戦略ゲームが苦手でも大丈夫!誰でも直感的に判断できるシンプル&フレンドリーな戦略要素
というわけで、ここでリアルタイムストラテジーとタワーディフェンスの要素が登場するわけなんですが……冒頭にも白状した通り、筆者はアクションゲームはそこそこ上手という自負はあるものの、RTSやTDに関してはズブの素人、もはやズブズブです。
リアルタイムでリソースを計算し、戦局を見極め配分する。どうしても難しいイメージがあるのですが、そんな私でも本作が面白いと断言できるのは、本作のRTSとTD要素が直感的に分かりやすく、なおかつすごく親切な設計になっているから。アクションゲーマーにとって直感で理解しやすいというのはこれ以上ないくらいありがたいです。
たとえば「村人」に指示を出す際はゲーム内の時間も止まるので焦らず落ち着いて指示を出せますし、彼らの攻撃範囲も一見して分かるので誰をどこに移動させれば敵の進行を止められるかなどの判断もしやすいですね。
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そしてTDの要素もシンプルで、特に序盤は敵が進行してくるのは一方向、守るべき拠点も一箇所だけなので分かりやすい。さすがにある程度ゲームを進めると、別の方向からも敵が進行してくるようになるのですが、どちらから来るかはマップ上から確認できるので、唐突に後方から増援が出てきて不意を突かれるみたいな心配もありません。
先ほど、昼間はリソースを集めて準備を行うフェイズだと説明しましたが、本作は敵の進行開始位置の確認だけではなく、リソースの振り分けや配置といった工程を、比較的余裕のあるタイミングで行えるというのも助かりました。
ちなみにゲームの流れの部分でも少し触れたんですが、本作のゲームオーバー条件は巫女である「世代」が倒されること。操作キャラクターである「宗」が倒れてもすぐにゲームオーバーになるわけではないのです。
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体力が回復するまでは霊魂の状態で動けるし村人への指示も可能。倒されてしまってもここからが戦略の腕の見せどころと言えるかもしれませんね。
あとRTSってユニットの強化とかも戦闘中リアルタイムで行っていく印象があって、そこが難しいと感じていたのですが、本作はそういった要素も簡略化されていてユニットの性能強化は拠点にて専用のリソースを使って行うことになります。これは任意でリセットができるしリソースも返却されるので、さまざまな選択肢を試しやすいのも助かりました。
逆にステージ攻略中にできることは、回復アイテムで体力を回復することと「転職」によって役割を変更することなんですが、今回プレイした範囲に限れば戦闘中の役割変更はせずともクリアできました。その結果自分が戦うのに忙しくて世代さまが手薄になったり、村人が瀕死になっていたりもしましたが……
面白いのが、拠点で行う性能強化は村人と「宗」で共通のリソースを使うという点。だからプレイヤーは「宗」のパワーアップが解禁された時点で、これまで通り村人の強化にリソースを割くか、それとも「宗」を強化するか、という選択肢を選べるようになるのです。
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アクションゲームが得意なプレイヤーは先に述べた「宗」の性能をさらに強化して戦えばいいし、普段からRTSやTDを遊んでいてリアルタイムでの状況判断に慣れているなら自身の戦闘は減らし、戦闘中の「転職」などもフル活用してクリアするなんてことも可能で、プレイヤーごとに気に入ったスタイルを柔軟に選べるのは素晴らしいです。
主人公は強めの性能でRTSやTDの要素も比較的シンプル。そして、アクションと戦略がお互いを補っているからRTSやTDが苦手な人も逆にアクションが苦手な人も楽しめる。という本作の素晴らしさを紹介できたところで、次はそれらの要素を土台として支えているゲームの舞台について紹介していきます。
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アクションゲームの「上達の嬉しさ」と、戦略ゲームの「効率化の楽しさ」を同時に味わえる秘密はマップにあり
あらためて、本作の舞台になるのは「禍福山」(かふくやま)と呼ばれる自然豊かな山。棚田を一望できるように築かれた村落、薄暗い洞窟の中の参道、ときには湖を渡る船の上など、同じ山の中にありながら場所によって四季や空気すら異なるような神秘的なロケーションが揃っています。
ゲームのステージとしてみてもバリエーションが豊かで魅力的なのですが、朝焼けに照らされる山やそこから差し込む木漏れ日。夕暮れに染まる田園などを見ていると、どことなく懐かしさのようなものを感じました。筆者が東北地方に住んでいるから余計にそう感じるのかもしれませんが、日本人の原風景ともいえるロケーションが多いのも見どころです。
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とはいえそういった光景も最初からそうというわけではなく、各ステージの攻略中は禍々しい菌糸のようなものに覆われ見るも無惨な状態になっているので、プレイヤーはゲームを進める中で山を覆った穢れを祓い、取り戻していかなければならないのです。
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少し話がそれるんですが、この「穢れ」のデザインはすごく良く出来ていると思います。木や土を蝕む菌糸や外来植物と、妖怪が入り混じったようなデザインは猛烈な「異物感」を放っていますね。
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ステージをクリアすることで一応浄化はされるのですが、倒壊した建物などはまだそのまま。プレイヤーはここでも村人を指揮して、各地を拠点に復旧作業を行っていくことになります。
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この復旧作業は指示を出したうえで指定回数ステージをクリアすることで進行し、繰り返しプレイする動機づけにもなっているのですが、同時に村として復興していくことでだんだんと賑やかになっていく。
最後の段階まで来ると本当に感慨深いというか、穢れの「異物感」がすさまじいだけになんだかすごくスッキリしたような、清涼感みたいなものを感じるんですよね。それも含めて「穢れ」のデザインも本当に絶妙です。
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舞台としても魅力的なのはもちろん、ゲームプレイとしてはアクションゲームのステージであり、戦略ゲームにおけるマップでもあることを考えると最大の味方にして、ときには敵でもある。まさに「禍福」の名にふさわしい舞台にして本作の要、影の主役といってもいいくらい重要な存在になっています。
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マップひとつひとつに注目してみると、広さこそはないものの分岐と起伏があり、各地には「村人」たちが助けを待っていたり、祓うことでリソースを回収できる「穢れ」が点在しているなど、さまざまなな要素があるのですが、昼間の限られた時間で準備のため駆け巡ることを考えると程よいサイズ感だと思います。
配置されている要素としては、大工に修復してもらうことで戦闘が有利になるギミックや、特定の職に就いた村人がいないと回収できない宝箱、数人での復旧作業が必要な崩落した橋などもあり、作業ごとの優先順位を考えて順序よく行っていく必要があるのがまた悩ましい。
戦闘時においても分岐や起伏は「抑えておくべき通路」や「有利に戦える高台」として機能しているので、戦略を考える際の材料にもなります。ただ駆け回るだけではなく、よく観察しておく必要もあるわけですね。
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そんなことを考えているうちに世代さまを誘導し忘れていることに気付くわけです。トホホ……(実話)
私なんかは初見のステージではこんなふうにドタバタやりながらなんとかクリアにこぎつけるんですが、普段からリアルタイムストラテジーに慣れていて、タイムマネジメントも得意なプレイヤーであればこの辺りの把握もきっと手早く行えると思うので、本当に主人公の力を使わなくてもクリアできるかもしれませんね。
そしてこのゲームのステージ攻略はここからが楽しい。なんなら一度クリアしてからが本番です。
繰り返し遊ぶことでマップの構成や、そのステージで登場する敵の傾向が分かってくると、昼間の間に行うリソースの回収や味方の転職、配置といった作業がどんどん最適化され、準備をスムーズにこなせると当然夜間の戦闘も余裕を持って臨めるようになっていく。
スマートに複数のタスクを並行してこなして得たリソースで仲間をしっかり配備して、強敵が出現するタイミングでは自身が前線に出て華麗に立ち回り、敵の量が多くなるタイミングでは味方を的確に要所に配置する。こうやって組み立てた戦略がハマった瞬間がほんっとうに楽しいのです。
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そうやって繰り返し遊んで最適化し動きが洗練されていく中で、ふと思ったのは「これ『ロックマンゼロ』に似てるなぁ」という感想。
とっさに『ロックマンゼロ』の名前が出てきたのは単純に私が思い入れがあるからなんですが、こういう何度もリプレイして洗練されていく面白さって『ロックマン』だけではなく『デビルメイクライ』や『モンスターハンター』シリーズにも通ずると思うんですよね。
これが冒頭述べた本作が「非常にカプコンらしいゲーム」だと考える理由になるのですが、本作の素晴らしい点はアクションゲームにおける「上達の嬉しさ」と、戦略ゲームにおける「効率化の楽しさ」という面白みを同時に味わえるところ。
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アクションゲームって直感的な判断が必要になるし反射の速さも関わってくるので、どうしても上手い下手が顕著に現れてしまうし、こういう「勘」の部分って簡単には鍛えられない。でも本作はそういう部分が苦手でも、ステージの探索や村人への指揮と言った部分で補えるのが素晴らしい。
逆にストラテジーゲームの場合、自分で組み立てた戦略でも最終的に実行するのはCPUなので、確率で攻撃が当たらないなど自分が関与出来ない要素ってどうしても存在しますよね。それを詰めていくのも面白いんですが難しくもある。本作はそういう要素に対して「自分が実際に戦う」ことで直接関与できるというところも非常にユニークです。
もちろん他にもアクションと戦略が両立しているゲームってあるのですが、本作は突出してそのふたつの要素の調和が取れている。
仮に「宗」の性能がもう少し弱かったらこの爽快感はありえなかっただろうし、あるいはもう少し強かったとしても戦略性を損なっていたでしょう。こういうバランス感覚は長年アクションゲームを作り続けてきたカプコンだからこそできる“神”さじ加減なのだと感じました。
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ちなみに今更なんですが本作はフォトモードも完備。設定項目も豊富ですし「宗」にカッコいいポーズや普段は見られないちょっとユニークなポーズを取らせたりといじくり回しているだけでも面白い。この記事を書く際にも大変お世話になりました。
このゲームって実際のプレイ時には昼夜問わずやることが多いので、疲れたら拠点で景色を眺めてみたり動物と戯れながら休憩をしつつ、お気に入りのロケーションを撮ってみるのもいいですね。
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ではここまでに書いてきたすべてをふまえ、最後にもう一度「結局なにをするゲームなんだろう?」という問いに答えてみようと思います。
『祇(くにつがみ):Path of the Goddess』は、アクション、タワーディフェンス、リアルタイムストラテジーの3つのジャンルを混合させたゲーム。
複数のジャンルが入り混じっていることから一見複雑そうに思えますが、その実態はよく調整されたアクションという主柱を直感的に判断できる戦略ゲームの要素が支えることで絶妙なバランスを作り上げています。
独創的な和のグラフィックで構築されたマップも魅力のひとつで、駆け巡って探索する遊びごたえと、さまざまな戦略が取れる奥深さが両立しているし、繰り返し遊んでいくことで少しずつ復興していくこともあり、ただのクリアするだけのもの以上の存在感を放っているのでそちらも要注目です。
リプレイ性が高く、繰り返し遊ぶ中で洗練されていくカプコンらしい面白さは本作でも健在。アクションゲームの「華麗に立ち回る面白さ」に加えて、戦略ゲームの「上手く策がハマったときの気持ちよさ」が同時に楽しめる、唯一無二の作品に仕上がっていると感じました。
また、本作の公式サイトや公式Xアカウントでは、さらに詳しいゲームの流れや細かなテクニックが紹介されています。
まずはじっくり考えたい戦略家のみなさんはそちらのチェックをしてみるのもいいですし、まずは触ってみたい!という感覚派のみなさんはいきなり体験版を遊んでみるのもおすすめ。体験版のダウンロードリンクは公式サイトから確認できるので、ぜひチェックしてみてくださいね。