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マダミスには伸びしろしかない?市場規模3500億円の中国マダミスや、面白い「矛盾」の作り方など、さまざまな視点でマダミスの“今”に迫る【「マダミーティング!」レポート】

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マーダーミステリー(以下、マダミス)の最先端を語るためのイベント「マダミーティング!」が、2月18日に港区立産業振興センターで開催された。当日はマーダーミステリーの関係者が30名以上も登壇。5時間を超える講演会が行われたほか、別会場で有識者やプレイヤーが徹底的に意見を交わし合う討論会も行われるなど、大いに盛り上がりを見せた。

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本イベントを主催したのは、StudioOZON代表でマーダーミステリーなどの制作・監修・企画開発で活躍する久保よしや氏と、「心理・交渉ゲーム」の制作やマーダーミステリーの校正校閲などを手がけるゆい氏。

会場内のロビーでは登壇者の作品が購入できる即売会や交流会も実施されていたほか、短い脚本を使ってマダミスの無料体験ができる「《読み合わせカフェ》の出張版ブース」なども用意されており、まさにマダミス一色のイベントとなっていた。

こちらの記事では、講演会場で実施されたものの中から、にっしー氏と花花世界―カニ氏による「マダミスの過去、現在、未来」、じゃんきち氏による「マダミスのゲームデザインについて」のふたつのセッションの模様をレポートしていく。

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▲会場入り口付近に設置された案内板。登壇者たちのサインが書かれていた。
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▲ロビーでは即売会も行われており、こちらも人だかりができていた。

マダミスは伸びしろしかない!

「マダミスの過去、現在、未来」というタイトルで行われたのが、にっしー氏のセッションだ。noteでレビューを投稿しているほか、様々な雑誌でマーダーミステリーの紹介をするマダミス評論家として活動している同氏。それとは別に、普段はプロデューサーとしてデジタルゲームの開発に携わっている。

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▲マダミス評論家のにっしー氏。

にっしー氏が最初に紹介したのが、マダミスの「過去」についてだ。2019年春に発売された『王府百年』から名作と呼ばれる公演が定期的に行われるようになったとのこと。同年5月には、ゲームマーケットにて『約束の場所へ』が販売開始されている。マダミス自体はそれ以前から存在はしていたが、このあたりが「現代マダミス」の発端であると、にっしー氏は語った。

この2019年はマダミスにとっても激動の年となっており、夏以降には専門店が続々とオープン。しかし、2020年に入ってからはコロナ渦の影響もあり、オフラインの店舗で体験するものよりもオンライン作品が急増していった。2021年以降は、マダミス番組がテレビで放送されるほか、舞台やインターネット配信を通して見るマダミスというのも増えた。さらに、派生ジャンルとしてトーリープレイングも登場。今年の1月頭にはYouTuberのヒカル氏が関わった「これからミステリー」という企業も誕生している。

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マダミス作品の累計数も年々その数を伸ばしている。2020年は300作品ほどリリースされていたが、2021年と2022年は、それぞれ600作品ほどが通販サイト「BOOTH」に登場しており、2023年は700作品以上が登場した。ゲームマーケットの出展数も同様に増えており、2021年以降は150作ずつほど新たな作品が販売。爆発的に拡大しているとまではいかないものの、マダミス自体は徐々に拡大してきている

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続いて、マダミスの現在の状況を紹介。3000以上の作品が登場しており、定期的に遊んでいるアクティブ人口は5万人、市場規模としては10億円、認知度は19パーセントほどとなっている。なお、アクティブ人口や市場規模について調査会社が調べたデータは存在しておらず、店舗数と作品数から推計したものである。

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この市場規模10億円は、ほかのエンタメコンテンツと比較するとその立ち位置がわかりやすい。ボードゲームや脱出ゲーム、謎解きゲームが約60億円、サバイバルゲームが100億円だ。そこから大きく離して、カードゲームは2348億円となっている。

また、中国ではマダミスが大流。2021年に同国の調査会社が調べた数字によると市場規模は3500億円であるといわれている。ちなみに日本でもっとも市場が大きいゲームは「スマートフォンゲーム」で、1兆2129億円の市場規模を持つ。

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にっしー氏自身が調査会社に依頼したデータとして、10代から40代までの男女1200人を対象にしたデータの紹介も行われた。結果は、マダミスの認知度は19%、観戦率は11%、プレイ率は7%となった。

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ボードゲームや脱出ゲーム、人狼ゲームは認知度も高く、7割以上の人が知っているという結果に。特にボードゲームに関してはプレイ率が53%となっている。プレイ率の回答には「一度でも遊んだことがある」も含まれており、にっしー氏によるとこの状況は「伸びしろしかない」とのことだ。

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マダミスがもっと広まるにはどうしたら?

こうしたことを踏まえ、マダミスの「未来」について話題は移る。

マダミスはその性質上、一度しかプレイすることができず、ネタバレもできないためクチコミで広めづらい。また、複数卓で同時公演もしにくい。ゲームをプレイする前に、長文を限られた時間で読む必要があるため、文章読解力が必要にもなる。有名IPとのコラボはあるものの、マダミス発で生まれたIPがないという点も課題としてあげられる。

そうしたことから、マダミスの未来についてはふたつの可能性があるとにっしー氏は語る。ひとつは、「アナログゲームの1ジャンルとして定着すること」だ。こちらについては、すでに達成しているところもあるものの、現在の延長上にあるものだ。もうひとつは「定番エンタメへの成長」である。さらにマダミスの市場が拡大していき、今よりも10倍から100倍になる可能性もある。

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しかし、そのように伸びるにはまだ足りない部分があるというのも確かだ。マダミスには「殺人事件が発生してその犯人を捜す」という定番のシナリオがある。しかし、推理が苦手な人や、犯人役/そうでない役に別れるプレイが苦手なユーザーもいる。そうした人も楽しめるように、ジャンルを拡大していく必要があるのだ。

実際にマダミスを遊ぶのはハードルが高いものの、観て楽しむというものも広がっていく必要がある。作品のクオリティアップも重要だ。個々の作品にはクオリティが高いものもあるが、全体としては他のエンタメと比較すると必ずしも高いとは言えない状況となっている。

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たとえば、ディズニーランドやUSJは1回8000円程かかり、マダミスと比較してもそれほど価格に差がない。「どちらが総合的に楽しいか」と聞かれると、一目瞭然だ。にっしー氏は、こうした問題を克服していくことで、マダミスが明るい未来を迎えることができるハズだと語り、セッションを締めくくった。

中国のマダミスは「カラオケぐらいに普及している」?「市場規模は3000億円以上」?

「なぜ中国マダミスはここまで成長したのか?」というタイトルで行われたのが、花花世界―カニ氏のセッションだ。「マダミスの本場は中国だ」、「カラオケぐらいに普及している」、「市場規模は3000億円以上」というウワサは、どこかしら耳にすることがある。カニ氏は、そうした印象はすべて正しいとした上で「中国のマダミスがなぜここまで成長することができたのか」というトピックでセッションを開始した。

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▲日本でも花花世界というマダミスのお店を運営しているカニ氏

同氏は中国の上海生まれで日本育ち。イベント広告会社などでプランナーをしてきたという経歴を持つ同氏だが、マダミスに出会ったのは2018年とのこと。上海にある没入型のものを体験し、「こんなに面白いものがあるのか」と衝撃を受けて、2021年には上海でマダミスの店舗を開設している。その後上海の店舗はコロナ渦の影響で閉店してしまったものの、2023年から日本・上野にて新たな店舗が営業中だ。

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中国マダミスが成長した一番の理由は「なんといっても面白いから」だ。非日常的な体験ができることに加えて、中国の若者たちにとって知らない人と出会える場になっているところも理由に挙げられた。それに加えてカニ氏は、3つの外的要因が人気に繋がっているという実例を紹介した。

ひとつ目の要因となっているのが、大ヒットしたバラエティ番組『スター大探偵』の影響だ。こちらは、中国で人気の動画配信プラットフォーム「Mango TV」で、2016年からスタートした番組で放送直後から大きな話題を呼び、2016年のシーズン1では平均再生回数が2億回となっている。これは、14億人いる中国の中でも桁違いの数字となっている。今年9年目に突入したが、昨年放送されたシーズン8の平均再生回数は1.5億回と勢いは衰えていない。

『スター大探偵』の開始当初は、スタジオで作られたセットの中で人気の俳優たちがマダミスをプレイしていたものの、今年の2月14日から始まった最新シーズンでは、本物の村を丸ごと使ったスケールの大きなものに進化している。

こうした番組を観てマダミスに出会い、同じような体験を自分もしてみたいということで中国で消費者が急増しているのだ。

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2018年頃から、中国では衣装を身につけリアルなセット中で遊ぶ没入型のマダミスが遊べる店舗が急増。ストーリーやセットの中は日本と同じようにネタバレ禁止になっているため、いかに写真で惹きつけることができるができるかが、没入型マダミスのポイントとなっている。

非日常的な衣装を身につけて作品に没頭できる店舗、予約は1分で完了

カニ氏の記憶によると、2018年には上海で20~30作品は遊べる状態になっていたとのこと。そうした中でも人気が高かったのは、中国の歴史物を題材にした作品である。非日常的な衣装を着ることができるという点も人気が高く、芸能人がお忍びで遊びに来るほどの人気だった。

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ふたつ目の要因としてあげられるのは、参入ハードルの低さによる店舗数の急増だ。遊べる店舗が増えることからプレイヤーの人口が増える。プレイヤーの人口が増えることで、店舗がさらに増えるという、良い循環が生まれているのである。

統計によると、2019年に中国にあったマダミスの店舗は2400店、3年間で約19倍の4万5000店舗にまで増えている。コロナ渦の影響で店舗数は減ってしまったものの、現在でも3万店ほどが運営されていると言われている。

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カニ氏の肌感覚となるものの、ここまで店舗が増えた要因として当時中国でマダミスの店舗を開店するためのハードルが、他の業態と比較してすごく低かったことということが考えられるとのこと。中国で店舗を開くには、会社の登記をするだけではなく営業許可書が必要になる。それには、政府が定めた業態の中で申請しなければならない。

だが、マダミスは2019年の時点では新しい業種であったため、申請を出すときに「会議及び展覧会の企画・運営」や「文化・芸術の企画」など、緩い内容で申請しても許可が下りていた。

また、日本と同じように客が事前に来店予約をするため、店舗も比較的安い家賃の場所を借りて運営することができる。そうしたことも重なって、北京や上海以外の地方都市では100万円ほどの資金があればひと月でマダミスの店舗が開けるようになっていたのである。

2021年の統計データでは、中国マダミスの経営者は30歳以下の男性で、脱サラして起業するという人が圧倒的に多かった。その中には、6%の学生も含まれている。「マダミスが好きだから、とりあえず店舗をオープンしてみよう」という傾向が、こちらのデータから読み取ることができる。

もうひとつ、中国マダミスで参入のハードルを下げている理由が内装費の安さだ。マダミスに特化して工事を請け負う業者もいるぐらいである。

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3つ目の要因が、利便性の高い宣伝・予約プラットフォームがあるところだ。アプリで簡単に予約することができるため、参加するハードルを下げてプレイヤー人口を増やすことに貢献している。それを実現したのが、中国最大手のクチコミサイト「大衆点評」だ。こちらは、レストランやホテル、エンタメなど様々な情報が集約されており、月間アクティブユーザー数は約3億人という数の人たちが利用している。

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カニ氏によると、現在は「マダミス」として独立したジャンルになっているものの、2021年初期にはまだマダミスというジャンルは確立されておらず、「リアル脱出等」といったものに含まれていたという。現在サイト上では、マダミスがカラオケなどに並んで上部に表示されているのである。

同サイトでマダミスのページを見ると、作品と店舗の情報をわかりやすく閲覧することができ、さらに人気順で並べられている。自分の家から近い店舗も簡単に探すことができる。実際に予約するときは、遊びたい作品を見つけて日程を決めれば、料金が表示される。

支払は電子マネーとも連動しているため、支払のボタンを押せば予約が完了する。1分ほどあれば予約を完了させられるほど簡単な仕組みになっており、初めてマダミスを遊ぶ人にとってのハードルを下げているのだ。

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ゲームのデザインで最も重要なのは「プレイヤーの会話をデザイン」すること

「マダミスのゲームデザインについて」というタイトルで行われたのが、フリーのゲームクリエイターでGMもしているじゃんきち(佐藤倫)氏のセッションだ。同氏はこれまで、マダミスの『ランドルフ・ローレンスの追憶』『マーダーミステリーパラドクス』『パンドラの人狼』『狼が生まれた日』といった作品も手がけている。

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▲フリーゲームクリエイター/GMとして活躍するじゃんきち(佐藤倫)氏。

今回のトークテーマは広い範囲のものになっているが、マダミスを作るための具体的な方法論ではなく、もう少し本質的でゲームを作る上での心構えについて語るとのこと。

そこで、最初のポイントとして取り上げたのが「マダミスのゲームデザインで重要なこと」である。じゃんきち氏が最も大切にしているのが、『桃太郎電鉄』などを手掛けたさくまあきら氏の言葉「ゲーム画面の中を作るな。ゲーム画面の前を作れ。」だという。これは、ゲームそのものを作っているのではなくゲームを遊んでくれる人の体験を作っているということを表した言葉だ。

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このさくま氏の言葉をマダミスに置き換えると、「ハンドアウトの中を作るな。ハンドアウトの前を作れ。」になる。ここでいうハンドアウトの前というのは、ハンドアウトの読み込みを行なったプレイヤーの心情に寄り添ったものではない。マダミスでゲーム時間の大半を占めるのはハンドアウトを読む時間でも、読み合わせを行う時間でもない。一呼吸おいてカードを見る時間でもない。もっとも多くの時間を使うのは、他のプレイヤーとの会話である。

つまり、マーダーミステリーのゲームデザインを行う上で最も重要となるのはプレイヤーの会話をデザインすることなのだ。

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では、どのようにすれば面白い会話をデザインすることができるのだろうか?マダミス中に行われる会話は「A.整理」、「B.推理」、「C.矛盾」の3つに分類することができる。「A.整理(情報集取)」は、マダミスの基本だ。プレイヤーAは「12時に、Cは書斎にいたらしいよ」といい、プレイヤーBは「その時間、Dも書斎の前に立っていたよ」と状況を整理する。これはマダミスではよくある光景だ。「自分の知らない情報を入手する」という楽しさをプレイヤーは感じることができる。

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「B.推理(問題の解決)」では、それまで得た情報を元に想像を広げていく。プレイヤーAは、得た情報から「CはDのことを見ていたのかな?」といい、プレイヤーBは「Dは弟の敵を探していたはず」といった推理を繰り広げる。ここでは、プレイヤーはそれまで得られた情報を元に、事件の背景を想像することや謎について思いを巡らすことを楽しむ。

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「C.矛盾(問題の発生)」では、プレイヤーAは「Dは12時に私と倉庫にいたけど?」と発言、プレイヤーBは「倉庫の鍵は僕が持っているけど、入れたの?」と矛盾が発覚する。

このように、マダミスで行われる会話は「A.整理」、「B.推理」、「C.矛盾」に大別することができるのだ。じゃんきち氏はこの中で最も大切な部分は「C.矛盾」であるという。

まず問題の発生(C.矛盾)が起こり、それを解決するための「B.推理」をしていく、そしてそのための情報集取(A.整理)を行うという流れがあるからだ。その会話の大元となる「C.矛盾」が重要となってくるというわけだ。

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「矛盾」はどのように作っていけばいいのだろうか。先ほどの矛盾した会話では、誰かが嘘をついているわけではなく、誰も嘘をついていない。

それは、マダミスの作者はプレイヤーが嘘をつくかどうかまでコントロールすることはできないからだ。プレイヤーの会話をデザインするときは、プレイヤーがつく嘘を前提に作っても意味がない。その会話が矛盾しないような真相を設定しておく必要があるのだ。

ここでポイントとなるのは、「プレイヤー同士が本当のことを言い合っても矛盾するような会話」をデザインすることだ。

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「矛盾」を連鎖させて真相に辿り着くデザイン

しかし、矛盾する会話を作っただけでマダミスが完成するわけではなく、プレイヤーの数以上に問題の発生を用意しなくてはならない。ひとつの矛盾を解消しただけでは終わらず、別の矛盾の発生に繋がるか、別の矛盾を解決するためのヒントに繋がるような連鎖を作る必要がある。そして、この連鎖の繰り返しが事件の真相に繋がるようにしなければならないのだ。

面白い矛盾を解決しても、何の意味もなかったではプレイヤーに納得してもらうことはできない。そのために、しっかりとしたゴールを用意しておく必要があるというわけだ。

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矛盾する会話の作り方として、プレイヤーが矛盾を会話の中で発見できるようにデザインしておくことも重要である。プレイヤーが会話の中で見つけた矛盾を、作品側から明らかにしているもったいない事例が多いとのこと。

例として密室殺人であることをパッケージなどで書くとわかりやすいが、ゲームの中で密室殺人であることがわかるように仕掛けたほうが、ゲームの中で会話のサイクルの起点を作ることができるのだ。

だが、それぞれのプレイヤーに対して矛盾を作っていくのは大変だ。その問題を解決するには、作品全体に矛盾やすれ違いが発生しやすい設定を用意するという手段がある。普通の作品で特殊設定と呼ばれるものが、マダミスに多いのはこのような理由だ。ちなみに、じゃんきち氏が作った『ランドルフ・ローレンスの追憶』では、物語全体にプレイヤー同士にすれ違いを生ませるための仕掛けが登場する。

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そして、たまには立ち止まって思い出してもらいたい言葉が、冒頭に出てきた「ゲーム画面の中を作るな。ゲーム画面の前を作れ。」の言葉である。マダミスを書いたことがある人ならば、ハンドアウトを書いた後で、それを元にどんな会話が起きるか想像する。

しかし、じゃんきち氏によるとこれは本来逆の手順であるべきだという。つまり、プレイヤーが面白い会話をすることをデザインしたうえで、その会話が起きるようなハンドアウトを書いた方がいいのだ。そして、これこそが「ゲーム画面の中を作るな。ゲーム画面の前を作れ。」という言葉に当てはまると語り、本セッションを締めくくった。

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今回は3つのセッションのみ取り上げてご紹介してきたが、どれも中身の濃い話題ばかりであった。「マダミーティング!」はイベント会場だけでなく、オンラインでも配信されており、アーカイブも税込3500円で視聴が可能だ。直接会場に行くのが難しかった方でも、マダミスに少しでも興味を持っている方ならぜひアーカイブをチェックしてほしい。

ライター
ライター/編集者。コンピューターホビー雑誌「ログイン」の編集者を経て、1999年よりフリーに。 現在はゲームやホビー、IT、XR系のメディアを中心に、イベント取材やインタビュー、レビュー、コラム記事などを執筆しています。

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