剣」なのだ。突如現れた「斬鉄剣」の日本語3文字。明らかに北欧神話の神様をモチーフにしていると思われるが、その手に携えたのは「斬鉄剣」。おかしい。絶対変だ。ここの「なぜFFのオーディンは斬鉄剣を持っているのか」を説明し始めるとそれだけで日が暮れてしまうので、各々で調べてみてほしい。

 もちろんちゃんと「グングニル」を使う時もある。だけどメインウェポンは、やっぱり斬鉄剣なのである。イフリートの必殺技が「地獄の火炎」であり、シヴァの必殺技が「ダイヤモンドダスト」であり、バハムートの必殺技が「メガフレア」であるのと同じように、やっぱりFFのオーディンの必殺技は「斬鉄剣」なのである。

 そしてファイナルファンタジーは、「オーディンと言えば斬鉄剣」という奇天烈極まりない伝統をもう何十年も受け継いできたRPGなのである。歪んでいる。シリーズ30年近くの歴史が生み出した「FFの歪み」である。

 だけどもう「斬鉄剣という伝統」になってしまった以上、FFのオーディンが斬鉄剣を使わなかったらそれはそれでモヤモヤする。「おい今回のオーディン斬鉄剣使ってねえぞ!」と、私は噴き上がるだろう。FFのファンって本当にめんどくさい。

 なぜ私はこんな奇天烈文化に大真面目に向き合っているのだろうか。もうFF側も困り果てているのではないか。明らかにおかしい。みんなこんな真剣な顔で戦ってるのに、オーディンは斬鉄剣を持って戦場にノコノコ出てくる。なんなんだこのゲームは。

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 だけど、『FF16』はそんな「斬鉄剣」にも真面目に向き合っている。

 もしかしたら『FF16』で最もテンションが上がったのは……ここかもしれない。

 私、なんだかんだ「斬鉄剣」が好きだ。あんなにボロクソ言った割には斬鉄剣が好きなのだ。ウォールード王国のある「灰の大陸」を目指すため、クライヴたちは「エンタープライズ」に乗り込んで海を渡る。その最中、オーディンのドミナント「バルナバス・ザルム」の襲撃を受ける。

 バルナバスは斬鉄剣を振るう。すると………海が真っ二つに割れた!
 そうか、そう来たか! 「斬鉄剣」をこう描写するのか!

 この「現代ゲームのリアリティラインにおいて斬鉄剣をどう描写すればいいのか?」ということに関して、『FF16』はもうシン・ファイナルファンタジーみたいな領域に突入しかかっている。

 「斬鉄剣」とは一体何なのか? 「斬鉄剣」とはどういう効果なのか? 実際の戦場で「斬鉄剣」が振るわれた場合、どんなことが起きるのか? あまりに、あまりに斬鉄剣のことを真面目に考えている!

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甲冑形態のバルナバス、カッコいいですよね。年末に発売される新しいドライバーで変身するライダーっぽい。

 そして「斬鉄剣」のリアリティを突き詰め続けた『FF16』の新たな発見、それは「斬鉄剣を等身大の人間が振るう」ということ。本来大きなオーディンが振るう斬鉄剣を、等身大のドミナントが「武器」として使ってくる! これは……アイデアとして中々に面白い!
 
 そもそも、なんとなく「斬鉄剣=必殺技」という勝手なイメージがあった。オーディンの最終奥義として放たれるのが、「斬鉄剣」なのだと。ただ『FF16』には、「ドミナント」がある。なれば、「斬鉄剣」をひとつの武器として描写することができるッ! 考えたな、お前たち!!

 バルナバスとの戦いの最中に繰り出される斬鉄剣の剣技。
 「斬鉄剣」自体の強さもさることながら、「斬鉄剣を振るうバルナバスの強さ」として描写されている。これは……これは新解釈斬鉄剣なんじゃないのか!? 海を割り、空間を切り裂き、全てを断ち切る「最強の剣」を振るう人間。それこそが、「オーディンのドミナント」なのだと!

 どんだけ斬鉄剣に真剣なんだ! そこまで斬鉄剣のことを真剣に考えなくたっていいだろう! あ、「剣」だけに? すいません今ダイヤモンドダスト撃ったかもしれないです。

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あまりにも細かい箇所なのですが、オーディンの召喚獣アビリティ「グングニル」の説明も好きです。「槍のように長くした斬鉄剣を振り回すことで、周囲の敵を連続で斬りつける」。わけが分からねえよ……。

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 そして! そう!! オーディンと言えば「斬鉄剣返し」なのです!!!

 いかん、どんどんテンションが邦キチみたいになってきている。部長、「斬鉄剣返し」を知らないのでありますか!?

 もうオーディンとの召喚獣合戦は全てがハチャメチャなのですが、やっぱりここの「大斬鉄返し」が最高。まず「斬鉄剣最終奥義<大斬鉄>」とかいう聞いてるだけで頭がおかしくなりそうな技名が飛び出す時点で最高なのですが、そこから間髪入れずに「大斬鉄返し」!!

 一応元ネタとしては、『FF8』終盤のサイファー戦にオーディンを連れていると、突如オーディンがサイファーに向かって斬鉄剣を繰り出すものの、見事にサイファーが「斬鉄剣返し」でオーディンをバラバラにする。そして空からギルガメッシュが振ってきてサイファーは「ぎにゃぁぁぁぁ!!」という断末魔で吹っ飛んでいくあのシーンですね。書いてるだけで頭が沸騰しそうになってくる。

 私、『FF8』が「殿堂入り」状態なくらい好きなんです。もう順位がどことかじゃなく、『FF8』は「殿堂入り」という別次元に存在しているゲームなんです。FF以外にもいろいろなRPGを遊びましたが、未だに『FF8』の座を揺るがしたゲームがありません。だからもう、「大斬鉄返し」が出た時にちょっとした感動すらありました。

 「斬鉄剣返し」をオマージュするようなFFが、とうとう出たのかと。

 あの気の狂った最高のシーンをオマージュしてしまうFFが、とうとう世に放たれたのかと。
 
 私にとって「お前ら北欧神話のことなんだと思ってんの?」は、もう誉め言葉なのです!!!

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お前ら、「最強の召喚獣」決めようぜ

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 なぁ……「最強の召喚獣」って、どれだと思う?

 僕は、クラスの隅で「最強の護廷十三隊って誰だと思う?」と言い始める暇な男子中学生みたいな顔で言い放った。

 そう、これだけ書いておきながら未だに言及してなかった要素、それは「召喚獣アビリティ」。このゲームにはおよそ7種類の召喚獣アビリティが存在しており、その組み合わせと活用方法はもはや無限大。だから決めようぜ、最強の召喚獣。俺だけの最強の召喚獣、ここで決めようぜ。さっきから大層なこと書いてますけど、つまりは私が気に入った召喚獣アビリティの話をしたいだけです。

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 まずはラムウ。このラムウのフィート……ぶっちゃけ何に使えばいいのかわかんなくなかったですか。とりあえず使うたびに「全部お見通しね♥」の声を幻聴してしまう。召喚獣クラクサナリデビのドミナントかな。だけど、こういうトリッキーなものが出てくるたびに「どうにかして使ってやりたい」という気持ちが高まってしまう。

 まずこれ、キンハのアレみたいに高速でロックオンしてほしいのに微妙にロック速度が遅い。だからうっかりフィートを発動してゲームスピードが遅くなるからなんかモヤモヤする。しかも敵がバラけていると余計にモタつく。よくシドはこの力で戦っていたものだ。

 だけど、ますます何とか使ってやりたくなる。トリッキーであればあるほど燃えてくる。私は『FFX』でもキマリを使ってやりたくなるし『ゼノギアス』でもリコを使ってしまいたくなるタイプなのだ。そこで「エグザクト」の活用方法として考えたのが、「エリアルブラスト」とのコンボ。

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 ガルーダの大技でもある「エリアルブラスト」は、巨大な竜巻を発生させて敵を巻き込んでいく。そして一部の敵は、そのまま風に巻き上げられて宙を舞い始める。この状態であれば、「エグザクト」がメチャクチャ刺さる。宙でふわふわ浮いてる敵を一斉ロックオンして、電撃フルバーストが炸裂!!

 エリアルブラストの「広範囲で敵を無力化できるのはいいものの、敵が宙に浮いて若干戦いづらくなる」というデメリットもそれなりに中和できて、中々いいコンボなんじゃないでしょうか。こんな風に、『FF16』の召喚獣アビリティ同士のコンボはかなり拡張性があるのです。一見使いづらい技も、意外と上手くハマったりする。

 そしてラムウのアビリティで特に気に入っているのが、この「ライトニングロッド」

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 「雷を帯びた魔法球を生成し、その魔法球に攻撃を与えると放電して近くの敵を攻撃する」というアビリティ。正直これ初見で取りに行く人ほとんどいないと思います。説明文とビジュアルが全然強くなさそう。私も「これにポイント払うのはないわ……」と素通りしました。ところが、かなり悪用できる。

 まず、単純に敵が集まっているど真ん中に置いても強い。ビリビリ球を攻撃するだけで範囲攻撃でどんどん火力を与える。うっかり敵がビリビリ球に攻撃したら、そのまま範囲カウンターが飛んでいく。普通にヤバい。設置するだけで凶悪。

 さらに、1対1のボス戦においてもコイツは役に立つ。
 もちろん「適当に置いといてカウンターを狙う」使い方もできるけれど、凶悪なのは「ダウン時の火力ソース」としての性能。そもそもこのビリビリ球は「1回のヒットにつき」、1度放電する。つまり、多段ヒットすればするほどビリビリするのだ。もうお分かりであろう。敵がダウンしたら、球を設置する。

 そこに「イグニッション」なり「ガウジ」なりの連続ヒット攻撃を繰り出せば、ヒットした分だけビリビリも同時に発生する。おそろしい火力が出る。コイツ……見た目の割に強すぎないだろうか!? いかにもしょぼそうな設置技がなぜこんなにも強いのか!? でも、ゲームってこういうのがいちばん楽しかったりする。

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 次はバハムート。「もっとフェニックスとかシヴァとかあっただろ」と思うでしょうが、私はこういうピーキーなヤツを見るとすぐに使いたくなる体質なのです。フィートの「バハムートウィング」は、「メガフレアのゲージを溜め続けて、発射する」というシステム。

 ……これも、最初ガッカリしませんでした?

 「え、フィートでメガフレア撃てんの!?」とワクワクしてたら「ってチャージすんのか──い!!!」とズッコケるあの感じ、おそらく『FF16』プレイヤーが全員味わっている。だけどよくよく使っていると「バハムートドッジ」の活用方法がわかってきたりする。でもバハムートドッジの仕様ちょっとわかりにくいと思う。

 でも、なんか使ってしまう。本当に火力が出ているのかどうかもわからないメガフレアのためにふわふわ浮いている時間はどれだけ無駄なんだとか考えてしまうけれど、なんか使ってしまう。なぜなら、カッコいいから。「メガフレア」の性能なんて、正直どうでもいい。なぜならメガフレアは、「メガフレアを撃てる」ということに価値があるのだから。でもバハムートドッジの仕様はわかりにくいと思う。
 
 あと、「ギガフレア」も大好き。もう正直ギガフレアに関してはテクニックもクソもない。清々しいまでのゲロビ。リミットブレイク。ギガフレア。相手は死ぬ。あぁ、なんて清々しいゲロビなんだ。もうこっちまで「破ァァァァァァ────!!!!!」と言いたくなる。ギガフレア、召喚獣アビリティで一番好きかも。

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 そしてラスト、オーディン!
 
 やっぱ斬鉄剣だよなァ!?!?

 オーディンはもう、一番ピーキー。

 斬鉄剣のこと以外考えられない人が設計したんじゃないのかってぐらい斬鉄剣狂いの性能。もうこれに関してはフィートがどうとかアビリティがどうとかじゃなく、純粋に「カッコいいから」使う。

 そうだ、それでいい。FFは、カッコよければ後はどうでもいい。そういうゲームだから、私はついていってるんだ。「斬鉄剣ゲージ」という言葉のおかしさなんて、もうどうだっていいじゃないか。

 とはいえ、ようわからん。グングニルで斬鉄剣ゲージをチマチマ溜めるのが正解なのか? 天の叢雲でスタイリッシュに貯めればいいのか? 斬鉄乱舞はそもそもどう当てる? 境界転移は何者だ。オラこんな斬鉄剣嫌だ……じゃない! ここで役に立ってくるのが、さっきの「ライトニングロッド」!

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 連続攻撃で一気に斬鉄剣ゲージを上昇させる「斬鉄乱舞」最大の弱点、それは最初の発生の遅さ。クライヴが斬鉄乱舞の構えをしている間に攻撃されたり、敵が逃げたりしたら、もうその斬鉄乱舞はおじゃん。つまり、「当たらなければ何も始まらない」技なのだ。空振り=終了。

 ところが、「ライトニングロッド」には当たり判定がある。つまり、自分で設置したライトニングロッドに向かって斬鉄乱舞を発動すれば、そのまま斬鉄フルコンボが決まって斬鉄剣ゲージも大幅に上昇する! こんな……こんなことが許されていいのか。とんだマッチポンプじゃないか!?

 しかしそれくらい自由度があるのが『FF16』のアクション。この「ライトニング斬鉄乱舞」に境界転移とギガフレアを上手いこと組み合わせると、天文学的なダメージを叩き出せたりするらしい。やっぱ斬鉄剣なんだよな。

 コラ!
 「こんな面倒なことするなら俺たちのライジングフレイム先輩でいい」とか言うな!
 けれど拙者はそんな真実よりも、オーディン殿の言う甘っちょろい斬鉄剣の方が好きでござるよ……。

※ここから、『FF16』の最終盤について書かれています。ラスボス戦、エンディングについて言及しております。やはりネタバレを見ずにクリアした方が『FF16』は楽しいと思いますので、筆者としては未クリアの方はここで一旦閉じることをおすすめします。何卒、よろしくお願いします。

FF16にとっての、「ファイナルファンタジー」

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 はい、ラスボス戦! やっぱり一番言いたいことは、「FF3の召喚魔法【※】引っ張り出してくるのオタクすぎ!!!!!」ってことですかね! 負けたよ……お前が最強のFFオタクだよ……。結局『FF14』の最後らへんと同じ気持ちになっている気がする。FFオタクとして負けた。

 なんかいろいろ言いたいことあったはずなんだけど……最後もやっぱり「男の子って……ほんとバカ!」でぶっ飛ばしてくる!! ふふっ……何歳<いつ>になってもバカなんだからッ!!

 6体の召喚獣の撃ち合い、宇宙なんだかどこなんだかよくわからない謎空間での戦い……もはや清々しいまでに「これがやりたかっただけだろ」としか言いようのない展開の応酬。

 『FF16』は蓄積されたストレスがもう我慢ならんと溢れ出すかのように、ここぞで「これがやりたかったんだ──ッ!!!」のマグマを噴出させてくる。千石撫子みたいなゲームだな。

※「FF3の召喚魔法」
アルテマリアスが召喚獣の力を使用する際に放つ「ハイパ」「カタスト」などの魔法は、『FF3』に登場した「召喚魔法」となっている。一応『FF3』と『FF16』の世界観が繋がってるとかそういうことではないので、あしからず。

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 くたばれ、アルテマ──────────ッ!!!!!!!

 お、おバカなゲームだねぇ~~~~~~~~!!!
 やっぱり変だよ、このゲーム絶対変! ファイナルファンタジーすぎるでしょう!?
 いや、これFFだった! これ……FFの最新作だった!!

 そうか、じゃあこれでいいッ! 『FF16』、最高傑作!!

 実際、本当にすごいと思う。こんなによくわからないまま16作も続いて、「FFらしさ」の定義なんてすっ飛ばして16作走り続けて、そして出てきた『FF16』の答え。「くたばれ、アルテマ」。最高! 最高じゃないか!! これでうっかりライジングフレイムとかで決めカット作って「美しいエンディング……」みたいな顔してたら見損なうところでした。FFは、これだから楽しい。これが、『FF16』!!

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 もしかしたら、『FF16』の「最後の幻想」「究極の幻想」「ファイナルファンタジー 著者:ジョシュア・ロズフィールド」の怒涛のタイトル回収に困惑している人もいるかもしれません。私も大ウケしていました。「タイトル回収なんてなんぼあってもいいですからね」とかそういう問題じゃない。

 「ファイナルファンタジー」って、何?

 それすら、タイトルによって定義が違う。それぞれのタイトルに、それぞれの「ファイナルファンタジーの定義」が存在している。たぶん。やっぱりFFは、「突っ走ってきたRPG」なのだ。だから突っ走ってきた分だけの、「ファイナルファンタジー」の意味がある。

 そして『FF16』にとっての「ファイナルファンタジー」は、「魔法がなくなる前にあった、最後のファンタジーのお話」なのだと思いました。クライヴ・ロズフィールドが目指した、「人が人として生きられる」世界。エンディングで映し出されていたのは、まさに「人が人として生きられる世界」だった。

 魔法が消え、召喚獣も消え、クリスタルも消えた。ファンタジーは、終わりを迎えた。そしてあの世界は、これから先の未来へと続いていく。そのために、「幻想を終わらせた者たち」がいた。そして、「誰かが生きていた幻想の世界」があった。それを記したものが、「ファイナルファンタジー」。それを語り継ぎ、それを残し続けるための「ファイナルファンタジー」。

 またひとつ、新たな「ファイナルファンタジー」が生まれた。

 それは、終わってしまった幻想を語り継ぐ物語。
 それは、どこかにあったかもしれない、嘘みたいな戦いのお話。
 それは、幻想を終わらせた者たちを語り続けるためのストーリー。

 こうして、クリスタルをめぐる探求の旅は、終わりを迎えた━━━。

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 FFの好きなところは、「もしかしたらこれが最後かもしれない」ところです。いつ終わるか分からないし、いつまで続くのかもよく分からない。もしかしたら、『FF16』は最終作になるかもしれない。本当に、これが最後の幻想になってしまうかもしれない。

 ゲーム開発をする人は、こんなことを言っていた。「ハードの進化に応じてグラフィックがどんどん綺麗になっていくから、大作RPGを作るのはどんどん難しくなってきている」と。コストもかかる。時間もかかる。いろいろなお金も倍々に増えていく。

 もう、大作RPGの開発は毎回が最終決戦なのだろう。そしてFFも、いつもいつも最終決戦仕様のものが出てくる。本当に死ぬ気のものが出てくる。RPGって、本当に毎回命がけなのだろう。

 だけど、その上でFFは毎回「“好き”のベクトルが違う」タイトルを作り上げてくる。ここは、特にFFシリーズのすごいところだと思う。そのタイトルによって大きく毛色が違うからこそ、それぞれのタイトルに個別でファンがつく。それぞれに思い出が生まれる。『FF7』が推しの人もいれば、『FF15』が推しの人もいる。そのゲームを遊んで生まれる“好き”という感情のベクトルが、FFはいつも全然違う。

 そして、『FF16』も“好き”のベクトルが他のFFとは全く違った。前作の『FF15』とも違う。ましてや、『FF14』とも違う。『FF16』には、「FF16だけの、“好き”な気持ち」が生まれていた。他のFFにはない唯一無二の、「FF16の好きなところ」が、ちゃんと生まれていたのだ。 

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 ちょっと不思議なのが、私の中で『FF16』は「あとからゆっくり効いてくるタイトル」になっている。いざクリアした時、号泣するようなタイトルだっただろうか。いや、私は別に泣き崩れるほどでもなかった。もう明日は立ち直れないくらい、心をめちゃくちゃにかき乱されたタイトルだっただろうか。いや、クリアした翌日は普通に働いていた。社会って本当に嫌だね。

 だけど、クリアして少し時間をおいてみたら、ものすごく「あぁ、FF16って好きなゲームだな」という気持ちが湧いてきた。これは、なんなのだろう。ふと寝る前、ベッドで『FF16』のことを思い返してみる。クライヴのことを。ヴァリスゼアのことを。あぁ、良いゲームだった。良い、冒険だった━━。

 終わってみた時、ちゃんと私の心の中で、「忘れられない唯一無二のファイナルファンタジー」の1作になっていた。『FF16』に並ぶものも現れなければ、『FF16』のあとに続くものも現れない。唯一無二の、忘れられない冒険。あとからじわっと思いがあふれてくる、たったひとつのファンタジー。

 私はこのゲームのことを、「遅効性ファイナルファンタジー」と呼ぶことにしました。

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ライター
転生したらスポンジだった件
Twitter:@yomooog
編集
新聞配達中にトラックに跳ね飛ばされたことがきっかけで編集者になる。過去に「ロックマンエグゼ 15周年特別スタッフ座談会」「マフィア梶田がフリーライターになるまでの軌跡」などを担当し、2017年4月より電ファミニコゲーマー編集部のメンバーに。ゲームと同じぐらいアニメや漫画も好き。
Twitter:@ed_koudai

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