旅人亭を訪れる魅力的なキャラクターとTRPG風のプロフィール
『タヴァントーク』は、『ダンジョン&ドラゴンズ』などのTRPG(テーブルトップ・ロールプレイング・ゲーム)に影響を受けて製作されていることもあり、キャラクターのプロフィールがこと細かに作りこまれている。
上記のプロフィール画像を見てのとおり、TRPGのキャラクターシートのように名前、種族、年齢、性別、職業、出身地や、秩序・中立・混沌に悪・善などの性格が設定されており、タロットカードでいうアルカナも記されているこだわりようだ。
このプロフィールは物語が進む度に更新され、どんどん追記されるので、TRPG好きな人はぜひ注目してみてもらいたい。
さて、『タヴァントーク』にはさまざまな種族のキャラクターが20人以上登場する。さすがに全員紹介するとほぼネタバレになってしまうので、ここでは序盤に登場するキャラクターを何人か紹介したい。
まず紹介したいのは、ゲームを始めると最初に来店してくれるエルフの女の子「フェイブル」ちゃん。彼女は自分の人生に対して「スパイスが足りない…ハラペーニョもニンニクもなければ、ドラゴンもいない…」と嘆いてしまうほどに退屈している。挙句の果てには「ラララ、勇者になりたいな」という歌まで自作しちゃう始末。
彼女は、普段は森の見回りを生業としており、知り合いの動物などのお世話なども担当しているエルフのレンジャー。一応、弓を使えるらしい。
人生に刺激を求めて冒険を求めているものの、気弱だし高所恐怖症、おまけに木の実アレルギー。「この子、冒険に出して大丈夫かな」と心配になってしまうほどに気の優しい人物だ。序盤では、彼女が一番ワクワクするのは、旅人亭で新しい飲み物に出会った時だという。伸びしろしかない。好みの飲み物はスピードを強化する「閃光の一撃」。
お次はケアリン・ピトニャック、通称ケアリン。全身傷だらけで半端ない筋肉と体毛、そして“獣屠り”という、つよつよにもほどがある職業からお好きな人にはたまらないキャラクターである。彼女はフェイブルとは違って、修羅場をいくらか潜り抜けているベテランの傭兵だ。好きな飲み物は筋力強化系の「南の荒くれ者」。
次は、吸血鬼のカイルとドワーフの女鍛冶工のリアだ。
リアは、カイルが失くしてしまった透明のケープを探して奔走しているところで出会う。
リアはプロフィールにもしっかりと女性と書かれており、顎鬚がふさふさのテストステロンマックスという風貌。映画『ロード・オブ・ザ・リング』でドワーフのギムリが「ドワーフの女はご存じないでしょうな。無理もない」と冗談交じりに姫に語り、続けてアラゴルンが「ヒゲがあるのですッ」と言っていたが本当だった。本当にヒゲが生えていた。
でも、よく見たらちゃんとお化粧もしてる、女の子らしい一面もあるんです。耐久力や筋力を強化する飲み物を好む。
カイルは語尾に「で、あーる!」を付ける非常にクセの強いキャラクターで、離別中の奥さんのことを常に憂いている。そして、何故かスライムを肩にのせている。
紛うことなき吸血鬼だが、本作においてカイルに血を提供することはなく、血に近い真っ赤な飲み物を提供する機会が多い。細身だが、意外にも筋力強化系の飲み物が好き。
次に、名探偵メリナ(左)と、冒頭で紹介した無言のローグさん(右)だ。
メリナは10歳にしてとても頭の切れる獣人の女の子だ。若いころに両親を亡くしていながらも好奇心が旺盛で、天真爛漫といった完全なる陽キャ。隣に座るローグすらも、メリナの魅力には抗えないようだ。
そして右に座るローグ(仮称)だが、彼は序盤から登場するも、とある場面に至るまでかたくなに本名を明かそうとしない謎に満ちた人物だ。彼もまた、メリナと同じく悲しい過去を背負っており、暗い人生を歩んできた様子。旅人亭で出会った人物と接した彼が、どのような結末を迎えるのか、ぜひ見届けてほしい。
お次は、巨人族の戦士クレイくん(左)と、聖騎士イレイシャ(右)だ。
この世界にも、いわゆる“勇者”的な人物が存在する。イレイシャは聖龍カシオペアに生涯を捧げる正義の竜騎士であり、人々を救う使命に燃えている。好むのは耐久力を強化する飲み物。クレイくんは、そんなイレイシャに協力を申し出た心優しき蛮族だ。あんまりにも優しすぎて、どうぶつたちが勝手に寄ってきてしまうほど。好みの飲み物は筋力強化系。
その他にも、さまざまなキャラクターが登場し、ほとんどのキャラクターにプロフィールが設定されている。TRPG好きな人は特に、実際にプレイして確かめてみてほしい。
武勇伝を聞いていたら、自分が冒険に出たくなった
本作の醍醐味は、冒険者の運命を変化させる強力な能力を持つ飲み物を提供し、帰還した冒険者の土産話を聞くことにあると思う。冒険者たちに発行されるクエストは、人狼の対処、遺跡の調査、ゾンビ退治など、旅人亭で受けられるクエストのバリエーションは多彩だ。
意気揚々とクエスト報告をする冒険者たちを見ていると、なんだか、こちらも冒険に出たくてたまらなくなってくる。
……いや、もう、出るしかなくないか?冒険。
しかし、現代の日本で果たして心踊る冒険などすることができるのだろうか……。
嗚呼……武器とか持ってダンジョンとか探索したいな……。
冒険の〆に焚き火とかして肉焼いて食べたりしたいなーーーー
とか思っていたら、近所の村人から「あるよ、ダンジョン」という噂話を聞いた。
そんなに都合良くダンジョンがあってたまるか!と思いつつも、さっそく噂の場所へと足を運んでみた。
あった
近所の山奥に「天空の要塞」なるダンジョンがしっかりと存在した……
名称的に、絶対に序盤に挑んじゃいけなさそうな雰囲気をこの身に感じるが……。
あるじゃん!冒険できるじゃん!さっそく、『タヴァントーク』の住民にならって冒険に出かけてみよう!
どうだい、この貧弱な装備は
しかし、私はいたって一般的な人間。16年間も勇者になるための修行をしていたわけでもなく、勇者の村で育てられた訳でもない一般ピーポーなのだ。装備できるものがあるとしたら、そこらへんで拾ったおなべのふたと、ひのきかどうかもよくわからない棒きれくらいだ。
でも、ないよりはあった方がいい。それがロマンというものだ。
そうび:ひのき(?)のぼう
おなべのふた
ぬののふく
うわあぁーーーーーー!!!!!!!本当にダンジョンだあぁぁ
※真夏の炎天下で撮影しております。真似しないでください。
うぉおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!
はあぁぁああ焚き火焚き火焚き火ぃいいいいいいい!!!!!!!!
※焼肉も私有地で行っています。
肉も焼くぞぉおおおおおおお
※私有地です。安全に配慮してすぐに消火できる状態でおこなっております。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
パチ・・・ パチ・・・
リーリー リーリー(鈴虫) ゲコゲコ(カエル) ホーホー(フクロウ)
……実際に冒険してみて気づいたことが一つある。木の棒とおなべのふたを持って山の中を走ると、脳みそが小学校低学年くらいに戻る。夢中で走り回れる。
焚き火をしながら、今回の冒険を振り返ってみよう。
「天空の要塞」と名付けられているダンジョンは、本当にダンジョンめいたロケーションだった。かつて大きな戦争があったらしく、巨大な兵器(大砲)を設置した跡も見られた。
ファンタジーゲームでおなじみのモンスターとやらは、さすがに出現しなかった。
現実の世界では、どちらかというと蚊とか……。野生の猪や鹿が脅威だ。
しかし……冒険、できるじゃあないか……。
特別な飲み物がなくても、いきなり冒険に出ることはできるんだ。
堀井雄二さんが言う「人生はロールプレイング」は、本当だったんだ……。
やろうと思えば、現実でも冒険者になれるんだ……。
そして、ここまで大の大人の魂を揺さぶり動かしたのは間違いなくこの『タヴァントーク』というアドベンチャーゲームだった。時に、日銭を稼ぐため、退屈を紛らわすため、友を救い出すため、世界を守るため、出世をねらうため……旅人亭には、さまざまな目的を持った魅力的な冒険者が集う。
そんな彼らに飲み物を提供し、武勇伝を聞いていたら、またどうしようもなくスリリングな世界に戻ってみたくなる。そんな素敵な気持ちにさせてくれる作品であった。
もし、あなたが冒険に出たいと思った際には虫避けになる“せいすい”(ハッカ油)を持ち歩こう。冒険は、ごちゃついた思考を空っぽにするためのデトックスにもおすすめだ。