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『風来のシレン6』には“故郷に帰ってきたかのような安心感”がこれでもかと言わんばかりに詰まっていた。古参ファンはもちろん、初めて『シレン』に触れる人にも強くオススメできる傑作

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“故郷に帰ってきたかのような安心感”に満ちあふれた傑作。それが『不思議のダンジョン 風来のシレン6 とぐろ島探検録』(以下、風来のシレン6)だ。

筆者は1995年発売の初代『風来のシレン』でローグライクというジャンルと、その醍醐味を初めて知った。いわば、筆者にとって『シレン』はローグライクの“故郷”である。ただ初代『風来のシレン』で満腹度200%に達するほど満足してしまったこと、違う味と環境を求めたくなったため、ここ数年の『不思議のダンジョン』シリーズは『ポケモン不思議のダンジョン』などの派生作を追いかけていた。

そんななか現れた今回の新作。気が付けば、初代を遊んでからビックリ仰天の29年の年月が過ぎ去っていた。そんなにも時が経ってしまっていたとは……。

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ゆえに「そろそろ帰省する頃か……?」となり、久しぶりに戻ってみた。

そして、扉を開けてみたところ……まさに故郷ならではの安心感がドドッと押し寄せてきて、時間を忘れて入り浸ってしまったのだった。これを書いている今は、『風来のシレン』定番のクリア後ダンジョンに四苦八苦しているこの頃である。

断言しよう。今回の『風来のシレン6』は『不思議のダンジョン』シリーズを遊ぶにあたって、これ以上なくベストな新作だ。

もちろん、続編と外伝作品を追いかけてきたファン、『ポケモン不思議のダンジョン』に象徴される派生の『不思議のダンジョン』シリーズしか遊んだことがない人、そもそも『不思議のダンジョン』シリーズ自体が初めてな人にもおすすめできる。

とりわけ操作性・遊びやすさに関しては間違いなく歴代屈指と言える。遊んだら最後。過去の『風来のシレン』や派生の『不思議のダンジョン』シリーズに戻りにくくなるだろう。それくらい、盤石の面白さが凝縮されている傑作だ。

文/シェループ
編集/実存


■基本はいつもの『風来のシレン(不思議のダンジョン)』。だが、始まりは前代未聞の……!?

『風来のシレン6』の基本的な内容は過去の続編、派生の『不思議のダンジョン』シリーズと同じ。見下ろし視点(トップビュー)で展開されるランダムダンジョンRPG。またの名は「ターン制ローグライク」だ。

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ターン制ローグライクとは、プレイヤーが1歩動けば、敵や味方(NPC)も1歩動くという原則に基づいて展開されるローグライクだ。ジャンルの始祖『Rouge』にあやかってか、PCゲーム配信プラットフォーム「Steam」においては「伝統的ローグライク」と言われているらしい。

とにもかくにも、『風来のシレン6』もそんな仕組みをバッチリ踏襲。探索のたびにダンジョンの地形、敵、道具の出現位置などが変化する自動生成システム、体力(HP)が尽きてゲームオーバーになるとお金を含むすべての道具を失い、ダンジョン最初の階層からやり直しになるシビアなルールも健在だ。

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派生の『不思議のダンジョン』シリーズの中には、ゲームオーバー後もプレイヤーのレベルが継続されるシステムを採用した作品もあるが、今作にはない。問答無用でリセットされるお馴染みの設計となっている。

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システム面でも初代『風来のシレン』に存在したものはほぼ網羅。道具の保存などが可能な「壺」、道具の売り買いが可能な「店」、探索に同行してくれる「仲間」は今作でも健在だ。

そして、プレイヤーに課せられる最終目的も初代『風来のシレン』を思い起こさせる分かりやすさと、現代的なアレンジがほとばしるものになっている。それはズバリ、今作の舞台「とぐろ島」中央にそびえ立つ「蛇頭山(じゃとうさん)」の頂上、31階で待ち受けるラスボス「ジャカクー」の撃破だ。

「ラスボスを名前込みで紹介するなよ!ネタバレすぎるだろ!」と言われそうだが……

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▲念のためだが、オープニングの一幕である。

実はラスボスのジャカクー、本編開始早々に戦うことになる。そう、今作はいきなりラスボス戦から始まる。本編開始数分で、メインストーリーの終着点に到達できてしまうのだ。なんというイマドキの仕様にして展開!

しかし、初見でそんな相手とまともにやり合えるはずがなく。……初見では。(重要)
結局はその後、いつも通り1階から始まる流れになる。

ただ、先々の展開が分かっているおかげで、「どんな武器、道具を持ち込めばいいのか?」と先々を踏まえた戦略を考えながら進めていける点では、初代『風来のシレン』や派生の『不思議のダンジョン』シリーズとはひと味異なる。

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何より、プレイヤー自身の成長が分かりやすく現れる。ゴール地点の階層が何階であるか判明しているゆえ、「どれほど近づけたか?」というのがハッキリ出るのだ。加えて、進めば進むほど「とぐろ島」の全体像を表した地図が出来上がっていく要素もあり、完成自体がプレイヤーの成長の証として返ってくる。

逆に「何階層あるか分からない」という先が読めないスリルは失われたが、元々、ゲームオーバーになることによるリセットという強烈なスリルが常時付きまとう内容。そんなローグライク醍醐味特化で味わえるようになった点では、なかなか適切な変更と言えるだろう。

こんな具合に初代を踏襲しつつ、現代風かつ、戦略を練る楽しみと上達の快感を感じられやすい作りに今作は仕上げられている。まさに原点回帰を売り文句にした新作ならではの特徴といったところだ。そして、初代『風来のシレン』に近い流れが確立されているからこそ、ご無沙汰のプレイヤーほど「故郷に帰ってきた!」という気持ちになりやすい。

同時にいきなりラスボスから始まる流れで、故郷自体の“進化”も感じ取れる。


■旧作に戻れなくなること不可避!『不思議のダンジョン』シリーズ随一の快適な操作性とUI

だが、今作で最も“進化”を強く感じ取れるのは操作周りと遊びやすさの2つだ。

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操作周りは誇張抜きに『風来のシレン』どころか、『不思議のダンジョン』シリーズ史上屈指とも言える手触りになっている。ユーザーインターフェース(UI)の反応のよさはもちろんのこと、プレイヤーキャラクターのシレンの移動、攻撃、ダッシュといった動作も驚くほどスピーディに実施できる。
ボタン配置も初代『風来のシレン』、スーパーファミコン時代のものとほぼ変わりなく、当時の経験があれば、本当にあの頃の感覚で動かせる。

それでいて、あの頃にも増して迅速に動く。単純にシレンを歩かせる、攻撃を繰り出すだけでも気持ちいいと感じられる手触りとなっているのだ。

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そんなシレンの歩行速度はオプション(ゲーム設定)から3段階に変更可能。この中で最も高い「速い」を選択すると、アクションゲームかと錯覚するレベルでスラスラヌルヌル動くようになる。人によっては「これじゃ焦る!」と困惑するほどだ。
もし、初代『風来のシレン』や過去のシリーズ作に近い速度で遊びたいのであれば「ゆっくり」を選ぶのがいいだろう。なお、「ゆっくり」に設定しても反応のよさはバッチリだ。

そのような設定周りの配慮も盤石なだけに、ストレスはほとんど感じさせない。移動速度に限らず、ダメージ時の振り向きの有無、ボタン長押しによる攻撃の継続なども設定可能に加え、ボタン配置の変更にも完全対応している。フィールドにマス目(グリッド)を表示するか、足跡をマップに表示させるかの有無も選べる。

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▲投げ物ショートカットは最大4つまで登録可能(設定で1つに絞ることもできる)

またZL、ZRボタンとの組み合わせによるショートカット機能も網羅。ZLボタンは「矢」「石」などの投げもの系の武器に対応していて、最大4つ(設定で1つ)まで登録できる。ZRボタンは「便利ショートカット」と名づけられていて、足元確認、状態確認、メッセージ履歴、フィールド上の見渡しをABXYボタンとの組み合わせで迅速に行える。

そして、-ボタンを押せばNintendo Switch、PC、スマートフォン向けの『不思議のダンジョン 風来のシレン5plus フォーチュンタワーと運命のダイス』にて新たに追加された「ライブ探索表示」に切り替え可能。

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動画配信向けの機能だが、普通に遊ぶ時も便利な機能で、とりわけ装備している武器と盾、ステータスなどの一部情報の表示に限定する「タイプ2」は優れた利便性を誇る。ある程度、ゲームに慣れてきたら使ってみることをおすすめしたい。

細かいところでも攻撃時の痛快なヒット音を始め、効果音も操作している時の心地よさを引き立てており、こだわりを感じられる。一連の特色も、実際に触れてみないと良さが分かりにくいというのがもどかしくもあるのだが、声を大にして言いきろう。一回でも触れてみれば、瞬時に良さが分かる仕上がりである、と。

冒頭でも言及したが『風来のシレン』に限らず、『不思議のダンジョン』シリーズを経験したことのある人なら、過去作に戻れなくなるどころか、それらの手触りがよくないと感じるようになってしまうだろう。この操作系で過去作のリメイクを作って欲しいとの望みも生まれてしまうかもしれない。それほど強烈な進化が現れた箇所になっている。

■本編ストーリーの難易度も良心的。だが、油断すれば痛い目に遭う手ごわさも健在!

そして、遊びやすさ。特にジャカクー撃破を目指す本編ストーリーの難易度はなかなか良心的な調整になっている。かと言って、簡単になった訳ではない。立ち回りと判断を誤れば、ナチュラルに最初の1階でゲームオーバーの憂き目に遭う

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▲1階開始間もなくにして、この悲劇……

そもそも、ここにガチでそれをやらかした人間がいる。
「いよいよ『風来のシレン6』の本番開始だ!」となった矢先にこれだよ!
しかも、トドメを指した敵は『風来のシレン』シリーズのマスコットキャラクター「マムル」!

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相変わらず可愛い姿をして油断ならぬヤツ……!

ただ、このような事態に見舞われたのには別の理由もある。それは敵から受けるダメージの量が大きくなっていること。

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マムルを例に出せば、初代『風来のシレン』の時は装備無しの丸腰でもダメージは1~2程度だった。対し、今作では同様の状態だと3~4のダメージを受ける。約2倍近くに底上げされているのである。

また、1階の時点で丸腰ながら平均7~8ダメージ不可避の敵も出てくる。そんなダメージのことに全く意識せず、囲まれたらどうなるか? 答えは上の通りだ。「簡単になったわけではない」との意味が分かったと思う。

「それなのに良心的とはこれいかに?」だが、相応に強力な道具、装備品が手に入りやすくなっている。たとえば体力がゼロになっても復活できる「復活の草」、一定ターンの間無敵状態になる「無敵草」、そして1歩動くたびに経験値が得られる「しあわせの腕輪」だ。

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▲「復活の草」は始まって早々に手に入ってしまうことも。

これも初代『風来のシレン』以来ご無沙汰なプレイヤーなら、「レアな道具じゃないか!」と思うかもしれない。実際、滅多に手に入らないものだった。それが今作ではかなり手に入りやすくなっている

しかも、ダンジョンや中継地点の村、港にある店で頻繁に売られているのに加え、比較的手ごろな価格で購入可能。十分な数が手に入れば、武器や盾の強化などを心がける必要もなく、初見でのジャカクー撃破も狙えてしまうのだ。そこに「しあわせの腕輪」も手に入れば鬼に金棒。安定して中盤以降の階層まで進めていけるだろう。

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万が一、ゲームオーバーになっても絶望する必要はない。中継地点で前回の時にはなかったイベントが発生し、進展させることで様々な便利要素が解禁されていく。正規ルートよりもレアな道具が手に入りやすい裏ルート、冒険に同行してくれる「仲間」、異なる装備品同士を組み合わせてパワーアップさせる「合成」などだ。
いずれも『風来のシレン』シリーズお馴染みのものだが、今作は前述の道具および装備品の手に入りやすさもあって、解禁による難易度の低下が顕著に出る。

他に自動回復も高速化および増大しているという地味に大きな変更点もある。こうした工夫が凝らされているのもあって、手ごわくはありつつも良心的と言い切れる調整になっているのだ。
とりわけ、ダンジョン内で手に入る便利な道具、装備を保管できる「倉庫」に蓄積せずとも初見クリアが見込める点は、シリーズ経験者とローグライク熟練者ほど唸る特徴と言えるだろう。

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『風来のシレン』初体験のプレイヤーにとっても、便利な道具と装備品の入手がしやすいため、力で押す攻略が効く設計になっているのも有難味を感じやすい。『不思議のダンジョン』シリーズどころか、ターン制ローグライク自体が初めてとなれば、いきなり本番な構成もあって戸惑いやすいが、遊び方のヘルプは+ボタンを押せば、常時確認可能。

また、今作からの新要素としてダンジョン内で遭遇したモンスター、入手した道具を自由に配置し、練習ができる「もののけ道場」もある(※解禁するには何回かゲームオーバーになってやり直す必要がある)。

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これらの機能を積極的に活用して、本番での実践を繰り返していくことで、徐々に立ち回りがスムーズになっていくはずだ。

ちなみに今作の公式WEBサイトにも、攻略に役立つガイドと動画が掲載されている。ゲーム内のヘルプ、「もののけ道場」で試すにも限界があると感じた場合はこちらを参照してみるのがおすすめだ。究極的には他のプレイヤーのプレイ動画を参考にしてみるのも一興である。

あるいは今作のネットワーク絡みの新要素、他のプレイヤーの記録を追体験する「パラレルプレイ」のデータをダウンロードして体験してみるのも選択肢のひとつ。このようにゲームの内外でも、今作は初心者をフォローする要素が充実している。こうした手厚さもまた、本作の遊びやすさと良心的な設計を物語っている感じだ。

■メリットとデメリットを明示しつつ、主張しすぎない塩梅に押さえられた新要素

象徴的な2つをピックアップしたが、システム全般もシンプルかつ綺麗に整理されている。

ダンジョン探索に関係したもので「ドスコイ状態」、「デッ怪」という新規のものもあるが、いずれも主張は控え目。基本はダンジョンの深部を目指せばいい、『風来のシレン』および『不思議のダンジョン』シリーズ本来の遊びに重きを置いた塩梅になっている。

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それでいて空気すぎることもなく、中でも満腹度が150以上に達すると発動する「ドスコイ状態」は、シレンが巨大化する見た目を裏切らないパワープレイを楽しめる。罠を踏みつけて壊したり、壁を壊して強引に道を切り開く、増大した体力に任せて力で押し切るなど、その見た目に違わぬ豪快な立ち回りが面白い。

ステータス補正も過度に強化される感じではなく、極端な崩壊が起きないよう加減されている。また、120以下になると自動解除されるのも、その効果を最大限発揮できるタイミングはどこか、どの道具があればベストな効果を発揮するかなどの戦略を練る面白さを演出。特に後者、鬼に金棒な効果を発揮できる状況が生まれた瞬間の“してやったり感”は格別だ。

一点、150以上まで満腹度の最大値を上げなくてはいけないのがハードル高めだが、本編ストーリーのクリアに必須の能力というわけではない。使えると探索が有利になる要素としての位置づけで、適切な位置に収まっている感じだ。

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巨大モンスターこと「デッ怪」も本編ストーリーではそこまで頻繁に登場せず、一部の階層に限定されている。

攻撃力が異様に高く、正面からはほとんどダメージを与えられない厄介な特徴がありながら、移動速度は遅いため回避は容易で、相手にしたくなければ出口から逃げてしまえばいいと、割り切って対応できる。倒しても大した経験値が得られないというのも、無視が最適であることを物語っている。

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ただ、「デッ怪」が出現する階層のフロアを踏破すると、その出現箇所「デッ怪ホール」が消滅し、場所にレアな道具が現れるというちょっとした特典も。逃げ切るのが最適解とは言え、余裕があればホールの踏破を狙ってみるのも一興だ。場合によってはその後の戦略を一変する道具が得られるかもしれない。このようなリスクを取ったことによるリターンがちゃんと用意されているのも、この要素の侮れない部分である。

どちらも使用、対応が必須ならストレス要因になり得るところだが、少なくとも本編ストーリーのダンジョンを進めるに当たってはそんなことはない。そのことからも、落としどころとして適切な新要素となっていると言えるだろう。

なお、後述するが本編ストーリー外のダンジョンでは使うこと、対処することが要求されてくる。こちらでの体験は、本編ストーリーとは違った印象と存在感を抱くだろう。とりわけ「デッ怪」がすべての階層で出現するダンジョンは、攻略そのものが大きく変わるのに加えて、脅威の度合いも高まる関係で、賛否が分かれるかもしれない。

■クリア後のやり込み要素も満載。また『風来のシレン2』の正統進化的な部分も……?

本編ストーリー外のダンジョンと紹介したが、今作もクリア後の要素は豊富。『風来のシレン』シリーズお馴染みの長丁場の高難易度ダンジョンから、前述した「デッ怪」、「ドスコイ状態」などにフォーカスした特殊なダンジョンが多数用意されている。

また、本編ストーリーも実はエンディングを迎えればそれで完結とはならない。詳細は伏せるが、ちょっとした”続き”がある。さらに「仲間」に関係したストーリー、イベントも多数用意されていて、そこから特殊なダンジョンへの挑戦が解禁されることもある。

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実のところ、筆者はまだ本稿執筆時点でクリア後のダンジョンは一部しかクリアできていない状況にあるのだが、このすべてを終えるだけでもそれなりに長く遊べるだろう。本編ストーリーは準備を入念に整えながらのプレイでも、最長で4~5時間ぐらいだが、そこから先が長い。その辺りはいつもの『風来のシレン』といったところだが、今作においてもその特徴と底なしに等しい魅力は健在である。

他にゲーム以外のところでの注目点をピックアップすると、ひとつにグラフィック。オブラートに包まず言ってしまうと、イマドキの高精細で美しいビジュアル!というわけではないのだが、どことなくNINTENDO64で発売された『不思議のダンジョン 風来のシレン2 鬼襲来!シレン城!』(以下、風来のシレン2)っぽさのある作風だ。

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ただ、このグラフィックが功を奏している部分も。それが処理の軽さとロードの速さ。
グラフィックが3Dであることから、相応に処理周りが重くなっているとの先入観を持つかもしれないが、実際の処理は軽く、ロードも速い。唯一、ゲーム起動からタイトル画面に移るまでの間には長めのロードが発生するが、それ以外はあっても3秒程度。待たされるということ自体が起きにくいのだ。

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なので、3Dになって重くなっているとの先入観があるなら、騙されたと思ってプレイいただきたい。きっと予想だにしない速さと軽さに驚くはずだ。ちなみにフレームレートも最大60fpsが出る。これにより、現代的にアップグレードされた『風来のシレン2』っぽさが出ているのも、同作が好きな人ならばたまらないはずだ。

音楽も『風来のシレン』シリーズの伝統とも言える和風の楽曲を中心に構成。完成度も高く、とりわけ序盤の「そぞろヶ浦」での楽曲は頻繁に耳にすることもあって耳に焼き付くこと間違いなし。妙にテンションの高いレベルアップ音も要チェックである。

ストーリーも大筋は単純ながら、細かなエピソードでキャラクターたちを掘り下げる形でまとめている。ただ、キャラクターの言動とリアクションなど、全体的にコミカル寄りの作風のため、初代『風来のシレン』のほんのり渋い雰囲気が印象的だった人には賛否が分かれやすい。逆に『風来のシレン2』が好きな人には懐かしさを覚えるだろう。

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▲実際、『風来のシレン2』から「アスカ」が仲間として登場する

■原点回帰に偽りなき傑作。今後のアップデートによる“進化”にも期待がかかる。

気になった箇所もある。最も大きなものでは忍者系の敵。初代『風来のシレン』同様、ダンジョン内に現れるモンスターにはレベルの概念があり、上がる度に容姿(色)が変わって強化されるようになっている。

中には最初から高レベルのモンスターが登場する階層もあるのだが、その中で非常に見分けが付きにくいのが忍者系の敵。強くなっても容姿がほとんど変わらないのだ。

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▲よく見ると色が濃くなっているのだが、パッと見るだけでは気づきにくい。

特に中盤が顕著で、序盤終わりの低レベルの忍者と勘違いしやすい。戦ってみると、被ダメージ量が増えている違いが分かるのだが、返って初見殺しの印象が出すぎている感が否めず、もう少し分かりやすい違いを表現して欲しかったところだ。レベル差があるはずなのに、コンパチ感が出すぎて分かりにくいのは大きな課題であるように思う。

また、派生の『不思議のダンジョン』シリーズにもあった、ゲームオーバーになっても救助を依頼することで他のプレイヤーが助けてくれる機能「風来救助」は今作にもあり、新たに「自分救助」なる、プレイヤー自身が取り組むオフライン専用の救助が追加されている。

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ただ、「自分救助」はいまひとつ進んで使う気持ちになりにくい。深い階層(例えば25階以降)でゲームオーバーになれば、またそこまで自力で向かわなければならないからだ。それにその道中で便利な道具、強力な装備を手に入れても、救助すれば全て無くなってしまう。せめて、手に入れた道具、装備の一部を引き継げるといった一定のメリットがあれば良かったのだが……。ちょっとこの辺りには“もう一押し”な感が否めない。

それ以外でも前述した被ダメージ量増加による序盤での事故率の高さ、ダンジョンからの任意脱出を可能にする「脱出の巻物」の解禁タイミングがクリア後であることが気になる部分として挙げられる。

また、筆者個人としては「もののけ道場」とは別に「フェイの問題」のようなダンジョンもできれば欲しいと感じた。初代『風来のシレン』にあった、パズル性の強いチャレンジダンジョンであり、ターン制ローグライクの基礎を学べる要素だ。
ヘルプとチュートリアルの充実もいいが、やはり実際にプレイして学ぶ環境もあるとローグライク初心者にはありがたいのではないだろうか。筆者も「フェイの問題」を通して基礎戦術を学んだ身ゆえ、できれば用意して欲しかったところだ。

いろいろと挙げてしまったが、今作は今後もアップデートを続けていくことが公式に明言されているため、いくつかは大きく改善される可能性がある。

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気になる部分もあれど、遊ぶに当たって深刻とも言えるようなものは皆無。根幹の『不思議のダンジョン』シリーズおよび『風来のシレン』のターン制ローグライクとしての面白さは盤石だ。

しかも、操作性と遊びやすさが底上げされていることもあって、大変気持ちよく遊べる仕上がりになっている。初代『風来のシレン』への原点回帰という売り文句にも偽りはなく、ダンジョンの深部をひたすら目指す本編ストーリーの流れ、シンプルかつ綺麗に整理されたシステムで強烈に実感させてくれる。登場するモンスターたちにも懐かしのメンツが多く、湿原に滝の中の中継地点などからも、もの凄く「初代『風来のシレン』が帰ってきた!」という心持ちにさせてくれるだろう。

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復帰勢の人間としては、本当に想定以上の“故郷に帰ってきたような安心感”があった。
派生を含む『不思議のダンジョン』シリーズの新作としても、操作性と遊びやすさの面においては突き抜けているので、好きな人から興味のある初心者はもちろんのこと、昨今のローグライト系タイトルに慣れ親しんでいる人も“元祖の味”を堪能してみていただきたいところだ。

最後に今作はもし、クリア後も徹底的にやり込む気持ちが強ければ、パッケージ版よりもダウンロード版を強く推奨する。容量的にも軽いので(※1.5GB)、Nintendo Switch本体およびmicroSDカードの容量もかさばらない。何より、手軽に起動可能になることから、文字通り“やめられない、とめられない”のスパイラルになる。

そんなわけで、とことんやるつもりならダウンロード版、おすすめです。ただ、勢いあやまって徹夜してしまわないようにご用心……。(経験者は語る)

ライター
新旧構わず、色々ゲームに手を伸ばしては積み上げるひよっこライター。アクションゲーム(特に『メトロイド』、『ロックマン』)とストラテジーが大好物。フリーゲーム、VRゲームの動向もひっそり追いかけ続けている。
Twitter:@shelloop

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