白熱の大会会場。決勝戦までゆるぎない強さを見せつけた「KPL Dream Team」がいろいろすさまじかった
あらためて『Honor of Kings』大会会場の様子を記すと、やはり最初に目を引くのは4つに分かれた大スクリーン。両サイドの2枚に試合中のゲーム画面が映し出される形となっており、キル数、タワーの破壊数など、戦況を推し量るためのスコアも一画面にまとめられていて非常にわかりやすい。試合後には統計データなども映し出されていた。
ちなみに本大会の賞金は、1位が100万ドル。1~10位までの賞金総額は300万ドルにおよぶ。計12チームが集まり、最初の2日間はふたつに分かれたグループステージを戦い、勝ち抜いたチームが3日目のクォーターファイナルに集まり、さらに勝ち残れば最終日のセミファイナル、グランドファイナルへと駒を進める流れだ。
筆者は現地時間の8月1日~4日にかけて会場を訪れ、グループステージからグランドファイナル(決勝戦)まで、すべてではないが多くの試合を観戦することができた。ここからは、最終日に行われた準決勝、決勝の模様を詳細にお伝えしていこう。
準決勝:LGD GAMING(LGD) 対 VIVO KEYD STARS(VKS)
筆者が現地に到着したとき、すでに準決勝第1試合はかなり進行しており、LGDが2ポイントを先取していた。第3ゲームもLGD優勢で進み、結果は3-0でLGDが勝利。最終マッチではキル数も17-4と大きく開いており、終始LGDが優勢に試合を進めた模様だ。
3試合目のMVPに選ばれたのは、LGDのジャングラー・MusangKing選手。6キル1デス6アシストの活躍を見せた。
Clean 3-0😎 And we made it to the Grand Final!!!! #EsportsWorldCup pic.twitter.com/87tlj5GmUa
— LGD Gaming (@LGDgaming) August 4, 2024
準決勝:AG GLOBAL 対 KPL Dream Team
続く準決勝の2試合目は、「AG GLOBAL」と「KPL Dream Team」の一戦。特にKPLは準決勝にいたるまでの試合でも圧倒的な強さを見せつけており、現地に詰めかけたファンの熱気もひとしお。前日に行われたクォーターファイナルでも、わずか10分ほどで勝利を収める強さを見せた。
最初のゲームでは序盤は互いに0キルのじっくりとした展開を見せるが、4分を過ぎたあたりでKPLが1本目のタワーを破壊する。しかしその後の集団戦や奇襲が実を結び、キル数ではAGがリード、一方でタワーの破壊数や育成スピードではKPLが優勢という形に。そして11分を過ぎたころにKPLが一気に攻勢をかけ、そのまま押し切って1ポイントを先取する。
2戦目は開幕から40秒ほどで、KPL・Chance選手がファーストブラッドを取る。その後もHai選手のダブルキルなどにより、1-5とリードを広げた。その勢いのまま、8分弱というすさまじいスピードでKPLが2ポイント目を取る。
続く3戦目は、3分ごろに試合が動き、KPLのPang選手が連続キル。5分を過ぎたころにはキル数で6-1と、KPLが大きくリードを築く。さらに6分ごろには同じくPang選手が4連続キルを決め、10-2まで差が広がる。その後も勢いが落ちることはなく、10分を待たずして試合終了。KPLが3ポイント目を獲得し、ストレートで決勝進出を決めた。
これにより、決勝はKPL対LGDという形になる。
ショーマッチ
決勝戦の前に挟まれたのが、各チームの選手やインフルエンサーが混合した特別チーム「TEAM HONOR」と「TEAM KINGS」による2本先取のショーマッチ。開始から1分を過ぎたころ、KINGSのAbh選手がファーストブラッドを取る。試合はじっくりと進み、7分ごろでキル数は2-5、タワーをお互いに1本ずつ折った形となる。
その後も攻防は続き、12分を過ぎたころには5-12とKINGSがリードを広げる。しかし試合は20分以上にまでもつれ込み、21分を越えたころにKINGSがチームキルを決め、ついに勝敗は決した。
KINGSが1本を先取した形ではじまる2戦目、2分ごろにKINGSのSenkoo選手がファーストブラッドを上げる。3分半ごろには4-1とKINGSがリードし、1戦目よりはスピーディに試合が進んでいる様子だった。その後もKINGSが勢いづき、8分ごろにはキル数で15-3と大きく引き離す。リードは縮まらないまま、13分を過ぎたあたりでKINGSが勝利。ショーマッチの勝者は「TEAM KINGS」となった。
グランドファイナル(決勝) LGD GAMING対KPL Dream Team
先述の通り、決勝戦はいずれも準決勝を3-0のスコアで勝ち抜いてきた両チームがぶつかり合う形となった。どちらもクォーターファイナル、セミファイナルともに1ゲームたりとも落としておらず、素人目にもそのレベルの高さはうかがい知れる。決勝を前に客席はほぼ埋まり、惜しくもトーナメントで敗れたプロプレイヤーたちの姿も見られた。
選手入場の前には4面の大型スクリーンをフルに使ったアニメーションも披露。来たる頂上決戦に向けて、会場の雰囲気は大きく高まる。
あらためて両チームの紹介をしておくと、まず「KPL Dream Team」は中国のさまざまなチームから精鋭たちが集められた、文字通りのドリームチーム。ふだんはライバルとして対峙するプレイヤー同士が共闘するというシチュエーションを聞けば、彼らのふだんの活躍を知らない身にもそのアツさが伝わってくる。
対する「LGD GAMING」は、シーズン2チャンピオンシップで優勝を果たしたマレーシアの強豪。KPL同様、クォーターファイナル、セミファイナルともに1ゲームも落とすことなく勝ち上がってきた。
1試合目、序盤からたびたび交戦する両チームだが、1キル目が発生したのは2分ごろ。ミッドレーンでKPLのRONG選手がファーストブラッドを取る。次に試合が動いたのは6分が近づくころで、KPLがファームレーンの1本目のタワーを破壊、さらにその後の集団戦でRONG選手がふたつ目のキルを取った。
さらに7分を過ぎたころ、ミッドレーンで集団戦が発生。この場面はKPLが2キル、LGDが1キルを取る形で落ち着く。9分ごろにもファームレーンでKPLが攻勢を仕掛けるが、ここは両チームキルが生まれることのないまま解散となった。しかし、その後もKPLが優位に戦闘を進め、10分時点でキル数差は1-6となる。
13分を過ぎたころにはLGDのタワーのほとんどが破壊されてしまう。一方でKPLはまだひとつのタワーも破壊されておらず、かなりの優勢を築いていることがうかがえた。15分ごろにはLGDの本拠地付近で集団戦が発生し、このまま押し切るかとも思われたが、LGDのMusangKing選手の連続キルなどの活躍でいったん押し戻す。さらにその後、ミッドレーンでの集団戦でLGDがアドバンテージを得、ふたつのタワーの破壊に成功した。
しかし、18分ごろにはKPLが再度本拠地に攻撃を仕掛け、1戦目は決着。キル数差は10-15、LGDも終盤にかけて粘りを見せたが、試合後のスタッツを見る限りでは終始KPLペースで進んでいたようだ。
少しのインターバルをおいてはじまった2戦目、序盤は静かな立ち上がりを見せるが、2分すぎに最初の集団戦が発生し、KPLのHai選手がファーストブラッド。さらに4分ごろにもファームレーンで戦闘が起こり、両チームがキルを取ってキル数は1-3とKPLがリードする。6分を過ぎるころには、KPLが3本のタワーを破壊していた。
8分を越えたあたりでKPLはクラッシュレーンのタワーをすべて破壊。10分を過ぎたころにはKPLが早くも本拠地への攻撃を仕掛けるが、ここはLGDも辛うじて耐えた。しかし次の攻撃はしのぎ切れず、13分ごろに決着。KPLが優勝へ王手をかける。
続く3試合目、ファーストブラッドを取ったのはLGDのJR選手。その後、すぐにKPLのFly選手も1キルを取り、序盤は均衡の様相を見せる。そろそろ試合開始から5分が経とうかとしているタイミングで、KPLがファームレーンで最初のタワーを破壊、さらに6分ごろにはクラッシュレーンでも1本目のタワーを破壊し、レーンの押し合いで有利を築く。
試合が動いたのは7分を過ぎたころ、KPLのFly選手がダブルキル。KPLは4本、LGDは1本のタワーを破壊した形となり、すでにKPL側の前線が大きく上がっていることが見て取れた。11分30秒ごろにはすでにクラッシュレーンの1本、KPLによるLGD本拠地への攻撃がはじまった。
その後も大きく流れが変わることはなく、終わってみれば、KPLが3-0のストレート勝ち。大会全体を通じて見せてきた強さを遺憾なく発揮し、みごと優勝を果たした。
A moment for the history books as KPL Dream Team lift the #HoK Invitational Midseason x #EsportsWorldCup trophy 💪 pic.twitter.com/PJQangIBmq
— Esports World Cup (@EWC_EN) August 4, 2024
「KPL Dream Team」のどこがそれほどまでに強いのか、まだMOBA素人の筆者には十分に表現することは叶わない。
が、大会会場に集まったファンの数、熱気は頭ひとつ抜けていたように思える。応援用の幕やポップを持ち寄り、息を合わせて応援の声を上げる様子には圧倒されるものがあった。それだけ、KPLというチームが期待を集めていたという証でもあるのだろう。
試合後にはステージ上でKPL選手へのインタビューなどが行われ、拍手のうちに大会は終了を迎えた。
「eスポーツこそ、生で観るのが最高に面白い」
今回、EWCに参加してあらためてそう思った。観客のどよめき、選手の周りに漂うピンと張り詰めた空気、ひとつの会場に集まっているという一体感……そういったものがあわさり、「自分は今、すごい場所にいるのかもしれない」という気分にさせてくれる。
いきなり「サウジアラビアへ行こう!」というのはやや非現実的かもしれないが、幸い、いまでは日本でもたくさんのeスポーツイベントが行われている。少しでも気になっている方は、ぜひ何かしらのリアルイベントに足を運んでみて欲しい。現地はいいぞ!
『Honor of Kings』について言えば、筆者は今回「ド素人」の状態で世界最高峰の戦いを観戦した形となる。振り返ってみればムチャクチャな話だ。しかしそれでも、会場で一体となって試合を観るという行為はシンプルに楽しく、トッププレイヤーたちの戦いからは「俺ももっと強くなりたい」と思わせられる刺激を受けた。
そして何より心に残ったのが、世界の広さだ。これまで知らなかったゲームにも、世界中から人が集まる大舞台があり、そこには全身全霊をかけるプレイヤーたちと、彼らの戦いに熱狂するファンがいる。もちろん『Honor of Kings』以外にも、無数のゲームでそんな場所が生まれている。
世界はまだまだ広く、新しい刺激に満ちている。当たり前の話ではあるのだが、そのことを身をもって実感する旅になった……。
最後になるが、今回のイベントでは『Honor of Kings』関係の現地スタッフの方を筆頭に、非常に多くの方に助けていただいた。皆さんへの感謝の言葉をもって、この記事を締めたいと思う。本当にありがとうございました!