SNSは「人の承認欲求をいとも簡単に増幅させてしまう装置」だと常日頃から思う。
アナタの身近にもこんなフォロワーはいないだろうか?(いなかっただろうか?)
今まで控え目な性格だったのに、注目を集める経験をしたことでウケ狙いの過激な発言をするようになる。
それを支持するファンの出現で、さらなる注目を集めたい思いから非常識な行動を繰り返すようになる。
同好の士の集まりの中で、「自分が一番推しを愛している」とアピールしたい思いから根拠不明の情報を発信して、それによって誤解を広める。
そして、それが注目されたことによって、どんどん”推し”ではなくて”推しの好きな自分”をアピールするようになる。
きっとSNS利用者なら心当たりはある……否。あり過ぎるはずだ。
そんな承認欲求を満たされる快感に飲まれ、狂ってしまった人間たちがたくさん登場するゲームが『サーチアカウント』だ。
このゲームには狂ってしまった人間しか出てこない。まともと言えるような存在はひとりたりともいない。なぜなら最初はまともに見えていた人物も、ストーリーが進むにつれてまともではなくなっていくからだ。しかも、その人物の狂っていく過程があまりにもリアル!
ちなみに、本作は『リアル脱出ゲーム』で知られる株式会社SCRAP開発による新作ゲーム。同社は「謎解きゲーム」の印象が強いが、本作はしっかりと遊びごたえのあるテキストアドベンチャーゲームとして仕上げられていた。
SNSという舞台設定を活かしたストーリーとシステム、そして謎解きを個性としつつ、遊び方をプレイヤー側の好みで決められるという懐の広いゲームデザインから、伝統的なテキストアドベンチャーゲーム好きにも強くおススメできる作品だ。
文/シェループ
本稿では「Episode 1」「Episode 2」のストーリー展開に関するネタバレに言及しています。ネタバレなしで本作の内容について知りたい方は、先行プレイレポートの記事を参照ください。
※この記事は『サーチアカウント』の魅力をもっと知ってもらいたいSCRAPさんと電ファミ編集部のタイアップ企画です。
架空のSNSで情報収集、謎解きに挑んでいくアドベンチャーゲーム
本作『サーチアカウント』は、架空のSNS「トイッター(Toytter)」を使うユーザーの主人公になりきって、ストーリーを追っていくアドベンチャーゲームである。
本編は「episode」と称されたシナリオを順番に追っていく形で進行。トイッターのダイレクトメッセージ(DM)、検索などの機能、そして主人公が使っているスマートフォンに内蔵されたメモ、保存した画像を閲覧できるギャラリーといったアプリを活用しながら情報を集めたり、時には謎を解いたりしながらストーリーを進めていく。
DM、検索などのトイッターに備わっている機能は、X(旧Twitter)に代表される実際のSNSと同じ感覚で使用可能。文字を打ち込んだり、テキストをコピーしてペースト(貼り付け)したり、ハッシュタグを始めとするリンクをクリックするといった操作が、実際のSNSとほぼ変わらぬ感覚でできるようになっている。
一部ユーザーの投稿に添付された動画を再生する、画像閲覧からの主人公のスマートフォンへの保存、さらにその保存した画像をDMでやり取りしているユーザー宛に送ることも可能。まさにSNSの特徴を忠実に再現した仕上がりになっている。
とはいえ、DMでのやり取りは入力フォームに現れる選択肢を選んで回答するというアドベンチャーゲーム形式。また、メッセージを送った相手からの返信も即座に行われたりと、一部はゲームなりの“都合”を踏まえた仕様になっている。さすがにどちらも現実に忠実だとしたら、ゲームとしての遊びやすさやテンポに問題が生じかねないので、妥当な措置といったところである。
DMでのやり取りでも、時折、文字(キーワード)を直接打ち込んだり、画像を送信して回答するパターンがあるが、これも正解以外のものを入力したり、送信しようとすれば忠告メッセージが出て止まる仕様。
こうした仕組みなので、間違った回答をするとゲームオーバーになるペナルティもない。基本、適切な回答を選んで進めていく感じで、この辺りは昔ながらのテキストアドベンチャーに則った仕組みになっている。WEBブラウザ上で遊ぶということで、操作をそちら特有のものにしている、といった具合のゲームデザインだ。なぜ、WEBブラウザ向けなのかと疑問を抱く人も少なからずいるかもしれないが、この一連の操作を体験すれば、ブラウザ以外ではあり得ないと痛感させられること請け合いだ。
また、ストーリーを進めていく過程では謎解きも都度発生。これも「ハッシュタグ検索からキーワードを探し出す」、「断片的な情報を集めて繋ぎ合わせる」、「その情報すべてに共通する情報から人物・場所を特定する」など、SNSおよびインターネット上が舞台である設定と特徴を活かしたものになっている。
ある程度、ストーリーが進むと謎解きは複雑なものに進化。いくつかの画像に共通する法則性を導き出したり、キーワードパズルに挑戦するなど、「リアル脱出ゲーム」の制作で知られる所が制作した作品である事実を思い知らされる観察眼と推理力が試される類のものが出てくるようになる。いずれも真正面から取り組むとなれば、紙とペンはほとんど必須。実際にゲーム開始前にも、紙とペンの用意を推奨されることからも、一筋縄ではいかないものが揃っているのかが容易に想像されるだろう。
ただし、前述したが、ストーリーだけを楽しみたいプレイヤーに配慮した救済機能も完備。それが「ブレインノート」だ。
「ブレインノート」は画面下中央にあるメニュー画面を開くと選択可能になり、これから取る行動の指針や謎解きにまつわるヒントを教えてくれる。しかも「もっと考える」のボタンをクリック(タップ)すると、さらなるヒントが表示。そこからさらに「もっと考える」を選べば、ほとんど答え同然のヒントが出るのだ。
しかも、この「ブレインノート」を使うことによるペナルティは一切ない。使うとクリア後の評価に響くとか、ベストなエンディングが見られなくなるみたいなことは“絶対に”ない。強い表現を用いたが、実際、本当に使ったところで何の影響もないのだ。なので、ストーリーだけを楽しみたければ、積極的に使ってしまって大丈夫だ。
もちろん、あえて使わずに取り組むのもよし。そんなプレイヤーそれぞれの好みを許容した設計で、遊び方次第で本格的な謎解きを楽しむアドベンチャーゲームにも、純粋にSNSという舞台設定を活かしたストーリーを楽しむアドベンチャーゲーム、またの言い方でノベルゲームにもなるのだ。
このようにSNSという舞台設定を活かしたストーリーとシステム、そして謎解きを個性としつつ、遊び方をプレイヤー側の好みで決められるという懐の広いゲームデザインが光るアドベンチャーゲームに仕上げられている。
なお、用意されているエピソードは全部で5つ。基本は1本道で進む構成だが、会話によってその後の展開が変化する分岐要素は設けられていない。ただし、後半にはその種の要素が登場する。具体的にどこで登場するかはここでは割愛する。
連続殺人鬼の正体に迫る……はずが、混迷を深めていくストーリー(episode 2までのネタバレあり)
そんなシステム、ゲームプレイを特徴とする本作のストーリーは、謎の連続殺人鬼の真相解明に挑むというものだ。
本作でプレイヤーが扮するのは「美鳥(ミドリ)ワカバ」。怪奇現象、都市伝説などの調査・研究を主として活動する「オカルト研究会」に所属する、東京都内の私立大学に通う女子学生である。
いつものようにスマートフォンからトイッターへとログインしたワカバは、7月の合同合宿で知り合った関西方面の大学に通う男子学生「ケン」からDMが送られてきていることに気づく。それは東京で物騒な殺人事件が起きていることを理由とした、ワカバの身を案ずる内容だった。ケンによれば、トイッターでも殺人事件のことは話題になっていて、特に「都市伝説殺人」なるハッシュタグが賑わっているとのことだった。
早速、そのハッシュタグを検索してみると、都市伝説と噂される「イラナイコ」が現実で殺人事件を起こしたとの話題で持ち切りとなっていた。イラナイコとは、出会い系掲示板で知り合った女性との遊びに明け暮れる父親に見捨てられ、孤独のあまり家の鍵に付けられていた紐で自殺した少女の霊のこと。
霊になった後、イラナイコはインターネット上に父親が使っていたハンドルネームで出没し、誘い出された女性は、少女が自殺する際に使った家の鍵の紐で絞殺されてしまう……というのが噂のあらましである。
そんなイラナイコによって、女子大生が絞殺されたというのだ。しかも、被害者はワカバと同じ大学に通う学生。そして、遺体の近くには謎の文字列が書かれたカード、不思議なフィギュアが置かれていたという。
さらにトイッターでイラナイコを名乗るアカウントが事件前日、被害者の殺害をほのめかす投稿をしていたと、事件を報じたニュース番組が紹介していた。
実際にイラナイコのアカウントを見てみると、確かにその投稿がある。それどころか、その少し前にはワカバの殺害をほのめかす投稿もあった。ケンがワカバの身を案じるDMを送ってきた最大の理由はこれだったようだ。幸いにして、ワカバは今のところ無事である。
それを知って安堵したケンは、自分たちがオカルトの調査を得意とすることから、「一緒にイラナイコの正体を突き止めないか」とワカバを誘う。その誘いに乗ることにしたワカバは、ケンと一緒にトイッターやインターネット上のWEBサイトで女子大生が殺害された事件の情報を集めながら、イラナイコの正体を探っていくというのが、本編最初の「episode 1」の始まりとなる。
以降、「episode 2」までの展開を少しネタバレしながら紹介すると、ワカバたちは殺人事件の情報を集めていくにつれ、被害者が“ネット義賊”と称される仮面を着けた動画配信者であること、さらにある人物から依頼を受け、イラナイコの正体を探っていたことが明らかになる。
そして、被害者はその正体を探るに当たって、会員制のオンラインサロン「怪奇倶楽部」の掲示板を調査していたことも判明する。ワカバたちは「怪奇俱楽部」の会員になり、その掲示板を調査。そこからイラナイコの特徴でもある、女性を誘い出す類の投稿をしていた「ばっちー」なる人物を発見する。
いくつかの準備を経て、ワカバはばっちーにDMでコンタクトを取る。すると彼と直接会うことになり、その際の手がかりとして顔写真が送られてくる。その写真には、なんと被害者の遺体発見現場に残されていたフィギュアが!
この顔写真をケンに送った後、彼は「ばっちーこそがイラナイコだ」と断定。ワカバに被害が及ぶ可能性を考慮し、自身のアカウントで写真付きの投稿を実施して告発する。
だが、ばっちーは自らのアカウントで即座に動画配信を行い、これを完全否定。さらに自らのファンに作ってもらったという、トイッターの投稿から現在地を特定するツールを使い、事件当日に自身が日本に居なかったという状況証拠を提示する。そして、追い打ちをかけるように、イラナイコのアカウントまでもが「わたし ばっちーじゃないよ」と投稿した。
かくしてケンに限らず、写真をケンに渡したワカバもばっちーの怒りを買ってしまい、「必ず身元を特定してやる」と付け狙われることになってしまった。それと時を同じくして、イラナイコは次の殺人をほのめかす画像付きの投稿を実施。その画像に映し出された人物が次のターゲットであることを告げた。
ワカバとケンはこの事態を食い止めるため、再びトイッター上で調査を開始し、最終的にそのターゲットである人物を特定する。また、先日の配信で投稿者の居場所を特定するツールを持っているばっちーの協力を取り付け、ターゲットの人物を保護すべく、ばっちーが(ほぼ目立ちたい一心で)率先して動くも、時すでに遅く、ターゲットはイラナイコによって殺害されてしまっていた。
だが、一連の様子をばっちーが動画で配信していたことが功を奏し、イラナイコの姿が公にされる。その姿は仮面をかぶり、全身を黒い装束でまとった不気味なものだった。そして、公にされたことを機にイラナイコはその姿のまま動画配信を行い、次なる殺人を予告。そうして再びワカバとケンが動く……というのが「episode 2」の終わりから次なる「episode 3」の始まりまでの流れとなる。
いくつかの過程は省いたが、まさに最初から最後まで息つく暇を与えない展開と、トラブルの連続である。また、調査の過程では一部、止むなく非常識な行動を取らざるを得ない場面が多数ある。前述したDMで貰った写真を他人に渡し、公にするのがその一例だ。これの前にも具体的に説明するのを躊躇してしまう場面があるのだが、それは実際に体験してのお楽しみである。ある意味、架空のSNSだから、ゲームであるからこそ良かった(許された)という安心感を覚えるだろう。人によっては、現実的な恐怖も覚えるかもしれない。
ストーリーが進むにつれ、登場人物も増えていくのだが、みな一様に“闇”を抱えているうえ、性格的にもクセがありすぎる面々ばかりである。
とりわけ、イラナイコだと疑われたことによる怒りはごもっともながら、その後の行動が暴走気味のばっちーには、よくも悪くも現実にも居そうな生々しさを抱いてしまうだろう。「episode 2」から初めて登場する人物たちも大変に強烈。その中には実在の人物をモデルにしているとしか思えない存在もいる。
一例としては、このお金を無償で配っている男性である。
誰がモデルかはお察しかもしれない。これ以上は何も言わない。
すべてを終えた時、承認欲求増幅装置という名のSNSの姿とそれに飲まれた人間の怖さをアナタは目撃する
そして、「episode 3」以降になると、さらにクセの強い登場人物が多数登場。ワカバことプレイヤーが調査の過程で取り組まざるを得ないことも過激化の一途を辿り、思わず「そこまでやらなきゃいかんのか……?」と困惑すること必至だ。
肝心のストーリーも大変な事態へと発展していく。
ここから先の内容は詳細に書いてしまうとこれから遊ぶ人の楽しみを奪ってしまうため控えるが、まさに波乱とも言える展開の数々にクギ付けになってしまうだろう。そして、それらを経て迎える最終エピソードでは、大変衝撃的なイベントが待っている。
そのイベントの詳細もここでは割愛するが、おそらく「えっ!?」と声を挙げてしまうかもしれない。同時に背筋が凍るような感覚にも襲われるだろう。それほどまでに今までのエピソードとは空気が一変する。同時に、実は思いもしないところにこの最終エピソードの展開へと繋がる“カギ”が存在していたことに戦慄するだろう。
また、最終エピソードでは一連の事件を引き起こした連続殺人鬼たるイラナイコの正体も暴かれる。一体、誰がイラナイコなのかをここでは言及しないが……、色んな意味でドン引き確実である。同時に正体を知った後に再びゲーム本編を最初からやり直せば、(いい意味で)とんでもなく気色悪い心持ちで一連のストーリーを見るようになるはずだ。
実は筆者、正体が暴かれた後に勢いのまま2周目を遊んでしまったクチである。
その結果、色んな場面が1周目とは違ったものになった。また、ハッシュタグで閲覧できる様々なユーザーの投稿にも「言われてみれば……」と気づかされることも多々あり、見事に“してやられた”な気持ちになった。
そして、この一連のストーリーを体験して感じたのが、SNSの承認欲求増幅装置としての姿と、それに飲まれてしまった人間の怖さだ。「episode 2」までの時点でも、ばっちーにお金を無償で配る男性など、承認欲求を満たすために無茶苦茶な行動に出る人物たちが多数登場し、プレイする側を大いに引かせてくる。
だが、すべてを終えた今では、ばっちーと例の男性はまだまともな方だったのかも……との印象が強くなった。決して彼らが善良な人物だとまでは言わないが。特にばっちーはプレイヤーに対して恫喝行為を行ったり、投稿情報から居場所を特定する解析ツールを持っていたりと、行動そのものが褒められた人物ではない。
とは言え、作中にはそれ以上に引いてしまう、超が付くほどドン引きした人物がいたのだ。
それはズバリ……ワカバにイラナイコを調査しようと誘ったケンである。多くは言わないが、おそらく本作を最後まで体験したプレイヤーのほとんどは彼に対し、嫌悪感を抱くようになってしまうと思う。
正直、筆者は作中の登場人物の中で一番ドン引きしたのは誰かと言われたら、真っ先に彼を挙げる。今では、彼のプロフィールを見るだけでも、近寄りがたい“何か”を感じるようになったほど。それぐらい、最初と最後とで印象が逆転する。承認欲求増幅装置としてのSNSの姿、それに飲まれた人間の怖さを描いたキャラクターのひとりになっているのだ。
こんなクセのある登場人物たちを体験できる部分に、少しでも惹かれるものを感じたのなら、本稿を読むのは止めて、本編を始めてみていただきたいところだ。ストーリーの行く末が気になる人もまた然りである。色んな意味でおぞましいひと時が楽しめるだろう。
SNSとテキストアドベンチャーの意外な親和性の高さが垣間見える、ゲームデザインの見所
改めて振り返ってみると、最初から最後まで目立った寄り道もなくストーリーが進行していくのも見所のひとつになっている。そして、SNSの文字数制限を全体的に再現した結果、読みやすいテキストを作り上げているのも地味ながら特筆する部分だ。
本作は基本、トイッターに溢れかえるユーザー投稿という名のテキストの山を掘りながら、調査を進めていくことになる。また、DMでのやり取りでも多数のメッセージが送られてくるに加え、ストーリーの展開に応じてWEBサイトの掲示板をチェックすることも発生するため、とにかくテキストに次ぐテキストの雨あられである。
しかし、制限の関係で長文が不可能なことから、結果として読みやすさを持ったテキストになっていて、見ていても苦になることがほとんどない。そして、単純に見ているだけでも、なんとなくニュアンスが分かるようになっている。
膨大なテキストでまとめられたストーリーというのは、プレイヤー(読み手)側に一定の労力と集中力を必要とする。ゆえに人を選んでしまう側面があるのだが、本作はSNSという舞台設定が結果的に膨大なテキスト特有の負担を軽減させており、読みやすさへと直結させている。
SNSの枠組みは、膨大なテキストで紡がれるストーリーおよびアドベンチャーゲームと凄く相性がいいと思わせる、実に不思議で面白いまとめ方になっているのだ。
なので、冒頭で本作はテキストアドベンチャーゲーム好きにも必見の作品と紹介した。そんな思わぬ強みが発見できるのである。
また、これだけバリエーション豊かな投稿用テキストを執筆し、いかにもSNSっぽいテイストにまとめあげた制作スタッフの労力にも賛辞を送りたいところである。炎上時の中傷じみた投稿、承認欲求が隠しきれていないさりげない独り言など、どれも生々しく仕上がっている。
また一部、分かる人ならばニヤリとするSNS絡みの小ネタが散りばめられているのも見所だ。すでに登場人物の時点で、露骨なネタがあるのは紹介済みだが、投稿にも「おや?」となるネタがあちこちにある。どれだけのネタが隠されているのか探ってみるのも面白いので、怒涛のストーリー展開で疲れた際に小休止がてらやってみると楽しいかもしれない。
多人数で謎解きに挑む遊び方もお薦め。ひとりでも十分に楽しめる意欲作
そんな見所の多いストーリーだが、いくつか気になったところもある。
特に筆者個人としては、警察側の描写の少なさが気になってしまった。事件解明のため、偽名を装って情報収集をしているとか、あるいはここぞという時に出てくる名ありの登場人物が居ると、より盛り上がったのではないのかと思う。
また、SNS上で調査を繰り広げていくとは言え、DMの返信は選択肢形式、キーワード以外の単語を入力しても反応があまりないなど、1本道のアドベンチャーゲームとしての姿が出てしまっている部分も、人によっては気になってしまうかもしれない。先ほど見所として紹介した登場人物たちも、逆を言えば合わない人には強烈な嫌悪感を引き起こす危険が隠れていることを意味するので、注意が必要である。
とは言え、ストーリー自体の面白さは盤石であり、テキストアドベンチャーゲームとしても興味深い特徴を持った作品になっている。
本稿ではあまり取り上げなかったが、謎解きもさすがは「リアル脱出ゲーム」を制作している所が作っているだけに本格的かつ手応え十分。そして、SNSという舞台設定ならではのアイディアが光る仕上がりになっている。
ストーリーだけを楽しむのも本作の遊び方のひとつだが、真剣に謎解きに取り組みつつストーリーを楽しめば、より一層、主人公ワカバとの一体感を味わえる。また公式には1人だけではなく、複数人によるプレイも推奨されている。ひとつの謎に対して、仲間と一緒に議論しながら答えを探し出し、その先に待つストーリーを楽しむというのもなかなかにオツだ。とりわけ年末年始、人が集まる機会に本作で楽しんでみるのも一興だろう。プレイ時間も最長で5時間ほどと、ホドホドの長さに収まっているので遊びやすいはずだ。
他にも4~5時間ほどのボリュームでまとめられた本編はまったく退屈することがなく、没頭してしまうほど熱中度の高い内容になっているという見所も。さらにストーリーの要所では動画によるムービーデモも流れるのだが、こちらでは登場人物たちが声優陣によるフルボイスで喋るほか、一部、凝った映像が用意されている見所があるので必見だ。
『リアル脱出ゲーム』の会社によるWEBブラウザ向けの新作ゲームとの情報から、謎解きメインの参加型ゲームとの先入観を持つかもしれないが、これまで紹介したように、ゲーム自体はひとりでも複数人でも楽しめる作り。そして、テキストアドベンチャーゲームとしてもWEBブラウザというプラットフォームならではの特徴、SNSが舞台という設定による恩恵が異彩を放つ仕上がりだ。
現在、特設サイトにて体験版が公開中となっているため、少しでも興味があれば、ぜひとも挑戦を。SNS上での情報収集を繰り広げ、時に危険な行動を経験しながらも、謎の殺人鬼「イラナイコ」の正体を暴き出そう。そして、SNSの承認欲求増幅装置としての姿、それに飲まれた人間の怖さを目撃せよ。
また、12月22日から1月5日にかけて、本作『サーチアカウント』も対象としたオンラインゲーム7作品が最大で80パーセントオフになるセール「SCRAPオンラインゲーム 年末年始セール」を開催している。この機会に気になった作品を体験してみてはいかがだろうか。
■対象作品/販売価格
・『封鎖された人狼村からの脱出』
▼いますぐプレイ版/キット版
2800円→560円(80パーセントオフ)・『封鎖された魔王城からの脱出』
▼いますぐプレイ版/店頭版
3000円→600円(80パーセントオフ)・『封鎖された殺人マンションからの脱出』
▼いますぐプレイ版
3000円→1500円(50パーセントオフ)
▼特典付きパッケージ版
3300円→1650円(50パーセントオフ)・『HOTELブルーローズの99の部屋』
▼いますぐプレイ版
2800円→1680円(40パーセントオフ)
▼特典付きキット版
3000円→1800円(40パーセントオフ)・『時間旅行と7つの謎』
▼いますぐプレイ版
6000円→4200円(30パーセントオフ)
▼パッケージ版
6200円→4340円(30パーセントオフ)・『大迷宮パズルキャッスルからの脱出』
▼いますぐプレイ版
2800円→2240円(20パーセントオフ)
▼パッケージ版
3000円→2400円(20パーセントオフ)・『サーチアカウント』
▼いますぐプレイ版
2800円→2520円(10パーセントオフ)
▼パッケージ版
3300円→2970円(10パーセントオフ)
※ロフトでのご購入は対象外となります。■セール対象期間
2023年12月22日(金)11:00から2024年1月5日(金)23:59
※「リアル脱出ゲーム」は株式会社SCRAPの登録商標です。