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『サイパン2077』六本木のクラブにバー・アフターライフが出現したので行ってきた。ナイトシティの大女優に会って“あのカクテル”や「仮初めの自由」の舞台裏を伺うオフラインイベントレポート

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 『サイバーパンク2077』を真なる姿へ拡張し、更なる物語を綴る拡張パック「仮初めの自由」が9月26日に発売される。

 本編で描かれた「企業」が力を持ち、歪で有機的な「ナイトシティ」は無数のユーザーの魂を揺さぶったが、拡張パック「仮初めの自由」ではナイトシティの方が及ばない「ドッグタウン」を舞台に、「新合衆国」にまつわる物語が描かれる。

 さらに、アクションとパークはかなり大胆にリワークされ、発売から約2年が経過した本作のユーザーを急増させたアニメ『サイバーパンク エッジランナーズ』を彷彿とさせる新要素もラインナップ。もはや新作のゲームのように充実した「仮初めの自由」に国内でも多くのファンが期待を寄せていることだろう。

 「仮初めの自由」の発売に向けて、9月2日に東京・六本木のクラブにナイトシティの一部(と錯覚するような)が出現。本記事では作中に登場するバー・アフターライフのような空間で実施されたオフラインイベント「Phantom Liberty Tour 東京」の様子をお届けする。

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 イベントでは拡張パック「仮初めの自由」の試遊や『サイバーパンクエッジランナーズ』設定資料の展示、そしてゲームにちなんだフードの提供などが実施され、さまざまな角度から『サイバーパンク2077』を楽しめるイベントとなっていた。

 記事の末尾には拡張パック「仮初めの自由」に登場するリズィー・ウィズィーのヘッドギアをデザインした国内の造形作家「IKEUCHI」氏への合同インタビューもお届けする。

 合同インタビューは本コラボレーションの切っ掛けやIKEUCHI氏の“サイバーパンク観”などを伺えたため、「ヘッドギア」のビジュアルにグッと来た方はぜひ楽しんでいただきたい。

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 なお、「仮初めの自由」の概要などを未だチェックしていない方は、こちらの先行プレイレポートを参照して頂ければ幸いだ。

取材・文/りつこ


会場に足を踏み入れると、そこは「ナイトシティ」だった。

 まず、本イベントは前述のとおり「六本木のクラブ」にて実施されており、地下への階段へ足を踏み入れると、早速ナイトシティの人気女優である「リズィー・ウィズィー」の姿が視界に現れる。

 「リズィー・ウィズィー」に扮するのはコスプレイヤーとして活動するウマドモ氏であり、作中のバキバキに全身金属質の印象的なビジュアルを見事に再現。また、会場の至るところに作中に登場する「架空の広告」が展示されており、視覚的に嬉しいイニシエーションとなっていた。

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 また、クラブといえばである。『サイバーパンク2077』に登場するバー・アフターライフでは「死して伝説的な偉業を成し遂げた者」の名を冠したカクテルが印象的だ。

 なかでもゲーム序盤を相棒として共に過ごすジャッキーが「自分のカクテルのレシピ」をバーテンダーに語る場面は、ナイトシティに生きる人々の刹那性を雄弁に描くものとなっていただろう。

 会場のバーでは作中の設定どおり作られたウォッカ、ライムジュース、ジンジャー・ビア、(そして愛情)から成るカクテル「ジャッキーウェルズ」に、ビールとテキーラを合わせ、唐辛子を添えた「ジョニー・シルヴァーハンド」、そして“キッズ”でも飲みやすいウォッカをコーラで割った「デイビッド・マルティネス」がラインナップ。

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 カクテルはビニールのパッケージに注がれ、ストローと共に提供される。なお、筆者はジョニー・シルヴァーハンドを頂いたが普通に“つよい酒”であった。

 サイバーウェアを導入していない者にはいささかハードなアルコールであるため、ナイトシティで酒を飲んだら同じくらい水を飲もう。

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 さらに、フロアのテーブルにはゲーム内に登場するスナックが提供され、来場者にはゲーム内に登場する安全(とされている)飲料水「REAL WATER」とサブロウ・アラサカのボディガードであるゴロウ・タケムラにちなんだ「おにぎり」なども振舞われた。

 いずれの取組みもシンプルであるが、いわゆる「聖地巡礼」のような楽しさを味わえるコンテンツとなっているだろう。

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 フロアのステージ脇には『サイバーパンク エッジランナーズ』にちなんだARコンテンツも用意されており、自身に「サンデヴィスタン」をインストールしたようなビジュアルを楽しめる。

 モードは自身の動きにあわせて残像が生成されるモードと自動で残像を生成してくれるふたつのモードが用意されており、こちらも来場者の多くが楽しんでいた。

『サイバーパンク2077』の資料展示。会場限定のトークイベントで『エッジランナーズ』&「仮初めの自由」の制作秘話もお披露目

 会場の奥には展示ブースが用意されており、『サイバーパンク エッジランナーズ』の絵コンテや設定資料なども観賞することができた。

 人気を博したルーシーレベッカの設定画や第一話の絵コンテ、本編とデイビッドのデザインが異なる初期ティーザービジュアルは、ビデオゲームの世界観を大胆にアニメ―ションとして表現した本作の盛り上がりを今一度想い起こさせるものとなっている。

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 また、TRIGGERの今石洋之氏とCD PROJEKT REDジャパン・カントリー・マネージャーの本間覚氏による『サイバーパンク 2077』の最終話を振り返るトークも開催。トークイベントは取材禁止となっているため詳細は触れられないが、本作の制作中の貴重なエピソードや、CD PROJEKT REDとTRIGGERのやりとり、はたまた当初予定されていたダークなエンディングもお披露目された。

 筆者も「肝心な情報を“調べてもわかりませんでした!”で片づける」まとめ記事が如く態度を取ることは心苦しい限りである。興味があり過ぎて仕方ない方も現時点で知るすべはなく、現実は『エッジランナーズ』のように残酷である。

 とはいえ、上記のとおり本作のファンが間違いなくブチ上がれる内容であったと言えよう。

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 さらに、ステージイベントとしてローカライズマネージャー・西尾勇輝氏、Vの声優を務めた 小林親弘氏が登壇し「仮初めの自由」を紹介するトークも実施。ローカライズの舞台裏や「仮初めの自由」の新情報を映像と共に紹介する内容で、こちらは本作の期待を更に高めてくれるものとなっていた。

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造形作家・IKEUCHI氏が手掛けたヘッドギア「アミキリ・サウンドカッター」

 会場に設置された展示台には、繊細に作り込まれ、過剰な情報量を携えたヘッドギア「アミキリ・サウンドカッター」が来場者の眼を惹いていた。

 こちらのヘッドギアは国内の造形作家であるIKEUCHI氏とCD PROJECT REDが共同で手掛けており、『サイバーパンク2077』の拡張パック「仮初めの自由」より、リズィー・ウィズィーのヘッドギアとして登場する。

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 本ヘッドギアを手掛けるIKEUCHI氏は、緻密に作りこまれたメカニカルなガジェットなどで人気を博す造形作家だ。 文化庁メディア芸術祭の最優秀賞を受賞しているほか、BALENCIAGA2022 SPRINGのキャンペーンビジュアルに抜擢。ランボルギーニ60周年モデルの制作など、国内外で活躍するアーティストである。

 今回のヘッドギアはIKEUCHI氏ならではのディテールが詰め込まれた設計になっており、会場ではウマドモ氏が扮する「リズィー・ウィズィー」が実際に着用した姿もお披露目された。

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 このたびのイベントに際して、IKEUCHI氏に実際に「ヘッドギア」やこれまでの活動の話を伺う機会を得たため、本稿の最後にミニインタビューの様子をお届けしよう。

造形作家・IKEUCHI氏インタビュー

──本日はよろしくお願いいたします。

 サイバーパンク2077とのコラボの経緯を教えてください。どのような形でこの依頼があったのでしょうか。

IKEUCHI氏:
 オファー自体はおよそ3年前に頂きまして、そこから作品を制作してCD PROJECT REDさんにお渡ししました。はじめにデザイン原案を頂いて制作を開始し、先方とのやりとりを経て制作期間は1か月から2か月となっています。

──「リズィー・ウィズィー」ヘッドギアの制作前に『サイバーパンク2077』IPの関連資料など目を通されたかと思いますが、本作の世界観についてどのような印象を受けたでしょうか。

IKEUCHI氏:
 資料を見る前は『ブレードランナー』や『攻殻機動隊』といった作品を見ていたのですが、実際に『サイバーパンク2077』の資料を見ると、これが“21世紀のサイバーパンク”だと驚きました。

 現代においては、P90やクリスベクターといった「本来であればSF的」であるデザインが現実に登場していると思うんです。従来のイメージをいたずらに踏襲するのではなく、むしろ「実際に存在する」デザインから影響を受けているように思います。

──やはり『サイバーパンク2077』で印象的だったポイントはデザインやアートワークでしょうか

IKEUCHI氏:
 そうですね。自分はサイバーパンク映画である『JM』なども好きなのですが、デザインを現代風にアップデートすると同時に、過去のSF作品の美意識を踏襲している点も魅力的に感じました。

──「リズィー・ウィズィー」専用のヘッドギアというテーマに対してどういったイメージを広げて製作を進めていきましたか。
  
IKEUCHI氏:
 あらかじめ3Dモデルの確固としたデザイン原案を頂いていたため、そのイメージにマッチしたパーツを収集しつつ、自分のこだわりを反映させるかたちで制作しました。

──制作するうえで、CD PROJECT REDからの注文などはありましたか

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IKEUCHI氏:
 おおむね色とシルエットは原案に寄せてほしいという要望を頂きましたが、それ以外はほとんど無かったように思います。また、自分はプロトタイプを作らずに制作するため、制作は作業を開始して完成したものを真っすぐ納品させていただく形式となっています。

──「リズィー・ウィズィー」ヘッドギアの制作過程で、特に時間をかけたポイントについてお聞かせください。

IKEUCHI氏:
 一番時間を掛けたのは塗装ですね。先方から予めゲームに実装される際の解像度といった仕様を教えて頂いたので、「しっかりと塗装するほど実装される3Dモデルも良いものになる」ことが解っていたんです。なので、時間をかけて丁寧な塗り分けを実施しました。

──ヘッドギアにおいて、特にこだわったポイントはありますか。

IKEUCHI氏:
 デザインは先方から頂いたものを再現している側面が大きいのですが、自分が原型として用意したヘッドホンが変形する機能を持っていたんです。なので、変形機構を維持したまま作品を完成させた点がこだわりです。

 ゲームでも変形機構が再現されているかは確認出来ていないのですが、変形も実装されていたら嬉しいです(笑)。

──これまで様々なIP/企業とコラボレーションされていましたが、『サイバーパンク2077』とのコラボレーションでは特にどのようなことを意識して制作しましたか。

IKEUCHI氏:
 これまでのコラボレーションとは異なり、今回はデザイン原案が用意されていた点や、制作した作品がゲームに実装されるという点は特殊でした。

 それらの条件により、360度自分の作品が観賞できるよう、正面だけでなく背部も作ったり、変更機能を維持した点は意識して制作しています。

──なるほど。

IKEUCHI氏:
 あとは、「サイバーパンク」というジャンルを明確に自分自身で意識して制作した点は新鮮でした。

 例えば、ランボルギーニさんとのコラボレーションであれば、ランボルギーニさんのイメージにマッチした作品を制作することになります。一方で、「サイバーパンク」はある種の“懐の広さ”があるジャンルだと思うんです。

 なので、広い許容範囲の中で「自分のやりたいこと」をそのまま実現できた点は今回のコラボの印象的な要素でした。

──「サイバーパンク」の懐の広さから、いつもより自由に制作で来たポイントもあるのでしょうか

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IKEUCHI氏:
 これは自分の主観的な意見ですが、「サイバーパンク」というジャンルのデザインにおいては、「本来意味のないもの」にも意味が与えられるという利点があると考えています。

 たとえばデザインや造形をする際、本来であればパーツやディテールに役割や意味を考える必要があります。しかし、「サイバーパンク」な世界においては、ユーザーや鑑賞者が勝手に意味や役割を与えたり、読み取ってくれるように思うんです。

 そんな、想像を自分が促さずとも、作品やデザインを読み取るユーザーが勝手に与えてくれる状況により、自由に制作が出来ました。

──今回のコラボを機にIKEUCHIさんを知った方に向けて、これまでの簡単な経歴を教えて頂きたいです。

IKEUCHI氏:
 1990年生まれで、美術大学でデザインを勉強した後に現在のような作品を制作するようになりました。

──IKEUCHIさんの作風は立体作品として過剰なテクノロジーを扱うものとなっています。現在の作風に至るまでに、何がきっかけで方向性が決まり、そして作風にどのような変遷がありましたか

IKEUCHI氏:
 作風が決まる切っ掛けは、美術大学に通っていた際の卒業制作ですね。

 私はデザイン系の学部に所属していたものの、ずっと趣味で模型などを制作して過ごしていました。なので、卒業制作で4年間の集大成を作る機会に、自身が取り組んできた模型と、大学で学んだコンピューターグラフィクスを混ぜて制作した作品が活動における転換点になっています。

──普段はどのようなプロセスで制作をされているのでしょうか?

IKEUCHI氏:
 制作するときには、先行するイメージに基づいて制作をする場合も、アドリブのように制作を進めていくうちに完成イメージが構築される場合の双方があります。

 どちらのアプローチも利用しつつ、良い落とし所を探しながら制作しています。

──かなり緻密で大変な作業工程だと想像されますが、制作するうえで楽しいポイントはありますか。

IKEUCHI氏:
 制作するうえではあまり楽しくはないですね。ただ、制作した作品にはそれぞれ違いがあるので、作品ごとに感じる変化は楽しく、面白いです。

──大学時代に模型に熱中していたというお話を伺いましたが、活動においてどのような作品に影響をうけましたか?

IKEUCHI氏:
 『スター・ウォーズ』には非常に影響を受けました。その後、大学時代に友人からウィリアムギブスンなどを紹介して貰い、「サイバーパンク」とされる作品を読んでいましたね。

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(画像はスター・ウォーズ /新たなる希望 (エピソード4)|スター・ウォーズ公式より)

 一方で、自分は制作において「サイバーパンク」というジャンルを意識して制作したことは無いんです。ただ、90年代生まれということもあり、『攻殻機動隊』といった80年代に隆盛したSFの意思を継いだ90年代以降の作品により影響を受けていると思います。

 また、作品を「サイバーパンク」として楽しんで頂くことに問題はないと考えています。

──『ガンダム』シリーズや『スター・ウォーズ』といった作品が好きだという話をうかがっていますが、ゲームについてはいかがでしょうか。

IKEUCHI氏:
 パソコンも大きなものは持っていなくて、コンシューマ機を購入したのはPSPであったりとハードにゲームをしてはいません。ですが、最近は友人の紹介で「Steam Deck」を購入し、少しずつゲームをプレイしています。

 昔プレイして楽しんだ作品は 『Braid』や『PORTAL』、『洞窟物語』、『VA-11 HALL-A』といった作品ですね。

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(画像はSteam:VA-11 Hall-A: Cyberpunk Bartender Actionより)

──いわゆる“インディーゲーム”寄りの作品をプレイされていますね。

IKEUCHI氏:
 そうですね。ゲームをおススメしてくれた友人の好みが反映されていると思います。

 最近でしたら『Outer Wilds』や『The Witness』をプレイしていて、『Outer Wilds』は難しすぎてゲームがなかなか進まないです(笑)。

 反射神経が求められるゲームよりは、ゲームシステム自体に魅力があったり、ゆっくりと探索などを楽しめる作品が好みですね。

──IKEUCHIさんにとって、サイバーパンクとはどのようなジャンルでしょうか? 人体拡張とか、コンピュータ世界での没入、機械との融合、人類の可能性など、様々な方向での可能性がありますが、特に意識している方向性などはありますか?

IKEUCHI氏:
 ウィリアム・ギブスンは自身の作品の中で都心ではなくて郊外(スプロール)をテーマにしていて、自分にとっての「サイバーパンク」というジャンルへの認識はこの言葉に集約されています。

 「サイバーパンク」といえば“未来”をイメージする場合が多いと思うんですけど、自分はむしろ「自分が過去に創造していた未来像」を描くものだと考えているんです。

 例えば『ニューロマンサー』の舞台が“都心”ではなくて、千葉県ですよね。そういった「実家や郊外(スプロール)」に想いを馳せるような郷愁や望郷といった感覚が「サイバーパンク」というジャンルの魅力だと思います。

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(画像はニューロマンサー (ハヤカワ文庫SF) | Amazonより)

──サイバーパンクが生まれて数十年、かつてのサイバーパンクが提示していたイメージと、現在の技術や社会の進歩は似てる点も、大きく異なる点もあります。現代に生きるアーティストとして気をつけているポイントはありますか?

IKEUCHI氏:
 やはり自分が「サイバーパンク」をテーマにしていないこともあり、極度に技術が発展した“最先端の未来”のイメージにも、極度なリアリズムにも偏りすぎないように意識しています。

──IKEUCHIさんはテクノロジーをテーマとしたアートを続けていますが、現在や近未来のテクノロジーがもたらす社会の変化などはどう考えていますか

IKEUCHI氏:
 『サイバーパンク2077』の世界においても、現実においても、発明されたテクノロジーが必ずしも想定したかたちで実現するとは限らないと思います。未来のことはあくまでも分かりませんが、テクノロジーが誕生したさいに、自分はその技術とどのように向き合うかは慎重に考えたいと考えています。

──現代はまだサイバーパンク世界では実現していない技術も多いです。IKEUCHIさんがその身に宿したいサイバーウェアはありますか?

IKEUCHI氏:
 現代においては機会を体に埋め込む理由はあまり無いと自分は考えているため、装備したいサイバーウェアはないですね。技術が普及し、必要性に駆られればサイバーウェアを装備するかもしれません。

 あくまでも日常に最新技術が必要ないと考えているので、最新の技術に関しては「作品に取り入れたい」という観点では興味があります。

──テクノロジーに対するIKEUCHIさんのフラットな姿勢は、作品にも影響していますか。

IKEUCHI氏:
 自分は作品において機能を持った“本物の機械”であることを重視しているいっぽう、作品を全員が日常で使用してほしいとは考えていません。そういった点ではフラットかもしれません。

──テクノロジーに対してフラットな見解を持つIKEUCHIさんの作品が、テクノロジーに対してアイロニカルな視点で向き合う『サイバーパンク2077』とコラボをすることは興味深いと感じました。

IKEUCHI氏:
 なるほど。ただ、AirPodsのようにミニマルに機能性を重視したプロダクトが存在する世界で、自分のような作品を制作することはアイロニカルではあるかもしれないですね。

──現在取り組んでいることや、挑戦したいことがあれば教えて頂きたいです。

IKEUCHI氏:
 現在はコラボレーションやクライアントワークではない個人的な作品を制作していて、ひとまずは制作を完成させることを目標にしています。その作品が世に出るかも不明なため、実験のような取り組みになっていますね。

 また、今回自分が制作したヘッドセットを「リズィー・ウィズィー」が装備して登場するゲームの場面を拝見させて頂いたのですが、それが凄くカッコ良かったんです。

 造形物が背景美術やキャラクターと融合した表現に新たな発見があったため、今後は「世界観」そのものを作るような制作にも挑戦したいです。

──本日はありがとうございました!(了)


 オフラインイベントの盛り上がりや展示、トークイベントなどからは大型拡張パック「仮初めの自由」に対するファンと制作陣の白熱する熱気が伺えたのではないだろうか。

 本作の対応プラットフォームはPS5、Xbox Series X|S、PCで、9月26日に発売予定。すでに予約受付を開始している。さらに進化する『サイバーパンク2077』が気になる方は発売を待とう。

編集者
ゲームアートやインディーゲームの関心を経て、ニュースを中心にライターをしています。こっそり音楽も作っています。

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