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VR人口増加により“メタバースで生きていく”は現実になりつつある?「VRChat」の同時接続数は10万人を突破、人口は5年で約7倍に。統計データで見るメタバースの今を解説

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『メタバースは終わった』… 一時の劇的なメタバースブームも一旦の落ち着きを見せ、各種メディアではそんなショッキングな見出しも目立つ2024年の昨今ですが、実際のメタバース人口はブームによりどのように変化したのでしょうか?
また、そのうち日本人はどれくらいの割合を占めるのでしょうか? ユーザーの性別や年齢構成はどうなっているのでしょうか?

本記事では、メタバースの革命性を論じた著書『メタバース進化論(技術評論社)』「ITエンジニア本大賞2023(翔泳社)」を受賞し、MoguLive VTuber Award 2023「今年最も輝いたVTuber」にも選出された筆者「バーチャル美少女ねむ」が各種統計データを元に徹底解説します。約5,500字、書き下ろしです!

文/バーチャル美少女ねむ


2024年元日、VRChatの同時アクセスが「10万人」を突破

メタバースの定義については識者からさまざまなものが提案されていますが、現時点では定まったものがある訳ではありません。筆者は「そこで人生が送れるレベルの三次元仮想空間」を想定しており、「創造性」、「経済性」、「没入性」などを要件として提案しています。

統計データで見るメタバースの今を解説。「VRChat」の同接数は10万人を突破、人口は5年で約7倍に_001
『メタバース進化論』より

本記事では、それら要件を満たしており、近年特にメタバースとして注目の集まる「ソーシャルVR」を対象に議論します。ソーシャルVRとは、VRゴーグルで没入しオンラインの三次元仮想空間でアバターの姿でコミュニケーションができるサービスの総称です。ソーシャルVRの代表例はアメリカのベンチャー企業・VRChat社が2017年から提供している「VRChat」というサービスです。

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飲み屋街「ポピー横丁」でVR飲み会を楽しむ住人たち – VRChat

筆者がスイスの人類学者リュドミラ・ブレディキナと共同で実施した「ソーシャルVRライフスタイル調査2023」によると、VRゴーグルを使ってソーシャルVRを利用している回答者約2,000名のうち90%以上が地域に関わらずVRChatを「よく利用する」と回答していました。一番低い北アメリカでも92%、一番高い日本では96%が「よく利用する」と回答しており、VRChatの圧倒的な人気ぶりが伺えます。

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よく利用するソーシャルVR – ソーシャルVRライフスタイル調査2023

VRChatでは世界中のユーザーが集まる年末年始に瞬間最大同時アクセス数が新記録を更新することが通例となっていますが、今年はどうなったのでしょうか。

スウェーデンのVRChatユーザーFoorack(風楽)さんが主導してVRChatのAPI情報を記録しているコミュニティプロジェクト「VRChat API Metrics」のデータによると、VRChatの同時アクセス数は、2024年1月1日元日の14:27(日本時間)に105,991人に達し、遂に「10万人」の大台を突破しました。

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VRChatの同時アクセス数(2024年元日) – VRChat API Metrics

ピークに達した直後に数字が大きく下がっていますが、VRChat公式の発表(Developer Update)によると、想定を超えるアクセス数急増の負荷に耐えられずサーバーが落ちてしまい、サービスが45分間停止してしまっていたそうです。昨年2023年元日にピークに達したのは約30分後の14:56ですので、サービスが停止しなければ12万人程度に達していたかもしれません。ともあれ、かなりの規模感になってきたことは疑いようがありません。

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元旦に初日の出を見に神社に集まる住人たち – VRChat

VRChatの人口は5年で約7倍に

VRChat API Metricsで近年の同時アクセス数の推移を見ると、2019年頃は平均1万人程度だったのが、2024年1~3月現在には6~8万人程度になっており、直近5年間で約7倍に急拡大していることがわかります。

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VRChatの同時アクセス数(2018~2024) – VRChat API Metrics

背景としては2020年3月頃からのコロナ禍拡大、2020年10月に発売したVRゴーグル「Meta Quest2」の爆発的普及が考えられます。図中青線がAndroid版(Quest単体、モバイル版等)やMeta Store版を含んだもので、オレンジ色の線はSteam版(PCVR、デスクトップ)のみのアクセス数です。Quest2の発売後Steam版以外のアクセス数が爆発的に増大し、現在は全体の半数以上を占めていることがわかります。

※なお、2022年7~8月にかけてSteam版(オレンジ)のみ大きく数字が落ち込んでいますが、これは2022年7月27日にVRChatがMOD(改造クライアント)撲滅のために「Easy Anti Cheat(EAC)」というセキュリティを導入したことに反対して一部ユーザーが別のソーシャルVRに移動したことが理由だと考えられます。現在ではSteam版も当時とほぼ同じ程度に回復しています。

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新世代VRゴーグル分類マップ(2023/1)

Quest2は「6DoF+PCVR対応のフルのVR体験」が可能な4K解像度の高性能VRゴーグルでありながら、それまでの常識を根底から覆す超低価格でVRを大きく普及させました。Forbesの記事によれば、Quest2の出荷台数は2023 年第4四半期時点で1,800万台を超えているそうです。

さらに2021年10月28日、ザッカーバーグ氏がFacebookの社名を「Meta(メタ)」に変更してメタバース事業に社命を賭けて推進すると発表した、いわゆる「Meta宣言」により世界的な「メタバース」ブームが巻き起こりましたが、ブームが収束した2023年以降も同時アクセス数は落ち込んでいない事がグラフを見るとはっきりとわかります。

VRChatの世界人口は数百万人規模

瞬間的な同時アクセス数ではなく、VRChatの世界人口はどの程度になるのでしょうか?

VRChatは月間アクティブユーザー数(MAU)を公開していないため正確な数字はわかりませんが、今回の瞬間最大同時アクセス数が10万人だったので、その概ね数十倍程度だと考えて、「数百万人」の規模感ではないかと私は推定します。

比較のため、全世界のwebのアクセス状況を集計しているsimilarwebを確認したところ「vrchat.com」の2024年2月の月間訪問数は760万人でした。この数字とも概ね符号していると言えそうです。

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vrchat.comの月間訪問数760万人(2024年2月)- Similarweb

また、メタバース事業コンサルタント「Nic Mitham」氏は、詳しい算出方法を明らかにしていませんが、VRChatのMAUは2022Q1時点で「400万人(図中”4m”)」と推定しています。仮にこれが正しいとすると、これからさらに2年経っており、当時(2022Q1時点、4~6万人程度)と現在(2024年1~3月、6~8万人程度)を比較すると同時アクセス数が約4割増になっているので、現在では560万人程度になっていると考えられるかもしれません(400万人×140%)。

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VRChatのMAU推定 –Nic Mitham : Introducing The Metaverse Universe(2022Q1)

ソーシャルVR全体の世界人口は数百万人から一千万人程度

VRChatだけでなく、ソーシャルVR全体の世界人口はどの程度になるのでしょうか?

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4大ソーシャルVR – メタバース進化論

先述のとおり、ソーシャルVRユーザーの90%以上がVRChatを「よく利用する」と回答しているので、VRChatを含むソーシャルVR全体の人口(MAU)は、VRChat人口一割増し程度だと仮定して「数百万人から一千万人程度」の規模感ではないかと私は推定します。

VRChatの日本人割合は「12.9%」で2位

VRChatのユーザーのうち、日本人は何割程度なのでしょうか?

similarwebによると、「vrchat.com」の2024年2月の月間訪問数760万人のうち、国別では日本が「12.9%」でアメリカに次ぐ2位となっています。これはあくまで「vrchat.comのwebアクセス数」の比率なのでこれがそのまま「VRChatユーザー」の比率と全く同じではありませんが、概ね近しい数字ではないかと考えられます。ちなみに昨年は12.3%でしたので微増しています。

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vrchat.com、日本が「12.9%」で2位(2024年2月)- Similarweb

1. アメリカ:35.4% → 32.5%
2. 日本:12.3% → 12.9%
3. カナダ:4.1% → 4.3%
4. イギリス:4.1% → 3.5%
5. メキシコ:3.1%
その他:43.7%

vrchat.com国別アクセス数トップ5(2022年12月 → 2024年2月)- Similarweb

2023年の国連の世界人口ランキングによると、世界人口に占める日本人の割合は1.5%程度なので、VRChatでは日本人の割合がかなり多いと言えるでしょう。

VRChatの日本人人口は数十万人規模

先述のVRChatの人口(MAU)の推定値「数百万人」に日本人の割合「12.9%」を適用すると、VRChatにおける日本人の人口(MAU)は「数十万人」の規模感ではないかと考えられます(数百万人×12.9%)。

ソーシャルVRでは女性が増加傾向

ソーシャルVRにおけるユーザーの性別の割合はどうなっているのでしょうか?

同じく「ソーシャルVRライフスタイル調査2023」によると、ソーシャルVRユーザーの回答者のうち男性が82%で女性が16%でした。2021年に行った同等の調査では男性が87%で11%が女性でしたから、すくなかった女性の割合が増加傾向にあることが分かります。

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物理性別とアバターの性別 – ソーシャルVRライフスタイル調査2023

検証のためsimilarwebによる「vrchat.com」の訪問数の内訳を確認したところ、男性が76%で女性が24%とかなり近い数字を示していました。こちらも同じく女性の比率が増加傾向を示しています。

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vrchat.com性別・年齢別アクセス数(2022年12月)- Similarweb

・男性 – 79.5% → 75.7%
・女性 – 20.5% → 24.3%
vrchat.com 性別別アクセス数(2022年12月 → 2024年2月)- Similarweb

ソーシャルVRでは20代以下が過半数

ソーシャルVRにおけるユーザーの年齢の割合はどうなっているのでしょうか?

同じく「ソーシャルVRライフスタイル調査2023」によると、年代については、VRChatの場合、20代以下が53%(19歳以下が7%、20代が46%)と過半数を占めていました。

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年代 – ソーシャルVRライフスタイル調査2023

検証のためsimilarwebによる「vrchat.com」の訪問数の内訳を確認したところ、24歳以下が60%と、こちらも同じくかなり近い数字を示していました。

・18-24歳:59.5%
・25-34歳:23.4%
・35-44歳:9.1%
・45-54歳:3.7%
・55-64歳:2.4%
・65歳以上:2.0%
vrchat.com 年齢別アクセス数(2024年2月) – Similarweb

まとめ:経済の本格化で『メタバースで生きていく』がますます当たり前になる

いかがだったでしょうか。実際に各種統計データを見ると、ブームに関わらず人口は着実な増加を続けていることがはっきりとわかります。また、女性が微増傾向にあるなど、ユーザーの多様化の兆候もみられます。『メタバースは終わった』とはかけ離れた、『メタバースで生きていく』が当たり前の世界がすでに訪れている事実が浮かび上がって来たのではないでしょうか。

現在VRChatはユーザーの収益化を促進する「クリエイターエコノミー」導入を進めるなど、今後メタバース内経済が本格化する動きも大きくなってきています。

「ソーシャルVRライフスタイル調査2023」でも、回答者のうち現在ソーシャルVR関連の活動で収益を得ている人の割合が26%、さらに「将来的にソーシャルVR関連の活動の収入を主軸に生活していきたい」と答えた人の割合が34%と、住人も経済活動にある程度積極的な様子が見て取れました。

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収入額 – ソーシャルVRライフスタイル調査2023

経済活動が活発化するとコンテンツの数も増え、一般ユーザーの参入もこれまで以上に増えていくでしょう。2024年、『メタバースで生きていく』が着実に広がりつつあるソーシャルVRの世界。機会があればぜひ実際に訪れてみてください。

世間のブームとは関係なくそこで力強く個性的に生きている人々の姿が、黎明期の今でなければ見れない景色が、そこには必ずあります。

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