突然ですが、皆さんは「見えている恐怖」と「見えていない恐怖」どっちが怖いですか?
「見えている恐怖」というのはあらかじめここで恐ろしいことが起きるよ、と予告してくれているタイプの恐怖演出のことで、「見えていない恐怖」とはそういった告知なしで不意打ち気味にやってくる恐怖のことを言います。
私は「どっちも怖い」と回答する根っからの臆病者なわけですが、前者と答えた方も後者と答えた方もご安心ください。『Go Home Annie』ではその両方を体験することができます。しかも、ほぼ同時に。
7月19日(金)から7月21日(日)にかけて京都市勧業館「みやこめっせ」で開催中のインディーゲームイベント・BitSummit Drift。今回私はこちらのイベントのビジネスデイに参加し、『Go Home Annie』の試遊を体験させていただきました。
ウェブサイト上で共同創作される怪奇コンテンツ「SCP」を題材とし、正式発表時にも大きな話題を呼んだ本作ですが、その期待に違わぬ恐ろしさを持ったゲームでしたので簡単なプレイレポートの形式で紹介させていただきます。
取材・文/うきゅう
自ら怪奇現象の条件を整え、怪奇現象を引き起こそう。予習した現象が起こる「予告」の恐怖と、予想外の現象が起こる「不意打ち」の恐怖で思わずフリーズ
『Go Home Annie』のなかで、プレイヤーは「アニー」と呼ばれるひとりの女性を操作し、いくつもの怪奇現象をめぐる実験へと参加します。冒頭でも軽く触れましたが、本作はSCPと呼ばれるウェブサイト生まれの怪奇コンテンツをテーマとしており、ファンにはお馴染みのキーワードや怪異がいくつも登場します。
主人公のアニーの身分「Dクラス職員」なんかもそのひとつなわけですが、今回の記事ではSCPをご存じない方でもわかるよう、なるべく専門用語やSCPの前提知識は不要な形で書き進めて行きたいと思います。さっそくDクラス職員を言い換えるなら……なんでしょうね。“人権を剝奪された使い捨て要員”とでも言えばその立場の悲惨さが伝わるでしょうか。
死刑囚や犯罪者などで構成された彼らは危険な実験に容赦なく駆り出され、バタバタと死んでいく実に不遇な存在です。アニーがなぜそのような身分になってしまったのかについてはゲームを遊んでいただくとして、本題へ入りましょう。とにかく本作が「怖い」ということについてです。
本作の冒頭では、状況説明もほとんどないまま、ある一軒家に侵入し内部を探索するというミッションが与えられます。そこで探索の鍵となるのが、この古ぼけたビデオカメラ。
カメラを使って家のあちこちに配置されたビデオテープを再生し、テープのなかに記録された映像をヒントに、ギミックを解除し鍵を開けて探索範囲を広げていく……というのが序盤の基本的なゲームプレイとなります。
このテープとカメラが、厄介なんですよ。本作はホラーゲームであり、記録された映像もそれ相応におどろおどろしさを有しています。しかも、ギミックを解除する際にはテープに映った状況と現在のフィールドの状態を揃えなくてはいけません。
怪奇現象を映したビデオテープを見ながら、部屋の状況をテープと同じに揃えていけば、当然怪奇現象が起こります。もちろんそれによって先に進めるわけですから、ゲームをプレイしている身としては歓迎すべき事柄なんですが、そもそもこっちは怖い体験を望んでないのに怖い体験の発生方法を確認して怖い体験を自ら引き起こしているわけです。
マンガ『ジョジョの奇妙な冒険』に「見えてしまっていることが逆に恐怖だな」という有名な一節がありますが、本作を遊んでいてこの言葉に強い実感を覚えました。見えてるの、怖いです。
【#JOJOカウントダウン】
— 荒木飛呂彦原画展 JOJO 冒険の波紋 (@JOJOex_2018) November 21, 2018
「荒木飛呂彦原画展 JOJO 冒険の波紋〈大阪会場〉」開催まで、あと3日ッ!
大阪会場の各種前売チケット、好評発売中ッ!!
チケットは【土日祝日のみ日時指定制】
チケット情報の詳細はこちら→https://t.co/6AJfWf9nEl #ジョジョ展 #JOJO30th #JOJO2018 #荒木飛呂彦 pic.twitter.com/Y5WrM6DYP7
その上で本作は、見えている恐怖に怯えたこちらに対して、映像にはまったく映っていなかった恐怖を間髪入れずに叩き込んでくるのです。一息つく間もなくやってくる不意打ちの恐怖は、まさに格別。ビデオテープによる「予告」とその直後の「不意打ち」という二種類の恐怖体験を味わった人間がどうなるかと言うと……。
フリーズします。
試遊ブースでしばらく動けなくなった自分自身を思い返すと我ながら情けないですが、なってしまったものは仕方ありません。自信を持って言わせていただきましょう。それほどまでに、怖かったのだと。
ほかにも本作はクロアチア政府が支援する組織「クロアチア・オーディオビジュアル・センター」によるビデオゲーム産業促進プロジェクト「Games Croatia」の一作であるという側面を持っていたり、SCPを管理するはずの財団がなぜかSCPを“複製”していることが明らかになる謎めいたストーリーなど特筆すべき点はいくつもあるのですが、私にとってはとにかく本作が見事に使い分けた二種類の恐怖に翻弄された体験があまりにも鮮烈でしたので、あえてその部分に的を絞ってレポートを書かせていただきました。
そんな『Go Home Annie』の試遊も出来てしまう日本最大級のインディーゲームイベント・BitSummit Drift7月19日(金)から7月21日(日)京都市勧業館「みやこめっせ」にて開催中です。
20日と21日の10時から17時は一般公開されており、一般/大学生の方は税込2000円、高校生の方は税込1000円、中・小学校生の方は無料で入場することができますので、興味のある方はぜひ会場まで足を運んでみてください。
明日をも知れぬ使い捨て要員として“複製”された怪奇現象のテストに挑むホラーゲーム『Go Home Annie』はPC(Steam)へ向けて2024年に発売される予定となっています。