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『MOTHER3』『スマブラ』などの楽曲を手がけた作曲家・酒井省吾氏による書き下ろし楽曲が11月に世界初演を予定。第4楽章から成る弦楽四重奏の楽曲、製作中の素直な心境語る

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2024年に結成30周年を迎える弦楽四重奏クァルテット・エクセルシオが、3月21日に東京・上野にある東京文化会館大会議室で結成30周年の記者会見を開催した。

同記者会見では、『スマッシュブラザーズ』シリーズや『星のカービィ』シリーズ、『MOTHER3』の音楽を手がけてきた作曲家・酒井省吾氏による新曲を定期演奏会で世界することが発表された。

クァルテット・エクセルシオ記者会見レポート。『MOTHER3』等の楽曲を手がけた酒井省吾氏による楽曲を11月に世界初演_001

酒井省吾氏は『MOTHER3』や『星のカービィ』、『大乱闘スマッシュブラザーズ』シリーズの楽曲を手がけた作曲家。2023年からはフリーランスとして、自身のYouTubeチャンネルで音楽制作のティップスを配信するなど制作以外の活動もしている。

クァルテット・エクセルシオは1994年に結成された弦楽四重奏団で、「エク」という愛称でも知られる。弦楽四重奏をさらに盛り上げることをミッションとして意識しながら、ベートーヴェン演奏を軸とする定期演奏会と、現代曲演奏、アウトリーチの3つの柱で活動を行っている。

今回の記者会見では、クァルテット・エクセルシオの4月から来年3月まで行われる結成30周年記念シーズンについての発表が行われた。今回の定期演奏会では30周年を記念し、目玉の演目として作曲家の権代敦彦氏と酒井省吾氏の2名に楽曲制作を依頼したという。

権代敦彦氏に依頼した委嘱新作を交えた定期演奏会が6月6日(木)に札幌、6月13日(木)に東京にて行われるほか、酒井氏が楽曲を書き下ろした楽曲を含む定期演奏11月1日(金)に東京文化会館小ホール、11月6日(水)に京都府立府民ホール アルティで開催される予定となっている。

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▲写真左から、第1ヴァイオリンの西野ゆか氏、第2ヴァイオリンの北見春菜氏、酒井省吾氏、ヴィオラの吉田有紀子氏、チェロの大友肇氏。

取材・文/高島おしゃむ

■弦楽四重奏用の楽曲提供に「思わず震え上がってしまった」。実は弦楽四重奏用の楽曲を手がけるのは2回目

そもそもゲーム音楽を手掛けている酒井氏が、なぜ今回弦楽四重奏楽団に楽曲を提供することになったのだろうか?酒井氏は当初、認定NPO法人エク・プロジェクトの理事長である勝村務氏から楽曲制作依頼が来た際に、「小中学校での演奏用に酒井氏のゲーム楽曲をアレンジしてほしいという依頼」と勘違いしてしまったと当時を振り返った。

酒井氏が過去に作った楽曲の著作権はすべて各会社が持っている状態であるため、先述の勘違いもあって「だめなんですよ、それが~!」という断りから会話が始まったのだという。

なお、酒井氏と勝村氏は2002年に行われた新日本フィルハーモニー交響楽団による「『大乱闘スマッシュブラザーズDX』オーケストラコンサート」の頃から交際があるようで、その演奏会では酒井氏はタクトを振っている。

改めて、勝村氏から「定期演奏会用の楽曲制作依頼」であることを聞き、思わず震え上がってしまったと語った。酒井氏はこれまで1曲だけ弦楽四重奏の楽曲を書いたことはあったものの、まさか定期演奏会用の弦楽四重奏の楽曲制作依頼が来るとは思っておらず、驚いたと同時に光栄に思ったと振り返った。

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▲認定NPO法人エク・プロジェクト 理事長の勝村務氏。

酒井氏が弦楽四重奏を初めて書いたときに、作曲家の小野崎孝輔氏に譜面とテープを渡すと、同氏は「酒井君な、ちゃんと形式を勉強しなさい」と語った。酒井氏はそれまで作曲をしっかり勉強したことはなく、ピアノの演奏を始めたのも二十歳になってからだったとのこと。バンドでギターは弾いていたものの、基礎知識を学ぶよりも前にゲーム音楽の世界に入り、ファミコン向けに3和音で作曲をするようになったのである。

その後スーパーファミコン用の楽曲を手がけることとなり、ハードの進化とともに使える音の数も増えた。そこで、オーケストラの楽曲を作ろうと考えた。オーケストラをまったく聴いたことがなかった酒井氏は初めて聴きに行った演奏会以降、すっかりとハマった。このことがきっかけで、勝村氏との縁もできたのだという。そして酒井氏はその後、37歳のころに弦楽四重奏を手がけた。

■ゲーム音楽と違ってディレクターがいないからこそ「本当にこれでいいのだろうか?」と思い悩む。4楽章から成る楽曲を製作中

酒井氏が今回手がけている楽曲は、弦楽四重奏の第2作目となるものだ。今回の依頼では楽曲の条件として「ぜひ、再演されるような曲にしてください」というものが提示されたことから、ロディのある楽曲になっているとのことだ。また、惜しくも2017年に亡くなった小野崎氏の「ちゃんと形式を勉強しなさい」という言葉を胸に、“形式をきちんとすること”にもトライしている。

なお、現在制作中の楽曲は4楽章から成る楽曲で、そのうち2楽章はすでにフィックスしており、第3楽章は一度書いたものの、現在はイチから作り直しているところとのこと。

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酒井氏による委嘱新作を含む定期演奏会は、今年の11月1日(金)と11月6日(水)に東京と京都で行われる。プレトークのゲストとして酒井氏が出演することも決定しているので、かつて酒井氏がそうであったように、クラシックに馴染みのない方もぜひ足を運んで、生で酒井氏の楽曲と演奏を楽しんでほしい。

■酒井氏の委嘱新作を含む演奏会の日程と演奏曲

【第47回東京定期演奏会 11月1日(金) 東京文化会館小ホール】
19:00開演/18:30~プレトーク
プレトークゲスト:酒井省吾氏(作曲家)、聞き手:勝村務氏

曲目:
・モーツァルト:弦楽四重奏 第16番 変ホ長調 K.428
・酒井省吾氏の委嘱新作
・ベートーヴェン:弦楽四重奏 第13番 変ロ長調 Op.130

お問い合わせ:ミリオンコンサート協会 03-3501-5638

【第20回京都定期演奏会 11月6日(水) 京都府立府民ホール アルティ】
14:00開演/13:30~プレトーク
プレトークゲスト:酒井省吾氏(作曲家)、聞き手:小室敬幸氏(音楽ライター)

・モーツァルト:弦楽四重奏 第16番 変ホ長調 K.428
・酒井省吾氏の委嘱新作
・ベートーヴェン:弦楽四重奏 第13番 変ロ長調 Op.130

お問い合わせ:エラート音楽事務所 075-751-0617

ライター
ライター/編集者。コンピューターホビー雑誌「ログイン」の編集者を経て、1999年よりフリーに。 現在はゲームやホビー、IT、XR系のメディアを中心に、イベント取材やインタビュー、レビュー、コラム記事などを執筆しています。

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